の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月11日午後7時30分
本来なら、根ノ江南高校3年1組の同窓会の開始時刻だ。
「え、アンタたち……。なんで……?なんでみんな同じ格好してるの?」
お揃いの格好をした京子さん、桃香さん、秋奈さんの姿を見た亜李さんは、かなり声を震わせていた。
どんな服装をしていたかは、もはや説明するまでもない。
「亜李、ごめん。一旦抜けるね……」
みうさんは掠れた声でそう言った。
「亜李久しぶり〜!元気だった〜?亜李もゆうちゃんと同じの着ればいいのに〜!あ、そういうの好きじゃないのか」
白い猫のぬいぐるみを抱いた京子さんは、ダッシュで亜李さんの元に駆け寄った。
「亜李どうしたの?ねえ、顔暗いよ?せっかくの同窓会が台無しだよ。もしかして失恋した?」
茶色い熊のぬいぐるみを抱いた桃香さんには、亜李さんの想いは全然理解できなかった。
「あ、亜李!ゆうちゃんを食べたイケメンの名前は日ノ松藍斗らしいよ。名前と顔が一致しすぎてやばいよね!」
黒い犬のぬいぐるみを抱いた秋奈さんの頭の中に、かつてのクラスメイトだったゆうちゃんの姿はなかったのだ。
「は?アンタたち何考えてんの?ゆうちゃんが可哀想だと思わないの?最低!マジ信じらんない……」
亜李さんは血走った目を潤ませていた。
亜李さんたちからやや遠く離れたところでは、康太さんと弘樹さんがそれぞれのスマホの待ち受け画像を誠人さんに見せていた。
康太さんの画像は唐揚げにされたゆうちゃんのファンアートで、弘樹さんの画像はオムレツにされたゆうちゃんのファンアートだ。
「誠人くんおひさー!なあ、見てみろよwほら、ゆうちゃんの唐揚げwお前も食いてえよな?」
「なあなあ誠人くんwゆうちゃんのオムレツ食ってみてえよなwお前もそう思うだろ?」
康太さんも弘樹さんもニヤニヤしながら身の毛もよだつ質問をした。
「そんなの食べたくないよ……。桃松さんが可哀想だよ」
誠人さんは怯えつつ呆れていた。
そこに、純さんと颯斗さんも合流した。
「誠人くん久しぶり〜。なあwゆうちゃんのファンアートでオナニーしたか?」
青のタオルを首に巻いた純さんは、本当にしょうもない質問をした。
「僕そういう趣味ないから……」
気分が悪くなった誠人さんは、純さんから少しずつ距離を取ろうとした。
「あははwこいつが激キモ発言してごめんな〜w誠人くんは黒谷以外の女に興味ねえもんなwあ、でも黒谷がパフェとかにされてるファンアートだったらどうせオカズにするだろ?ヒューヒューw」
緑のタオルを首に巻いた颯斗さんは、友達の失言を謝るように見せかけて誠人さんをからかった。
「……ざけんな。お前らふざけんじゃねぇよ。なあ……!本当にいい加減にしろよ!!!」
誠人さんは、28年生きてきた中で1番の大きな声を上げ、怒り狂ってしまった。
誠人さんたちからほんの少し離れたところでは、翔子さんとみなみさんが遥さんに自作のスプーンを見せた。
「あ、遥ちゃん!ねえ見て!我ながら完璧だと思わない?!」
赤いバッグを持った翔子さんは、無駄にクオリティの高いあのスプーンを左右に振って見せびらかした。
「う……うん……。リアルだね……」
遥さんはそれしか言えなかった。
「あ、遥ちゃん!翔子には及ばないけど私も頑張ったよ!」
白いバッグを持ったみなみさんは、やや不格好なスプーンを見せた。
「そうなんだ……」
かつてのクラスメイトだった仲間を思うあまり、遥さんは本当に言いたいことが言えなかったのだ。
午後7時35分
「……っ。ゆうちゃん……。私ね、ゆうちゃんと一緒にみんなに会いたかったよ……」
みうさんはフロントから1番近いトイレで泣き続けていた。大輝さんがくれたルビーの指輪さえもゆうちゃんを失った心の傷を埋められなかったのだ。