ちょうどその頃だっただろうか・・・私の心が壊れそうになったのは。
元々両親の仲が悪く、私も私で父親が嫌いだった。否、父親も私が嫌いだった。そして、両親の仲がさらに悪くなったのがこの時期。家に帰ると、離婚だ離婚だと毎度のように言い合っていた。正直、離婚しても別にいいし、父親と離れられるのならその方が嬉しい。
しかし、離婚すると決まると私の居場所はなくなった。
「お前は母親のところに行くのか。俺を見捨てるんだな。」
「いつ出てくんだ?邪魔だからさっさと出てけ」
「物は何も置いてくなよ。邪魔だからな。それから、離婚した後は俺の家族とは絶縁しろ」
色々なことを言われた。お母さんの涙だって、何度見ただろう。何か言われるたび、お母さんの涙を見るたび、胸が締め付けられた。
一番心の休まる場所だったはずの家が無くなった。家に帰るのが怖くなった。誰よりも頼りにしていたお母さんの背中がすごく小さく見えて、頼りづらくなった。
・・・私の居場所はなかった。
そんな時、手を差し伸べてくれたのがTくんだった。
「なんかあった?
「話聞くよ?」
その言葉が嬉しかった。もちろん、全て話すことはできない。でも、気を遣わなくていい。話を聞いてくれる人がそこにいて。私の居場所が、そこに唯一ある気がした。
そして月日は過ぎていった。冬休みが終わり、寒さはより強まる一方だった。そんな中、私の心にも変化が生まれていた。
そう、Tくんが好きになっていた。否、今思えば本当に好きではなかったのかもしれない。Tくんは、他人について語って病みを打ち明けてくることが多かった。
私はそれを、他人に対する思いやりだといいように変換して、好きの理由にした。Tくんの卒業が近づいてくる。私はそれが怖かった。Tくんと学校で会えなくなる。もう、会わないのかもしれない。『私の居場所がなくなる』『ひとりぼっちになる』
ある種の錯覚のようなものだった。でも私には、Tくんしか見えていなかった。
とある日の夜、私は大事な話があると言って食堂にTくんを呼び出した。・・・緊張しながらも私は、Tくんに告白をした。Tくんは、緊張してうまく言葉が出ない私を見て笑っていた。
・・・私がこれから口にすることがわかっているみたいだった。「言わないなら帰るけど?」と笑いながら彼は言った。そして、ようやく言葉を発した私に「Mちゃんが好きだから、ごめん。用事あるから」とだけ言って去っていった。
一人になった私は、しばらく虚空を見ていた。