「お母さん!!!!」
近所迷惑なくらい大声で叫びながら、部屋中を探し回る。こたつの中、押し入れの中、キッチン、お風呂場、トイレ、とにかく家中を探し回った。
だが、お母さんの姿はない。どこにもない。
「嘘……」
思わず、かくんと膝をつく。
嘘だ。信じられない。信じない、そんなの。
私を女手ひとつで育ててくれたお母さん。
いつも相談に乗ってくれたお母さん。
発表会を欠かさず見に来てくれたお母さん。
いつでも、私を信じてくれたお母さん___。
ぶわっと、涙が溢れる。それは頬を伝い、拭う力もなくさせる。お母さんが死んでしまったなんてそんなことは信じていないけれど、どうしようもない不安に駆られて泣いてしまう。
でも私の家族はお母さんだけじゃない。
弟だって、おじいちゃんだって、おばあちゃんだっている。でも見つからなかった。
なんで。なんでなんでなんでなんでなんで。
絶望に暮れていた私にふと、希望が浮かび上がった。
そうだ。お母さんは仕事、おじいちゃんとおばあちゃんは買い物、弟はきっと習い事のサッカーだよ。きっと、いや、絶対に。
それは絶望しすぎた故に冷静さを失って浮かび上がった希望だったのかもしれない。
だって私、知ってる。
今日が日曜日だってことを。
日曜日は仕事もない、買い物は土曜日にすべて済ましているし、サッカーだって日曜日は休みだ。そんな希望は一瞬にして打ち砕かれる。
しばらくの沈黙のあと、突然ひとりの人物を思い出す。それは私のとても大切な人で、私の___たったひとりの、恋人だった。
彼までいなくなっていたら?そしたら私はどうすればいいの?この広すぎる世界にひとりなの?
不安な想いが、恋する想いのようにどんどんと募ってゆく。しかも彼はスマートフォンを持っていない。よって、連絡がとれないのだ。
だが幸いなことに、彼の家は近い。自転車でいけば、5分ほどで着く。不安の答えを自ら見つけに行くのは辛いが、連絡がとれない以上仕方がない。
私は財布とスマートフォンだけバッグにいれて、急いで靴を履いた。おばあちゃんがプレゼントしてくれた自転車に跨り、彼の家へと自転車を走らせた。
人の気配のない道路を通る。時期に反して吹いたとても冷たい風は、まるで私の心のようだった。
寂しさに心を押し潰されそうになる中、彼の家に着くと、自転車を置いてインターホンを鳴らした。ピンポーン、という音がやけに大きく鳴り響いている気がしてならなかった。
お願い、出て。お願いだから..。
そう願うことしか、できなかった。