※この作品はR-18です。

愛の形を知らない   作:未白音

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回されかけた鍵

日曜日の夜に帰っても、学校に行っても・・・Tくんは以前と変わらない。あの日のことが何もなかったかのように、話しかけてきて、笑う。

 私は彼の考えていることがわからなかった。そして、曖昧な状態で疑似恋愛をするのは良くない、そう思った。

 私は、始めた時と同じようにライムで疑似恋愛を終わらせた。

 Tくんはあっさり、「わかった」としか言わなかった。やっぱりあの日のことは忘れているんだ、どうとも思っていなかったんだ。そう思った。その後もなんら変わらない。変わったのは、ライムが静かになったことくらい。

 気づくと暑さは消えていて、寒い冬がやってきていた。何も変わりのなかったTくんが突如として変わったのもこの時だった。

 私が通っていた支援学校は昔、音楽科があったらしい。音楽室には使われていないものの、まだ綺麗な楽器がたくさんある。今は物置と化しているが、練習室もいくつか残っていた。

 私はその練習室の一室を借りてファゴットの練習をしていた。しかし、決まりが厳しい。放課後の何時までに学校を出なさいというのが普通校より早いため、あまり練習時間が取れない。少しでも確保するために、朝早くに学校へ行き、鍵をもらって楽器の準備と音出しをする。終わった後は鍵を閉めて教室の定位置にかける決まりだった。いつからだろうか。いつもそこまで早く登校しないTくんが私の音出し中に顔を出してくるようになった。「こんな早くからすごいね」「頑張って」そんな他愛もない挨拶。

 でも、その回数は確実に増えていく。朝だけだったはずなのに、放課後にまで顔を出すようになった。そして、ある日のこと・・・。

 その日も私は朝早くから学校へ行き、ファゴットの準備をして音出しをしていた。ふと、ドアの開く音がして、振り返るとTくんだった。「おはよう」と挨拶をして、今日も頑張ろうと言い合う。何げなく、その言葉はTくんから発せられた。

「ここなら閉じ込められるね。おれが鍵を閉めて出て行ったら出れないでしょ?そしたら独り占めできる。それで放課後になったら、おれのためにファゴットを吹いて、それから・・・」

 目つきが変わった彼の手には、そばに置いていた「カギ」があった。私は慌てて「返して」と言ったのだが、手を伸ばしてもTくんは避ける。しばらくそんなことをしていると、チャイムが鳴った。

 Tくんは「冗談だって」と笑ったが、私は「監禁」しようとしたのではないかと怯えた。

 そしてまた何事もなかったように・・・とはならなかったんだ。

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