執務室の窓を閉めた。
風が強いからではない。
嫌な予感がしたからだ。
こういう時の勘は、だいたい当たる。百通りの未来を見るまでもなく、廊下の空気がいつもより軽い。誰かが息を殺している気配ではない。もっと悪い。こちらの反応を待っている気配だ。
「……帰れ」
まだ姿も見ていない相手に向けて言うと、扉の向こうで小さな笑い声がした。
「ひどいなぁ、皇子様。まだ何もしてないのに」
「何もしていない奴は、そんな声で扉の前に立たない」
「じゃあ、してから入ろうかな」
「入るな」
返事の代わりに扉が開いた。
メズが立っていた。
いつもの軽い笑み。
だが、身にまとっているものが違う。薄布を重ねた踊り子の衣装。腕や腰に飾り紐が揺れ、歩くたびに小さな金具が鳴る。派手なのに、動きを邪魔しない。戦うためではない。見せるための服だ。
そして、たぶん、困らせるための服でもある。
「どう?」
メズはその場でくるりと回った。
布がふわりと広がり、香の匂いが部屋に入ってくる。甘い。甘すぎる。薬草と花蜜を混ぜたような匂いで、油断すると呼吸の奥に残る。
俺は書類へ視線を落とした。
「視線を逸らすの、早くない?」
「早くない。むしろ遅かった」
「似合ってない?」
「似合っているから厄介なんだ」
メズの足音が近づく。
机の向こうで止まるかと思ったが、止まらない。横へ回り込み、椅子の背に指をかける。逃げ道を塞ぐような動きではない。逃げたくなる場所を、先に見に来る動きだ。
「今日はね、見せに来ただけ」
「君の“だけ”は信用できない」
「踊るとは言ってないよ?」
「踊らないとも言っていない」
「ふふ、分かってきたね」
分かりたくなかった。
百通りの未来を開く。
十六通りで、俺は逃げる。二十八通りで、メズは笑って追ってくる。三十一通りで、廊下に誰かが通りかかり、誤解が増える。残りは、俺がこの場で胃薬を探していた。
最悪だ。
どの未来でも、メズだけが少し楽しそうだった。
「その服は、何のためだ」
「見てほしかったから」
「誰に」
「皇子様に」
即答だった。
嘘か本当か分からない。
だが、こちらが迷う顔をした瞬間、メズの目が細くなる。火打石を指先で転がすような、危ない楽しみ方だ。
「……俺を困らせたいのか」
「うん」
「そこは否定しろ」
「でも、困ってる顔、好きだよ」
声は軽い。
けれど、最後の一音だけ妙に近かった。
俺は椅子から立ち上がる。距離を取るためではない。座ったままだと、完全に主導権を渡す気がしたからだ。
「メズ」
「なあに?」
「見せるだけなら、もう見た」
「じゃあ、感想は?」
「危険だ」
「衣装が?」
「君が」
メズは一瞬だけ目を丸くした。
すぐに笑う。だが、その笑みはいつもより少しだけ薄かった。
「それ、褒めてる?」
「警告だ」
「止めてくれるの?」
「必要なら」
小さな金具が、ちり、と鳴った。
メズは一歩下がる。珍しく、こちらの線を越えなかった。
「じゃあ今日は、ここまでにしてあげる」
「恩着せがましいな」
「次は踊ってあげる」
「次を作るな」
「それは無理かな」
扉へ向かう背中を見ながら、俺は深く息を吐いた。
香の匂いだけが、まだ部屋に残っている。
爆発物が、今日は火花だけ置いて帰った。
それでも十分、胃には悪い。
メズが調子に乗っている。
「ねえ、皇子様ってば」
机の上に腰掛けたメズが、俺の顔を覗き込むようにして笑った。踊り子の衣装のまま、細い足をぶらぶらと揺らしている。
「さっきから目、書類ばっかりじゃん。つまんないなあ」
「仕事だからな」
「でもさあ、あたしがわざわざ来てるんだよ?」
メズは机から飛び降りると、俺の膝の間にしゃがみ込んだ。金髪のツインテールが揺れ、馬蹄形の髪飾りがちりんと鳴る。
「ちょっとくらい、あたしのこと見てくれてもいいんじゃない?」
「見てるだろう」
「書類越しじゃなくて、ちゃんと」
彼女の手が、俺の膝に置かれる。褐色の指先が、ゆっくりと太腿を這い上がってきた。
「メズ」
「なあに?」
「何をする気だ」
「さあ?」
とぼけた声で言いながら、彼女の手は止まらない。ベルトの金具に指がかかり、慣れた手つきで外されていく。
「ちょっと待て」
「待たないよ」
「まだ何も言ってない」
「でも、言いたいことは分かるから」
彼女は笑いながら、ズボンの前を寛げた。下着の上からでも分かるほど、俺のモノは硬くなり始めている。
「あは、正直だね」
「生理現象だ」
「そういうことにしといてあげる」
メズは下着をずらし、俺の肉棒を露わにした。冷たい空気に触れて、先端がひくつく。
「わあ……」
彼女は目を輝かせて、まじまじと見つめた。その視線だけで、さらに硬さを増していくのが自分でも分かる。
「すごいね、皇子様の。こんなに大きくなるんだ」
「感想を述べるな」
「だって、見てたら楽しくなってきちゃったんだもん」
彼女は顔を近づけ、先端にそっと唇を触れた。
ちゅ。
軽いキス。それだけで、腰が震える。
「ん……しょっぱい」
メズは舌で唇を舐めながら、上目遣いで俺を見上げた。緑色の瞳が、獲物を見つけた猫のように細められる。
「もっと味見していい?」
「断ってもやるんだろう」
「正解」
彼女は再び顔を近づけ、今度は深く咥え込んだ。
ぬるりとした口腔が、亀頭を包み込む。舌が裏筋を這い、歯を立てずに全体を覆っていく。
「んぐっ……」
彼女は喉の奥まで咥え込むと、そのまま顔を前後に動かし始めた。
じゅるっ……じゅぽっ……ちゅぱっ……
唾液と先走りが混ざり合い、厭らしい水音が執務室に響く。彼女のツインテールが揺れるたびに、馬蹄形の髪飾りがちりんちりんと鳴った。
「はむっ……んちゅっ……れろぉ……」
メズは口を離さずに笑ったような気配がした。そして、さらに深く咥え込もうと顔を押し付けてくる。
喉の奥が亀頭を締め付け、舌が竿全体を這い回る。
「くっ……メズ……!」
俺が思わず腰を浮かせると、彼女はさらに激しく顔を動かした。
じゅぼっ!じゅぼっ!じゅぼっ!
「んぐっ……んぐっ……んぐっ……!」
苦しそうな吐息が漏れるが、彼女は決して顔を離さない。むしろ苦しさを楽しむかのように、さらに強く吸引してくる。
「イきそうだ……!」
俺がそう告げると、メズは一瞬息を詰まらせた。そして次の瞬間、さらに奥まで咥え込み、喉の奥で亀頭を締め付けた。
「んんんっ!!」
どくっ、どくどくっ!
彼女の喉の奥に、熱い精液が迸る。メズは一瞬息を詰まらせたが、すぐに喉を鳴らしてそれを飲み込んだ。
ごくん、ごくんと嚥下する音が聞こえる。
長い射精が終わると、彼女はようやく口を離した。唾液と精液が混ざった糸が、彼女の唇と俺の先端を繋いでいる。
「ぷはっ……」
メズは荒い息をつきながら、口元を手の甲で拭った。そして、にやりと笑う。
「皇子様の味、結構好きかも」
俺はまだ荒い息を整えられずにいた。メズが口元を拭い、立ち上がる。その動きに合わせて、踊り子の衣装がふわりと揺れた。
「ねえ、皇子様」
「……なんだ」
「まだ足りない」
メズは机の上にあった書類を、無造作に床へと払い落とした。羊皮紙が舞い散る。抗議する間もなく、彼女は俺の首に腕を回し、そのまま唇を重ねてきた。
「んむっ……」
甘い香が鼻をくすぐる。彼女の舌が歯列を割り、俺の舌を絡め取った。ちゅるっ、ちゅぷっ。唾液が混ざり合い、卑猥な水音が密室に響く。メズの口の中には、まだ俺自身の味が残っていた。
「んはぁ……ちゅっ……れろぉ……」
彼女は夢中になって舌を這わせる。俺の上唇を舐め、歯莖をなぞり、舌の裏側にまで執拗に絡みつく。褐色の指が俺の髪を掻き乱し、馬蹄形の髪飾りがちりんちりんと耳元で鳴った。
「はぁ……メズ……」
「ん……もっと……」
ようやく唇が離れた時には、互いの唾液で口元が濡れそぼっていた。メズは荒い息をつきながら、緑の瞳を潤ませて俺を見つめる。
「ベッド、行こ?」
彼女は俺の手を引いた。拒否権は最初からない。俺は彼女に導かれるまま、執務室の奥にある簡易ベッドへと向かう。
ベッドに腰掛けた俺の前に、メズは立ったまま衣装の紐を解き始めた。薄布がはらりと落ち、褐色の肌が露わになる。小さな胸の先端は、すでに硬く尖っていた。
「綺麗でしょ?」
「……ああ」
「素直でよろしい」
メズは笑いながら、俺の胸を押してベッドに倒した。そして自ら俺の腰を跨ぎ、再び唇を重ねてくる。
「んちゅっ……ちゅぱっ……」
舌を絡め合いながら、彼女の手が器用に俺の服を脱がせていく。上着が床に落ち、シャツのボタンが外される。互いの肌が触れ合い、汗ばんだ熱が伝わった。
「はぁ……はぁ……挿れるよ……?」
メズは腰を浮かせると、自らの秘所を俺の肉棒に押し当てた。ぐちゅり。すでに溢れ出した愛液で、そこはぐっしょりと濡れている。
「あっ……!」
彼女はゆっくりと腰を落としていく。亀頭が肉壁を割り開き、熱く狹い膣内に飲み込まれていく感覚が、じわじわと伝わってきた。
「くっ……!」
「ああっ……! 入ってる……! 皇子様のが……あたしの中に……!」
メズは歓喜に震える声で叫び、そのまま一気に腰を沈めた。
ずぶりっ!!
根本まで咥え込まれた肉棒に、彼女の内壁がぎゅうっと吸い付く。きつい。熱い。そして何より、彼女の内部が嬉しそうに蠕動しているのが分かる。
「動くね……! 動いちゃうからね……!」
メズは腰を振り始めた。上下に、前後に、時には円を描くように。彼女の汗が飛び散り、結合部からはぐちゅぐちゅと厭らしい水音が響く。
「あっ! あっ! あっ! いい! これすごくいい!」
「メズ……! 激しすぎる……!」
「だって気持ちいいんだもん! 皇子様も気持ちいいでしょ!?」
彼女は笑いながら、さらに腰の動きを加速させた。
ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ!
肉と肉がぶつかる音が部屋中に響き渡る。彼女のツインテールが乱れ、馬蹄形の髪飾りが今にも落ちそうに揺れた。
「奥! 奥に当たってる! あたしの一番気持ちいいとこ!」
メズは自分の子宮口に亀頭を押し付けるように、深く深く腰を沈める。その度に彼女の内部が歓喜に震え、さらに強く締め付けてきた。
「皇子様! 皇子様ってば!」
彼女は俺の上に覆い被さり、再び唇を重ねてきた。
「んむっ……ちゅぱっ……れろぉ……」
舌を絡め合いながら、腰を激しく打ち付けてくる。まるで俺の全てを奪おうとするかのような動きだ。
「はぁ……メズ……もう……!」
「イきそうなんでしょ!? 来て! あたしの中に出して! 全部ちょうだい!」
メズは俺の腰を掴み、自らも腰を振り続けた。二人の喘ぎ声と肉のぶつかる音が混ざり合い、理性が吹き飛ぶ。
「うっ……出る……!」
「来てぇぇぇっ!!」
どくっ!! びゅくっ!! びゅるるっ!!
熱い奔流が彼女の子宮の奥へと注ぎ込まれる。
「ああぁぁぁっ!! 出てる! 出てるよぉぉっ!!」
メズは背を弓なりに反らせ、絶頂の波に全身を震わせた。彼女の内部が痙攣し、俺の精液を一滴残らず搾り取ろうと締め付けてくる。
長い射精が終わり、彼女は力なく俺の胸に崩れ落ちた。
「はぁ……はぁ……皇子様の精子……いっぱい出てた……」
「ああ……」
二人の荒い息遣いだけが、静寂の中を満たしていた。