「あ、あなた……? どうしたの……? 顔、すごく怖いよ……っ」
ベッドの上で、大人の理性を辛うじて保っている美咲が、俺のただならぬ気配を察して怯えの混じった声を上げた。
俺の目は完全に血走り、胸の奥では彼女を失う恐怖と、彼女をこの暗闇に永久に閉じ込めたいという醜悪な独占欲が、真っ黒な渦を巻いていた。
「美咲……お前を、絶対に消させない。そのためなら、俺は何だってする」
言い落とすと同時に、俺は美咲の細い両手首を掴み、ベッドの上へ手荒く組み伏せた。
優しく愛撫しても、彼女の肌はプラスチックのように冷えていく一方だった。なら、もっと強烈な、彼女の魂の髄までを焼き尽くすような衝撃を与えるしかない。俺はその細い身体を、強引にうつ伏せへとひっくり返した。
衣服をまとめて剥ぎ取り、シーツに押し付けられた彼女の腰をぐっと高く突き出させる。
露わになった彼女の割れ目は、恐怖のせいか、昨日ほど蜜を溢れさせてはいなかった。冷たく、固く閉じられたその秘部に、鉄柱のように硬く猛り狂ったペニスの先端を容赦なく押し当てた。
「ひうっ……! いっ、痛いよ、あなた……っ」
美咲が身をよじるが、俺はその抵抗を無視して、彼女の腰を掴む手に力を込め、一気に腰を進めた。
「あぐっ……! ひ、あぁぁーーーっ!」
美咲の口から、割れるような悲鳴が上がった。
先端が、冷たく固い粘膜の抵抗を強引に押し広げ、きつい肉の壁を割り進んでいく。人間の体温とは違う、冷暗所の肉に割り入るような生々しい緊密さと拒絶感。肉壁がペニスをギリギリと締め付け、ギチギチと軋むような摩擦の感触が、俺の亀頭を容赦なく圧迫した。
「はぁっ、はぁっ、美咲……! 美咲……っ!」
俺は構わず、腰のピストンを開始した。
ドス、ドス、と肉と肉が激しくぶつかる、鈍く暴力的な音が鳴り響く。最初は冷たく固かった彼女のそこは、激しい摩擦の熱によって、じわじわとドロドロとした粘度の高い蜜を内側から溢れさせ始めた。
ズブズブ、ジュブジュブと、激しく肉を抉る卑湿な水音が暗闇に溢れかえる。
「ひうっ、あ、アン、っ……あ、ぁぁっ! おにいたん、ちがう、あなたぁっ……!」
激しく腰を叩きつけられる衝撃のせいか、美咲の声のトーンが狂ったようにブレる。大人の、引き裂かれるような喘ぎ声の合間に、突然、掠れた幼児退行した呼び声が混ざり、喉をキチキチと鳴らすような痙攣的な嬌声へと変わっていく。
言葉にならない彼女の精神の崩壊そのものが、肉声の鳴き声となって部屋の空気を震わせた。
俺は彼女の髪を掴んで顔をのけ反らせ、冷たい首筋に歯を立てて深く噛みつきながら、さらにピストンを加速させた。どれだけ激しくぶつかっても、彼女の肉は、俺の暴力的な愛を吸い込むように、さらにきつく、熱を帯びてペニスを締め上げてくる。
「美咲……っ!」
俺は彼女の腰を極限まで引き寄せ、後ろからその最奥へと、容赦なくペニスを突き刺した。
「あぐぁっ……!?いたいぃっ!! んんんーーーっ!」
悲鳴が寝室の暗闇に木霊する。
昨日までの、お互いを慈しみ合うような官能はそこにはなかった。結合部は、無理やり抉り広げられるような卑湿な摩擦音を立て、美咲の冷たい粘膜が、俺の暴挙を拒絶するようにギリギリとペニスを締め上げる。
だが、その痛みを伴うほどのきつさが、俺の加虐心をさらに狂わせた。
「はぁっ、はぁっ、美咲……! ここにいろ、俺の腕の中にいろ……っ!」
「あ、あぁっ! ひうっ、あ、あのお店……パスタ、思い出せない……っ、お父さん、ちがう、あなたぁっ……!」
肉体を貫かれる凄絶な衝撃のせいか、美咲の口から、大人の絶望と幼い退行が、狂ったように混濁して溢れ出る。
俺は彼女の細い腰を両手で万力のように固定し、容赦のないピストンを繰り返した。ドス、ドス、と肉と肉が激しくぶつかる、鈍く暴力的な音が鳴り響く。
美咲の身体は、俺が突き入れるたびに激しく揺れ、シーツを掴む彼女の指先からは、人間の血ではない、冷たく透き通った愛液がぐちゃぐちゃに溢れ出してベッドを汚していく。
彼女が苦痛と快楽の狭間で声を枯らし、壊れた人形のように頭を揺らすたび、俺の脳内には歪んだ全能感が満ちていった。
(そうだ、これでいい。俺の暴力的な愛で、お前の魂を塗りつぶしてやる)
(外の世界も、過去の記憶も、全部消えてしまえ。この痛みを伴う快感だけが、お前の世界のすべてになればいい——)
「ひゃあぁっ! あ、あぁっ! う、うあぁぁーーーっ!」
美咲は完全に白目を剥くようにして、激しく腰を震わせた。
俺は彼女の細い腰を限界まで引き寄せ、彼女の肉の最も深い場所へと、自身のすべてを叩きつけるようにして激しく射精した。
「う、あぁぁぁーーーっ!!」
熱い精液が、彼女の冷たい最奥をドクドクと満たしていく。美咲の身体は、痙攣するように何度も大きく跳ね上がり、やがて、糸が切れたようにベッドの上へと崩れ落ちた。
ハァ、ハァ、と荒い息を吐きながら、俺はペニスを引き抜き、彼女の隣に横たわった。
やり切った。これだけの衝撃を与えたのだ。彼女の存在は、より強固にこの世に縛り付けられたはずだ——。
そう信じて、俺は愛おしく美咲の背中に手を伸ばした。
しかし。
「……え?」
手のひらが触れた瞬間、心臓が凍りついた。
違う。何かがおかしい。
手応えが、あまりにも「軽い」のだ。
慌てて美咲の身体を仰向けにひっくり返す。俺の目に飛び込んできたのは、言葉を失うほどに凄惨な現実だった。
美咲の身体は——昨日までとは比べ物にならないほど、致命的なまでに「薄く」透けてしまっていた。
胸の起伏も、太もものラインも、陽炎どころか、まるで消えかけのホログラムのように背後のシーツの模様を完全に透過させている。あれほど激しく注ぎ込んだはずの俺の精液も、実体を失った彼女の股間をすり抜け、ただシーツの上に虚しく広がっていた。
「美咲……? おい、美咲! 嘘だろ……?」
俺は半狂乱になって彼女の肩を掴もうとしたが、俺の手は、冷たい空気の渦を通り抜けるようにして、彼女の身体をスカスカとすり抜けた。質量が、完全に消えている。
美咲はゆっくりと目を開けた。その瞳には、もう涙を流す水分すら残っていない。
そして、彼女は感情の消え失せた、底のない虚無的な瞳で俺を見つめ——信じられないほど静かな、掠れた声で囁いた。
「……ぁ……あ、な、た……? わたし……だれ、だっけ……?」
その瞬間、俺の頭の中で、何かが完全に破滅の音を立てて弾け飛んだ。
記憶の欠落どころではない。彼女は今、自分の名前すら、自分が何者であるかさえも失ってしまったのだ。
強すぎる加虐的な情動は、彼女の輪郭を一時的に強めるどころか、彼女の魂の器そのものを修復不可能にまで破壊し、世界の向こう側へと完全に押し流してしまった。
優しさもダメだ偏愛もダメだ。激しい闇の情動で抱いても、結果はこれだ。
どんな方法を使っても、彼女の心は摩耗し、消えていく。この世界の絶対的なルールを前に、俺は暗闇の中で声を上げて絶望の悲鳴を上げた。
しかし、叫び疲れて、ただ消えかける彼女の光の輪郭を見つめているうちに、俺の胸の奥底に、ひどく静かで冷徹な「諦念」が満ちていった。
(ああ、そうか……。美咲が、美咲であることを忘れていくなら……)
(俺も、外の世界のすべてを忘れればいいんだ)
会社も、友人も、家族も、生きていた頃の美咲の思い出も、そんなものはこの暗闇には必要ない。美咲から「美咲」という輪郭が消えていくのなら、俺の側からも「社会」という輪郭をすべて削ぎ落とし、ただの抜け殻になって彼女に寄り添えばいい。
「いいんだよ、美咲。何も思い出さなくていい……。君が君を忘れても、俺が君のすべてになるから」
俺は触れられないほど薄くなった彼女の残滓を、せめて心だけでも包み込むように、優しく、優しく腕を伸ばした。
社会を捨て、人間を捨て、この暗闇の寝室という名の棺桶に、二人きりで引きこもる。
そんな、狂っているけれど、どこまでも甘やかな破滅への決意が、俺の胸の中で静かに、けれど決定的に産声を上げていた。