の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月11日午後2時
1時間前に偶然会った茶山さんと青木さんは、おひさまモールの1階にある麺屋 鳳といううどんとそばの店にいた。
茶山さんは冷やしわかめうどん、青木さんは冷やしぶっかけうどんを食べていた。
冷たいものを求めてここに来たはずなのに、2人とも思うように箸が進まず麺が伸びてしまった。
「……。そういえば、今日は鑑定結果が出る日でしたよね……?」
青木さんは死んだ目で尋ねた。
「そうね……。でも……桃松さんのものとしか思えないわ……」
茶山さんの涙は、うどんの中にどんどん落ちていった。
「まだ分かりませんよ……。きっと……」
青木さんはそれしか言えなかった。
「……」
茶山さんはとうとう黙って俯いてしまった。
一方その頃、レストランハッピーでは……
黒田さん、赤竹さん、ゆうちゃんのお母さんは3人ともハッピーコーンピザとハッピーバジルピザを食べていた。
黒田さんは今日も使わないカトラリーをメニュー表で隠していた。
「桃松さん……」
2人が言える言葉はそれだけだった。
ゆうちゃんのお母さんに至っては、すすり泣きに留めるだけで精一杯だったのだ。
ほかのテーブル席がゆうちゃんと男の格好をしたお客さんで埋め尽くされていたのが原因なのは、もはや説明するまでもない。
黒田さん、赤竹さん、ゆうちゃんのお母さんは、もう何を食べてもおいしくなかったのだ。
赤竹さんがタバスコに手を伸ばした瞬間、黒田さんがそっと阻止するほどに……
赤竹さんは一瞬戸惑った。
だが、ゆうちゃんのお母さんがピザとハンカチの区別がつかなくなっていたのを見て、全てを察した。
黒田さんと赤竹さんは、アンケートを書く時に使うボールペンを取り出した。
2人ともナプキンに、
桃松さんは最高の部下でした
と、書いてゆうちゃんのお母さんの目の前に置いた。
ゆうちゃんのお母さんもボールペンを取り出し、2枚のナプキンに、
ありがとうございました
と書いて黒田さんと赤竹さんの目の前にそれぞれ1枚ずつ置いた。
午後3時
少しだけ前を向けたみうさんは、今日もキャンディの袋詰めを頑張っていた。
当然、休日のこの時間は泣いたりゆうちゃんのことを思い出したりする時間などない。
レジには大量のなりきり桃松ゆうちゃんがおなまえロリポップなどをカゴに詰めて並んでいた。
若い女性店員さんが、何度かレジ応援をお願いしたが、みうさんの耳には全く届かなかった。
みうさんの忙しさを察したのか、普段はレジに入らないはずの妙齢の女性店長さんが来た。女性店長さんのレジスピードは誰よりも速く、どうして普段入らないのか誰もが不思議に思うほどだった。
救われたみうさんは、精一杯の笑顔でたくさんのキャンディを並べ始めた。
「いらっしゃいませ!」
なりきり桃松ゆうちゃんをモモ味のキャンディに頭の中で変換しながら、何度も大きな声で挨拶した。