※この作品はR-18です。

愛の形を知らない   作:未白音

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触れてはいけない距離

私はパニックになりながらも咄嗟に口を手で覆った。瞬間的にファーストキスをここで奪われたくない、そう思った。彼は、「ごめん」とだけ言って私から離れた。なおもパニックに陥っていた私は、一度冷静になるために「ちょっと頭を冷やしてくる」とだけ言って廊下に出た。

 廊下の隅の方に行き、私は少し気を落ち着かせた。私は彼が怖かった。いきなり押し倒されたその行動、そして何より彼の目が。そこにいつもの光はなく、まるで獣のように荒々しい光を宿した目がそこにあった。

 カラオケという場所ということもあり、私の頭の中はぐちゃぐちゃ。カバンを持って部屋から出てきたので、彼に内緒で帰るという選択肢が頭をよぎる。

 疑似恋愛を始めたのは私だ。だから、私にも責任がある。そもそも、疑似恋愛ってどこまで?彼は私に付き合ってくれているだけなのだから、ここで帰るのは・・・。葛藤と混乱。正常な判断ができなくなっていた。

 最初のきっかけが私であるという責任感と、「そういうこと」に対するちょっとした興味。それが私を動かした。私は部屋に戻った。

 部屋に戻ると予想と裏腹に、彼はいつもと同じ表情で歌っていた。私が部屋に入ったのを見た彼は、「戻ってくるとは思わなかった。ありがとう。」と言った。何に対する「ありがとう」なのかわからなかったが、彼の隣に座った。

 何か歌う?と言われ、曲を入れて歌い始める。彼も歌う。ふと、彼が歌いながら私の手に手を重ねてきた。自然と私は、手を繋いでいた。

 そこから先は記憶が曖昧で、あまり覚えていない。覚えているのは、抱きしめられて胸を触られて、感じていないのに感じているふりをして。そして・・・彼のを咥えて飲まされて、最後にキスをしたこと。

 料金を割り勘にして外に出た。M先輩がいないからなのか、あっさり割り勘になった。待ち合わせたのが午後だったからか、外に出ると日が落ちてきていた。

 その後、Tくんが見たいものがあるというので何軒かの店を周り、ご飯を食べて、気づくと家に帰ってきていた。私はなんだか、現実なのかわからないというように放心していた。お母さんが「どうだった?楽しかった?」と聞いてきたが、言えるわけがない。何も言わない私に「何かあったの?」と言われて「何もなかったよ。楽しかった。」と返すので精一杯だった。

 ベッドに入り、一人になって考える。・・・なんだったんだろう。TくんはM先輩が好きなんじゃないの?なんで?頭の中がぐるぐるして、自分さえわからなくなる。

 そして、気づいたら眠りに落ちていた。

 

 

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