※この作品はR-18です。

クラスメイトのダウナークールなシャチ獣人さんに憧れる人間くんと、人間くんをぶち犯そうと思ってるシャチさん   作:何処伊豆湖

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最初人間くんの名前がハルトだったので残ってるかも。誤字報告か何かで教えてもらえると嬉しい。


(旧版)クラスメイトのダウナークールなシャチ獣人さんに憧れる人間くんと、人間くんをぶち犯そうと思ってるシャチさん

初夏の陽気が差し込む、人間界の高校の教室。

 

人間くんは、真面目にノートを取りながらも、チラチラと隣の席のシャチさんを見ていた。

黒髪のショートヘアに、どこか気だるげな眼。机に頬杖をつき、退屈そうに窓の外を眺めている彼女は、異世界から来たシャチ獣人の留学生だ。

 

(……やっぱり、風格が違う。海の王者の系譜だけあって、どんな時でも冷静沈着。僕も見習わなきゃな)

 

人間くんは本気で彼女をクールな留学生として尊敬していた。

一方、その視線を受け止めているシャチさんの脳内は、全く別の意味で沸騰していた。

 

(……また見てる。人間くん、授業中なのに私のことばっかり見てる……。ちっっっさ。相変わらず骨格細すぎ。首筋とか、私がちょっと本気で噛んだら折れちゃいそう。なんでそんな無防備な小動物が、私の隣の席に座ってるわけ? 異世界(うち)の国だったら、可愛すぎてソッコーで保護(監禁)されてるレベルなんだけど……)

 

シャチさんは、ドクドクと跳ね上がる心臓の鼓動と、嬉しさのあまり喉が鳴りそうになるのを、超人的な精神力で抑え込んでいた。怖がらせてはいけない。私は今、知的でクールな留学生なのだから。

 

その時、人間くんが「ふぅ……」と小さく息を漏らした。

5月下旬。窓際の席は、少し動くだけで汗ばむほどに室温が上がっている。

 

「ちょっと、暑いな……」

 

人間くんは何気なく、制服の第一ボタンを外した。そして、Yシャツの襟元をパタパタと煽って風を送り、さらに長袖の袖口を肘のあたりまでたくし上げる。

 

その瞬間、シャチさんの持つ鉛筆の芯がバキッ!!!と派手な音を立てて折れた。

 

(……は????????)

 

シャチさんの目が、限界まで見開かれる。もちろん、表情はダウナーな仮面を維持したままだが、脳内は発情した猿さながらの思考であった。シャチなのに。

 

(待って。何その無防備なデコルテ。何その細い手首。何アピール?? シャチの目の前で『どこからでも美味しく食べてください』って野生の防衛本能捨て去ったの!? 人間の男の子って、そんなに簡単に性癖のダイレクトアタック仕掛けてくるわけ!? 誘惑の強者すぎるでしょ。っていうか、襟元からチラッと見えてる鎖骨、白っっっ……!!)

 

シャチさんの理性がゴリゴリと削られていく。今すぐ自分の上着を頭から被せて、外界のけだものたちの視線から隠し、そのまま実家の巨大水槽に拉致監禁したい衝動と戦っていた。お前が一番けだものである。

 

そんなシャチさんの「深刻な表情(に見せかけた性欲との奮闘)」に気づき、人間くんはハッとした。

 

(あ、しまった……! シャチさんは海の異世界人だから、僕なんかよりずっと人間界の暑さが堪えるはず。それなのに、僕がだらしなく服を緩めたりしたら、不快に決まってる。僕の配慮が足りなかった……!)

 

「あ、ごめんシャチさん。暑かったよね。僕、ボタン戻すから――」

「…………別に」

 

シャチさんは、低く、気だるげな声で遮った。

そして、机の上に置いてあった、キンキンに冷えた自分のペットボトル(お茶)を無造作に掴む。

 

「……冷やしな」

 

トン、と。

シャチさんは冷たいペットボトルを、人間くんの赤くなった首筋に直接、無骨に押し当てた。

 

「ひゃんっ!?」

 

冷たさと驚きで、人間くんは変な声を上げて飛び上がる。

しかし、すぐにシャチさんの意図を彼なりに解釈した。

 

(――ッ! そうか……! 言葉数は少ないけれど、僕の体温が上がっているのを察して、わざわざ冷やしてくれたんだ。なんて思いやりなんだろう……! ぶっきらぼうに見えて、実はクラスメイトをしっかり見てくれている。やっぱりかっこいい!)

違う。人間界に来る前に見たドラマをまねただけだ。

 

「あ、ありがとうシャチさん……! 冷たくて気持ちいいよ。さすが、いつも冷静なシャチさんは頼りになるなぁ」

 

人間くんは、ボトルを押し当てられた首筋をちょっと赤くしながら、 満面のひまわりのような笑顔を向けた。

 

(笑顔まぶしっっっ……!! 頼りになるとか言われた……!! っていうか、私のせいで首筋赤くなってるの、めちゃくちゃエロいんだけどどう責任取ってくれるの!? ああもうダメ、限界、可愛い、今すぐ私の番にしたい――)

 

シャチさんは、自身の限界突破する庇護欲と独占欲を隠すため、さらに顔を険しくして窓の外を向いた。

曇りまくった人間君の眼とは正反対の快晴であった。

 

「……うるさい。」

「あ、うん! ごめんね、授業に集中するよ!」

 

ピシッと背筋を伸ばして黒板に向き直る人間くん。

その引き締まった背中と、まだ少しはだけている襟元を見つめながら、シャチさんは震える手で新しい鉛筆を出し、心の中で固く誓うのだった。

 

(……決めた。こいつが卒業したら、うちに『永久就職』っていう名目で書類作ろう。絶対に外の有象無象に渡してたまるか……)

 

人間くんが「シャチさんみたいにかっこよくなれるよう、もっと自己管理を徹底しよう!」とノートに真面目に授業内容を書き込んでいる横で、彼の進路がマッハのスピードで埋め立てられていることには、まだ誰も気づいていなかった。

 

放課後の夕暮れ時。人間くんが部活動へと向かった後、校舎裏のベンチには、夕日を浴びて気だるげに佇む二人の異世界留学生の姿があった。

 

一人は、黒髪ショートのシャチ獣人、シャチさん。

もう一人は、ブレザーのボタンを全て外し、ワイルドな金髪を揺らすライオン獣人さん。

 

人間界の生徒たちからは遠巻きに畏怖されている二人だったが、その口から漏れていたのは、極めて下世話な「人間属」への品評会だった。

 

「あー……まじで限界。うちのクラスの人間、今日も最高に狂ってたわ」

 

ライオンさんがベンチの背もたれに深く寄りかかり、大きなため息をついた。その尻尾は、思い出すだけでも興奮を隠せないといった様子で、地面をバタバタと叩いている。

 

「……何が」

 

シャチさんは、冷たい缶コーヒーを頬に当てながら、いつも通り気だるげに視線だけを動かした。

 

「体育の時間さ、人間くんてばハードルに足引っ掛けて派手に転んだわけ。で、『痛てて……あ、ライオンさん、お騒がせしました!』とか言って、膝をちょっと擦りむいた状態で笑いやがんの。……は? って思うじゃん。あんな白い、柔らかそうな皮膚の下に、すぐ真っ赤な血が流れてるのが透けて見えてんの。百獣の王の捕食本能、完全に舐められてるよね。あんなの、その場で押し倒して傷口ごと全部舐め回して、私のマーキングで上書きしてくれって誘ってるとしか思えないじゃん」

 

ライオンさんは頭を抱え、自身の凶暴なまでの欲求と戦うようにうめいた。

 

「……甘いな、ライオン」

 

シャチさんが、缶コーヒーを握る手にぐっと力を込める。その眼の奥に、肉食獣としての怪しい光が灯った。

 

「うちの人間くんは、もっとプロ……」

 

「ほう? 聞かせなさいよ、海の王者」

 

「今日、教室の気温が少し上がった時……あいつ、何の前触れもなく、私の目の前で制服の第一ボタンを外した」

 

「ぶっっ!!」

 

ライオンさんが思わず吹き出す。

 

「マジで!? 人間のオスって、そんなに簡単に防衛本能捨てんの!? シャチの目の前で肌晒すとか、それもう『一晩中好きにして』って言ってるようなもんでしょ」

 

「……それだけじゃない。袖をたくし上げて、細い手首を見せながら、私に向かって『暑いね』って微笑んだ。完全に私を煽りにきてる。あんな華奢な体、私がちょっと本気でハグしただけで骨の数本はいきそうなのに、その恐怖心が一切ない。野生の警戒心がゼロ。……あの無防備さは、人間界が開発した最新の誘惑テクニックか何かなの?」

 

違う。

 

シャチさんの呼吸が心なしか荒くなる。

 

「わかるわ……。あいつら、自分たちがどれだけチョロくて美味しそうか、1ミリも自覚してないのよね。この前、私が保健室までお姫様抱っこで運んであげた時なんてさ、顔真っ赤にして、私の胸にか細い手で掴まってくんの。小さくて、柔らかくて、あったかくてさぁ……。もうそのまま私のプライベートサファリに拉致して、一生外に出さないで家畜として溺愛してやろうかと思ったわ」

 

犯罪的思想をのたまうライオンさんを鼻で笑いながらシャチさんは口を開いた

 

「……私はもう、書類の手配を進めてる」

 

「は? 何の?」

 

シャチさんは、気だるげに髪をかき上げながら、冷酷なまでにクールな声で言った。内容はクールでないが。

 

「人間くんが卒業したら、私の実家に『永久就職』させる。名目は有能な人間の雇用だけど、実際は私の専用水槽の奥で、一生私の庇護下で飼育する」

 

犯罪的思想というか、犯罪である。

 

「ちょっとずるい! 抜け駆け禁止なんだけど! だったら私も、うちの領地に『専属調教師』として終身雇用するわ!」

 

その頃、部活を終えた人間くんが、たまたま校舎裏の通りを歩いていた。

遠くから、夕日の中で真剣な表情で(性欲を)話し合う二人を見つけ、人間くんは深く感銘を受ける。

 

(……すごいな。シャチさんもライオンさんも、お互いの進路について、あんなに熱く意見を戦わせているんだ。やっぱり異世界のエリートは志が高いなぁ。僕も、彼女たちに対等に認められるような立派な人間にならなきゃ!)

 

実際に話されているのは無断で決まりそうな君の進路だ。

 

人間くんは「明日ももっと勉強を頑張ろう」と、キラキラした笑顔を浮かべながら帰路につくのだった。その後ろ姿を、二頭の獰猛な捕食者が、ギラついた目で見つめ続けていることには、最後まで気づかずに。

 

 

さて、昨日、シャチさんに冷たいペットボトルで首を冷やしてもらった人間くんは、すっかり「シャチさんはぶっきらぼうだけど、すごく優しくて頼れるクラスメイトだ!」と、ますます憧れを強めていた。

 

致命的な判断ミスであった。

 

放課後。夕暮れ時の下校路を、二人は並んで歩いている。

人間くんより頭一つ分背が高く、スタイル抜群でモデルのように綺麗なシャチさんは、歩いているだけで街中の人間の視線を集めていた。

 

(……やっぱりシャチさんはすごいな。スタイルも良くて綺麗だし、歩き方すら凛としてる。人間離れしたかっこよさって、こういうことだよな。僕も少しでも追いつけるように、男らしくシャキッと歩かなきゃ!)

 

人間くんは、憧れのシャチさんの隣に並ぶ者として恥ずかしくないよう、一生懸命背筋を伸ばし、大股でスタスタと歩こうとする。

 

しかし、シャチさん側の視点は全く違った。

 

(……ちょっと待って。人間くん、昨日からなんか妙に張り切って背伸びして歩いてない? 歩幅を私に合わせようとしてるの? 一生懸命チマチマと足を動かして……。あー、もう、歩く姿すら小動物。ちっっっさ。後ろから抱きしめて『そんなに頑張らなくていいよ』って頭撫で回したい。っていうか、さっきからすれ違う女どもが、さっきからうちの人間くんをチラチラ見てる気がするんだけど? 殺すよ?)

 

シャチさんの三白眼が、周囲の通行人に向けて冷たく光る。

海の王者の威嚇は、人間くんを見ていた獣人たちを震え上がらせた。腐っても海の王者、シコザルでも海の王者である。

もちろん人間くんはそれに気づかず、「やっぱりシャチさんはクールで隙がないなぁ」と惚れ惚れしていた。

 

その時、後方からかすかに車輪の回る音が響いた。

スマートフォンの画面を見たまま、フラフラと暴走してくる自転車が、人間くんの背後に迫っていた。

 

「あ、危ない――」

 

シャチさんは考えるより先に体が動いていた。

驚異的な身体能力と反射神経で、人間くんの細い手首をガシッと掴むと、そのまま自分の胸元へとグイッと引き寄せた。

 

(ドンッ!)

 

人間くんの体が、シャチさんのしなやかで均整の取れた体にすっぽりと包まれる。シャチさんの髪から、ほんのりと海の香りが鼻腔をくすぐった。

 

「っ……、……ケガ、ない?」

 

シャチさんは、いつも通り気だるげでクールな声を絞り出したが、内心は心臓が口から飛び出そうだった。

 

(……っぶな!!!! っていうか近い!!! 手首細っっっ!!! 今、私の胸のところにすっぽり収まってるんだけど!? 柔らか……あったかい……え、何この生き物、保護。ソッコーで保護。今すぐお姫様抱っこに切り替えて、私の寮まで一歩も地面に足をつけずに運んであげたい。っていうか、上から見下ろす人間くんの驚いた顔、プライスレスすぎて心臓止まる……!)

 

シャチさんの脳内は、あまりの可愛さに限界突破寸前。掴んだ手首を離したくない独占欲と必死に戦っている。いつも自分と戦ってるなこいつ。

 

一方、助けられた人間くんは、顔を真っ赤にしながら、シャチさんの「圧倒的な身体能力」に目を輝かせていた。

 

「す、すごい……! 全然自転車の音に気づかなかった。シャチさん、あの一瞬で僕を助けてくれるなんて、やっぱり運動神経も、判断力も、人間とは比べ物にならないくらい凄いです……! 本当にかっこいいなぁ」

 

人間くんは、純粋な尊敬と憧れが詰まった、キラキラとした瞳でシャチさんを見上げる。

 

(……ッッッ!!!! かっこいいって言われた!!! 頼りになるって思われてる!!! ああもう、そんなキラキラした目で私を見ないで。理性の堤防が決壊する。今すぐこの場で押し倒して、私のものだってマーキングキスマーク刻み込みたくなるじゃん……!!)

 

シャチさんは理性を保つため、ギリ……と奥歯を噛み締め、フシューッと激しく息を吐きながら、パッと人間くんの手首を離して、あえて突き放すように背を向けた。

 

「……別に。人間が、トロすぎるだけ。……危ないから、私の服の裾、掴んで歩いて」

 

本当は「はぐれないように手を繋ぎたい」のだが、恥ずかしさとプライド、そして怖がらせたくないという思いから、ぶっきらぼうに制服の裾を差し出したのだ。

 

しかし、人間くんの脳内フィルターは、これを120%高尚な配慮へと変換する。

 

(なるほど……!『人間は身体的に弱いから、僕が守ってあげる』っていう、シャチさんなりの不器用な優しさなんだ……! 自分の能力をひけらかさず、自然に手を差し伸べてくれるなんて、やっぱり留学生の同級生として、本当に尊敬できる素晴らしい人だ!)

 

「うん! ありがとう、シャチさん!」

 

人間くんは嬉しそうに、シャチさんのブレザーの裾をちょこんと掴んだ。お前は本当に高校生か?

その、まるでカルガモの雛のようについてくる無防備な姿に、シャチさんは前を向いたまま顔を真っ赤にして片手で顔を覆うのだった。

 

(……ダメだ、可愛すぎる。実家の書類、今夜のうちに全部書き上げよう。卒業を待つ必要なんてない。明日にでも私の特権で、私の『専属お世話係』として、公的に囲い込んじゃおう……)

 

人間くんが「シャチさんの歩き方、やっぱり綺麗だな。僕も明日からもっと姿勢を良くしよう!」と無邪気に決意している横で、彼の人生の終着駅への切符が、いよいよ発券されようとしていた。

目を覚ませ。

 

人間くんがシャチさんの服の裾を掴んで歩くようになってから、数週間。

 

二人の距離は、人間くんの主観においては「非常に有意義で高尚な異文化交流の友人」、シャチさんの主観においては「私の可愛い小動物もとい将来のつがい」として、順調に縮まっていた。致命的な齟齬がある。

 

そしてついに、定期試験を前にしたある日の放課後、人間くんにとってのみれば奇跡が起きる。

 

「……。次のテスト、赤点だったら、居残りで一緒に帰れなくなる。から……私の部屋で、勉強教えてあげる」

 

シャチさんがいつも通り気だるげに、しかし内心は心臓をバクバクさせながら提案したのだ。やるんだな、いまここで。

 

「えっ!? シャチさんの家で勉強を……!? いいんですか!?」

 

人間くんはパッと顔を輝かせた。

 

(すごい……! シャチさんはいつも学年上位で、あのシャープで知的な思考力にはずっと憧れてたんだ。そんな彼女から直接、一対一で個別指導をしてもらえるなんて……! エリートの勉強法を学べる絶好のチャンスだ!)

 

「めちゃくちゃ嬉しいです! ぜひお願いします、シャチさん!」

 

人間くんは純粋な喜びと尊敬を全身から溢れさせ、犬の尻尾が見えるのではないかというほどのキラキラした笑顔をシャチさんに向けた。獣人族だったら犬系の種族に生まれていたことだろう。

 

――その瞬間、シャチさんの脳内で、何かがプチッと派手な音を立てて千切れた。

 

(……あ、ダメだ、これ)

 

シャチさんの眼の奥から、すっと感情が消え、底知れない捕食者の「本能」が完全に覚醒した。

 

(嬉しい、だって。私の部屋に誘われて、そんな無防備に喜ぶわけ? 『一対一で個別指導』って言葉の意味、人間界の男の子は本当に分かってないの? 私の国なら、これはもう『今夜は朝まで bedroom から出しません』っていうプロポーズなんだけど……)

 

ハルトくんのあまりのチョロさと、無自覚な可愛さに、これまで数ヶ月間、必死に築き上げてきたシャチさんの「理性の堤防」が、跡形もなく大決壊を起こした。

 

もともと決壊していただろう。

 

(……もう無理。耐えない。紳士淑女的な留学生のフリは、今この瞬間をもって終了。家に着いたら、鍵を閉めた瞬間にこいつをベッドに押し倒して、私のものにする。骨が折れないように優しく、だけど二度と私から逃げられないように、隅から隅まで徹底的に――犯す)

 

シャチさんは、自身の黒い独占欲と性欲を完全に煮詰め、冷徹なまでに「やる」と決意した。まさに海のギャング。しかし、長年培ったポーカーフェイスのせいで、外見は「いつも以上に冷徹でクールな、謎のオーラを纏った美少女」にしか見えない。まとうのは性欲なのに。

 

「……じゃあ、決まり。……今から行くから。私の後ろ、離れないで」

 

「はい! よろしくお願いします、先生!」

 

人間くんは背筋を伸ばした。

 

(シャチさん、いつも以上に凛としていて、なんだか近寄りがたいほどの神聖なオーラを感じるな……! これが、真剣に学問に向き合う者の佇まいか。僕も生半可な気持ちじゃなく、全身全霊で彼女の指導についていこう!)

 

すべてが間違っていた。

 

人間くんは、自分がこれからお勉強ではなく、海の王者のプライベートプールで徹底的なマーキングを施されることなど1ミリも察していない。

 

シャチさんは前を歩きながら、スマホを取り出し、片手でライオンさんにメッセージを送る。その指先は、興奮と狩りの愉悦でわずかに震えていた。

 

【シャチ】:今から人間くんを家に連れ帰る。今日で完全に私の番にする。明日から人間くんは私の匂いしかしないから。じゃあね。

【ライオン】:は!?!?!? 待てコラ、シャチお前ふざけんな!!! どうせだまくらかして連れて行こうってんだろ!!! 今すぐ人間くんを解放しろ!!!

 

ライオンさんからの狂ったような着信をすべて無視し、シャチさんはスマホの電源を落とした。

 

「シャチさん、どうかしましたか?」

後ろから無邪気に覗き込んでくる人間くんに、シャチさんはゆっくりと振り返り、昏い、捕食者の肉欲を孕んだ美しい微笑みを浮かべた。

 

「……ううん。……早く行こう」

 

何も知らない人間くんは、「はい!」と嬉しそうに返事をして、自ら進んでシャチさんの極上の檻へと足を踏み入れていくのだった。

 

もう助からない。

 

パチ、とシャチさんの部屋の鍵が閉まる、静かな音が響いた。

 

そこは異世界の意匠が少し混ざった、シックで綺麗な学生寮の一室。

人間くんは「お邪魔します!」と緊張しつつも、これから始まる「最高峰の個別指導」に胸を躍らせ、カバンから参考書とノートを取り出した。

 

「あの、シャチさん、さっそくなんですけど、この前の小テストの範囲でどうしても解けない数式があって……」

 

人間くんは床にノートを広げ、真面目な顔でシャチさんを見上げる。

その瞬間、ハルトの首元から、制服の隙間をぬって、トクトクと脈打つ頚動脈のラインが露わになった。

 

(……ほんと、どこまでも無防備)

 

シャチさんはブレザーを脱ぎ、ベッドの縁に腰掛けた。

瞳孔が、肉食獣のそれのように怪しく縦に収縮している。脳内はすでに、ハルトをどう組み伏せ、どこからマーキングを刻むかのシミュレーションで完全に埋め尽くされていた。

 

「……ねぇ」

 

「はい! 何でしょうか、先生!」

 

人間くんはキラキラした、純粋な尊敬の目を向ける。その『先生』という響きが、シャチさんの背徳感と加虐欲をさらに極限まで跳ね上げた。

 

「……数式の前に。……異世界の、特別な『集中力を高める儀式』、教えてあげる」

 

「えっ、異世界の勉強法ですか!? ぜひお願いします!」

 

人間くんは目を輝かせ、教えを乞うようにシャチさんの前に膝立ちになった。

物理的な距離が、一気にゼロになる。

 

「……じゃあ、目を閉じて。……手、後ろに回して」

 

「はい! こうですか?」

 

人間くんは言われた通り、素直に目を閉じ、両手を後ろに回して完全に抵抗できない姿勢を取った。

 

(――チョロすぎ。バカじゃないの。……愛してる)

 

シャチさんの理性の糸が、完全にブチ切れた。もともと切れてたよそれ。

 

「……ふぅ」と、シャチの潮吹きを思わせる熱い吐息が、ハルトの耳元を掠める。

次の瞬間、人間くんの細い両手首が、シャチさんの片手によって背後の位置でガシッと完全にロックされた。人間の筋力では1ミリも動かせない、圧倒的な肉体差。

 

「え……っ? シャチ、さ――」

 

驚いて目を開けようとした人間くんの視界は、シャチさんのもう片方の手によって優しく、しかし強引に覆い隠された。

そのまま、ドサリ、と大きな音がして、人間くんの身体は柔らかなベッドの上へと押し倒される。

 

「ひゃっ……!? え、シャチさん!? これ、どういう――」

 

「……静かにして。……これが、海の王者の『指導』だから」

 

シャチさんは人間くんの身体の上に完全に馬乗りになり、そのずっしりとした心地よい重みで自由を奪った。

人間くんの制服のボタンが、シャチさんの長い指先によって、一つ、また一つと、外されていく。

 

(あったかい……。今すぐ、私の全部でこの小動物を塗りつぶしたい……!)

 

「シャ、シャチさん……!? なにを……う、動けないです……っ!」

 

目隠しされた人間くんはさすがに現状の異常性に気が付いたようだった。が今更遅い。

 

そんな人間くんの顎を、シャチさんは優しく不器用につまみ上げ、耳元でドロドロに蕩けた声で囁く。

 

「……もう、遅い。……明日、学校中の異世界人に、あんたが『誰の番』になったか、身体で教えてあげるから」

 

カチリ、とシャチさんが人間くんの首筋に、自分の「所有印」をパチリとハメる。それはぶっちゃけ、ハルトの首を飾る「実質的な首輪」だった。やはり犬族獣人であったか。

 

「ひゃんっ……!? 首、なにか冷たいのが――ん、んぅっ……!?」

 

人間くんの純真な質問は、シャチさんの強引で、だけど壊れ物を扱うように甘く濃厚な「キス」によって、完全に塞がれた。

 

はだけたシャツの隙間から、人間特有の、白く、まだ線が細い未成熟な胸元が完全に露わになる。

シャチさんはその光景を前に、ゴクリと喉を鳴らした。いつもクールな彼女が、今は耳まで真っ赤に染め上げ、ハアハアと熱く、どこか湿った吐息を肌に吹きかけている。

 

「……あったかい。……すごく、美味しそうな匂いがする」

 

「ひゃんっ……!?、冷たっ……!」

 

シャチさんの冷たい指先が、熱くなった脇腹から腰のラインへと滑り込んできた。海棲獣人特有のしっとりした冷たい手が優しく、だけど獲物を愛でるような強さでハルトの肉を這い上がっていく。そのあまりの愛玩の質量に、人間くんの身体はビクビクと小さく跳ね上がった。

 

シャチさんは我慢が限界に達したように、首筋へともぎ取るような勢いで顔を埋める。

次の瞬間、柔らかい皮膚に、容赦のない噛み痕が刻まれた。

 

「つ、あぐっ……!、シャチ、さん……っ、痛い……っ」

 

「……痛くない。……動いたら、もっと深く噛むから」

 

痛みと、それ以上に脳を直接乱すような強烈な熱に、人間くんは背中を大きく反らせた。シャチさんは人間くんが逃げ出さないように、その細い腰を自分の肉厚でしなやかな両太ももでがっちりと挟み込み、さらに濃厚なキスマークを鎖骨から胸元にかけて、執拗に、隙間なく刻み込んでいく。

 

肌には、瞬く間にシャチさんのものだと分かる赤紫色の痕跡が乱暴に散りばめられていく。

 

「ふ、あ……、熱い……っ、シャチさん、何これ……おかしいよ……っ」

 

「……おかしくない。……あんたが、私の目の前で無防備に服を緩めたりするから。……全部、あんたのせい」

 

シャチさんの長い指がズボンのベルトを乱暴に引き抜き、金属のバックルが床に落ちて乾いた音を立てた。下着ごと強引に引き下げられ、すべてがシャチさんの昏い熱視線の中に晒される。

 

「あ、だめ、見ないで――」

 

人間くんが涙目で顔を背けようとすると、シャチさんは人間くんの顎を不器用につまみ上げ、無理やり自分の方を向かせた。その瞳は、狂おしいほどの愛おしさと加虐欲にドロドロに濁っている。

 

「……見て。……これから、あんたを私の番にするから。……私の匂いと、私の痕だけで、全部、中まで塗りつぶしてあげる……っ」

 

「ん、んぅっ……!?」

 

必死の懇願は、シャチさんの強引で、だけど壊れ物を扱うように甘く濃厚な口づけによって、また完全に塞がれた。

人間の筋力では絶対に抗えない、海の王者による、暴力的で甘美なまでの溺愛。人間くんは、自分が今までいかに危険な肉食獣の目の前で無防備に振る舞っていたかを、その熱く、狂おしい夜のなかで、身体の芯まで徹底的に「わからせ」られることになった。

 

「……。ここ、すごく正直」

 

シャチさんの昏い眼が、股間に向けられる。

両手をベッドのシーツに縫い付けられるように抑えられ、完全に主導権を奪われた恐怖と混乱のなか、人間くんの身体は、シャチさんの圧倒的な雌のフェロモンと容赦のない愛撫によって、本能的な快感に抗えなくなっていた。下着を剥ぎ取られたペニスは、すでに頭を真っ赤に充血させ、恥ずかしいほどに天を突いてそそり立っている。

 

「ち、違うんです……シャチさん、これは、身体が勝手に……っ!」

 

涙目で顔を真っ赤にし、腰を捩って隠そうとした。しかし、足をがっちりと挟み込んでいるシャチさんの強靭な脚力の前には、微々たる抵抗にしかならない。

 

自分の前でガチガチに硬くなり、先端から愛液をトトッと溢れさせているペニスを見て、シャチさんの脳内は狂喜へと変わった。

 

(……勃った。私の匂いと、私の手だけで、こんなに硬くなって……。やっぱり、私の身体を求めてるんだ……っ!)

 

「……違わない。……あんたの身体、私のことが欲しくてたまらないって言ってる」

 

シャチさんは、自身の興奮でドロドロに濡れそぼった太ももを人間くんの腰に擦りつけながら、その細いペニスを手のひら全体で根元からガシッと掴んだ。人間のものより心なしか体温の低い、だけど滑らかなシャチさんの手のひらが、極限まで張り詰めたペニスの皮をグッと引き下ろす。

 

「ひゃうっ……っ!」

 

「……ここ、すごくピクピクしてる。……可愛い」

 

シャチさんは、敏感な鈴口を親指の腹でぐりぐりと弄び、溢れ出る蜜をペニス全体へと塗り広げていく。それと同時に、もう片方の手で人間くん胸の突起を爪の先でカリカリと刺激した。

 

上下からの容赦のない同時責めに、人間くんの脳内は完全にパニックを起こした。

 

「あ、あ腹が、変になる……っ、シャチさん……っ、だめ、出ちゃう……っ!」

 

混乱している人間くんの口から飛び出る声はシャチさんをさらに興奮させる。

 

「……もっと可愛く鳴いて。……ほら、もっと硬くしてあげるから」

 

シャチさんは低く喉を鳴らし、肉棒を握る手のスピードを一気に速めた。

手のひらの中でペニスがドクドクと脈打ち、限界を超えてさらに一回り膨張していく。シャチさんはその根元をきつく握り込み、射精をわざとじらすように、先端の最も敏感な部分を自分の熱い舌先でジュルリと舐め上げた。

 

「んああああっ……!!」

 

人間くんは背中を弓なりに反らし、目元から涙を溢れさせた。

恐怖しているはずなのに、身体はシャチさんの強引な愛撫に狂わされ、完全に海の王者の「獲物」として調教されつつあった。シャチさんはその人間くんの艶めかしい姿を上から見下ろし、さらに昏く、深い肉食の笑みを浮かべて、次なる「本番」へと身体を導いていくのだった。

 

「……こっち見て」

 

シャチさんが、自身の制服のシャツに手をかけ、ボタンをゆっくりと外していく。

人間くんが荒い息のまま涙目の視線を向けると、そこには、夕暮れの薄暗い部屋のなかで白く、そして妖艶に浮かび上がるシャチさんの生まれたままの姿があった。

 

(……綺麗だ……)

 

恐怖や混乱すら一瞬だけ忘れて、人間くんはその圧倒的な美しさに見とれてしまった。

均整の取れたしなやかな肢体、海の最強捕食者としての無駄のない筋肉のライン、そして豊かに膨らんだ胸。いつも気だるげに、制服の下に隠されていた、異世界の神秘を体現したような滑らかな肢体は、息を呑むほどに完璧で、そして恐ろしいほどのエロティシズムを放っていた。

 

呆然とその肉体を見つめていると、シャチさんは耳まで真っ赤に染め上げ、恥ずかしそうに、だけど逃がさないという強い意志を込めてハルトの腰に跨った。

 

「……見とれてる。……可愛い」

 

シャチさんは、ガチガチに張り詰めたペニスを、今度は自身のドロドロに濡れそぼった秘割の入り口へと導く。そこからは、今すぐ人間くんを迎え入れたくてたまらないといった風に、熱い愛液が溢れ出ていた。

 

「シャ、シャチさん……本当に、入っちゃ……っ」

 

「……入る。……全部、私のなかに閉じ込めるから」

 

シャチさんはゆっくりと、腰を下ろしていった。

熱く、狭い割れ目が、ジワジワと根元まで飲み込んでいく。

 

「あ、あぐっ……!、あつ、い……っ」

 

ペニスが、シャチさんの吸い付くような肉壁にギチギチと締め付けられていく。人間のそれとは比べ物にならない、獣人特有の強靭な膣圧。包み込まれるような圧倒的な熱量に、頭がひっくり返りそうなほどの快感に襲われた。

 

「つ、あ……っ、シャチ、さん……、奥まで、当たって……っ!」

 

「ん、ぅっ……!……っ。私のなかに、あんたがいる……っ」

 

すべてを完全に受け入れたシャチさんは、その眼を限界まで見開き、歓喜と快感に身体をビクッと震わせた。

ペニスが、自分の最も奥深くの、一番愛おしい場所を容赦なく押し広げている。その物理的な結合に、シャチさんの脳内は言葉にならない愉悦で満たされた。

 

シャチさんは人間くんの胸に両手を突き、完全に自分のなかに内包した状態で、恍惚とした歪んだ笑みを浮かべる。

 

「……ふふ、捕まえた。……もう、絶対に抜いてあげない。……私のなかで、いっぱい壊れて……っ」

 

全てを受け入れた海の王者は、嬉しそうに喉を鳴らしながら、人間くんを完全に自分の番とするための、狂おしく甘い抱擁のピッチを上げていくのだった。

 

「あ、あぐっ……!……これ……ッ!?」

 

すべてを挿入された瞬間、人間くんの脳内は快感で支配された。

 

シャチ獣人としての彼女の肉体は、人間とは根本的な構造が違っていた。激しい荒波の中でも、海水が1ミリも侵入しないように強固に発達した常識外れの膣圧。それはまるで、意思を持った頑丈な肉の壁が、肉棒を全方位から強烈な力で締め上げ、 圧搾しているかのようだった。

 

「シャチ、さん……っ、抜けて、ない……締め付け、が、強すぎて……っ!」

 

「……だめ。抜かせない。全部、私のものにするって決めたから……っ」

 

さらに人間くんを絶望させたのは、海の王者としての生殖生態そのものだった。

野生のシャチの交尾は、冷たい海中で外敵を警戒しながら行うため、本来はほんの数十秒、一瞬で終わる。その短時間で確実に精子を搾り取るために発達した膣内の構造――内壁の奥に幾重にも重なる、強靭でうねるような「肉ひだ」の波が、亀頭を容赦なく締め付け、扱き上げてきた。

 

一突きごとに、ペニスの神経が一本残らず裏返るような猛烈な快感が脳髄を直撃する。

 

「ひ、あぁっ……! だめ、これ、耐えられ……っ、すぐ出ちゃう、出ちゃうからぁっ!!」

 

人間の許容量を遥かに超えた超高圧の搾精構造に、腰をガタガタと震わせ、涙をボロボロと溢れさせた。まだ数回しか腰を動かされていないにもかかわらず、限界の限界まで張り詰めたペニスの先端が、ドクドクと激しく脈打ち始める。

 

しかし、その反応を見たシャチさんの眼には、昏い捕食者の歓喜が灯っていた。

 

「……いいよ。いっぱい出して。私のなかに、遺伝子、全部、注ぎ込んで……っ」

 

シャチさんは、人間くんの腰を強靭な太ももで完全にロックしたまま、さらに容赦なく腰を落とした。

最奥の肉ひだが鈴口をゴリッと強烈に圧迫した瞬間、人間くんの理性が完全に吹き飛んだ。

 

「んあああああっっっ!!! でる、出ちゃう、あああああッ!!!」

 

人間くんはシャチさんの体内に向けて、熱い精液をこれでもかと激しくドクドクと噴射した。あまりの快感の強さに視界が白く染まり、ぐったりとベッドに沈み込む。

 

――しかし、恐怖の本番はここからだった。

 

「ふ、あ……っ、すごい、熱いの、いっぱい入ってきてる……っ。でも、……まだまだ足りない」

 

「え……っ、あ、あぜんぜん、締め付けが、緩まない……っ?」

 

普通なら、射精すればペニスは萎え、行為は終わる。しかし、シャチさんの目的は確実な受胎だった。

一度捕らえた肉棒を絶対に逃がさないよう、海水遮断の膣圧はさらにギチギチと強度を増し、射精直後の過敏なペニスを全方位から容赦なく圧搾し続けた。

 

「ひゃ、ひぃあぁっ!? シャチさん、もう出ない、出ないからぁっ! 痛い、おかしくなるぅっ!」

 

「……ううん、まだ出る。あんたの身体、まだこんなに熱いもん。……私が、もっと搾り取ってあげる」

 

シャチさんはイッていようがお構いなしに、嬉しそうに喉を鳴らしながら、再び狂ったようなピッチで腰を激しく振り始めた。

射精直後の超敏感なペニスを、容赦のない肉ひだの波がゴリゴリと強烈にしごき上げる。人間くんは絶頂に向かって、強制的に身体を狂わされ、 部屋のなかに彼の甘悲鳴がどこまでも木霊し続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

翌朝、遮光カーテンの隙間から差し込む朝日は、信じられないほどに荒れ果てた戦場を照らし出していた。

 

床に散らばった衣類の残骸、そしてベッドのシーツに刻まれた、文字通り海の王者がのたうったかのような凄まじい乱れの痕跡。

人間くんは、一晩中シャチさんの強靭な肉ひだの波に搾り取られ続け、もはや全身の関節という関節が使い物にならないほどガタガタになっていた。腰の感覚は麻痺し、首筋から胸元にかけては、服で隠しきれないほどの鮮やかな赤紫色の噛み痕がびっしりと刻まれている。

 

横では、生まれたままの姿のシャチさんが、人間くんの細い腰に尾鰭を絡めるように抱きつき、満足げにスースーと寝息を立てていた。

 

(……あ、あはは。とんでもないことになっちゃったな……)

 

ズキズキと痛む身体をなんとか動かしながら、それでも、彼の超絶ポジティブな脳内フィルター(脳内お花畑)をフル稼働させていた。

 

(でも、そうか……。異世界のひとには『発情期』があるって、授業で習った気がする。シャチさんはいつもクールでストイックだから、誰にも相談できなくて、きっと限界だったんだ。それを僕みたいな人間に頼ってくれたんだから、これは異文化交流の友人として、助け合えて良かったんだよね……!)

 

人間くんは、自分が「ただの最高に美味しい獲物」として朝まで文字通り骨の髄まで貪り尽くされた事実を、120%の善意で【多種族共生社会における、友人としての不可抗力的な相互扶助】と脳内変換した。

 

その時、人間くんのモゾモゾとした動きに気づき、シャチさんがゆっくりと眼を開けた。

一晩中肉欲を満たし続けた満足感から、その表情はどこか甘やかで、いつもより少しだけ柔らかい。

 

「……おはよ。腰、大丈夫……?」

 

人間くんは身体の激痛を必死に堪え、憧れの留学生に心配をかけまいと、満面のピュアで爽やかな笑顔(※首輪つきである)を向けた。

 

「シャチさん、おはようございます! 腰はちょっと……いや、かなりバキバキですけど、大丈夫です! その、獣人さんには発情期がありますもんね。シャチさんみたいなかっこよくて素敵な人が、本能に苦しんでるなら、友人としてできることなら僕、何でもしますから! 役に立てて良かったです!」

 

「…………は?」

 

その瞬間、シャチさんが凍りついた。

 

(……友人? 発情期? 助け合い……?)

 

シャチさんのなかで、呆れと、怒りと、そして言葉にならない愛おしさと情欲が、一瞬で限界突破して大爆発を起こした。

 

(――はあああああああああ!?!? こいつ、朝まであれだけ鳴かされて、中に出されまくって、私の所有印までハメられてるのに、まだ友人同士のボランティアだと思ってんの!? どんだけチョロいの!? っていうか、そんな無防備な顔で何でもしますとか、シャチの目の前で言うわけ!? バカなの!? 可愛すぎて本当に頭おかしくなる……っ!!!)

 

シャチさんの眼の瞳孔が、昨日よりもさらに禍々しく変化した。

怒りと愛欲で顔を真っ赤に沸騰させたシャチさんは、無言のまま、人間くんの細い両肩をガシッと掴んでベッドに猛烈な勢いで押し倒した。

 

「ひゃんっ!? シャ、シャチさん? あの、もう朝ですし、学校の準備が――」

 

「……うるさい。勘違いなんて、もう一生させない」

 

シャチさんは人間くんの身体に容赦なく馬乗りになり、まだ赤く腫れぼったいペニスを、自分のドロドロに濡れた秘丘の入り口へ、昨日以上の力任せでグイグイと押し当てた。

 

「あ、あっ……! うそ、締まりが、昨日よりヤバ――っ!」

 

「……あんたが悪い。……そんなバカなこと言う口は、こうして塞ぐ。……あんたが私のつがいだって骨の髄まで理解するまで、何回でも、何十回でも、わからせてあげるから……っ!」

 

「ん、んんぅーーーっっ!?」

 

人間くんの純真な勘違いは、シャチさんの嫉妬と独占欲が全開になった、昨日よりさらに暴力的で激しい「朝のわからせH」によって、再び強制的に塗りつぶされるのだった。

 

 

 

 

 

それから、さらに数ヶ月が経った――。

 

人間界の高校の、いつも通りの教室。

人間くんは、首元まできっちりと制服のボタンを留め、真面目な顔で教科書を開いていた。

 

一見すると以前と変わらない、熱心で健気な優等生。……ただ一つ、彼の制服の襟元からは、シャチさんの部屋と同じ「甘い潮風の香水」の匂いがプンプンと漂っており、シャツの隙間からは異世界の文字が刻まれた頑丈なチョーカー(首輪)が常にチラついている。

 

「ねぇ。今日の放課後、ちょっとウチのクラス来ない? 良い肉が手に入ったから、お肉パーティーしよ?」

 

廊下側の窓から、金髪を揺らしたライオンさんが、飢えた肉食獣の目で人間くんを誘惑する。彼を「専属調教師」として囲い込む隙を、彼女はまだ諦めていなかった。

 

「あ、ライオンさん! ありがとうございます、でも僕、放課後は――」

 

答えようとした瞬間、彼の隣の席から、ドォン……!!と地響きのような音が鳴り響いた。

 

シャチさんが無言で机を叩き、立ち上がったのだ。

いつも通り気だるげな眼。しかし、その瞳の奥には、ライオンさんを文字通り海の藻屑にせんとする、極低温の縄張り意識がギラギラと渦巻いていた。

 

「……ライオン。うちのに、変な毒エサ与えようとしないで。……今日の放課後、私の実家に提出する『永久就職内定承諾書』にサインする日だから」

 

「はぁあ!? お前まだそれ進めてたの!? 職権濫用だろクソシャチ!!」

 

火花を散らして睨み合う、学校の二大スター。

周囲の人間界の生徒たちは、「おお……さすが異世界のエリートたちだ。放課後の進路や多種族共生社会の雇用問題について、あんなに熱く議論している……!」と、遠巻きに畏怖の眼差しを向けている。

 

そして人間くんは……

 

 

 

 

「……ん、これ、実家(国家施設)から取り寄せた書類。……ここにサインして」

 

放課後の誰もいない教室。シャチさんがいつも通りクールな顔で差し出してきたのは、人間くんの人生を「シャチさんの専用水槽」に永続的に縛り付ける、合法的な飼育契約書兼内定承諾書だった。

 

人間くんは首元に嵌められたチョーカーをそっと指で触り、それから書類をじっと見つめる。

 

実は、もう気づいていた。

毎晩のように海水遮断のギチギチの膣圧で搾り取られ、朝起きたら「友人として~」と言っただけでブチ切れられてベッドに引き戻される日々。さすがにどれだけお花畑な人間くんでも、これが「高尚な異文化交流」でも「発情期のボランティア」でもないと、ついに気づいてしまったのだ。

 

シャチさんは、人間くんが少し黙り込んだのを見て、内心で最悪のシミュレーションをして破滅思想に陥っていた。

 

(……あ、黙った。……もしかして、気づかれた? 私がただの欲情した肉食獣だって、監禁しようとしてるってバレた……? 嫌われた? 拒絶される……っ?)

 

シャチさんの眼が、不安と恐怖で小さく揺れる。もし拒絶されたら、今すぐ力ずくで拉致するしかないと、その指先がかすかに震えた。そういうところだぞ。

 

しかし、人間くんは書類を受け取ると、ペンを握って迷わず自分の名前をサラサラと書き込んだ。

 

「え……っ?」

 

驚くシャチさんに、人間くんはくるりと振り返り、今までで一番優しく、すべてを見透かしたような、大人の微笑みを向けた。

 

「いいですよ、シャチさん。僕、ここに就職(永久就職)します」

 

「……。あんた、これがどういう意味の書類か……」

 

「わかってますよ」

 

クスッと笑って、自ら一歩、シャチさんの懐へと踏み込んだ。そして、いつも彼女にやられているように、細い腕で、シャチさんのしなやかな腰を優しく抱きしめる。

 

「シャチさん、いつも言葉はぶっきらぼうだけど、僕が他の異世界の人に連れて行かれそうになったら怒るし、僕が他の人のところに行こうとしたら寂しそうな顔をしますもんね。……勉強じゃなくて、僕自身が欲しかったんですよね?」

 

「っ……!」

 

シャチさんは顔を真っ赤にし、完全に言葉を失った。クールな留学生の仮面が、圧倒的な包容力の前に、粉々に砕け散る。

 

「最初はびっくりしたし、身体もすごく大変ですけど……でも、シャチさんがそこまで僕に執着してくれて、僕を必要としてくれるなら、僕は喜んでシャチさんの番になります。……だって、僕もシャチさんのこと、かっこよくて大好きですから」

 

ニコッと、人間くんはチョーカーを指で弾きながら、聖母のような全肯定の笑顔を浮かべた。

 

(――ッッッ!!!!)

 

シャチさんの脳内で、愛おしさと幸福感がビッグバンを起こした。

気づかないほどチョロいと思っていた小動物は、実は「すべてを理解した上で、シャチの重すぎる愛を笑顔で飲み込む、底知れない怪物」だったのだ。

 

「……、あんた、ほんと、バカ……。……もう、絶対に一生、離してあげないから……っ」

 

シャチさんは人間くんを壊れ物のように、だけど骨が軋むほどの力で強く、強く抱きしめ返した。その目からは、嬉しさのあまり涙がポロポロと溢れていた。

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