「ばっ……かなに言ってんの!!」
私はそう言って湯船のお湯を直樹にぱしゃんとかける。 すると直樹はけらけらと楽しそうにわらった。
「だってさ、付き合ってるんだよ。それぐらいいいじゃん」
手を浴槽のふちにかけ、前のめりになって私の方に顔を近付ける直樹。私が恥ずかしくて顔を覆い隠すと、直樹はまた楽しそうにクスクスとわらった。もう。なんなの。私をからかって遊んでいるの?
私はなんだか悔しくなって、その勢いか
「いいよ、わかった。どうせ手届かないんでしょ?洗ってあげるよ」
と、少しふくれ気味に言ってしまった。言ってしまったのだ。
直樹はいかにも計画通り、というかんじで口角をつり上げた。私は自分の言葉に自分で驚き、パッと両手で口を塞ぐ。だが、言ってしまったからにはもう遅い。
直樹はどうせこうなることがわかっていたのだろう。
彼は計算高く、蜘蛛のように獲物を捕らえるのがとても得意だ。現に私もいま、直樹に捕らえられてしまった。
直樹はボディソープを私に手渡し、洗えと促す。言ってしまったものは仕方ないだろう、私は諦めてボディソープを手に取った。
「……後ろ向いて」
いくらなんでも、裸を見られるというのは抵抗がある。直樹がしぶしぶ後ろを向いたのを確認すると、私はザバッと音を立てて浴槽から出た。
そして直樹の後ろに膝立ちし、ボディソープを押して手に取る。ふんわりと出たボディソープを手で泡立て、直樹の背中にそっと触れる。
成長した直樹の背中は思ったよりもごつごつしていて、やっぱり男の人なんだ、と私をドキドキさせた。
そっと、直樹の背中をなぞっていく。円を描くようにくるくると、だんだん広く、大きく。
直樹の背中は昔学校のプールで見たときなんかよりずっと逞しくなっていて、不覚にもきゅんきゅんしてしまう。
背中を一通り洗うと、直樹はお尻も洗うように促してきた。私は自らがやってもらったので、と思い、お尻もボディソープでなぞって洗った。
そして、私は言った。
「洗い終わったよ」
直樹はこちらを向いてにっこりわらう。
満足してくれたのかと思い、浴槽に再びつかろうとしたその瞬間、腕を思い切り引かれた。
バランスを崩し、後ろに倒れると、直樹に受け止められた。
受け止めてくれた安心感と、裸を見られたという羞恥で訳がわからなくなり、直樹の顔を見る。
すると直樹は、私の裸を舐め回すように見たあと、にたりとわらった。
「何言ってんの? 前もだけど」
その言葉の意味を理解するのに、時間はかからなかった。