※この作品はR-18です。

の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】   作:桃色ぴんく

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第70話

7月11日午後6時

 

「いやっ……!!!ゆう……!!!ああああああああああ!!!!」

 

ゆうちゃんのお母さんは、30分前からずっと泣き続けていた。

 

正確に言うと、あの最悪な速報が入る10分前からだが。

 

「桃松さん……」

 

黒田さんは、元々今日の特売品だっためんつゆの段ボールを『光』を失った目で見つめ続けていた。

 

下田さんたちはいつの間にかいなくなってしまった。

 

「あ……!ああああああああああ!!!ゆう……。ゆう!!!」

 

ゆうちゃんのお母さんは、バッグの底に入れていたうさぎマーケットのチラシを取り出し、それを強く抱き締めた。

 

午後6時15分

 

赤竹さん、茶山さん、金森さん、白谷さん、青木さん、緑ヶ丘さん、赤森さん、藍谷さん、そして茜ちゃんを抱いた黄ノ山さんは、黙って俯きながら席を立った。

 

9人の大人たちの足は、ゆうちゃんと青山さんのロッカーの前へ自然に向かっていた。

 

2人のロッカーには、おやつワールドのレジ袋に入れられたあのお菓子が供えられていた。

 

ピンクと青のマグネットフックが目に入った時、藍谷さんの目は誰よりも涙で溢れてしまった。

 

それは、おひさまファッションビルの3階にある100%HAPPYという100円ショップで昼過ぎに買ったものだからだ。

 

それらが2人の名字を意識して選んだものだったことは、もはや説明するまでもない。

 

9人の大人たちは、涙目のままゆうちゃんと青山さんのロッカーだけを見つめ、静かにそっと手を合わせた。

 

一方その頃、日の丸百貨店の1階では……

 

なんとか立ち上がれた遥さんと誠人さんは、Hinomaru Accessoryという超高級アクセサリーショップで婚約指輪を見ていた。

 

そこは、超高級を謳っているだけあってシンプルなシルバーリングでさえ20万円を余裕で超える。

 

「遥、大丈夫?」

 

「うん。誠人こそ大丈夫……?」

 

2人は指輪よりも、お互いの顔を涙目で見つめていた。

 

「あ、僕のことは気にしないで。昨日のお詫びだから……」

 

誠人さんは、左手に持った白い財布をそっと握りながら涙を堪えた。

 

「ありがとう、誠人……」

 

遥さんは、左手に持った黒いレースハンカチで涙を拭いた。

 

「……買えるかな?あれ?亜李ちゃん……」

 

誠人さんは、蚊の鳴くような声でそう呟きながらスマホを見た。

 

いつの間にか亜李さんから、

 

 

足りなかったら無理せずウチに言ってね!Sun Sun Pay送るから!

 

 

とメッセージが届いていたのだ。

 

Sun Sun Payとは、若者を中心に利用されている電子マネーだ。コンビニでチャージしたり、残高をプレゼントしたりすることもできる。

 

誠人さんは、

 

 

ごめん、今気づいた。ありがとう、気持ちだけ受け取るね。

 

 

とスマホの画面を財布で隠しながら返信した。

 

午後6時30分

 

「綺麗だな……」

 

遥さんは真珠の指輪をじっと見つめていた。

 

真珠そのものはそこまで大きくはないが、形も色も十分綺麗なものだったのだ。

 

「遥。同窓会……それで行く?」

 

誠人さんは、財布の中身を念入りに確認しながら遥さんに尋ねた。

 

「……!!えっ、い……いいの……?!あ……!ああああああ!!!」

 

遥さんは、日の丸百貨店に入る前とは正反対の意味で号泣した。

 

「大丈夫だよ。遥は僕の可愛いお嫁さんになる人なんだから」

 

誠人さんは遥さんを優しくエスコートしながら、レジへと向かった。

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