天然ドSな彼女に抱かれ続けた結果、色々あって一緒に暮らすことになりました。 作:桃ノ木ネネコ
その夜。
黒川は松葉姉妹の屋敷の地下室に招待されていた。
「ささ、こちらにお座りになってくださいませ」
「は、はぁ、それでは、失礼いたします」
そこには、ソファーとテーブル、そして何かを吊るすための滑車があった。
「ここは、何の部屋なんですか?」
「うふふ、秘密基地みたいなものです。
ここに悩める人をお呼びしてお話を聞いていますの。」
「そ、そうなんですか……」
「はい、そうですわ。今日はゆっくりお寛ぎ下さいまし」
「は、はぁ……」
そう言うも黒川は目のやり場に困っていた。
なぜなら姉妹二人の服装は黒いドレス……と見せかけた
ボンテージ衣装だったからである。
胸元が大きく開いており、そこから覗かせる白い肌と、
強調される谷間に視線がいってしまう。
それはいつものゴスロリドレスとは違う、エロティックな雰囲気を見せていた。
「どうかなさいましたか?」
「いえ、何でもないですよ……」
「さぁ、悩みをお聞きいたしますわよ」姉である結衣の方が微笑みかける。
「お、俺なんかのちっぽけな悩みなんか聞いても……」
「いいからお話しなさって」
結衣は有無を言わせない口調で言う。
「は、はい……実は……」
***
「なるほど……そういう事でしたのね。」
「は、はい……」
「そんな時は自分の心の声に従って、自分の意志を解放するのがいいですわ。」
「そ、そんなことできるわけが……」
「できますわよ。あなたは自分の心に嘘をついているだけ。」
「そ、そんなことは……」
「本当はもっと自分に正直になりたいんでしょう?でも、それができない。」
「ち、違……」そう言おうとするが、彼女たちに見つめられ、
声にならなかった。
姉妹の目には催眠術のような効果があった。
「いいんですよ。素直になっても。ほら、私達を見て。何もかも忘れて。」
結衣は優しく囁きながら、瞬の首筋を撫でる。
「あぁ……」
瞬は思わず吐息を漏らす。その瞬間、彼の理性のタガは外れた。
「あぁ……そう考えると、何か心が休まるような気がしてきます……」
「それは良かったですわ。」
「俺……俺、本当はこんなんじゃなかったはずなのに……」
黒川の瞳が潤む。
「余計な感情は捨て去るといいのですわ」
「この煩悩の象徴である髪とともに……」
そう言う姉妹の手にはカミソリが握られていた……。
***
数日後の朝。
「おはようございます!センパイ」
講義を受けるために構内を歩いていたすみれたちに挨拶する人物がいた。
黒川瞬だった。
「あ、ああ、おはよう、黒川君」すみれも挨拶し返す。
(なんだ?この前まで俺らを見るだけで逃げ回っていたのに……
どういう風の吹き回しだ?)
そう不思議がるユキヤの目の前にいる黒川は、ニット帽を深々と被っていた。
「ど、どうしたんだ?お前……」
「ああ、もう隠しても仕方がないから言っちゃうけど……」
黒川は帽子を外し、その頭を見せる。
そこには髪の毛が1本たりとも存在しなかった……。
「お、おい、まさか……」
「そうなんです。思い切ってすべてを変えてみたくて!」
その青光りする頭を手で擦りながら彼は満面の笑みで言った。
「お、おおぉ……マジかよ……」
ユキヤはその変わり果てた姿に驚きを隠せなかった。
「な、「何か悪い事でもしたの?」と、すみれも目を丸くした。
「いえ……髪と一緒に色々と吹っ切っただけですよ……」
「そ、そう……」すみれは苦笑いを浮かべるしかなかった。
「じゃ、僕はこれで失礼しますね」
「お、おう……」
「また後程会いましょう」
「え、えぇ……」
「それでは」
「うん、じゃあね」
二人は手を振って別れた。
「な、なんか、凄い事になってきたな……」ユキヤが呆然と呟く。
「ま、まあ、本人がそれで満足ならいいんじゃないかな……」
すみれも若干引き気味になっていた。
しかしそうなったのは彼ばかりではなく、
その後大学では、一部の学生の間でにわかにスキンヘッドが
静かなブームになってしまっていた。
「……何でみんな急にスキンヘッドにしたのかしら?」
「さぁ……」
「ユキヤはやらないの?」
「やらねぇよ!」
ユキヤにとっては髪の毛だって
自分を自分と至らしめているものの一つだ。
それをなくすなんて考えられなかった。
「いやぁ、これはこれで結構いいもんですよ。朝の手入れとかすごい楽だし」
いつの間にか横にいた黒川が言った。
「お前は黙ってろ!」
ユキヤはイラつきながら怒鳴る。
今日も黒川は全力でツルツルだった。
しかしもともと器量がいいせいもあってか、その形良い目鼻立ちが
髪が無くなったことでより際立ち、更に頭の形もいい事から
出来の良い彫刻のような印象を与えていた。
「黒川君は元々イケメンだからそういう頭でも決まっちゃうね」
とすみれが感心したように言った。
「ふふ、ありがとうございます!」
黒川も今までがウソのような爽やかな笑顔で返す。
(うわ……こいつすみれへのトラウマまで克服しやがった!)
ユキヤは内心舌打ちする。
あの日以来、すみれと黒川の関係は少しずつ改善されていた。
黒川がすみれに謝罪し、すみれもそれを受け入れたのだ。
今では普通に冗談を言い合う仲にまでなっている。
だがユキヤは黒川に対して、未だ警戒を解いてはいなかった。
この男は何を考えているのか分からない。
(頭だけでなく、人間性もこの短期間でこの変わりよう……
きっと何かあるな。)
ユキヤは黒川に気づかれない程度に観察を続けることにした。
***
その後しばらくの間、大学内での坊主率が上がっていた。
爆発的に増えるというわけではないが、
髪の毛のないが学生がよく目についた。
中には「俺は生まれ変わったんだ」などと言って
髪を剃り落とした者もいた。
そんな彼らを見て、
「うちの大学って、仏教校だったっけ?」とユキヤが学食で苦笑いする。
「まぁまぁよろしいではございませんの。どうやら皆さま、煩
悩の象徴である髪をなくすことで、
些細な悩みから解放されているようですし、
新しい希望を見つける頃には髪も伸びていると思いますのよ。」
ユキヤの横のテーブルでトランプを並べながら友麻が言う。
「あ、君はこの間の……じゃなくて、妹さんの方か?
あの時は知らなかったけど、君らは有名人だったんだな……」
ユキヤは改めて挨拶をしなおす。
「あら、貴方は私たち姉妹の見分けがつきますの?」
友麻が少し驚いた顔で返す。
「一度見た顔は忘れない方でね。特に君らみたいな可愛い女の子は。」
いつもの調子でユキヤは言った。
「ふふ、嬉しい事を言ってくださいますのね。」
「しかし髪の毛が煩悩の象徴ってのは?」
「あら、仏教の教えではそういわれてますのよ。」
「……だから寺の坊さんたちは皆坊主なわけか」
「そういうことですね。」
友麻はトランプをめくりながら微笑んだ。
「ところでさっきから何を占ってるんだ?」
「……あなたの事ですの。」
「え、俺の事?」
「はい、あなたは今、恋をしていらっしゃいますわよね。」
「ああ、してるぜ。彼女だっているし。」
「そしてその関係は……昼は猫の如く自由。夜は犬の如く従順……」
「…………!?」
これがすみれとの関係を示しているとすれば、当たっている。
ユキヤは驚きながらも冷静を装う。
「へぇ、すごいな。本物の占い師みたいじゃないか」
「……そしてあなたはこの関係性に危うさを感じている……
違いますか?」
「!」
ユキヤの心臓が跳ね上がる。
「なぜわかるのか、と言いたげなお顔ですね。でも、
占いとはそういうものですのよ。人の心を読むのって
私の得意分野なのでございますの。」
にこやかな顔で友麻はそう答える。
(この子たち……得体が知れない。)
ユキヤは警戒の色を強める。
「あらあら。そんなに警戒することもございませんのに。」
ユキヤのそんな考えを見透かしたように友麻が言う。
「……あんたら、何者なんだ?」
「私たちはただの女子大生でございますのよ。」
「……」
ユキヤの疑いの眼差しを意にも介さず、友麻は話を続けた。
「そんなに疑わないでほしいですの」
そう言われても、ユキヤなかなか警戒を緩められなかった。
「ごめーん、おまたせ。さ、帰ろう」
その時、待ち合わせしていたすみれがやってきた。
「おや、噂の彼女がやってきましたのね。
それでは私はこれで失礼いたしますの。」
「おう、気をつけて帰れよ。」
ユキヤは友麻を見送った。
「あれ、あの子たしかこの前の……?」
すみれが去っていく友麻を見て聞いた。
「……ホラ、前ちょっと話題になってただろ?
双子で成績トップで入学したとかの……」
「へぇ、あの子があの有名な……」
「そうみたいだぜ。この前の子は姉で今のは妹さんだけど。」
そんな事を話しながら、ユキヤとすみれは家路を急いだ。
つづく
何でこんな設定にしたんだろう・・・自分