の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
特に後半はかなり人を選ぶ描写が入りますので、心の準備をお願いします。
ただし、決してこの行為を肯定・助長しているわけではありませんのでご安心ください。
7月11日午後11時35分
「どうして……?どうして悪魔がここにいるの……?」
大粒の涙を浮かべたゆうちゃんのお母さんは、買ったものを全て床に落としてしまった。
目の前にいたのは、大きな角を生やした悪魔ではなく、心臓に大きな包丁が刺さった藍斗だった。
その包丁は、ゆうちゃんのお母さんが7月8日にりんごをゆうちゃんの大好きな形に切った時に使ったものだったのだ。
ゆうちゃんの可愛いピンクの天蓋ベッドが、藍斗のせいで鉄のような臭いが漂う真っ赤なベッドに変わってしまったのは言うまでもない。
「いやああああ……」
ゆうちゃんのお母さんは逃げ出そうにも、足がすくんで思うように動けなかった。
それどころか、足が勝手に藍斗の死体へ向かってしまうのだ。
藍斗の左手首には、本来のピンク色を『失った』真っ赤なリボンと2つの真っ赤なシュシュが巻き付けられていた。
さらに、枕元には、高濃度グリセリンに漬けられた『桃』と『宝石』が置かれていた。
「ゆう……。嘘でしょ……ねえ……!」
ゆうちゃんのお母さんは、高濃度グリセリンに漬けられた『桃』を手に取り、泣きながら抱き締めた。
午後11時45分
ゆうちゃんのお母さんは、高濃度グリセリンに漬けられた『桃』をおもちゃ箱の上に置いた。
そのピンクのおもちゃ箱は、ゆうちゃんが幼い頃から使っていたものだった。取っ手の中心に白いうさぎのシールが貼ってあったが、劣化したのか耳の部分が若干剥がれていた。
「どうしてこんな目に……」
高濃度グリセリンに漬けられた『宝石』も手に取ったゆうちゃんのお母さんは、赤く染まったティッシュの箱にゆっくりと手を伸ばした。
「ゆう……怖かったでしょ……」
ゆうちゃんのお母さんは、『宝石』を汚した粘っこい『ラテックス』をティッシュでゆっくりと拭き取った。そして、それもおもちゃ箱の上に置いた。
ゆうちゃんがあの日着ていたセーラーワンピは、ピンクを『失った』状態で藍斗の下敷きにされていたのだ。
ゆうちゃんのお母さんは、床に落としたものを全て抱え、タンスへと歩き出した。
「ゆう……。みうちゃんと一緒にここに隠れれば大丈夫よ……」
だが、ゆうちゃんのタンスはもぬけの殻だったのだ。
「……どういうこと?やだ、ゆうったら!久しぶりに幼稚園児ごっこでもしたのかしら?」
もはや涙も出なくなったゆうちゃんのお母さんは、おもちゃのマカロンがついたネックレスとドーナツ型の指輪と白いうさぎのぬいぐるみキーホルダーをタンスにそっとしまった。
「イタズラ返し成功。……って、幼稚園児ごっこしている場合じゃないわ!ゆうとみうちゃんを悪魔から守らないと……。あそこなら、ゆうのワンピースとかに隠れられるから安心ね」
ゆうちゃんのお母さんは、タンスの左隣にあるクローゼットを開けた。
「ゆう!またイタズラしてるの?!そんな悪い子にはもうお洋服買わないわよ!」
ゆうちゃんのクローゼットの中にあったのは、大量のシンプルなハンガーとピンクのリボン付きバッグだけだった。
「……待って。真っ暗なお部屋に入れたらゆうとみうちゃんが可哀想ね」
ゆうちゃんのお母さんは、大きなメロンパンのスクイーズと大きなチョコチップクッキーのスクイーズをゆうちゃんがあの日振り回していたバッグの中に入れた。
その後、白いうさぎのぬいぐるみキーホルダーをタンスの上にそっと置いた。
「ゆう、みうちゃん。おやつ用意したから、仲良く半分こするのよ」
右腕にピンクのリボン付きバッグの持ち手を引っ掛けたゆうちゃんのお母さんは、ピンクのうさぎのぬいぐるみと青い猫のぬいぐるみを大事に抱え、キッチンへと向かった。
7月12日午前0時
「なんだか過去のゆうにも会いたくなってきたわ」
キッチンから戻ったゆうちゃんのお母さんは、28年分のアルバムがしまってあった棚のカーテンを開けた。
「……!!!え?!アルバムがない……!もう!またゆうのイタズラ?……あら?」
だが、そこにあったのは、大きなスケッチブックと黒いスマホだけだったのだ。
「え……?これ……勇気のものじゃないわよね……?だって、ゆうが生まれる前に天使になったんだから……!まさか……!」
また涙がこぼれそうなゆうちゃんのお母さんは、震える手でスケッチブックを開いた。
そこには赤いペンでこう書かれていた。
桃松ゆうへ
ゆう、君に出会えて本当によかった。
ゆうは七夕の日に舞い降りた最高の織姫様であり、最高のお姫様だったよ。
ゆうを知ってから、僕はゆう以外ではもう心が満たされなくなったよ。
でも、ゆうがいたからこそ、幸せな最期を遂げられたんだよ。
ゆう、本当にありがとう。
それから……
可愛いお姫様を奪われた哀れな女王様へ
今、どんな気持ち?
きっと暗闇の中で1人悶えているだろうね!
そうだ。スケッチブックの隣にスマホがあるでしょ?
ロックを解除してごらん♪
あ、パスコードはお姫様が魔王の最高の食べ物にされた日と同じだよ♪
解除できたら、僕のSNSを見てごらん♪
桃味のお馬鹿なお姫様にはもう伝えたけど、そこを見れば僕の正体を知ることができるから♪
日ノ松藍斗より
「藍斗……悪魔の名前は藍斗なのね……!」
ゆうちゃんのお母さんは、スマホのロックを解除し、藍斗のSNSを開いた。
「え……!そんな……い、いやあああああああああああああ!!!」
残酷な真実に絶望したゆうちゃんのお母さんは、ゆうちゃんが生前眠っていたベッドに向かって走った。
「許さない……!!ゆうを食べただけじゃなく、私たちを弄んでいたなんて……!いいわ、分からせてあげる。ゆうがどれだけ痛い思いをしたか!」
ゆうちゃんのお母さんは、永遠の眠りについた藍斗の心臓から包丁を抜き取った。
そして、藍斗の両目、首元、お腹、太ももを何度も何度も刺し続けた。
壁や床がさらに真っ赤に染まろうが、藍斗の内臓が少しずつむき出しになろうが、そんなことはどうでもよかったのだ。
気づけば午前0時30分
「ゆう……お母さんもう疲れたわ……」
ゆうちゃんのお母さんは、包丁の先端を見つめて……