天然ドSな彼女に抱かれ続けた結果、色々あって一緒に暮らすことになりました。 作:桃ノ木ネネコ
ここはある屋敷の地下室。
寸分たがわぬ容姿をした二人の少女が床に這いつくばる
一人の男を見下ろしている。
黒いドレスを身にまとった少女たちと比べて、男は全裸だった。
色白で端正な顔立ちをしているが、目には光がなく、
頭からつま先まで体毛が存在していないのが何とも奇妙な雰囲気だ。
「さぁ、気分はいかがですの?」
「どう? 気持ちいいですわよね?」
男が何かを言う前に二人は男の体を踏みつけた。
「あぁ、結衣様、友麻様……私は……」
「ふふ、お前もだいぶ綺麗に仕上がってきましたわね。」
「ご依頼通りの理想的な奴隷に育ちましたのね……」
二人の少女はそれぞれ微笑む。
その表情からは嗜虐的な喜びが見え隠れしていた。
「……お二人からそのような言葉を賜れるとは……光栄です……」
男は笑顔を作って見せるが、髪も眉がないせいか少し不自然に見える。
「そうでしょう? だから、お前はこれから
本当のご主人様のもとへお返ししますわ。」
「今のお前ならきっと可愛がってもらえるはずですのよ」
二人は同時に男の顔を蹴り上げた。
男は一瞬だけうめき声を上げるが、すぐに平静を取り戻す。
「……はい。私はこの日のために生きてきたのですから。」
「本当にいい子になりましたわねぇ……」
「えぇ、私たちの見込んだ通りでしたのね」
二人の少女は嬉しそうな笑みを浮かべる。
そして、そのまま男の体を蹴ったり踏みつけたりする。
「ああ……ありがとうございます……」
男はうっとりとした表情を見せる。
それは苦痛ではなく快楽によるものらしい。
「……たとえ元のご主人様のもとに行こうとも、
あなた方と過ごした日々は忘れません!」
「あら、嬉しいことを言ってくれますわね?」
「私たちの調教は今日で終わりとなりますけど、
あちらでもご主人様のいう事をよく聞くのですよ。」
「はい!必ず!」
男が返事をすると同時に地下室の扉が開かれた。
***
最後の調教が終わり、少女たちは自室でお茶をたしなんでいた。
「さて、依頼された調教が終わりましたわね。」
「お疲れ様ですわ。お姉さま。」
「えぇ、私もとても楽しかったですわ。」
双子の少女は笑いあった。
「これで今回の仕事も一段落ですわね。」
「それでお姉さま、私からお願いがあるのですが……」
「なあに?友麻」
「次の依頼まで、私たちだけで可愛がれる、専属のペットが欲しゅうございますの。」
妹である友麻はそう言って部屋にオブジェとして飾られている首輪を見た。
「まあ、それはいい考えですわね。
早速明日から大学でスカウトを始めましょうか?」
「愛玩用なので、可愛いのを希望いたしますの」
「それはもちろんですわ。任せておきなさい。」
姉の結衣は自信ありげに胸を張る。
「楽しみですわぁ~♪」
友麻は自分の体を抱きしめながら悶える。
「ふふ、きっといい子が見つかりますわ。」
***
この春から大学に進学した松葉結衣と友麻は双子の姉妹。
まだ幼さが残るものの、その美貌と、その圧倒的な雰囲気に、
見たものは皆虜になってしまうとか。
そんな二人は今、大学の構内にあるカフェテリアにいた。
カフェテリアと言ってもただの喫茶店ではない。
大学内にあるだけあって、メニューには
コーヒーや紅茶はもちろんのこと、
ケーキなどのスイーツ類も豊富に取り揃えられている。
「お姉さま。今日もこの大学には悩める方々が
大勢いらっしゃいますのね。」
「ええ、友麻。そういった人々にも目を向けるのが
上に立つ者というものですよ。」
「そう、些細な悩みなど煩悩の象徴である髪と共に
消してしまえばいいと思いますの」
「ふふふ、相変わらず友麻は過激ですね」
「あら、お姉さまだって、あの男どもの顔を見たでしょう?
あんなだらしない顔で講義を受けていては
単位を落としてしまいますわよ?」
「まぁ、確かに、それは言えてるかもしれませんけど……。
でも、短気はいけませんわ。」
「お姉さまは本当に慈悲深いお方ですわねぇ……。」
「例えば……右手の席には何か悩みを抱えている男性、
左手の席には能天気にスイーツを食す男性……
救いの手を差し伸べるなら、どちらがよろしいのかしら?」
「うーん……悩むまでもないと思いますわ。
やはり悩みを抱えてそうな男性の方にするべきだと思いますのよ。」
「そうよね……。それでは、あなたの言う通り私は
左側の男性に救済を施してきますわ」
「さすがお姉さま!それでこそ私のお姉さまですわ!!」
「ふふっ、ありがとう友麻。」
(ふぅ、それでは行きましょうか)
***
能天気にスイーツを食す男性……
こと茶木ユキヤは学食でスイーツを食べながら
なにやらメモを取っている。
「よし、これでOKっと」
すると、ユキヤの向かい側の席に誰かが座った。
「ごきげんよう、あなた。」
「ああ、どうも。」
おおよそ大学には似つかわしくないゴスロリドレス姿の少女に
ユキヤは目を奪われる。
(きれいな子だな……新入生の子かな?)
「ちょっと失礼しますわね」
そういうとその子は、手に持っていたトレイを机の上に置いた。
「お邪魔してもよろしくって?」
「ああ、もちろん。大丈夫だけど。ところで君の名前はなんていうの?」
可愛い女の子を見ると、とりあえず名前を訪ねるのはもう癖になっていた。
「申し遅れました。私、松葉結衣と申しますわ」
「結衣ちゃんっていうんだ。俺は3年の茶木ユキヤ。よろしく」
「茶木さんというのですね。こちらこそよろしくお願いいたしますわ」
最近浮気そのものは鳴りを潜めてはいるが、
可愛い子を見ると積極的に話しかけるのも彼にとっては習慣であった。
「では茶木さん、先ほどから熱心に何を書いていらっしゃいますの?」
「ああこれ?いわゆる現地調査ってやつ。」
ユキヤは手にしたメモ帳を見せつつ言う。
「最近ここの学食も新しいスイーツメニューが増えたからね。
俺のバイト先の店長から、メニューのリサーチ頼まれたわけよ。」
「へぇ、そうなんですのね。」
結衣が感心したように言う。
「これはこれで結構大変なんだぜ。ここに限らず
近所の他の店とかのもやってるし。」
ユキヤは目の前のショコラムースを口に運びながら言う。
「ご苦労さまですわね。」
「まぁ仕事だからね。しょうがないよ」
「ふふっ、茶木さんは真面目な方ですのね」
(その割には楽しそうでしたわね……)
「何言ってるの?タダでスイーツが食べられるって
二つ返事で引き受けてたくせに。」
二人で話しているところに、横から声をかける人物がいた。
小柄でロングヘアが特徴的な女性だった。
「いいだろ別に。バイト料だって入るんだから。」
ユキヤはスプーンをくわえながら言い返す。
「あら、お知り合いですの?」
「あ……うん、彼女だよ。一応。」「『一応』とは何よ?」
そう言って女性はユキヤの顔を引っ張る。
「いてて!やめろよ、すみれ!」
ユキヤは顔をしかめる。
「彼女さん……なのですか?」
「はい!……彼女というかこいつの保護責任者というか……」
「お母さんかお前は?!」ユキヤがツッコむ。
「えーっと、すみれさんと仰いましたわよね。
私は松葉結衣といいますわ。以後お見知りおきを」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いいたします……
私白石すみれといいます。」
すみれは慌てて挨拶する。
そんなやり取りをしつつ、結衣は二人の様子を観察する。
(これは……面白い二人ですわね)
***
一方、妹の友麻は右手の席にいた、悩める男性を訪ねていた。
悩める男性……こと黒川瞬は、悩みながらサラダをつついていた。
彼はいつぞやの酔ったすみれに完膚なきまでに
叩きのめされた件を未だに引きずっていた。
酔ったすみれの恐ろしさを知らずに近寄った挙句自爆し、
しかもすみれはその事を覚えてないという、そんな現実を突きつけられて、
今の彼のプライドはズタズタであった。
とはいえ、その一件以来、すみれを少し意識しているのも事実である。
しかし、それを素直に表に出すという事は、
ユキヤをも敵に回すことになる。
結局、瞬は悶々としながら過ごすしかなかったのだった。
(くそぉ、あの女め……今度会ったら覚えていろよ。)
「すみません、相席よろしいですか?」
「ん?ああ、どうぞ」
気が付くと、友麻が立っている。「失礼致しますわ」
「あなたは確か、松葉姉妹の……」
大学内で松葉姉妹の事はちょっとした噂になっている。
その美貌もさることながら、大企業である松葉グループの令嬢にして、
姉妹そろってトップの成績で入学した才媛としても名を馳せていた。
「あら、ご存じでしたのね。光栄ですわ」
「まぁ、有名人ですし……それで何か御用でも?」
「いえ、ただ同じ大学の学生として少し興味が湧きまして。
お話ししてみたかっただけですのよ」
「……こんなつまらない俺なんかにですか?」
ここ最近の出来事でプライドがへし折られた黒川は、
ちょっと卑屈になっていた。
「あら、それは私の主観で決めさせていただきますわ。それに……」
友麻は妖艶な笑みを浮かべる。
「あなたの事、少し調べさせてもらいましたのよ。」
「は、はあ、そうでしたか……」
「何か大きなお悩みを抱えていらっしゃるとお聞きしましたの。」
そう友麻は黒川に微笑みかけた。「え、えぇ、まあ、はい」
「よかったらお聞かせ願えないかしら。私でよければ力になりますのよ」
「は、はぁ、じゃあお言葉に甘えて……」
「はい、ぜひお話をお聞きしたく存じますわ。」
彼の返事を聞いた友麻は殊更優しい笑みを黒川に見せた。
つづく
トリックスター、松葉姉妹の初登場編です。