そして、「付き合う」ことになった。たった一回の電話で決まったことだった。
電話越しに表情はみえないが、明るい声が聞こえてくる。それも一瞬のうちで、Tくんに1つのアプリを入れるようにと言われる。それはいわゆるカップルアプリというものだった。設定を済ませて登録終えるとTくんは満足したようで、「もう寝よう」と電話を切った。そこまでのことが淡々と行われた。まるで準備していたような、成功するとわかっていたような速さだった。
付き合ってからは毎日連絡をとり、夜には電話をした。その度にTくんからは「好きだよ」といわれ、「私も好きだよ」と返した。「好き」と言われると少し、居場所がある気がして安心した。
でも、それは長く続かなかった。一週間が経った頃だろうか。急いで話したいことがあるとライムがきた。コール音が聞こえて電話に出ると、いつもとあまり変わらないTくんの声が聞こえてくる。
Tくんは職業訓練校に通っていた。どうも、私には本当かわからないが、そこでは恋愛禁止のルールがあるらしい。しかし、内緒で彼女がいる人もいるとか。Tくんも内緒で付き合うつもりだったらしい。のだが、あろうことか連日の通話が見られたかもしれないのだそうだ。
今時そんなことがあるのかとは思った。だが、私には真実を確かめる術がない。Tくんのことを信じるほかなかった。Tくんは何度も「ごめん」と繰り返していた。こうして一週間という、ありえないほどの長さ短い交際期間は終わった。
・・・と思っていた。その数週間後、大丈夫そうだからまた付き合わないかと言われた。そして数日後にまた別れた。その数日後に・・・というように別れては付き合うを何回か繰り返した。
付き合っているのか別れているのか、もはやよくわからなかった。ただ、付き合っている間は少し心が満たされて別れるとまた寂しくなる。それを繰り返していた。
一方で、大学受験の日も近づいてくる。練習は順調に進み、本番でも満足のいく演奏ができた。受験が終わるか終わらないかというくらいの頃。10月あたり、Tくんも就職先が決まった。そのことを伝えてきたTくんは、嬉しそうだった。
そしてその後にTくんから出た言葉は、「もう大丈夫になったからまた付き合おう」だった。大学に行くことになったら忙しくなるのでそれまでになるだろう、大学に行ったら友達もたくさんできるだろうと思っていた。それくらいなら、寂しさを紛らわせるなら・・・いいかな。そう、心の奥の方で思ったのかもしれない。
私は、「いいよ」と言った。