時系列的には第16話の前夜です。
初夜のお話ではありません。
僕が乳鉢の中に薬草を入れてすり棒で叩く。出来上がったハイポーションをジークが瓶詰めする。
僕たちはこの流れ作業をひたすら繰り返し、ようやく今日のノルマを達成する事が出来た。
「終わったー」
僕は最後の薬草をハイポーションに変えるとベッドに寝転がった。
毎日、毎日ハイポーション作りに励んでいるのは僕とジークの家の購入資金稼ぎのためだ。昼は血盟騎士団のメンバーとしてフィールドを駆け、夜は宿屋でダイゼンから渡された薬草をハイポーションにするという作業をひたすら続けている。
「お疲れ様」
ジークは乳鉢のハイポーションを次々と瓶詰めして、僕たちの共有ストレージに格納していった。「こっちも終わったよ」
「ありがとう。助かったよ」
「コー。あまり無理しないで」
ジークが僕の隣に座ると僕の右手をポンポンと叩いた。
「大丈夫。目標があるっていいよね」
とはいえ、ちょっと今は起き上がるのも億劫だった。僕は寝転がったままジークを見上げた。
「じゃあ、私は騎乗スキル上げをするよ」
ジークは立ち上がった。
「ジークも無理をしないでね」
「うん。ありがとう。コー、先に寝てていいからね」
「わかった」
ジークは優しく笑って僕の頭を撫でると部屋から出て行った。
ジークがひょんとしたことから手に入れたユニコーン。今彼は鍛冶スキルを切って騎乗スキルを上げるのに夢中なのだ。昨日ぐらいからようやく乗りこなすことができるようになったらしい。しかし、もっと自由に乗りこなしたいらしく、まだまだスキル上げを続けるようだ。
時計を見るとすでに10時を回っていた。ジークには悪いが、先に休ませてもらう事にしよう。
僕は疲れた体を起こして布団の中にもぐりこんだ。そして、明かりを消そうと手を伸ばした時、明かりの近くに蛾が舞っている事に気づいた。
僕はそれを見てクスリと思いだし笑いをした。先日の蟲風呂でのジークの狼狽した姿を思い出してしまったのだ。
ジークは僕の言葉に色々な想像をして目を白黒させていた。
蟲風呂の中で倫理コード解除をしたのは嘘。でも、ヒースクリフから倫理コード解除の説明を聞いた日の夜、倫理コード解除していたのは本当。
あの時、ジークは強引に僕の唇を奪った。あの感覚は何と表現したらよいのだろう。
全身にしびれが走り、頭の中が本当に真っ白になった。さらに、ジークに背中を撫でられただけで気を失ってしまうほどの快感に襲われたのだ。
また、あの感覚を味わうことができるだろうか?
僕は倫理コードを解除すると服をたくし上げ、わき腹から脇の下まで優しく撫でてみた。ざわざわとした心地よい感覚が全身を包んだ。
ジークが戻ってくるまで時間はあるだろう。ちょっとだけなら……。
僕はメインメニューから≪衣服全解除≫≪下着全解除≫と押した。女性アバターでこんな事をするのは初めてだった。そもそも、このソードアート・オンラインはR15として発売されており、ベータテストの時は≪下着全解除≫なんてメニューはなかったし、本サービスが始まってからはほとんどジークと一緒にいたし……。
僕はまず、男の子としてとても気になる胸のふくらみに手を伸ばした。やや冷たくて柔らかい感触がとても心地いい。乳房の感触を確かめるように揉んでみたり左右に揺らしてみたりしているうちにやがてざわざわと鳥肌が立つような感覚が全身を襲った。
僕は唾を飲み込んで、ふくらみの先端に触れてみた。
息をのむほどの快感が胸から頭へ駆け抜けた。
これはすごいかもしれない。僕の理性は失せてその快感をむさぼるために両手の手の平で二つの蕾を優しく撫で上げる。
(すごい。すごい!)
2倍どころではない。4倍以上の悦楽が僕を包み込んで息が荒くなった。
違う刺激を求め、押しつぶしたりつまみあげてみると全身が震え、熱く燃えた。
そして、さらなる刺激を求めて右手が無意識のうちに股間に伸びた。
男子として過ごしてきた15年間に存在し続けたものはそこにはなかった。ただ平坦な肌と小さな谷間がそこにあるだけだった。しかし、その場所を撫で上げるだけで別の感覚が背中から脳天に駆け抜けた。
「あっ」
小さな谷間に静かに中指を滑り込ませるとついに声が漏れた。自分の声がますます僕の興奮を高めた。
もう、止まらない。
「ぁぁぁっ、あ、あ、あぁぁぁぁっ」
自分の声が僕の耳を責め、左手が胸の中心を責め、右手が股間の敏感な部分を責める。
全身を襲う快感の波にもまれて宙に漂うようだ。
でも、何か足りない。
僕は足りないものが分からないまま刺激を続け快感をむさぼり続けた。
もうちょっとで、なにか来そうだ。徐々に頭が真っ白になって行く。
「はぁぁぁ、あ、ああぁぁっ」
肺の中が空になるほど長い嬌声を上げる。
もうちょっと、もうちょっとだ。
「がちゃっ」
!!!!!!!
ドアが開いた。
「ただいま~」
ジークのふんわりとした声が聞こえた。
危なかった。ジークがドアを開けたのは嬌声を上げたあと、大きく息を吸っていた時だった。
あわてて僕は布団をかぶった。
「あれ、起きてたんだ。寝ててくれてよかったのに」
しまった。明かりを消し忘れていた。なぜ、僕は明かりを消してから行為におよばなかったのだろう。後悔したがもう遅い。寝たふりはできそうもないので、僕は返事をした。
「う、うん。ちょっと眠れなくってさ」
嘘は言っていない。しかし、僕の声は大丈夫だろうか? 不自然じゃないだろうか? ジークはまったく気づいていないだろうが布団の下の僕は何も身にまとっていない。こんな姿を見たらジークはどう思うだろうか。
メインメニューを操作してすぐに服を着る事は可能だけど、メインメニュー操作の音がしてしまう。僕はじっとする事しかできなかった。
「大丈夫?」
ジークの声が近づいてきた。今、布団をめくられたらどうしよう。そんな緊張のあまり心臓が高鳴った。
「大丈夫。もうちょっとで寝れると思う。明かりを消して」
僕は返事をした。その声が少し震えている。
「うん。消すよ。おやすみ」
ジークのクスリと笑う声が聞こえた。「多分、私の方が先に寝ちゃうと思う。ごめんね」
ギシッ。と隣のベッドのきしむ音が聞こえ、メニュー操作の音(たぶん、パジャマに着替えたのだろう)、そして布団をかぶる音が聞こえた。
僕はゆっくりと布団から顔を出してジークの方を見た。すでに仰向けになって寝息をたてている。そうとう疲れているのだろう。
今日の僕はおかしい。どうしても自分が抑えられない。
僕は布団を出てジークのベッド脇に立った。
この体のほてりをジークに鎮めてほしい。こんな気持ちになって抑えられないのは僕が男の子だからなのだろう。きっと、女の子はこんな性欲は強くないはずだ。このまま、ジークの胸に飛び込んだら彼はどう思うだろうか?
僕が逆の立場だったらドン引きするかもしれない。こんな性欲にまみれた女の子なんて嫌われてしまうかもしれない。
でも……。
僕はそっとジークの布団にもぐりこんだ。
ジークに寄り添って彼の顔を撫でた。彼の健やかな寝顔を見ると同性で気持ち悪いという気持ちよりも、とても愛おしい気持ちになる。
なぜ、僕は女性として生まれてこなかったのだろう。
僕はさらに優しく愛情をこめてジークの顔や髪を撫でた。
ゆっくりとジークの目が開かれた。焦点が今一つ定まっていない。夢うつつのようだった。
「コー?」
とろんとした口調だった。
「ジーク」
僕はジークの首筋を撫でた。
「大好き」
ジークは僕の後頭部に左手を回すと強引に引き寄せて唇を重ねてきた。そして、彼の右腕が僕の左胸をもみあげ、乳首をはじいた。
「ああっ!」
口から嬌声が漏れた。一人では達せられなかったレベルにジークのそれだけの行為で僕は引き上げられて全身を震わせた。頭の中が真っ白になり硬直した体が一気に脱力した。
もう、どうなってもいい。
僕は激しい呼吸の中、ジークの次の行動を待った。
「え?」
いつまで待ってもジークは何もしてこなかった。見てみるとまた、静かに寝息をたて眠っている。
(こいつ……)
僕はクスリと笑った。さっきまでの自分がバカみたいだ。こうなったら、ジークにいたずらしてしまおう。
僕はジークの右手を持ってメインメニューの操作を始めた。≪衣服全解除≫。ジークは下着姿になった。
僕はジークの胸板に頬を押し付けて左手で頬から首筋、肩、胸板、脇腹と撫で上げたあと、抱きしめた。
直接触れ合う肌が気持ちいい。体だけでなく心まで温められた。
十分満たされた僕に急速な睡魔が襲ってきた。
このまま寝てしまおうか。
そう考えたが、僕はやめる事にした。今日の僕は本当にどうかしていた。きっと、倫理コード解除なんかをして、初めての感覚をむさぼりたかっただけなのだ。だって、こうして肌を合わせているだけでとても満たされた気持ちになるんだから。
僕はそっとジークの布団から抜け出し、自分のベッドにもぐりこんだ。
そして、睡魔と闘いながら倫理コードを再セットして、自分のパジャマを身に着けた。
「あ……」
ジークが下着姿のままだった……。でも、もう僕の身体は動きそうもなかった。
(まあいいや)
僕はそのまま眠りに落ちていった。
次の日の朝、目覚ましが鳴る前に僕は目が覚めた。
ベッドから起き上がり大きく伸びをした。
「おはよう」
やがてジークも体を起こし、大きく伸びをした。「え? あれ!」
ジークは自分が下着姿である事に気づいて慌てて布団にもぐりこんだ。
「あれ~? どうして裸で寝てるのかな~?」
僕はクスクスと笑いながら近づいてジークの布団をめくった。
「コー。からかわないでよ」
ジークはすぐにメインメニューを操作して服を装備した。「疲れてたからなあ。間違えちゃったのかな。変な夢も見たし……」
「どんな夢を見たの?」
「な、なんでもない」
ジークは頬を赤くして視線を逸らせた。
「なに? なに? 気になっちゃうじゃん」
僕は微笑みながらジークの顔を覗き込んだ。「教えてよぉ」
突然、ジークが僕の右手を取るとそのまま信じられない力でベッドに押し倒しすと、馬乗りになってきた。
「こういうふうにコーを襲っちゃう夢」
ジークの瞳は優しいままだ。この行動は冗談だとすぐわかった。
「やっぱり、ジークは野獣だね」
僕はクスリと笑った。昨日の事がきっと夢に影響を与えたのだろう。彼は完全に無実だが、ちょっといじめてやろう。「やっぱり、男子はエッチだね」
「うぅ」
悔しいが言い返せない。そんな感じの情けない表情だった。
「いいよ」
「え?」
「おはようのキスだけなら、今は許してあげるよ」
僕は小さく笑いながら目を閉じた。
やがて柔らかい感触が唇に感じると、ジークは起き上がって僕を抱き起した。本当にジークは紳士だ。こういう所は本当に尊敬できる。
「さて、今日はどうする?」
ジークが尋ねてきた。
「そうだね。レべリングしてから、鍛冶屋さんに行かない? 僕のフレに炸裂弾を作ってもらおうと思うんだ」
「オッケー」
ジークは返事を返して血盟騎士団の制服を身にまとった。僕もジークの視界に映らない背中で制服に着替えると、彼の左腕を抱いた。
「じゃ、行こうか」
「うん」
新しい一日が今日も始まった。ジークがいてくれて本当に良かった。僕はジークの左腕をさらに強く抱いた。
やっぱ、俺にR-18は無理! かもしれません。書いていて恥ずかしいんだもんこれ。
作者変態だろ。って思われそうだし(すでに手遅れ)
なんかR18なのに壁が必要な展開ってどうなのよ?
力不足を感じますorz
初夜に向けて、精進いたします。orz