の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月11日午後9時5分
天国にいるゆうちゃんに届けるための劇は、まだ終わらなかった。
「あなたたち、王子様からよ!舞踏会の招待状ですって!!」
真由美さんは、演技に熱が入りすぎてつい飛び跳ねてしまった。
「キャー!素敵!」
夏菜子さんとまちこさんは、親友らしくあの時と同じように綺麗にハモった。
「シンデレラ、私たちは今日お城の舞踏会に行ってくるからね。あんたは掃除してお留守番しなさい!」
「じゃあね!灰まみれのシンデレラ!」
「じゃあね!ボロ着がお似合いのシンデレラ!」
「あ……ああああ……」
みうさんは、真由美さんたちの演技力の高さと、ゆうちゃんがいない寂しさのせいでうまくセリフを言えなくなった。
「……シンデレラは、綺麗なドレスを持っていなかったので、舞踏会に行けず泣いてしまいました……」
だが、亜李さんのこのナレーションがみうさんの目に浮かんだ涙を止めたのだ。
「……っ!私も舞踏会に行きたい、王子様と踊ってみたい!」
みうさんは、シンデレラの人形を両手で包み込むように握った。
「シンデレラ、その願い!叶えてあげましょう!……誰?私は魔法使い」
元々魔法使い役のみうさんは、天井に目を向けて1人2役を演じた。
「シンデレラの元に、魔法使いがやってきました」
亜李さんの目も天井を向いていた。
「ちちんぷいぷい、ボロ着よ綺麗なドレスになーれ!まあ!綺麗なドレス!魔法使いさんありがとう!」
みうさんは、マイクを魔法の杖に見立て、シンデレラの人形に近づけた。
「ちちんぷいぷい、かぼちゃの馬車よ!出てらっしゃい!まあ素敵!これなら舞踏会に行けるわ!……夜の12時になったら、魔法が解けちゃうから気をつけてね」
みうさんは、会場の時計をシンデレラの人形に見せるようにしてそう言った。
「魔法の時間は夜の12時まで。魔法使いは、シンデレラにそう教えました」
みうさんからマイクと台本を受け取った亜李さんは、誠人さんに目配せして、マイクだけを手渡した。
遥さんは、さりげなく両手を合わせ、シンデレラの人形に向かってお辞儀をしていた。
「颯斗くん、純くん。来て、出番だよ」
誠人さんは颯斗さんと純さんに向かって手招きした。
「出番って?」
「い、今行く……」
2人は戸惑いながら壇上へと向かった。
いつの間にか壇上を降りていた真由美さんたちは、颯斗さんたちにあの写真を見せた。
「ウィッス!」
「了解っす!」
颯斗さんと純さんは、状況を理解し、誠人さんからマイクを、亜李さんから台本を受け取った。
「パカラッパカラッ、ヒヒーン!」
馬役の颯斗さんと純さんは満面の笑みを浮かべながらハモった。
「ヒヒーン!こう見えて俺、ロケット並の速度で走れるぜ〜www」
「ヒヒーン!桃松……間違えたwシンデレラ〜w俺は本気出せば空も飛べるぜ〜www」
だが、2人ともヘラヘラしながら台本と違うセリフを言い出したのだ。
「ちょっと!こういう時くらい真面目にやりなさいよ!」
亜李さんは颯斗さんと純さんを止めようとしたが、遥さんと誠人さんに腕を押さえつけられてしまった。
「亜李、落ち着いて。ふざけているわけじゃないと思うよ」
「遥の言う通りだよ。あれが2人のやり方じゃないかな」
遥さんと誠人さんは、颯斗さんと純さんの想いを全て受け止めていたのだ。
「ゆうちゃんの夢……すぐに叶えようとしてくれてたんだ……」
みうさんが小声でそう呟いたその時、
「おーい!お前らさっさとこっち来いって〜www」
「早く来ないと金山たちがキレるぞ〜www」
颯斗さんと純さんは、涼太さん、みなみさん、京子さん、桃香さん、秋奈さん、沙也加さん、ひなこさん、康太さん、智和さん、健二さん、涼介さん、そして大輔さんに向かって手招きした。
「えっと、魔法使いの魔法で……シンデレラは無事に舞踏会に行くことができそうです」
亜李さんは、精一杯の笑顔を作った。