※この作品はR-18です。

愛の形を知らない   作:未白音

11 / 14
それでも、私は『いいよ』と言った

そして、「付き合う」ことになった。たった一回の電話で決まったことだった。

 電話越しに表情はみえないが、明るい声が聞こえてくる。それも一瞬のうちで、Tくんに1つのアプリを入れるようにと言われる。それはいわゆるカップルアプリというものだった。設定を済ませて登録終えるとTくんは満足したようで、「もう寝よう」と電話を切った。そこまでのことが淡々と行われた。まるで準備していたような、成功するとわかっていたような速さだった。

 付き合ってからは毎日連絡をとり、夜には電話をした。その度にTくんからは「好きだよ」といわれ、「私も好きだよ」と返した。「好き」と言われると少し、居場所がある気がして安心した。

 でも、それは長く続かなかった。一週間が経った頃だろうか。急いで話したいことがあるとライムがきた。コール音が聞こえて電話に出ると、いつもとあまり変わらないTくんの声が聞こえてくる。

 Tくんは職業訓練校に通っていた。どうも、私には本当かわからないが、そこでは恋愛禁止のルールがあるらしい。しかし、内緒で彼女がいる人もいるとか。Tくんも内緒で付き合うつもりだったらしい。のだが、あろうことか連日の通話が見られたかもしれないのだそうだ。

 今時そんなことがあるのかとは思った。だが、私には真実を確かめる術がない。Tくんのことを信じるほかなかった。Tくんは何度も「ごめん」と繰り返していた。こうして一週間という、ありえないほどの長さ短い交際期間は終わった。

 ・・・と思っていた。その数週間後、大丈夫そうだからまた付き合わないかと言われた。そして数日後にまた別れた。その数日後に・・・というように別れては付き合うを何回か繰り返した。

 付き合っているのか別れているのか、もはやよくわからなかった。ただ、付き合っている間は少し心が満たされて別れるとまた寂しくなる。それを繰り返していた。

 一方で、大学受験の日も近づいてくる。練習は順調に進み、本番でも満足のいく演奏ができた。受験が終わるか終わらないかというくらいの頃。10月あたり、Tくんも就職先が決まった。そのことを伝えてきたTくんは、嬉しそうだった。

 そしてその後にTくんから出た言葉は、「もう大丈夫になったからまた付き合おう」だった。大学に行くことになったら忙しくなるのでそれまでになるだろう、大学に行ったら友達もたくさんできるだろうと思っていた。それくらいなら、寂しさを紛らわせるなら・・・いいかな。そう、心の奥の方で思ったのかもしれない。

 私は、「いいよ」と言った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。