※この作品はR-18です。

エルフの国の怪僧はいかにして国を保ったか?   作:区星

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3話 

 手駒、というか駒というよりはプレイヤーとしての側面の強い後の『怪商』アダウィアル・レマーリアンを味方に……本当に味方か?信用していいのか?はある、別に人間性とかそういうわけではなく、単純に自分より優秀な人間は測れないと言うだけの話である。

 

 とはいえ今のレマーリアンは闇ブローカーらしく、表の仕事を欲しがっているようで、コネクションを使って聖星教で金儲けしていいぞ、と伝えると喜び勇んでごそごそしてるらしい。

 

「内務大臣か秘密警察のトップと対面したい……か、ううん。別に会いたいと言うなら公的な立場を作ればいくらでもどうとでもなる、秘書官にでも金を握らせれば優先的に会わせてもらえるはずだし」

 

 ……どうやって立場を作るか、は自分で考えて欲しそうだった。俺もわかんねぇよ!

 

 とはいえそう言われてみると、少し時間はかかるが一つやってみたいことがある。

 

「正攻法で行けば宗教家として名を挙げることが一番やりやすそうなんだよな、言語チートがあるから翻訳とかでも……そうか、翻訳か」

 

 キャメロット語の書籍を古典アールヴ語に翻訳する、この時代においてキャメロット以外の国ではキャメロットの著作権は通用しないはずだし、合法的にエルフィンドの文化レベルを上げられる。ということをぐだぐだとレマーリアンに相談すると。

 

「なるほどねぇ、まずは一冊翻訳してみたら?」

 

 こ、こいつ。と思ったが実際のところやってどれぐらいかかるか、と言うのはやったほうがいい。別にレマーリアンの邪魔になる行為ではないし。

 

 ひとまず手近にあった聖星教の教典を開いて読んでみる、いかに魔種族が異端である種族であるかがある程度の範囲にまたがって書かれており、げっそりする。とはいえ読んで行くと後世に意図的に付与された部分も大きそうで、実は核心的部分にはさほど魔種族を対象とした文言が少ない、と言うかあんまりないことに気がつく。

 

 はっきり言えば自分は聖星教に信仰なんてない、信じているように見せること自体が都合が良い。エルフは聖星教も認める清楚な種族だからこそ布教ができる、そう言われて来た……と身体の記憶はそう言っている。

 

 別に破門されようがあんまり困らないので魔種族への差別的な文言が記載されている部分はことごとく引っこ抜いておく、実はそこまでメインの主張に関係ない部分が多かった。そうすると無駄にコンパクトになって、わかりやすい教典になった。

 

 エルフィンドの白エルフにわかりやすくするための注釈を添えつつ、大量の説話、書簡を翻訳していく。

 

 ……この作業に半年近くかかった、思ったより教典の翻訳って時間かかるんだな……、いやこれでもめちゃくちゃ速いのは……まあはい、言語チートのおかげですね。

 

「……速くない?」

 

「どうせ破門されてもいいし、白エルフ向けに布教しやすいように小細工を弄したから思ったより掛かったな」

 

 これをどうするか……実際のところ、エルフィンドにおいて聖星教が布教出来る気はあまりしない。彼らは教義……すなわちエルフの伝統に囚われている。まあでも。

 

「ここをちゃんとした教会として使うならこれは作っておかないと行けないよなぁ」

 

「……もしかして、聖星教の布教が出来れば逆に秘密警察も耳目を集めるだろうし、内務大臣も興味を示すとか、考えてる?」

 

「少なくともエルフィンドで発言力を得るためには白エルフ達の支持が必要だ、であれば……今の立場で出来る最善手はこれだろう」

 

「キャメロットかぶれの出版社に打診してみるか?」

 

「よろしく頼む、ぶっちゃけそうしてくれないと伝手がない」

 

「わかった。上手くいったらご褒美おねがいね」

 

 出版はうまくいき、そこそこ売れた上、なぜか教会に人がそれなりに来るようになった。教義主義者へ反発している開明的な白エルフ達がキャメロット人の聖星教の教会だから変に教義省も介入してこないと踏んで集まっているらしい。なんだろうこれ、すごく実質的な寺社領とか大使館とか租界みたいな扱いされてない?まあ、聖星教をあんまり信じてないとはいえ、ミサに人が集まらないとなんか無駄なことをしているみたいでこう、来るものはあるし、ありがたいといえばありがたいんだが。

 

 ちなみにだが、この教典、ヴィルトシュヴァイン平和条約の後にオルクセンに持ち込まれた上、低地オルク語に翻訳されて出版され、信者の1人が後に聖星教プラスコ派と呼ばれる宗派を立ち上げ、魔種族にも聖星教の信仰を行う権利はあると主張し出すことになる。なんで?

 

 この間翻訳作業を続けながら、冬場には貧困者向け炊き出しや、白エルフの低所得者向けの夜間学校、昼間にはエルフの児童へ向けた読み書きの支援などを裏でビジネスに成功していたレマーリアンからの寄付金で行い、最初はキャメロット人への警戒で全く人が集まらなかったものの、徐々に人が集まるようになっていった。

 

 ……ぶっちゃけ、政権に食い込めるようになればここは信頼できる人物を雇って丸投げしたいところだが、今は自分でやる他ない。

 

 ……こうして1年が……普通に1年が溶けてしまった。

 

 ……ところで最近、なぜか監視されてるような気がするんだけど、気のせいかな?

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