帝都の朝は、いつだって嘘みたいに白い。
机上に積み上げられた報告書の山は、昨夜のうちに片付けたはずなのに、朝日を浴びて再び白く発光しているように見えた。いや、白く輝くほど清潔な代物じゃない。血と涙と脂で固められた、この国の膿そのものだ。
俺はため息を吐き、羽ペンを置いた。窓の外からは、帝都の喧騒が薄く流れ込んでくる。城の奥にあるこの部屋は、皇族の執務室というより、問題児を押し込める物置に近い。壁には帝国全土の地図。赤いピンは暴動の兆し、黒いピンは粛清予定地、青いピンは俺が胃薬を飲んだ場所だ。数えるのはやめた。
俺は、この国の第一皇子だ。もっと正確に言えば、現皇帝の兄でありながら、表向きは存在を薄められた便利な置物。幼い弟は玉座に座る。皇族らしい教育は受けた。剣も礼法も毒の見分け方も笑顔で相手を刺す会話術も。だが一番役に立ったのは、俺に与えられた帝具だった。百通りの行動を頭の中で転がし、一つだけを現実に固定する。聞こえはいい。実際、死ぬほど便利だ。便利すぎて、毎朝この世の終わりみたいな未来を九十九個ほど見る羽目になる。だからこそ、最善と思われる選択肢を選ぶしかないのだ。
そしてそのおかげなのかわからないが――この国を最悪な方向へと導こうとした大臣を止められたりした。さらには数多くの悲劇を食い止められたとも思う。(これは自惚れかもしれない)
だがそれでもなお、目の前の現実は変わらないわけで――—今日もまた厄介者がやってきたようだった。
扉の隙間から冷気が入り込む。春とはいえまだ肌寒い季節だということだろうか?それにしては妙だと思うほど冷たい風だったのである……
そのときだった。
「おいっ!」
突然響いてきた甲高い声によって我に返ると同時にハッと意識を取り戻したものの既に遅かったようでいつの間にやら目の前には一人の少女が立っていてこちらを見下ろしていたのであった……一体どこから入ってきたのか分からないし第一こんなところまでどうやって来たのかも疑問だし色々気になることは多すぎるけれどとりあえず今はそれどころじゃないと思い至るとすぐさま立ち上がり距離を取ろうとするのだけど遅かったようでそのまま肩を掴まれてしまう始末になってしまった。
よく見知った顔がそこにあった。
腰まで届くような黒髪に紅玉のような赤い瞳を持つ美しい少女だった。身につけている衣服は黒と深紅を基調にしたもので一見すると喪服にも見えなくもないデザインとなっていたもののそこは流石と言えようと言うべきか何処となく動きやすそうなのも確かであった。加えて胸元には控え目に刻印されていたであろう紋章があったためにやはり間違いなく皇族関係者なのだということも分かった次第であるもののそれを差し引いてもなお美しさの方が勝っていたといえるくらいには整っている容姿をしていて思わず見惚れてしまう程であるのだと言ってもいいかもしれなかったぐらいだったのだ。
しかし今はそんなことを気にしている場合では無いこともまた事実なのだったために慌てて気持ちを切り替えることにしながら早速話しかけるべく声をかけることに決めたところでちょうど良くタイミングを見計らっていたかのように向こうの方から話し掛けてくれたことでホッと胸を撫で下ろすことになったわけなのであった……
まず最初に口火を切ったのは彼女の方だった。
「随分と余裕そうだな?」
挑発的な物言いに対してムッとなりつつも努めて冷静に対応するように心掛けながら質問形式で返していくことに決める。
「どういう意味かな?」
そう問い返すなりしばらく黙り込んだ後に再び喋り出していった内容というのは次のようになっていた。
「最近になってお前に対する評価が上がってきているらしいけど本当か?」
唐突すぎる言葉に戸惑ってしまうもののここで下手に取り乱したりしたら相手の思う壺になってしまう可能性が高いと考えた結果落ち着いて答えることにするしかないので覚悟を決めていくことにした。
「確かに少しばかり注目されるようになった部分はあるけれどそれはあくまで一部であって大多数の人達にとってはまだまだ認知されていないというのが現状だから特に大きな変化なんてものは感じられないよ」
なるべく平静を保ちつつ真摯な態度を見せ続ける努力を怠らないようにすることでなんとかやり過ごせていくことができたと思うので安心したのも束の間のことだった。
「……で、こいつが十三人目か」
羊皮紙の束を指先で弾くと、乾いた音が執務室に響いた。家臣どもが血眼になって探してきた花嫁候補のリストだ。どれもこれも、名家の娘か辺境の姫か。どの顔も似たり寄ったりで、背後にある利権と打算が透けて見える。
俺はため息を吐き、その束を机の隅に放り投げた。
「肉、まだあるか?」
隣から低い声が届く。振り返れば、長い黒髪を揺らしてアカメが骨付き肉にかぶりついていた。黒と赤の戦闘服は光を吸い込み、その白い肌だけが浮かび上がる。口元には肉汁が滲み、赤い瞳は皿の上の獲物を見据えている。
「厨房に言えば持ってくるだろ。……お前、また護衛名目でサボってないか?」
「サボってない。お前の部屋が一番安全だからここにいる」
論理としては破綻しているが、アカメの剣腕を考えれば否定はできない。彼女がここにいる時点で、暗殺者など近づけもしないのだから。
「それに……」
アカメは骨を皿に置き、指についた脂を舐め取った。その舌の動きに、妙に喉が鳴る。
「あの紙の束、嫌な匂いがする。お前が困ってるなら斬るが」
「斬るな。公務で殺されるわけにはいかないんだよ」
俺は苦笑し、再び報告書へ向き直った。筆を走らせる。地方官の不正、革命軍の動向、危険種の出現報告。帝具の力で最悪の事態は避けてきたが、それでも事後処理は山積みだ。
だが、思考の半分は隣の少女に向いていた。
アカメは再び肉にかぶりつき始めた。咀嚼するたびに頬がわずかに動く。無防備そのものだ。戦場では死神と恐れられる暗殺者が、俺の執務室でだけはただの食欲旺盛な少女に見える。
ふと、彼女の太股に目が留まる。短いスカートから伸びる脚は引き締まっており、鋼のような筋肉の線が走っている。それでいて、肉の柔らかさも孕んでいるようで――。
(……いかん)
最近、こいつを見る目が変わってきた。
帝具の代償か、悲劇を回避する過程で関わった女たちがやけに俺に執着するようになったせいか。花嫁候補たちからの媚びた視線には辟易するのに、この無関心な赤い瞳には抗えない。
「……おい、アカメ」
「ん?」
肉を口にしたまま、彼女が顔を上げる。
「……いや、なんでもない」
筆を握る手が止まらない。思考とは裏腹に、文字は規則正しく並んでいく。仕事は進んでいる。だが、身体の奥で燻ぶる熱は消えない。
一時間ほど経っただろうか。最後の報告書に署名し、砂を振りかけたところで、俺は大きく息を吐き出した。
「終わった……」
「そうか」
アカメは最後の肉片を飲み込み、満足げに小さく息を吐いた。
部屋には夕暮れの赤が差し込み、彼女の黒髪を紅蓮に染めている。その横顔を見ていると、理性の箍が外れそうになる。
立ち上がり、彼女の背後に歩み寄る。アカメは振り返らない。ただ、背中が少し強張った気がした。
「……アカメ」
「なんだ」
「少しだけ、いいか」
俺は手を伸ばし、彼女の肩に触れた。引き締まった筋肉の感触。微かな体温。
拒絶はなかった。
そのことが、俺の中で何かを決定的にした。
肩から首筋へと指を滑らせる。戦闘服の襟元から覗く鎖骨のラインに爪を立てるように撫でると、アカメの肩が小さく震えた。
「……何をする」
「わからないか?」
耳元で囁くと、彼女の赤い瞳がこちらを向いた。そこには拒絶も嫌悪もなく、ただ静かな洞察があった。俺が何を求めているのか彼女には最初から分かっていたのだろう。
俺の手は彼女の胸元へと伸びた。黒い布地の上から、その膨らみを掴み取る。
「っ……!」
アカメが短く息を呑む。決して大きくはないが、手に余るほどの重みと弾力が掌に伝わった。指に力を込め、形を変えるように揉みしだく。
「んぅ……」
漏れ出る吐息。戦場では決して聞くことのできない声だ。その事実が俺を興奮させた。
服の隙間から手を差し入れ、下着の上から直接触れる。すでに布地は湿り気を帯びていたか? いや、気のせいではない。
「お前は……いつもこうだな」
「何がだ」
アカメの声が掠れる。
「俺がどんなに悩んでいても、お前だけは何も言わない。ただそこにいる。……それが救いなのか、毒なのか」
「分からない。……だが、お前が必要とするなら」
彼女は俺の手の上に自分の手を重ねた。拒絶ではない。肯定だ。
俺は彼女の体を回し、唇を重ねた。肉と鉄の味がした。貪るように舌を絡めると、彼女もそれに応える。拙いながらも懸命に舌を動かす姿に、理性が焼き切れた。
服を乱暴にまくり上げる。白い肌が露わになり、黒い下着が浮き彫りになる。太股の付け根に手を這わせ、下着ごと引き下ろした。
「あ……」
秘所が露わになる。薄い茂みの奥から、赤く充血した花唇が湿り気を帯びてひくついている。
俺は指を二本差し入れ、内壁を掻き回した。
「くっ、うぅ……!」
アカメが机に手をつき、体を支える。指の出し入れに合わせて、粘着質な水音が響く。彼女の膝が震え始め、内腿から愛液が滴り落ちた。
「感じるか?」
「……あぁ……っ」
短い肯定。
十分すぎるほど潤ったことを確認し、俺はズボンの紐を解き、屹立した己を露出させた。先端を割れ目に押し当て、一気に腰を進める。
「んぐぅぅっ!!」
肉壁が押し広げられ、狭い通路をこじ開ける快感が脳髄を痺れさせる。アカメの中は驚くほど熱いし、きつい。剣を握る手とは別の生き物のように、俺を締め付けて離さない。
「っ、きつい……」
「……動くな……まだ……」
彼女の息遣いが荒い。馴染むまで待つ余裕など俺にはなかったが、彼女の痛みを和らげるように、浅く抜き差しを繰り返す。
やがて彼女の呼吸が整い始めると同時に、俺は本格的なピストン運動を開始した。
「あっ! あぁっ! くっ……!」
肉と肉がぶつかる音が部屋中に響き渡る。アカメの体が机に押し付けられ、報告書やインク瓶が揺れる。彼女の黒髪が乱れ、白い背中が反り返る。
激しく突き上げるたびに、彼女の中が収縮し、俺のモノを搾り取ろうとするようだ。
「アカメ……っ!」
「あぁっ……! 私は……ここにいる……っ!」
彼女の声が耳元で弾ける。俺は彼女の腰を掴み、さらに深く突き入れた。子宮口を叩くほど奥へと達し、胎内を犯し尽くす。
「イくっ……!」
「っ……!!」
アカメの体がビクビクと痙攣し、内壁が猛烈な勢いで俺を締め上げた。限界だった。俺は彼女の最奥に欲望を迸らせた。
ドクドクと脈打つ感覚。互いの荒い息遣いだけが残る。
しばらくそのままで繋がったまま時を過ごした後、俺はゆっくりと体を離した。混ざり合った体液が糸を引き、太股を伝って垂れ落ちる。
アカメは机に突っ伏したまま、荒い息を整えている。その横顔には、普段の無表情とは違う、どこか蕩けたような色が滲んでいた。
「……大丈夫か?」
尋ねると、彼女はゆっくりと体を起こし、乱れた服を直しながら短く答えた。
「……問題ない」