※この作品はR-18です。

の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】   作:桃色ぴんく

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第91話

7月11日午後10時

 

百乃さんと裕香さんは、閉店時間と同時におひさまモールを出た。

 

2人は根ノ江西高校出身で、最終学歴はゆうちゃんとみうさんと同じ松島短期大学だった。

 

「うう……ゆうちゃん……。もう会えないなんて嫌だよ……」

 

百乃さんは、両手で顔を押さえながら身体を小刻みに震わせていた。

 

「あのクズ野郎、本当に大嫌い……!考えただけでイライラする!」

 

裕香さんは、その辺にあった石を藍斗に見立てて力強く踏みつけた。

 

「裕香……私……辛い……。お姫様のお話とかゆうちゃんと一緒にゼミで読んだ思い出が忘れられないの……。みうちゃんと美由利ちゃん……大丈夫かな……?」

 

「百乃、あたしだって辛いよ!なんにもしてないゆうちゃんを殺して食べるなんて!あんなクズ、赤ずきんの狼以下だよ!絶対みうちゃんも美由利ちゃんもあのクズ殺したいって思ってるよ!」

 

学生時代は2人とも児童文学ゼミに所属していた。もちろん、同い年のゆうちゃんとみうさん、そして、美由利さんもそこにいたのだ。

 

28歳の百乃さんと、同じく28歳の裕香さんは、みうさんだけでなく、ゆうちゃんとみうさんと同じ28歳の美由利さんも心配していた。

 

「……っ!ゆうちゃん……会いたいよ……!」

 

百乃さんは、思わず裕香さんに抱きついてしまった。

 

「きゃっ!……でも分かるよ。あたしもゆうちゃんに会えないの嫌だもん……」

 

涙目の裕香さんは、百乃さんを抱き締め返してゆっくりと背中を撫でた。

 

「……でも、あたしたちはゆうちゃんの分まで生きなきゃいけないと思うんだ。とりあえず、なんか曲聞こうか……」

 

裕香さんは、百乃さんから離れてスマホを青いバッグから取り出した。

 

「そうだね……」

 

百乃さんはスマホを赤いバッグから取り出した。

 

「あれ?」

 

百乃さんはSNSの新着投稿通知に目を丸くさせた。

 

そこには、こう書かれていた。

 

 

こんばんは、RiKAです。

 

日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件の被害者となった桃松ゆうさんに対し、SNSでの誹謗中傷が目立ちます。

 

本当に悲しくて、代表作のメレンゲを歌うのも辛いです!

 

 

「ちょっと!これ見てよ!」

 

裕香さんも自分のスマホに届いたSNSの新着通知に反応した。

 

そこにはこう書かれていた。

 

 

こんばんは、ゆいにゃんです。

 

桃松ゆうさんの事件、本当に犯人が許せません!

 

早く捕まって欲しいです……。

 

桃松ゆうさん、天国でジョナゴールドを歌ってくれてるといいな……。

 

 

2人がそれぞれ推しているアーティストも全く同じ気持ちだったのだ。

 

さらに!

 

「ねえねえ!見て!」

 

 

こんばんは。Aです。

 

皆さんご存知かと思いますが、日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件により、桃松ゆうさんが28歳という若さで亡くなりました。

 

まだ未来のある若い女性の命が残酷な形で奪われてしまって、僕はとても悲しいです。

 

そこで、僕は桃松ゆうさんへの追悼曲をStar Movieに投稿しました。

 

桃松ゆうさんのご冥福をお祈りします。

 

 

裕香さんのスマホの画面には、午後10時に投稿されたAの投稿がリポストされていたのだ。

 

「Aも私と同じ気持ちだったんだ……!」

 

百乃さんは自分のスマホをぎゅっと抱き締めた。

 

一方その頃、同窓会の会場では……

 

「……こうして、シンデレラと王子様はいつまでも幸せに暮らしました。めでたしめでたし」

 

こうして、ゆうちゃんへの追悼劇は大成功に終わった。

 

左足用の銀色の靴を持った亜李さんは、ほんの少しだけ目を潤ませていた。

 

みうさんは、右足用の銀色の靴の中で眠るシンデレラの人形を人差し指で優しく撫でた。

 

その靴は、太陽製菓というお菓子メーカーの商品開発部で働く涼太さんの両手に包まれていた。

 

遥さんと誠人さんは、亜李さんの両隣でニコニコしながら拍手していた。

 

日の丸コンビニで働く真由美さんと、Twinkle Starで働く夏菜子さんとまちこさん、Beautiful flowerで働く沙也加さん、そしてレストランハッピーで働く夏美さんは、両手で顔を隠しながら泣きじゃくった。

 

おひさまスーパーで働く弘樹さん、麺屋 鳳で働く康太さん、そして、サニーランドにある太陽ラーメンで働く颯斗さんと純さんはピースしながら勢いよくジャンプした。

 

おひさま弁当で働く涼介さん、根ノ江郵便局で働く健二さん、そして、根ノ江宅急便で働く智和さんは、静かに拍手した。

 

くまさんのおうちで働く京子さん、桃香さん、秋奈さんは、即興のダンスをまた踊り始めた。

 

専業主婦の翔子さんとみなみさんは、天井をじっと見つめながら拍手した。

 

フルーツバスケットで働くひなこさんと大輔さんは、シンデレラと王子様のようにお互いに見つめ合ってそっとキスをした。

 

プルルルルルル

 

「はい、金山です。え?!もうそんな時間ですか?!すみません!すぐ行きます!延長お願いしといて本当にすみませんでした……!」

 

亜李さんは、カラオケ333の店員さんからの電話を切った。

 

「みんなー!そろそろカラオケするよー!集合!」

 

亜李さんの涙は、いつの間にか止まっていた。

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