転生いちゃラブハーレム(ハードモード) 作:ねろね
「啓斗君のお母様は、学校の華と言いましょうか……常に囲まれて、人気のあるお方でした。
「へえ~、そうなんですね」
適当に相槌を打ちながら、思考を巡らす。ダリアが実際に俺の母親の同級生だったかどうかは些細な問題だ。彼女が原作通りの能力を持っているなら、他人の記憶に干渉することが出来る。実際に同級生だった誰かの記憶を読み取れば、そのように振る舞うことは容易い。
そして俺は、実母や実父に対して一切の興味がない。転生者であるからして、自分をあの施設にやったことがやむにやまれぬ事情などではなかったことは理解している。幼い頃は復讐してやろうと考えたこともあったが、例の蠱毒以降完全にどうでもよくなった。だから重要なのは、ダリアが何を考えて俺たちに接触してきたのか。
俺達の家は元はと言えば火伊那さんの家(厳密には関東における拠点)で、セキュリティはしっかりしているが物理的なものでしかないし、逐一誰にも見られないように出入りしていたわけでもない。あの組織が摘発されたことも、その子飼いの駒が公安に保護されたことも、知ることは簡単だろう。まさか出かけられるようになって初日に接触してくるほどとは思わなかったが。
「……やっぱケイトは大きい方が好きなのかな」
「馬鹿そういうことじゃねえよ。よく考えろって、このタイミングで──」
「あら、二人で内緒話? ふふ、仲がよろしくて素敵ですね」
「……!」
小声で呟いたブローニャに思わず訂正を入れるが、割り込んできたダリアの言葉に口を閉じる。……聞かれたか?
「あまりお邪魔しても悪いですし……また今度、二人でゆっくり話しませんか? きっと、まだ聞きたいことがあるでしょう……?」
言いながら、不自然でない程度に胸元で腕を動かし、その豊満な乳房を強調するダリア。公共の場で勃起を誘うな男は大変なんだよ……!
平静を取り繕い、そっとブローニャにアイコンタクトを送る。上手く行くといいが。
「ええ、是非……けど、今この場でどうしても聞いておきたいことがあるんです」
「なんでしょう?」
「何が目的ですか? ダリアさん。それともコンスタンスとお呼びしたほうが?」
「……何のことですか? 私の名前は牡丹──」
「血の臭いがするって言ってるんだよ、おばさん!」
ブローニャが不意をついて
「うふふ……まさか、あなたたちのような子供に勘付かれてしまうとは思いませんでした。噂以上に優秀なようですわね」
「平日とはいえ昼間のモールだぜ? いくらなんでも人が居なさすぎる。途中から人払いか何かを使ってただろ、誰でも気付く」
「ちょいちょい私の方見てたのは精神魔法か何か? お生憎様、私はケイトのことしか見てないから」
「まあ、情熱的。今回は真面目に仕事をするつもりだったのですけれど……彼女にそこまで言わせる貴方がどんな記憶を持っているのか、気になってしまいますわ」
陽炎のように、ダリアの姿が揺らめいて。
「さあ、貴方の記憶を私に見せて───」
目の前に、彼女の瞳があった。
「あっ───!?」
一発良いのがダリアの腹に入った。とはいえ間違いなく
「この、記憶は……」
……ん? なんかダリアの様子が妙だな。
「完全な、幼少期の記憶……!? いいえ、それだけじゃない、さらに遡れた───あれは、前世……?」
あっやべ。
「……? ねえケイト、あいつ何言ってるの?」
「い、いや、俺にも何がなんだか」
ゆらりと、ダリアは立ち上がる。
「ああ、ああ……! こんな記憶、初めて……! どうしましょう、私貴方のことが気になって仕方ありません♡」
うおお、声エッロ……。落ち着け落ち着け、ダリアは間違いなく記憶目当てだ。メモモクだ。
「貴方の記憶をもっと深くまで知りたい……その為なら、どんな対価も支払って良いと思える程に……♡ 雇い主のことも教えましょう、公安に情報提供したって構いません。もし貴方が望むなら、この身すら捧げて差し上げます……♡」
やめろやめろ理性を揺さぶるな。
「え、何、なんかヤバいこと言ってるんだけど」
「……なら、公安にしっかり情報共有してもらおうか。裏切りなんて手慣れたもんだろう? けど身体はいらねえ」
「! ケイト、さすが───」
「お前は俺の記憶を見たいだけで、俺のことはどうでもいいんだろう? そういう口ぶりだ。そんな相手とヤる趣味はねえし、そういうことを言う相手に見せる記憶は無い」
「待って、そうじゃなくない? そういう問題じゃなくない?」
「では、どうすれば見せてくれるのです?」
「俺という個人を好きになれ。そして俺を好きにさせろ。純愛でなきゃ意味がない──もちろん、お前が歩み寄るなら俺もお前を好きになるよう努力する」
これは本心からの言葉だ。俺は前世で「ダリアの身体エッロ!」とはしゃいでいただけで、彼女の考えや心に惚れていたわけじゃない。彼女が現実の人間として存在する今はなおのこと、俺自身ダリアを好きになるよう努力する必要がある。
「おかしくない? 私恋人だよね? いくら異能者やサマナーの性生活が乱れやすいからって恋人の前で言うことじゃないよね?」
「悪いブローニャ、だが俺は───純愛ハーレムを作るのが夢なんだ」
「意味わかんない!」
「もちろんお前を蔑ろになんてしない。ハーレムが成立した暁には、全員に平等に愛を注ぐと約束する。もしそう思えなかった時は、言ってくれ」
「……言ったら、どうするの」
「腹を切る」
某純愛100股ハーレムラブコメの主人公を思い出しながら、俺はそう言った。
「あんた腹切っても死なないでしょ! 死んでも私が蘇生させるけど!」
全くもってその通りだった。
ブローニャがキレている一方で、ダリアは困惑気味だった。
「何を条件にするかと思えば……相思相愛、だなんて。覗けた記憶だけでも、貴方が本来好色なのは理解しましたわ。思うがまま貪れる機会があるというのに、どうしてわざわざ遠ざけるような真似を?」
「心から想う相手との繋がりじゃなきゃ、俺はきっと本当の意味では満たされない。
前世知識を総動員して、ダリアを説得する台詞を吐く。ダリアは、多分そういう性質の人のはずだ。だから彼女は、何度も裏切りを繰り返していたのだ……と、思う。
「ふふ……随分と私をご存知なのですね。ええ、ええ……その口車に乗って差し上げましょう。本日は公安の方と一緒なのでしょう? その方と話をしなくては」
ぱちん、とダリアが指を鳴らすと、周囲に喧噪が戻ってきた。
「啓斗、ブローニャ、今までどこに───っ」
駆け寄ってきた火伊那さんが、ダリアの姿を見て剣呑な表情を見せる。
「……ファントムソサエティのコンスタンスだな。何が目的だ」
「その情報は古いと言わざるを得ませんね。確かについ先程まではファントムソサエティでしたが」
「何が言いたい」
火伊那さんの言葉に、ダリアはそっと手を俺の首元に添え、頬を寄せてきた。
「今はこの坊やに個人的な興味がありまして。ソサエティも抜けることにしましたの」
「っ、啓斗から手を──」
「あー、火伊那さん! 一旦、大丈夫だと思います。彼女は、俺の記憶を見たがってる。俺の記憶が駄目になるようなことはしないはずです」
銃を抜きかねない勢いの火伊那さんに、慌てて声をかける。
「……どうして信用出来る? そいつはガイア教内部で幾度となく派閥を乗り換え、更にガイア教を裏切ってファントムソサエティに与するような女だ」
「身から出た錆ですわね……では実利の話をしましょう。これからも坊やと関わることを許していただけるなら……私が知るソサエティ、そしてガイアに関する情報は可能な限りお教えいたします」
「先払いだ」
「近年IT分野で頭角を表している██社はガイアのフロント企業であり、役員には数名ガイア教幹部が……まあ、末席ですけれど。名前もお教えしましょうか?」
「……本気みたいだな。全く……せっかくの休日だってのに、なんだってこんな厄介事が」
息を吐いて、火伊那さんは頭を抱えるのだった。すいません俺がダリアのドスケベボディに釣られたせいで。
◆
それから公安の方で色々とあったそうだが、ダリアの惜しみない情報提供と人手が足りないという切実な問題により、彼女は特別協力者のような立場に收まったらしい。
公安の誰かによる許可が無ければ自由に魔法を行使できないという制限をかけられ(必要に応じて条件を設定できる道具で、緊箍児と言うらしい──メガテン原作にそんなものがあったかは疑問だが、神や悪魔の生まれ変わりがいるなら全然ありそうな気はする)、彼女は俺達の家の隣室に住むこととなった。そして彼女は今、俺達の家でティータイムと洒落込んでいる。
「私は情報提供だけ行い現場には基本的に出向かず、精神魔法や記憶のエキスパートが必要な時以外はお二人のお守りをする、ということで話がまとまりましたの。ブローニャさんも、これからよろしくお願いしますわ」
ブローニャはすごく嫌そうな顔をしていたが、別に抗議する権利がある立場でもないので渋々受け入れていた。
「っていうか、ねえ、本当にハーレム作りたいの?」
「ああ」
「一点の曇りもない瞳で何を言ってんの、マジで」
「あら、強力な異能者やサマナーの中にはハーレムや逆ハーレムを作っている方もいるのですよ? 坊やなら、将来的にはそれに見合う実力になると思いますわ」
「そういう話じゃない! 一応私こいつの恋人のつもりなんだけど」
「それに関してはマジでごめん。
「
やべ。
「あら、ブローニャさんには話していないのですか? 確かに前世の記憶を備えている方は稀ですが、全く居ないという訳でもありませんよ? 特に裏社会では」
ん? その口ぶりだと、俺の前世が彼女たち(の元となったキャラクター)を観測する上位次元だったことまでは分かってない感じか?
「特に珍しいのは、その前世のことをはっきりと覚えている……いえ、あの様子からすると意識が完全に連続していると言ってもいいことでしょうか。ふふ、本当に興味深い方……」
「あー、前世……。どーりで大人びてると思った。ねえ、ケイトの前世ってどんななの?」
「別に……普通の人間だよ。神や悪魔の生まれ変わりとかじゃない」
「ふーん……じゃなくて! ハーレムのことの話してるんだってば」
「……ブローニャは、嫌か? って、そうか。そりゃ嫌だよな……正直、俺はブローニャに他の男と付き合ってほしくないし」
「そこまで分かってるなら……」
「別にブローニャに意地悪したいわけじゃないんだ。本当に嫌なら、俺は諦める……けどさ。前世で見たアニメや漫画で、ハーレムを構成する女の子たちが仲良くしているのが、なんか好きだったんだ」
恋の鞘当て、なんかも別に嫌いなわけじゃなかったけど。どうせなら、仲が良いほうが見ていて楽しかった。
「幸せを分け合える相手は多い方が素敵だって、そう思ったんだ。特に、俺達は今まで……人生の殆どの間、お互いしか信じられる他人が居なかった。けど今じゃ、火伊那さんっていう家族が増えた。訓練所に来たときの大人たちも、家族ではないけど一緒に居ても苦しくない人たちだった。ブローニャだって嬉しかっただろ?」
「それは、まあ」
「家族が増えるのと恋人が増えるのとじゃ、話は違うとは思う。でも……俺はそういう幸せの形が良いなって思ったんだ」
今言っていることは、半分しか本心ではない。俺の出発点は結局、童貞のまま死ぬ無念がそうさせた、性欲丸出しの願い事だ。けど、いざそれが叶うかも知れない現実を前にして……俺がハーレムの何が良いと思っているのかを考えて、こういう結論に至った。だから、半分だけは本心。
「俺以外の男をその幸せに加えたくないと思ってしまっている以上、ブローニャが本気で拒否するなら俺に何か言う資格はない。けど、俺は……ブローニャに、今以上に幸せになってほしいんだ。分かってくれないか」
じっと、ブローニャを見つめて言った。正直、ズルい言い方だとは思った。そもそも、俺達は互いに好き合っている。俺だって、もしブローニャから同じようなことを言われて説得されたなら、嫌だと思っていても納得はしてしまうだろう。
「……その言い方は、ズルじゃん」
頬を赤らめて、ブローニャは視線を逸らした。胸がちくりと痛む。絶対に幸せにしなきゃな。
「本当に情熱的な方。その愛を、私にも向けてくださるので?」
「もちろん。あなたが俺を好きになってくれるなら、そしてあなたが俺を好きにならせてくれるなら」
「案外、前者はもう達成しているかもしれませんわよ?」
「記憶が早く欲しいだけでしょう?」
「まあひどい、私も一人のか弱い女ですのに」
「うわ、なんか大人っぽいやり取りしてる」
「あらブローニャさん、拗ねてしまわれましたか? どうぞ遠慮なさらないで、今の話を聞いて私ぜひとも貴女とお友達になりたいと思いましたの」
ダリアは席を立ち、ブローニャを抱きしめた。
「むぐ」
ブローニャの頭がダリアのおっぱいに完全に埋まっている。羨ましい。
「こうしていると学生時代を思い出しますわね……坊やのお母様と学友だったというのは、残念ながら嘘なのですけれど。当時から発育が良かったもので、よく友人が褒めてくれました」
そう語りながらブローニャの頭を撫でるダリアだったが、ブローニャがもぞもぞと動いて腕の中から抜け出した。
「あん♡」
「スタイルに自覚あるならケイトの前でやるのはやめて、ガン見してるから……あ、あんたはケイトのことを惚れさせたいのか。じゃあ間違ってないか」
「あら、本当に物欲しそうな目で見ていますわね。ねえ、啓斗さん? 記憶によれば、あの公安の方……筒美さんがいる間は満足に性欲を発散出来ていない様子。今ならご自由に発散できますよ?」
あからさまに腕で胸を挟み、その巨乳を強調するダリア。魅力的な申し出ではあるが……!
「……いや、遠慮しておきます。まだダリアさんは俺のことを好きな訳では無い様子ですし、それにほら、出すと眠くなってしまうので。今はゆっくりお茶を楽しみたいです」
「では仕方ありませんね。まだケーキも食べかけですもの……でしたら代わりに、終わったらブローニャさんをお借りしても? そういった技術には多少覚えがありますから」
「脳がッ」
不意打ちに宣言された性技の経験値に手酷いダメージを貰った。メガテンの世界観であの身体で裏稼業、それも元ガイアーズなら使っていないはずもない、とは薄々思っていたがっ……!
しかし悲しいかな、俺の相棒はさらに元気になっていた。脳が壊れてしまうこととそれで興奮することは両立してしまうんだ。でもリアルでやられるのは今ぐらいの匂わせが限界です。というかギリ限界を越えている。あれ? 俺もうダリア好きなのでは?
「あー、寝取られってやつだ。ネットで見た」
「ああ、なるほど。ですがそれで苦しむということは、すでに啓斗さんは私のことが好きなのでは? まあ嬉しい、私も啓斗さんのことをお慕いしていますの。では早速記憶の方を」
「さすがに嘘でしょそれは」
そんな具合で。俺のハーレムは、
非処女ヒロインでも純愛はできる。ここテストに出ます。
◯ダリア「コンスタンス」
ですわ口調と通常の丁寧語が入り混じってて地味に難しい方。
早いとこスケベしたいのですが純愛ハーレムを標榜しているのでもう少しお待ちあれ。