の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月11日午後9時30分
ゆうちゃんのお母さんは、まだ家に帰らずにこにこランドのぬいぐるみコーナーにいた。
正確に言うと、まっすぐ家に帰ろうとはしていたものの、気が変わって、またおひさまモールまで車を走らせていたのだ。
「やっぱりみうちゃんがいないと、ゆうが寂しがるわよね」
ゆうちゃんのお母さんは、青い猫のぬいぐるみをゆっくりとカゴに入れ、そのままレジへと向かった。
「よかったわね、ゆう。大好きなみうちゃんと一緒で……」
ゆうちゃんのお母さんは、ピンクのうさぎのぬいぐるみの右手と青い猫のぬいぐるみの左手をそっとくっつけた。
「そういえば、ゆうのおやつは何がいいかしら……?」
ゆうちゃんのお母さんは、にこにこランドから1番近いエレベーターに乗った。
3階です。
エレベーターを降りたゆうちゃんのお母さんは、1つのメルヘンへと向かった。
「ここに確か……。あ!」
ゆうちゃんのお母さんは、スクイーズコーナーに辿り着いた。
1つのメルヘンのスクイーズは、ロールパンやクロワッサンなどのパン系だけでなく、キャラメルやマシュマロなどのお菓子系、イチゴやモモなどのフルーツ系もある。
「これなら……」
ゆうちゃんのお母さんは、大きなメロンパンのスクイーズと大きなチョコチップクッキーのスクイーズを手に取り、そのままレジへと向かった。
「ゆう。おやつ買っといたから、みうちゃんと半分こしなさいよ……」
一方その頃……
青山さんのお母さんはまだ洋館で泣き続けていた。
拝郷さんが何度背中を優しく撫でても、決して泣き止むことはなかったのだ。
「……息子さんを失って苦しいのは分かります。でも、今はお話を聞かせてください。大事なことだから……」
拝郷さんの声は、落ち着いたトーンではあるが、アイスやかき氷のような冷たさはどこにもなかった。
「それは……。あ、あああ……」
青山さんのお母さんは、まだ思うように話せなかった。
「……分かりました。紙とペンをお渡ししますので、息子さんのためにも何があったか詳しく教えていただけませんか?」
拝郷さんは、持っていた紙とペンを貸そうとした。
「大丈夫です……。あの……魔王は……!あ……あい……藍斗は……!あ……あああああああああああ!!!!」
青山さんのお母さんは、自分の言葉で藍斗の『秘密』を伝えようとした。だが、『秘密』が記された紙を拝郷さんに渡すのが精一杯だったのだ。
「落ち着いてくださいね、私はここにいますから。……あら?」
そこにはこう書かれていた。
桃色の頬のお姫様へ
この世で1番愛らしい
天使のようなお姫様
僕は君を守りたかった
王子様になりたかった
「何これ、気持ち悪い……」
拝郷さんは苦い顔をしていた。
「……そ、それだけじゃないんです……!」
青山さんのお母さんは、複数の藍斗の『秘密』を抱えてただただ嘆き続けていた。
午後9時35分
?「……っ!ゆうちゃん本当に可哀想……。みうちゃんショックで泣いているだろうな……」
?「本当それ……。藍斗だかライトだか知らないけど、あんな顔だけのクズ男に食べられちゃったなんて……っ!」
目を潤ませた2人の若い女性は、おひさまモールの1階のソファに座ってそれぞれのスマホの画面を見つめていた。
そこに映っていたのは、もちろん例のSNSだ。
?「藍斗は論外として、ゆうちゃんのことブスとか食いてえとか言う人たちも許せないよ……。う、うう……」
?「藍斗って呼ぶのやめよ……?クズ野郎だよ、あんなの……!」
2人ともハンカチではなく、スマホで涙を拭こうとしていた。