※この作品はR-18です。

よう実 実験   作:鳥ささみ

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第5話:狂犬を繋ぐ見えない鎖

 

1.蜘蛛の巣の情勢と「狂犬」の不穏

 

5月もいよいよ最終盤を迎え、高度育成高等学校は一つの大きな転換期を迎えようとしていた。

1年Dクラスの最後列に座る悪魔――継国漣は、自身のスマートフォンに構築した融資ポートフォリオの画面を眺めながら、退屈そうにペンを回していた。現在の個人残高は1700万ポイントを優に超え、学園内の約50名に及ぶ債務者たちから回収される利息だけでも、一般的な高校生にとっては目眩がするほどの富が自動的に湧き出し続けるシステムが完成している。

中間テストという最初の関門を、櫛田桔梗を媒介とした過去問の流布、そして自らの「セクハラ封印・高級スイーツ差し入れ勉強会」という飴と鞭によって乗り越えたDクラス。クラスの平均点は跳ね上がり、赤点による脱落者は一人の例外を除いて存在しなかった。その唯一の例外であった須藤健の「英語の39点」という致命傷も、綾小路清隆と堀北鈴音が身銭を切って1点10万ポイントで買い取ったため、どうにかクラスの頭数は揃っている。

(このまま何事もなく6月1日を迎えれば、中間テストの優秀な結果とこれまでの授業態度の改善によって、我がDクラスにもそれなりのクラスポイント――すなわち、まともな額のプライベートポイントが国から支給されるはずだ。何事もなければ、な……)

漣の持つ前世譲りの超高スペック脳は、現状の平穏に強い違和感を抱いていた。

この学校が標榜する「完全実力至上主義」。それが、ただ真面目にテストを受け、授業を聞くだけの退屈なシステムで終わるはずがない。特に、隣のCクラスを率いるとされる総帥・龍園翔の動向が、5月下旬に入ってから妙に活発化しているという情報が、漣の張り巡らせた融資ネットワーク(情報網)を通じて、続々と集まってきていた。

「おい、聞いたか? Cクラスの連中、最近やたらとウチの須藤の周りをうろついてるらしいぜ」

「ああ、部活の帰り際とか、ケヤキモールの廊下とかで、わざと肩をぶつけたり挑発したりしてるってさ……」

放課後の教室、そんな池寛治や山内春樹の何気ない雑談が、漣の耳に留まる。

須藤健――Dクラスが誇る圧倒的な身体能力の持ち主であり、同時に、火薬が詰まった樽のように些細な火花で爆発する、クラス最大の「狂犬」にして、最も制御の難しい爆弾。

(なるほどな。龍園の野郎、中間テストでDクラスをハメ損ねたから、今度は物理的なトラブルを誘発して、こちらのクラスポイントを根こそぎ叩き落とす算段か。実力行使で狂犬の首輪を外させ、暴力沙汰を起こして一発退学、あるいは大規模な減点処分を狙う……。実に安直で、だからこそ確実な汚い手口だ)

漣の脳内で、瞬時に冷徹な防衛シミュレーションが開始される。

須藤自身は、漣からポイントを借り受けている債務者の一人であり、借金の恐怖(と漣の圧倒的な武力への畏怖)によって、漣の前でだけは大人しくしている。しかし、他クラスの、それも明確な悪意を持った挑発に対して、あの単細胞な狂犬が最後まで理性を保てるとは到底思えなかった。

(狂犬が勝手に自滅するのは一興だが、せっかく中間テストで底上げしたクラスポイントが、あいつの暴力沙汰一つで完全にゼロにされるのは、俺の『経済支配計画』にとって甚だ不都合だ。かと言って、俺が四六時中あの汗臭い大男の後ろをストーカーのようについて回るわけにもいかねえからな……)

漣はニヤリと、暗闇で獲物を見つけた蛇のような笑みを浮かべた。

(自分で動く必要はねえ。金で動く、最適な『番犬』がすでに手元にいるじゃないか)

 

2.「番犬」の買収:40万ポイントの成功報酬

 

その日の放課後、漣は一般の生徒たちがまず立ち入らない、特殊棟の裏手にある使われていない旧更衣室に、一人の上級生を呼び出していた。

現れたのは、2年Dクラスのバスケ部の先輩。4月の初頭、漣が「暴利のチキンレース」を仕掛けた際、圧倒的なスペックの前に手も足も出ずにひざまずき、数十万ポイントを毟り取られた哀れな「カモ」の一人である。今や彼は、漣に対する恐怖と、慢性的なポイント不足によって、裏で漣の命令を拒めない絶対的な従属関係にあった。

「つ、継国……。俺に何の用だ。もう俺には、お前と賭け試合をするようなポイントは残ってねえぞ……」

先輩は、1年生である漣に対してあからさまに怯え、視線を泳がせながら言った。

漣はいつもの軽薄なヘラヘラとしたピエロの笑みを浮かべ、先輩の肩を親しげにガシッと抱き寄せた。

「おいおい、先輩。そんなに怯えんなって。今日はポイントを毟り取りに来たんじゃねえよ。むしろ逆だ。先輩に、めちゃくちゃ割のいい『アルバイト』を提案しに来てやったんだよ」

「アルバイト……?」

漣はポケットからスマートフォンを取り出し、画面をタップして先輩の目の前に突きつけた。

「簡単な仕事だ。我が1年Dクラスの『須藤健』。あいつ、先輩と同じバスケ部だろ? 同じ部活の先輩後輩なら、練習中もその前後も、自然と同じ空間にいられるはずだ。……これからしばらくの間、部活の前後や放課後の時間帯、須藤の周りを『最低限の監視』下に置いてほしいんだよ」

「須藤を……監視? なんでそんなことを……」

「理由はお前が知る必要はねえ。ただ、Cクラスの連中が最近あいつにちょっかいを出してる。あいつがいつ、挑発に乗って拳を振るうか分からない状況だ。先輩にやってもらいたいのは二つ。一つは、須藤の周囲で異変やトラブルが起きそうになったら、すぐに俺の端末に連絡を入れること。そしてもう一つ――」

漣の目が、一瞬にして冷酷な、底知れない闇を孕んだものへと変わる。

「もし、Cクラスの連中と須藤の間で『物理的な衝突(暴力沙汰)』が発生したら、絶対に間に入って止めるな。物陰に隠れて、お前のスマホのカメラで、その現場の様子を**『一部始終、誰が最初に手を出したかが完璧に分かるように証拠撮影』**しろ。音声もキッチリ拾え。分かったか?」

先輩は、漣の放った、圧倒的なプレッシャーに息を呑んだ。しかし、提示された仕事の内容自体は、単なる盗撮と監視であり、それほどリスクが高いものには思えない。何より、同じ部活の後輩を視界に入れておくだけだ。

「……報酬は、いくらだ?」

漣は不敵に笑うと、端末を操作した。

ピッ、という軽い電子音。

【 プライベートポイントを100,000pt 譲渡しました 】

「なっ……!? 10万ポイント……!?」

先輩は自分の端末の画面を見て、目が飛び出さんばかりに驚愕した。

「それが『前金』だ。生活費にでも、好きに使えよ、先輩。そして、もしCクラスが仕掛けてきて、完璧な暴行の証拠動画を撮影することに成功したら……『成功報酬』として、さらに**【 40万ポイント 】**をその場で一括で支払ってやる」

「よ、40万……!? 合計50万ポイントだと……!?」

5月の飢餓状態を経験し、10ポイントのノートすら買うのを躊躇していた上級生にとって、50万ポイントという大金は、神の救済、あるいは悪魔の甘い蜜そのものだった。この学校で50万ポイントがあれば、3年間クラスの底辺にいたとしても、貴族のような生活が約束される。

「やる……! やらせてくれ、継国! 完璧に撮影してみせる! 同じバスケ部だ、あいつのコート内外の動きや、Cクラスの動きを徹底的にマークしてやる!」

「ひゃはは、いい返事だ! 頼んだぜ、先輩。ただし、この件が俺に繋がっていることがバレたら……お前のその腕、二度とバスケのボールが握れねえように骨の随まで粉砕してやるからな?」

「ひっ……! わ、分かってる、誰にも言わない!」

絶対的な「富(50万ポイント)」の誘惑と、「暴力(漣への恐怖)」の二重の鎖によって、上級生の番犬は見事に繋がれた。漣は更衣室を後にし、夕暮れの廊下をのんびりと歩きながら、脳内で次のチェスの駒を動かしていた。

(龍園、お前がどんな罠を仕掛けてこようが、俺にとってはすべてが『手札』になる。せいぜい、汚い花火を打ち上げてみせろよ)

 

3.「事件」の発生と、暗がりの目撃者

 

それから数日後の5月末、放課後の旧校舎。

漣のスマートフォンが、マナーモードの微振動を冷酷に刻んだ。画面には、監視を命じていたバスケ部の先輩からの緊急着信。

「――もしもし、継国か!? 出たぞ! Cクラスの石崎たちのグループが、旧校舎の廊下で須藤を完全に包囲して挑発を始めた! 須藤の奴、完全に頭に血が上ってる! 今にも殴りかかりそうだ!」

「ククク、ついに来たか。先輩、言った通りにしろよ。絶対に止めるな。スマホのカメラを最高画質にして、物陰から完全にホールドして撮影しろ。石崎たちが『わざと殴られにいった』証拠を確実に捉えるんだ」

「分かった、もう録画は開始してる! ……あ、始まったぞ!」

通話の向こうから、激しい怒号と、肉体がコンクリートの壁に激突する鈍い音が聞こえてくる。

漣は通話を切ると、悠然とした足取りで旧校舎へと向かった。現場へ直接介入するためではない。番犬が仕事を完遂したのを見届け、報酬を支払うためだ。

数分後、漣が静まり返った旧校舎の階段を上がっていくと、そこにはすでに誰もいなかった。床にはわずかな擦過痕と、争った形跡だけが残されている。

その時、廊下の突き当たり、理科室の影から、カメラを抱えて息を切らせたバスケ部の先輩が飛び出してきた。

「つ、継国! 撮れた! 完璧だ! 石崎の野郎、わざと須藤に暴言を吐いて、須藤がキレて殴りかかった瞬間、Cクラスの3人がかりでわざと派手に吹っ飛んで被害者を演じやがった! でも、最初に須藤の襟首を掴んで挑発したのは完全に石崎の方だ! 一部始終、このSDカードの中に1080pの超高画質で収まってる!」

先輩は、極度の緊張と興奮で手を震わせながら、スマートフォンを漣に差し出した。

画面を再生すると、そこには画角、音声、光量ともに完璧な状態で、須藤の暴行事件の「裏の真真」が記録されていた。これさえあれば、学校側がどんな審判を下そうが、いつでも状況をひっくり返すことができる絶対的なジョーカー(切札)だ。

「上出来だ、先輩。これで須藤の監視任務は正式に解く。よくやったな」

漣は自分の端末を操作し、先輩の学生証へと接触させた。

ピッ。

【 プライベートポイントを400,000pt 譲渡しました 】

「おお……! 40万ポイント……! 本当に、本当に振り込まれた……! ありがてえ、継国、お前マジで最高の神様だ!」

先輩は画面に表示された莫大な残高を見て、涙を流さんばかりに歓喜し、何度も頭を下げながら、蜘蛛の子を散らすように旧校舎から走り去っていった。口止め料としての意味合いも兼ねたこの大金があれば、先輩が裏切るリスクは限りなくゼロに近い。

「神様、か。買いかぶりすぎだぜ、先輩」

漣は手に入れた動画データを自身のプライベートクラウドへと二重にバックアップし、冷酷に笑った。

その時だった。

超高スペックな漣の五感が、旧校舎の階段の踊り場付近から、微かな「機械の駆動音」と、衣類が擦れる気配を察知した。

(おや……? 誰かいるな。番犬の先輩じゃねえ。もっと小さくて、気配の薄い……)

漣は足音を完全に消し、音もなく階段の手すりからのぞき込んだ。

そこには、Dクラスの目立たない女子生徒――佐倉愛里が、デジタルカメラを両手で大事そうに抱え、怯えたように周囲をキョロキョロと見回しながら、小走りで立ち去っていく後ろ姿があった。

(あいつ、確かDクラスの……佐倉、だっけか? いつも俯いてて影の薄い根暗女が、なんでこんな旧校舎にデジカメなんか持ってウロチョロしてやがるんだ?)

漣の超高スペック脳が、いくつかの可能性を瞬時に演算する。

(カメラを持ってあの場所にいたってことは……ひょっとして、あいつのカメラにも、さっきの須藤の暴行現場の様子が何らかの形で写り込んでる(撮影しちまった)のか? ……まあ、いいか)

漣は、佐倉愛里の背中を追うことはせず、そのまま放置することを選択した。

この時点の漣は、佐倉愛里がネット上で絶大な人気を誇るグラビアアイドル「しずく」であるという裏の顔をまだ知らない。単に「運悪く事件現場の近くに居合わせた、カメラ趣味の地味なクラスメイト」程度にしか認識していなかったのだ。

(もしあいつのカメラに何かが写っていたとしても、俺の手元にはすでに完璧な一部始終の動画がある。あいつの存在がどう転ぼうが、俺の優位性は1ミリも揺るがない。泳がせておいて、後で面白い使い道があれば拾ってやるさ)

漣は自販機で新しい缶コーヒーを買い、冷え切った夜風を浴びながら寮へと戻った。

 

4.6月の地獄:ポイントゼロの衝撃と悪魔の特例

 

そして運命の6月1日、月曜日。

待ちに待ったポイント支給日の朝、1年Dクラスの教室は、未だかつてないほどの阿鼻叫喚と、絶望の悲鳴に包まれていた。

「嘘だろ……!? おい、残高が増えてねえぞ!!」

「ちょっと、何かの間違いじゃないの!? 1ポイントも振り込まれてないんだけど!!」

池や山内が端末を机に叩きつけ、女子生徒たちは顔を真っ白にしてお互いの画面を確認し合っている。中間テストをあれだけの高得点でクリアし、5月後半は授業態度も完璧に改善していたはずのDクラス。誰もが「数万ポイントは戻ってくる」と確信していた楽園の夢は、無残にも打ち砕かれた。

教室内が暴動寸前の騒ぎになる中、ガラリと前方のドアが開き、担任の茶柱佐枝がいつも通りの冷淡な表情で教壇に立った。

「朝から騒々しいな、お前たち。ポイントの不支給について文句があるなら、静かに席についてから聞け」

「先生! なんでポイントがゼロなんだよ! 俺たち、中間テストめちゃくちゃ頑張ったじゃねえか!」

池が身を乗り出して叫ぶ。

茶柱はフッと自嘲気味な笑みを浮かべ、黒板に1枚の書類を貼り出した。

「確かにお前たちの中間テストの結果は優秀だった。何事もなければ、今月はお前たちの口座に、それなりのプライベートポイントが国から支給されるはずだった。……だが、残念ながら『一時停止』だ」

「一時停止……!? なんでだよ!」

「1年Cクラスの生徒3名から、我がクラスの須藤健に対し、『放課後に一方的な暴行を受け、全治数日間の怪我を負わされた』という正式な苦情と被害届が、学校の審議委員会に提出された。現在、生徒会と学校側で事実関係の調査を行っている。この問題が解決し、須藤の処分が確定するまでは、Dクラス全体のポイント配布、およびクラスポイントの確定はすべて凍結(一時停止)となる」

「――っ!?!?!」

教室内が、一瞬にして凍りついた。

全員の視線が、教室の後方で顔を真っ赤にして拳を握りしめている須藤健へと集まる。

「す、須藤……! てめえ、またやりやがったのかよ!!」

「お前のせいで、私たちの生活費が全部パーじゃない! どうしてくれるのよ!」

クラスメイトからの容赦のない非難の嵐が、須藤に降り注ぐ。須藤は「違う! 俺はあいつらにハメられたんだ! 最初にあいつらが仕掛けてきて――」と言い訳を叫ぶが、日頃の素行の悪さから、誰もその言葉を信じようとはしなかった。

そんな地獄絵図のような光景を、最後列の窓際で、漣は頬杖をつきながら最高に楽しそうに眺めていた。

(ひゃははは! 見事なもんだぜ、龍園の野郎! ポイントの不支給じゃなく『一時停止』にして、クラス内に徹底的な内紛と相互不信を植え付ける。須藤の狂犬っぷりを利用した、完璧な情報戦だな)

しかし、教室内で、別の意味で完全に顔を引き攣らせ、ガタガタと恐怖に震え始めた連中がいた。

――漣から裏でポイントを借り受けている、 Dクラスの「債務者(生徒)」たちである。

漣の融資ルールでは、「毎月のポイント支給日(1日)から1週間以内に、利息を上乗せして全額返済。遅延した場合は日歩0.1%の遅延損害金が発生する」となっている。

ポイントが1ポイントも支給されなかったということは、彼らは今日この瞬間から、自動的に「債務不履行(デフォルト)」に陥り、雪だるま式に借金が膨れ上がる恐怖のカウントダウンが始まったことを意味していた。

放課後、漣の端末には、文字通り悲鳴のようなチャットや、直接の面談を求めるメッセージが数百件も殺到した。

「継国くん、お願い! ポイントが入らなかったの! 返済を待って!」

「利息が払えない! 延滞金だけは勘弁して!」

夕方の共有ロビー。漣の周りには、青ざめた顔の女子生徒たちや、須藤、池、山内ら3バカが、まるで死刑宣告を待つ罪人のように群がっていた。

漣はいつものヘラヘラとした笑みを浮かべ、集まった債務者たちを見渡した。

「おいおい、みんなそんなに怯えんなって。俺は冷酷な高利貸しじゃねえよ。さすがに、学校側の理不尽なポイント凍結っていう不可抗力の事態に対して、容赦なく延滞料金を毟り取るほど、俺のハートは悪魔(鬼)じゃねえさ」

その言葉に、生徒たちの顔に一瞬だけ救いの光が差す。

「今回は『特例』だ。学校側の審議が終わり、ポイントの支給が確定するか、あるいは何らかの結論が出るまでは、すべての融資の返済期日を『一時猶予』にしてやる。遅延損害金も、今回に限り1ミリも発生させない。だから安心しろ」

「え……!? 本当……!? 継国くん、ありがとう……!」

「神様! マジで助かった!」

女子生徒たちが胸をなでおろし、池や山内も涙を流して感謝する。

しかし、彼らは理解していなかった。漣がこの特例を下したのは、決して優しさからではない。

(ここで無理に延滞金を取って債務者を破滅させれば、学校側に融資の存在がバレるリスクが高まる。それに、人間ってのは『絶望のどん底で、あえて見逃してもらった(恩を売られた)』時、その相手に対して、最初の貸し付け以上の、狂信的な絶対の忠誠心と依存心を抱くようになるのさ。これでこいつらは、経済的だけでなく、精神的にも完全に俺のコントロール下に置かれたわけだ)

恩赦という名の、さらに強固な「精神の鎖」を生徒たちの首に巻きつけ、漣は満足そうに彼らを追い払った。

教室の片隅では、堀北鈴音と綾小路清隆が、須藤の無実を証明するために何らかの行動を開始しようと話し合っているのが見えた。堀北は先日、漣の1700万ポイントという圧倒的な資本を見せつけられた屈辱から、漣の手を借りることだけは絶対にしまいと、必死に自力での解決を模索しているようだ。

(いいぜ、堀北。せいぜいあがいてみせろ。お前たちが無様に行き詰まったその時、俺の手元にあるこの『完璧な暴行の証拠動画』が、どれほどの絶対的な価値を持つか、身をもって教えてやる)

ソファーに深く腰掛け、冷たくなった缶コーヒーを喉に流し込みながら、漣の脳内はすでに、次のターゲットへと向かっていた。

(さて……仕掛けてくれたな、Cクラスの龍園翔。俺の築き上げた美しい蜘蛛の巣(楽園)を、その汚い足で踏み荒らそうとした代償は、高くつくぜ? お前らCクラスの連中を、どう料理して、どれだけのポイントとリソースを合法的に毟り取ってやろうかねぇ……。ひゃははは!)

6月の地獄の幕開け。それは同時に、継国漣という悪魔が、学園のパワーバランスそのものを金の力で完全に再構築するための、新たなる狩猟の始まりを告げる合図だった。

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