人間をテイムする方法 作:阿鼻巣
「悪いんだけど、俺とアヤは二人で探索することにしたからエリーゼは別の仲間を探してくれ」
集合場所に三人が集まると、俺は開口一番そう言った。
俺にはもう、エリーゼに「さま」を付けて呼ぶ理由は一つもない。
「……ま、待ってよ。どういうこと?」
エリーゼの瞬きが多くなり、俺とアヤに交互に視線を向ける。
俺と腕を絡ませたアヤは、背中に隠れながらも悪戯の成功した子供のような薄い笑みと共に狼狽えるエリーゼを見ている。
「別に、ただの心境の変化だよ。でさ、エリーゼはアヤの弱みを握ってるんだろ? 本当にいじめのこと反省してるって言うなら、それ破棄してくれないか?」
アヤに聞いた限り、その弱みというのはアヤの裸の『写真』らしい。
写真機なんて相当高額な物だが、まぁ買おうと思えば買えるし、エリーゼが持ってても別に変じゃない。
「……もういい。わかったわよ」
「ありがとう。それじゃあいくか、アヤ」
「うん。じゃあねエリーゼ」
そして、俺とエリーゼとアヤのパーティーはエリーゼを追放する形で解散となった。
それからアヤの実技成績がどんどん良くなっていく。
迷宮の攻略階層も一月程度で90階層を超えた。
実技の学年一位はアヤになった。
対照的にエリーゼの成績や到達階層は一切上がらなくなった。
当然だ。そもそもエリーゼは29階層の守護者で詰まってたんだ。その50階も上の80階層を攻略できるわけがない。
しかもエリーゼは学年でぶっちぎりにトップの探索者だった。
一年でエリーゼにまともについていける生徒なんか存在するはずもない。
噂は集めなくても聞こえてくる。
卑怯者。転落者。才能の枯れた女。
学内でも破竹の勢いで階層を上げていくエリーゼはかなり目立っていたから、その分落ちぶれた時の噂の広がり方はすごかった。
「最っっっ高!」
空き教室の一つで対面座位の体位で俺の一物を咥え込んだアヤは、そう叫ぶ。
「んっ、本当にいい気味! 成績も下がって、友達も減って、マジで無様」
「よかったな。気持ちいいか?」
「うん、全部ユウヒくんの……私の彼氏様のお陰だよ。ねぇ、本当に大好き。んちゅ。私の穴いっぱい使って」
アヤの動きがどんどん激しくなっていく。
一カ月もあればそれなりにこいつも上手くなってくる。
それに尽くす気質があるらしく、毎回俺の気持ちいいところを探してるみたいだ。
こいつ、セックスの才能はあったな。
「だったらさ、お前いつまで俺の上にいるつもりなんだよ?」
「あ、ヤバ……ユウヒくんのスイッチ入れちゃった」
一カ月、毎日のようにこいつと探索して、毎日セックスしてたからな。
さすがに俺の趣味趣向ってヤツもバレてる。
まぁ、俺に隠す気がなかっただけなんだけど。
でも、俺のどんな性格を知ってもアヤは俺を全力で引き留めようとする。
それしか、俺に支配されることにしか、こいつの価値はないから。惨めな自分に戻るのが嫌だから。
俺の膝の上から降りて一糸まとわぬ姿になってアヤは、鞄の中から首輪を取り出して自分に付け、そのリードの先を俺に渡してくる。
俺がリードを受け取ると、アヤは両腕を頭の後ろに組んでがに股に足を開く。
自分の股を見せつけるように……
「おちんぽさまイライラさせちゃってごめんなさい。ご主人様がいないとなんにもできないザコメスとしておちんぽさまに媚び媚びダンス披露して、おちんぽさまのお怒りを鎮められるよう努めさせていただきます」
へこへこと腰を振るたびに、下からは汁が溢れ、上ではたぷんたぷんと巨乳が揺れている。
その呼び方も、その姿も、その動きも、その声も、その一挙手一投足のすべてが俺に屈服していること示すようにアヤは下品な動きを繰り返す。
俺に支配されることで得られる充足感は、こいつのこんな尊厳のない行動を取らせるほどの価値があるということだ。
その事実が、俺の股間をいきり立たせる。
「バカなザコメスを肉便器として飼っていただいてありがとうございますぅ。ご主人様が気持ちよくなれることならなんでもさせていただきまーす。だから身体強化と回復術式でおまんこ処刑するのだけは勘弁してください。お願いしますぅ」
アヤとは何度も体を重ね、強化や回復の術式を使った性行為も何度も行った。
その脳が溶けるほどの快楽をこいつは憶えているのだろう。
そして、人間として理性がそれを繰り返すことは人間性を喪失し、快楽のためだけに生きる人間になってしまうことに恐怖を抱く。
だが、無意識だったとしても、こいつは今俺に命令した。
「お前さ、なに調子乗ってんの?」
「え……?」
「来い」
「あぁん」
リードを強く引き寄せると、アヤはバランスを崩して俺の前に四つん這いに倒れた。
「術式を使うな? 誰が俺の行動に指示していいなんて言ったんだ? まだ自分の立場ってヤツをはき違えてるんだな」
「ち、違っ。私は全部ユウヒくんのものだよ。だから喜んで欲しくて」
「だったらさ、俺の好きなように壊されるのがお前の仕事だろ?」
「で、でもアレは本当に頭おかしくなっちゃうからぁ……」
あぁ、そっか、お前ってまだ俺の彼女でいる気なんだ。
まだ、対等だなんて勘違いしてんだ。
「じゃあいいや。お前が嫌って言うなら仕方ないよな。じゃあこれで俺とお前の関係は終わりってことで」
腰かけた椅子から立ち上がり、俺は教室の出入り口に向かって歩いていく。
「え、ま、待って、違う。違うから、嫌じゃないから、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
裸で俺の足に縋りつきながら、アヤは必死に俺を引き留める。
「ねぇ見て、土下座してるよ。デカパイ女が全裸で必死に無様に土下座してるよ? 頭踏みつけていいし、術式も使っていいし、体のどこでも好きなところいじめていいから。ねぇだからお願い。見捨てないで、ごめんなさい……」
「最初っからそうやってろ馬鹿女」
「ぎゃっ……」
頭を踏み抜いたアヤは、カエルが潰れたような声を出す。
それでもなお、俺に媚びるように必死に自分の股を弄って濡らそうとしている姿には、多少の粗相は許してやろうという気持ちが湧いた。
「じゃあお前、これから俺の犬な。二度と彼女面するんじゃねぇぞ」
「はいぃ。メス犬の分際で調子乗ってごめんなさい。わん!」
俺はリードを引き寄せてアヤを立たせ、その無駄にデカい胸をぶっ叩いた。
「いっひん!」
ほら、どうする。お前がやるべきことはなんだ?
そう問うように、アヤに視線を向ければ。
「あ、ありがとうございます! デカチチいじめでくださりありがとうございます! もっと叩いていじめてください」
「正解」
「がっ!」
リードから手を放した俺は、アヤの首を締め上げ、何度も胸を引っ叩いていく。
「あっ、じゅぎ、いじめられりゅのじゅきぃ……ぐるぢいの好きでしゅ……うっ……」
あ、酸欠で気絶しちゃった。
まぁ……
――
関係ねぇけど。
「はぁ、はぁ、はぁ……おまんこ、おまんこぶっ壊してください」
「さっさとケツ向けろ」
「かしこまりました。ご主人様」
――
「あっ、おちんぽ来た! ご主人様の最強おちんぽ好き。これで殺されるの好き! 気持ち良すぎて頭おかしくなるの好きぃ! おっ、やっべ、このおちんぽやっべ……私の好きなとこばっか刺激してくる! すぐイク、これすぐイっちゃう!」
――
「あぁ、私もうこのちんぽに逆らえないんだぁ。おっ、おまんこ差し出して好きなだけ遊んでくださぁいって命乞いするしかないんだぁ……あっ、オホッ……」
――
「ご主人様好きだわん。愛してるわん。犬として飼って欲しいわん。もう彼女とか名乗らないから。これからは完全な奴隷、メス犬として生きていきますから、だからもうおまんこぶっ壊してください!」
もうアヤに自我は必要ない。
エリーゼにかかる圧はもう最高潮に高まっている。
あいつはこの状況で真面な精神状態でいられるヤツじゃない。
だから、アヤはもういい。お前の役割は終わった。
最初は捨てる予定だったが、多少の愛着は湧いたし、エリーゼを手に入れた後も飼ってやるよ。
そのために、心底堕として俺に絶対服従だってことを刻み込んでやる。
「はっはっはっは……やっべぇ、これ効っくぅ……イク、イクイクイク、あぁ好き。ご主人様のおちんぽ好き。ご主人様に私の全部捧げます」
それから俺はマシロと同じように、アヤが人の言葉を失うまで犯し尽くした。
「ワン! レロレロレロ、くぅん~!」
必死に俺に媚びて事後のちんぽを舐めとるアヤを眺めながら、俺はエリーゼのことを考えていた。
そろそろあいつはアクションを起こしてくるはずだ。
◆
私は一番じゃないとダメなんだ。
小学校でも中学でもそうだった。
ここでもそうなる。そのためには、こんなところで躓いていられない。
けど、ダメだ。一人で80階層なんて挑めるわけない。
私が80階層に到達できたのは、あいつの術式があったからだ。
ユウヒ・シュトルテ……あいつは『補助術式』の天才だ。
あぁ、イライラする。ユウヒとアヤがパーティーから抜けて他の仲間を探したけど、一年に私以上のヤツはいない。
いや、いたとしてもユウヒの代わりは務まらない。
2年や3年のチームに入れてもらうのはダメだ。
それじゃあ私自身の実力だって誰も思ってはくれない。
大して有名でもない上級生一人くらいが、パーティーに入れられる限界だし、ユウヒ以外にそんな知名度であそこまで優秀な人間なんているわけない。
イライラする。サンドバックもなくなったから、発散する方法がない。
いや、ユウヒさえ戻ってくれば全部解決する。
取り戻すしかないんだ。それしか私が返り咲く方法はない。
ユウヒに私と組む価値を提示する。簡単なことだ。
だってあいつは、そもそも私に惚れてるんだから。
◆
なんて、思ってんだろうな……
いつか、俺がエリーゼに告白した校舎裏に俺は呼び出されていた。
相手は当然、エリーゼだ。
「あんた、アヤと付き合ってるんだって?」
多分アヤが言ったんだろう。
あいつ、いじめられてた反動で自己顕示欲強めだし。
「そうだよ」
別に隠す必要はない。
「あんたの恋心ってそんな軽いものなんだ。私が好きって言ってたの、嘘だったんだ」
その相手の頭を容赦なく踏み抜いたクセに、今更なに言ってんだか……
けど、見下していた相手にそんなことを言ってくるんだから、人間の心ってのは面白いもんだ。
「嘘ってわけじゃないよ。でも新入生代表のエリーゼと俺なんかじゃ釣り合ってないから、俺がどれだけ努力してもエリーゼとは付き合えないでしょ」
「だからアヤで妥協したってこと?」
「言い方悪いな。でも、そういうところがないとは言わないよ」
俺がそう言うと、エリーゼは小さく笑みを浮かべた
「そうなんだ。じゃあ私、あんたと付き合ってあげてもいいわよ」
焦りと期待の混じった笑み。
全く伸びない成績に、離れていく人間関係。
俺と一緒にいた時に感じていた優越感、万能感。そして芽生えた強者としての自覚。
だが、過去の自分と今の彼女のギャップは、理想と現実のギャップなんかより、極楽を知ってしまった分さらに強く濃い。
自分の価値がこれ以上落ちていけば、なによりも自分自身が自分を嫌いになってしまう。
だから俺に縋るしかない。
だから、俺は――
「いや、いいや」
「えっ?」
「アヤって付き合ってみたら結構いい子だし、満足してるっていうか。乗り換える気にはならないかな」
エリーゼの瞳が揺れる。焦りが不安に変わっていく。
ずっと、その顔が見たかったんだ。
「ねぇ待ってよ。どういうこと? 私が好きなんじゃないの? アヤは妥協なんでしょ?」
「だから、前まではそうだったよ。でもアヤってすごいんだよ」
「あんなヤツのなにがすごいって言うの?」
「セックス、すごく上手いんだ。でもエリーゼって付き合っても肌に触れさせてもくれなさそうじゃん」
まぁ、アヤは俺がそういう風に仕込んだんだけど。
「セッ、って……そんなところで好き嫌いを決めるとか最低」
「そうかな、実際相性って大事だと思うけど。まぁけどそういうことだから、じゃあね」
「待って」
「なに?」
「私に協力しなさい。でなきゃアヤの写真をばら撒くわよ?」
そういや、裸の写真で脅されてるとか言ってたっけ。まぁ予想してたけど、やっぱり捨ててなかったんだ。
ていうか、ウケるな。
まぁそっか。俺って一応アヤの彼氏だし、だったら彼女を守ると思うのが普通なのか。
でもアヤは俺の所有物であって、枷じゃない。
「いいよ。好きにしなよ」
「なんで、彼氏なんでしょ?」
「そうだけど。写真のことは君とアヤの問題でしょ。俺が口を挟むのも違うかなって。でも、写真バラ撒いたりしたらアヤ怒るかもね。今のアヤに君が勝てるかな?」
相手は学年主席だ。
俺の力は、エリーゼもよく知っているだろう。
いじめられていたころのアヤとエリーゼの力関係は、今はもう逆転している
「ッ……」
俺が踵を返そうとすると、彼女はそれを制止した。
「待ってよ……」
「なに?」
「じゃ、じゃあさ……」
追い詰められた限界の彼女。
そんな彼女がなにを提案するのか――
わかりきっている。
「私がヤらせてあげる。だから……」
「あのさぁエリーゼ」
俺は彼女に近付いて、見下すように言葉を放つ。
「いつまで立ってんの?」
「え……?」
「お前の魂胆なんてわかりきってるんだよ。俺がいなきゃ、お前はあの栄光に辿り着けない。この先の人生なにがあろうと、お前のピークは俺と組んでたあの時だ。これから先のお前は、あの時の栄光に縋って枯れていくだけの無価値な存在なんだよ」
もう、あの幸せには戻れない。
お前はこれからマイナスに落ちていくだけだ。
そして、そのくだらない人生を変えられるのは俺だけだ。
「仲間になってください、だろ? 俺がここでしたみたいにさ、お願いしないと」
「……なに調子に」
「調子に乗ってるのはお前だろ。頭悪ぃな、ちょっとは状況考えろよ。俺はもうお前に用なんかねぇのに、ここに来てやったんだ。なのにお前は『お願いします』すら言わない。おかしいと思わないか?」
スカートをギュッと握りしめ、体を震わせ始めたエリーゼは、ゆっくりと、けれど俺の言葉に従うように膝を地面に付く。
けれど、頭を下げるのには抵抗があるらしい……中々額を地面には付けようとしない。
だから、
「さっさと頭下げろよカス!」
その頭を掴み、強引に地面に叩き付ける。
「あがっ!」
「で、なんて言うんだ?」
「……お、お願いします。私の仲間になってください」
震える声で彼女はそう言った。
「なんで、俺に仲間になって欲しいの?」
「……一人じゃ無理なの。進まないと、一番じゃないと、ダメだから。一人じゃ生きていけないから」
「じゃあ俺が手伝ったとして、その見返りにお前は俺になにをくれる?」
「なにって……えっと……」
「俺が欲するんじゃない。お前が俺に願うために差し出すんだ。お前にある唯一の価値を」
「……私を抱いてください。お願いします」
「ふっ……」
さて、こっからだ。
エリーゼはアヤとは違う。
支配されることに対して強い抵抗を持っている。
自分が上位であると思い込んでいる。
だから、そんな思い違いをへし折るために……
エリーゼを俺に依存させるために……
俺はエリーゼを抱き締める。
「ごめんエリーゼ。でも、これくらいしないとエリーゼは治らないと思って」
「え?」
「俺、エリーゼに告白する前に実はエリーゼがアヤをいじめてるところを見てるんだ。それで思った。エリーゼを救わないとって」
「私を、救う?」
「いじめって、大体やってる方の心に問題があるんだ。エリーゼは新入生代表とか、周りからの評価とか、色んなものを背負いながら、きっと頑張りすぎてるんだよ。だからいじめなんかやっちゃったんだ」
こいつの本当の心なんか知らない。
どうでもいい。
ただ、弱った心にほとんどの人間にあてはまるような耳障りの良い言葉を並べて、自分はそうなんだと思い込ませるだけだ。
「エリーゼの根本的な問題は、自己評価が高すぎることだ。だからちょっと強引にでもエリーゼはそんなにすごくある必要はないんだって、教えたかったんだ。痛くしてごめんね。――
術式による肉体と疲労の回復。
脳は複合的に情報を処理するから、その癒しを言葉による癒しと混同する。
「全部、私のため……?」
「そうだよエリーゼ。だって俺はエリーゼが好きなんだから」
優しく、甘く、お前自身が俺に支配されたいと望むように……
「俺はエリーゼを助けたいんだ」
「助けて……もう嫌、人から認められないと生きていけない自分が嫌い」
「わかった。それじゃあ今から俺の家に来てくれる? 続きをしようか」