※この作品はR-18です。

愛の形を知らない   作:未白音

14 / 14
隣にいるのに、ひとりだった

「どこに行きたいか」と聞かれても特に思いつかない。先ほどの行為もあったし、何があるか自体知りもしない。だから私は「どこでもいいよ」と言ったのだった。

 あーだこーだと呟きながら最終的に「じゃあゲーセンでもいくか」と言った。なんだかよくわからないが、やりたいゲームがあるのだとか。その時私は、『デートといえばクレーンゲームとかやるのかな』と思っていた。

 先に近くのファミレスで昼食をとってから目的地へ向かった。ゲームセンターは意外と近くにあった。中に入ると彼は何も言わずにそこに向かった。・・・スロットがたくさんあるコーナーだった。私の元父親がよくやっていたのを思い出す。当たったり外れたり、やったことはないしやろうとも思ったことがない。

 一通り見て回った後、一台のスロットの椅子に座るTくん。隣に座ってと言われそこに座った。隣はけたたましい音と共に回りだすスロット。することもなくぼーっと眺める。やったことのない私から見ても当たっていないのが分かった。うまくいかないことに嫌気がさしたようでTくんは文句ばかり口にしている。手元からは次々と消えていくお金。しばらくすると、財布の小銭がなくなったらしい。スロットに目を向けたまま無表情で札を渡され「両替してきて」と言われた。

 突き返して帰ることもできたはずだ。でも私はその通りにした。来たことのない場所で、目の悪い私には両替機を見つけるのが大変だった。でも、もうどうでも良かった。そもそも感情がなくなったかのように何も感じなかった。・・・きっとこの時にはすでに私の中の何かは壊れていたんだ。

 なんとか両替をし終わってTくんのところへと戻る。彼は私に感謝を伝えるどころか目も向けずに受け取ると、また再開した。

 しばらくそのまま時間だけが過ぎた。私は暇なので適当にスマホをいじる。その間も私には目もくれず会話もないままTくんはスロット台に向かい合っていた。聞こえたのはゲームセンターのけたたましく鳴り響く音音と彼のスロットに対する文句だけだった。

 どのくらい経っただろうか。そこまで時間はたっていないはずなのにすごく長い時間に感じた。Tくんが私を見た。お金が尽きたのか飽きたのか。わからないがあの後も何回も両替に行かされた。

 彼の手元には何も残っていない。よくない結果に終わったのは一目瞭然だった。最終的にいくら使ったのかはわからないが、あのお金たちは機械に吸い込まれていったのだろう。Tくんはため息をついた後、「出よう」と言った。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。