の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月11日午後9時15分
「シンデレラを乗せた馬車は、あっという間にお城に着きました」
亜李さんのナレーションを聞いた舞踏会参加者の娘たち役のみなみさん、京子さん、桃香さん、秋奈さん、沙也加さん、そしてひなこさんはそれぞれ即興で踊り始めた。
もちろん、夏菜子さんとまちこさんも負けじとノリノリで踊っていた。
「お城の中にいる娘たちは、王子様に選ばれようとみんな一生懸命踊っていました。もちろん、その中にはシンデレラのお姉さんもいました」
その時、沙也加さんが亜李さんの元に踊りながら近づいてきた。
「あ、ねえ……。これお人形のドレスに巻いてもいい?」
左手にレースを持った沙也加さんは、亜李さんの目をじっと見つめていた。
「えっ?!それって……!あ、いいよ!ていうか今すぐ巻いて!ゆうちゃん絶対喜ぶから……!」
亜李さんはまた涙がこぼれそうだ。
演奏者役の智和さん、健二さん、涼介さん、大輔さん、そして康太さんは戸惑っていた。
「な、何をすれば……」
5人とも演台の前でカチコチに固まってしまった。あの時は自分がやりたい曲を1人ずつ適当に演奏していたのもあり、何を演奏したか誰も覚えていなかったからだ。
そのうえ、他のみんなも曲を思い出せなかったのだ。
「……シンデレラもお城の中に入りました。シンデレラの水色のドレスは、まるで本物の宝石のようにキラキラと輝いていました」
亜李さんは、なんとか平常心を装い、ナレーションを続けた。そして、壇上を降りて、マイクと台本を涼太さんに手渡した。
「え、金山さん?……あ、そういうことか。……みんな僕のために来てくれたのに、なんでだろう?この気持ち……」
王子様役の涼太さんが状況を理解したその時、夏美さんは何も言わずに突然テーブルへと走り出した。
「夏美?!どこ行くの?!」
夏菜子さんとまちこさんは、演技を忘れてつい大声で叫んでしまった。
午後9時20分
「太陽のように輝け若人よ〜♪強い心を持って♪生きていけ〜♪」
夏美さんは、卒業アルバムを開いていきなり大声で歌い始めた。その声は、マイクを通さなくても十分会場に響くほどだった。
「……?あ、もしかして!」
みうさん、遥さん、誠人さん、そして亜李さんは4人で顔を見合わせた。
「ねえ、夏美!一緒に歌いたいからアルバム見せて!」
夏菜子さん、まちこさん、真由美さん、そして沙也加さんは、大急ぎで夏美さんの元に駆け寄った。
だが、残る15人は夏美さんの意図がまだ分からずその場に立ち尽くしていたのだ。
「ああここは〜♪素晴らしき〜♪根ノ江南高校♪」
「宝石のように煌めけ若人よ〜♪清い心を持って♪生きていけ〜♪ああここは〜♪美しき〜♪根ノ江南高校♪」
夏美さんが校歌の1番を歌い終えると、みうさん、遥さん、誠人さん、亜李さん、夏菜子さん、まちこさん、真由美さん、そして沙也加さんは校歌の2番を一緒に歌い出したのだ。
「太陽と宝石を超えてけ若人よ〜♪強く清い心で♪生きていけ〜♪ああここは〜♪最高の〜♪根ノ江南高校♪」
ゆうちゃんを思いやる9人の歌声が、戸惑っていた15人を校歌の3番へと導いたのだ。
みんなが校歌を歌い終えたその時、みうさんはシンデレラの人形を涼太さんの前に差し出した。
「……!なんて美しいんだ!こんばんは、お姫様。あなたの名前は?」
涼太さんは、ゆうちゃんが1番会いたかった人であるかのように振る舞った。
「シンデレラです」
みうさんは、シンデレラの人形で口元を隠してそう応えた。
「王子様は、シンデレラの美しさに一目惚れしました」
亜李さんは、口元をほんの少しだけ緩ませた。すぐ近くにいた遥さんと誠人さんも、同じように口元を緩ませた。
「シンデレラ、僕と一緒に踊ってください」
涼太さんは、みうさんの右手ではなく、シンデレラの人形の小さな右手に向かって手を差し出した。
「……はい!」
みうさんは、シンデレラの人形で口元を隠したままそう応えた。
「涼太、曲流すからちょっと待って」
亜李さんは、ゆうちゃんが好きそうな曲を昨日ビッグサンで買ったCDの中から必死に探していた。
「あ、これがいいんじゃない?SUGAR STUDYのSUGAR STOP」
「これどうかな?BEAUTY STRAIGHTのたのしいだけでもいいですか?」
一緒にCDを探していた遥さんと誠人さんは、女性アイドルグループのCDを亜李さんに渡した。
「ありがとう!じゃあ、先に遥が選んでくれたのから流すね!」
♪〜STOP!お砂糖は今はダメ!
ぷよぷよになっちゃイヤイヤ!イヤだもん!
だから今は代わりに
お野菜食べなくちゃ♡
「……っ。みうは朱林みう、遥は白石遥……。そして、ウチはもうすぐ山吹亜李にこれからなるのに、ゆうちゃんは……」
亜李さんはまた涙を流してしまった。