※この作品はR-18です。

皇帝が変える   作:ボルメテウスさん

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汗はねっとりと

昼下がりの廊下は、妙に静かだった。

 

帝都の城内で静かな時間など、だいたい罠だ。

書類が燃える前触れか、誰かが扉の向こうで待っているか、あるいはその両方か。俺は胸の奥に引っかかるものを覚えながら、人気の少ない回廊を進んだ。

 

角を曲がる前に、百通りの未来を軽く開く。

 

三十二通りで、何も起きない。

四十七通りで、面倒が起きる。

残り二十一通りで、面倒が笑っていた。

 

「……帰るか」

 

「帰っちゃうの?」

 

背後から声が落ちた。

耳元に近い。近すぎる。

 

振り向くより先に、細い指が肩口の埃を払った。甘い香の匂いが、紙と石の匂いに混ざる。メズは壁にもたれるように立っていた。いつからいたのか分からない。分かりたくもない。

 

「距離を取れ」

 

「最初の一言がそれ? 皇子様、冷たいなぁ」

 

「君の場合、近いだけで事故になる」

 

「あはっ。ひどい言い方」

 

笑い声は軽い。

けれど、目だけは軽くない。こちらの反応を逃さず拾っている。怯えたか、怒ったか、呆れたか。どれを選んでも、彼女は少し楽しそうにする。

 

「今日は何をしに来た」

 

「顔を見に」

 

「嘘だな」

 

「じゃあ、困った顔を見に」

 

「正直なのも困る」

 

メズは口元に指を当て、わざとらしく首を傾けた。

 

「ねえ、皇子様。私のこと、嫌い?」

 

「危険だとは思っている」

 

「答えになってないよ」

 

「君が欲しい答えを渡すと、碌なことにならない」

 

一歩、下がる。

その分だけ、メズが一歩近づいた。追い詰めるというより、こちらがどこまで退くか試している足取りだった。

 

彼女は善意で近づくわけではない。

アカメの静けさとも、レオーネの近さとも違う。チェルシーの観察にはまだ助ける余地がある。エスデスは災害だが、正面から来る。

 

メズは違う。

 

火薬庫の横に座り、火打石を指で転がしている。

火をつけるとは言わない。ただ、こちらが止める顔を待っている。

 

「君は、俺を困らせたいのか」

 

「うん」

 

即答だった。

 

「そこは少し迷え」

 

「だって、皇子様は困った時の顔がいいんだもの。怒りたいのに怒り切れない。逃げたいのに見捨てない。そういうところ、見てて飽きない」

 

背筋に冷たいものが走る。

褒め言葉ではない。値踏みでもない。もっと危ない、興味だ。

 

「俺は見世物じゃない」

 

「知ってるよ。だから面白いの」

 

メズの指が、俺の袖をつまむ。強くはない。振り払える。

だが振り払った未来を見た瞬間、廊下の向こうから誰かが来る気配と重なった。騒ぎになる。誤解が増える。胃薬が減る。

 

最悪だ。

 

「……離せ」

 

「お願い?」

 

「命令だ」

 

「ふふ。そういう声も出せるんだ」

 

袖から指が離れた。

意外なほど、あっさりと。

 

メズは笑ったまま、半歩だけ下がる。こちらの線を越えた後で、越えすぎる前に戻る。その加減がうまい。だから余計に厄介だった。

 

「安心して。今日は何もしないよ」

 

「今日は、という言い方をやめろ」

 

「じゃあ、今は」

 

「悪化した」

 

廊下の窓から風が入る。薄い布が揺れ、メズの影が石床の上で小さく伸びた。

 

「皇子様はさ、私を切り捨てないよね」

 

声が、少しだけ低くなった。

 

俺は答えを探した。

百通りではなく、自分の中から。

 

「切り捨てない。だが、好きにさせる気もない」

 

メズの目が細くなる。

その奥で、火花のようなものが跳ねた。

 

「それ、いいね」

 

「どこがだ」

 

「止めるって言ってくれるところ」

 

一瞬だけ、笑みの形が変わった。

からかいではない。油断すると見落とすほど短い、薄い隙間だった。

 

次の瞬間には、いつもの顔に戻っている。

 

「じゃあ、またね。皇子様」

 

「できれば、普通に来てくれ」

 

「普通じゃつまらないでしょ?」

 

「俺はつまらなくていい」

 

メズは返事をしなかった。

 

「止めるって言ってくれるところ」

その言葉の余韻が消えぬうちに、メズは動いた。

廊下の曲がり角、兵士の足音が遠ざかるのと同時だ。

 

彼女の体から、異常な熱気が放たれる。

まるで炉の前に立ったかのような蒸気。褐色の肌から、びっしょりと汗が噴き出していた。

 

「捕まえた」

 

逃げようとした俺の腕を、彼女の汗で濡れた手が掴む。

ぬるりとした感触。粘液のような汗が、俺の服の上から肌へと浸透してくる。

 

「なっ……!」

 

「動けないでしょ?」

 

メズの体温と汗が、俺の四肢に絡みつく。

彼女の汗は、ただの水ではない。粘着質な糸を引き、俺の関節の動きを阻害する。

袖口から侵入した汗が、腕の付け根にへばりつき、力が入らない。

 

「私の汗、すごいでしょ? 重力みたいに重くなるんだよ」

 

彼女は笑いながら、俺の体を壁際へと押し付けた。

廊下の向こうから、誰かの話し声が聞こえる。

近づいてくる。巡回の兵士か、それとも別の誰かか。

 

「靜かにしてね。見つかったら、大変だもんね」

 

メズは俺の口元に、汗ばんだ指を押し当てた。

鉄と塩の味がする。

 

彼女の手が、俺のズボンへと滑り込む。

汗で濡れた指先が、下着の中から屹立し始めた俺自身を引き出した。

 

「あらら、元気じゃん。汗まみれでも平気なの?」

 

「くっ……」

 

否定できない。

彼女の汗の匂いと熱気に煽られ、俺の体は正直に反応していた。

 

「じゃあ、もっと濡らしてあげる」

 

メズは自らの体を押し付けてきた。

褐色の腹、汗で光る胸、そして太股。

彼女の全身から溢れる汗が、俺の服を、肌を、そして屹立したモノを容赦なく濡らしていく。

 

ローションのように滑る。

だが、潤滑剤とは違う。

粘つき、重く、逃げ場を奪う汗。

それが俺の肉棒に絡みつき、彼女の下着の布地越しに秘所を擦り付けてくる。

 

「んっ……滑るねぇ……お兄さんの、すごい硬いのに、つるつる滑るよ」

 

メズは楽しそうに腰を回す。

汗の膜を通じて、彼女の膣の熱が直接伝わってくるようだ。

下着を横にずらし、露わになった割れ目に、汗まみれの俺自身を押し当てた。

 

「入れるよ。いいよね? 言葉、いらないよね?」

 

問いかけよりも先に、彼女は腰を沈めた。

汗の潤滑と自らの体重を使い、一気に俺自身を飲み込んでいく。

 

「あはっ! 入ったぁ!」

 

「うぐっ……!」

 

きつい。

汗で滑りやすいはずなのに、彼女の中は吸い付くように熾烈だ。

褐色の太股が俺の腰を挟み込み、汗で濡れた肌同士が厭らしい音を立てて擦れ合う。

 

廊下の向こうで、足音が止まる。

誰かが、近くの部屋に入っていく気配。

 

「しっ……声、出しちゃダメだよ」

 

メズは口元に人差し指を当て、悪戯っぽく笑った。

そのまま、壁に押し付けた俺の体に密着し、小刻みに腰を振り始める。

 

「んっ……んぅっ……お兄さんの中、凄い熱くなってる……」

 

汗のせいで、感覚が鋭敏になっている。

彼女の内壁の襞が一本一本数えられるほど鮮明に感じる。

そして、互いの体から溢れる汗が、打ち付け合う音を消し、厭らしい水音へと変えていく。

 

「メズ……っ!」

 

「あたしも……感じてる……! 汗いっぱい出る……!」

 

彼女の言う通りだった。

結合部から溢れる愛液に加え、彼女の全身から汗が噴き出し、俺の服を濡らし、床に滴り落ちる。

「あはっ……すごい……お兄さんの中、どんどん熱くなってる……」

 

メズの耳元での囁きが、汗の蒸気と共に脳に浸透してくる。

彼女の全身から溢れ出す汗は、もはや単なる生理現象の域を超えていた。

粘液状のそれが、俺の服を浸し、肌に張り付き、まるで全身が彼女の体内に包まれているかのような錯覚を覚える。

 

廊下の向こう、部屋の中では誰かが書類の整理をしているのか、カサカサと紙の擦れる音が聞こえる。

日常の風景。その僅僅かな壁一枚隔てた場所で、俺たちは粘着質な汗水にまみれ、肉を交わらせている。

 

「動いてるの、バレちゃうよ? ……だから、あたしが動くね」

 

メズは俺の首に腕を回し、壁に背中を預けた俺に全体重を預けてくる。

褐色の腹が俺の腹に密着し、汗の膜が空気を遮断する。

彼女は足の指先を床につき、微妙な体重移動だけでペニスを蹴り上げるように腰を動かした。

 

「んぅっ……っ!」

 

声が出そうになるのを、俺は唇を噛みしめて堪えた。

汗で滑る結合部は、摩擦こそ少ないが、その分、肉壁の襞が生々しくペニスに吸い付いてくる感覚が鮮明だ。

熱い。狹い。そして重い。

彼女の汗の重みと、内臓の締め付けが、俺の理性を順番に削ぎ落としていく。

 

「ふふっ……いい顔。必死に声我慢してる顔、すごく好き」

 

メズは楽しんでいる。

廊下を通り過ぎる兵士の足音に合わせて腰を止め、遠ざかった瞬間に深く打ち付ける。

この syncopation(切分音)のようなリズムが、神経を逆撫ですると同時に、背徳的な快感を増幅させる。

 

「あたしも……もうちょっと……っ!」

 

メズの息遣いが荒くなる。

彼女の肌から噴き出す汗の量がさらに増し、俺の顎から首筋へと熱い雫が伝い落ちる。

粘つく汗がローションとなり、打ち付け合う音は湿った水音へと変わる。

じゅぽっ、じゅぽっ、ねちゃっ、ねちゃっ。

厭らしい音が、二人の密着した隙間から漏れ出す。

 

「メズ……限界が……!」

 

「いいよ……来て! あたしの中に全部……注いで!」

 

彼女の内部が、猛然と収縮を始めた。

汗で滑る腰を強引に押し付け、最奥までペニスを咥え込む。

子宮口が亀頭を飲み込もうとするほどの圧力。

 

「くっ、うぅぅっ!!」

 

俺は耐えきれず、彼女の褐色の背に手を回し、強く抱きしめた。

爪が食い込み、汗と共に肌が混ざり合う。

 

「ああっ! あたしもっ! イクっ!」

 

ビクンッ! ビクンッ!

メズの体が電流に打たれたように痙攣する。

同時に、彼女の体内から熱い液体が噴き出し、俺のペニスを煮えたぎる magma のように包み込んだ。

 

俺もまた、堰を切った。

彼女の最奥に向けて、濃厚な精液をぶちまける。

ドクッ、ドクッ、ドクッ!

脈打つたびに、彼女の子宮が痙攣し、一滴残らず搾り取ろうと吸い付いてくる。

 

「あはぁ……っ! きてる……熱いの……いっぱい……」

 

汗まみれの体が重なり合い、互いの心臓の鼓動が直接伝わってくる。

射精が終わっても、彼女の体内は長く収縮を繰り返し、余韻を貪っていた。

 

しばらくして、メズは満足げに息を吐き、俺の肩に顔を擦り付けた。

汗と体液の混じった匂いが、鼻腔を満たす。

 

「ふぅ……お疲れ様、皇子様」

 

彼女はようやく体を離した。

ずるりとペニスが抜け、混ざり合った白濁液が、汗と共に彼女の太股を伝って床に滴り落ちる。

 

「……服、どうしてくれんだ」

 

「汗乾けば大丈夫でしょ。それとも、あたしが舐めてあげようか?」

 

悪戯っぽく笑う彼女の笑顔には、まだ熱が残っていた。

俺は深く息を吐き、壁に背を預けたまま天井を仰いだ。

廊下の向こうでは、また新たな足音が響き始めている。

日常は続く。

汗と共に。

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