◆
──にゅぎ、にゅぎ。
「やだ、やだぁ! もうやめ──ぐひゅっ」
──にゅぎ、にゅぎっ。
────にゅり、にゅり。
「もううっさい──んっ。 あんたが精液出せば、あっ、……いいだけの、話なのッ」
半ばでは収まらないらしい憤りを声に含めながら、姉は俺のそれをしごき続けている。叫ぼうとした俺の口を塞ぐために、再び俺の口元へと秘部を、……艶と熱を帯び始めたものを鼻先にあてがいながら。
──にゅぎ、にゅぎっ。
──にゅり、にゅりっ。
俺のそれを上下に擦る音。水気を帯びているせいで、乾いた音は響かない。
鼻先でこするようなそれからも、にゅり、にゅり、とぬるぬるとした液が絡みながら、そこかしこで水気のある音が聞こえてくる。
身体はもう刺激に耐えられないと、そしてもう精液なんてものは出ないとわかっていて、俺自身もそう叫ぼうと必死になる。それでも、本能以外の部分でそうなっているのかはわからないが、刺激によってあそこは大きくなっていき、だんだんと硬さを持つようになる。
それを利用して、姉のしごく手の速さは早くなり、強くなる。ぎゅり、ぎゅり、と身体の中から音がしそうなほどに強く握っては、たまに滑る感触で上に手が離れては、むき出しになった頭を更に握って、その頭だけをこするように手のひらが襲ってくる。
「んっ、んっ、んんっ」
「────」
「んふ、ふふっ」
ふご、ふご、と声を出そうとするけれどうまくいかない。口に肌は密着していて、水気を帯びたせいか、息を吐くたびに放屁したような音が俺の口元から聞こえる。
それを面白いと思っているのかわからない、それでも姉は俺の口を押える行為をやめようとしない。
ただ艶のある声をあげては、俺が息を吐くたびに背筋を振るわせていく。最初こそは俺を気遣うようになのか、体重の全体はかかっていなかったが、声をあげ始めて震える
ようになってからは、だんだんと荷重がより頭部へとかかっていった。
「────」
「いいよ、いいよ、それ、いい」
「────」
声は出せない。声は出せずに息を吐く。息を吐いたら酸素を失う。酸素を失うから吸い上げようとする。
姉の身体は震える。大きく震えて、あてがう部分が異なっていく。鼻先にだけあてがうようにしていたのに、深く座り込むようにするから、先ほど見た割れ目の奥へと口が届く。その時、あまり見ようとしなかった肉豆の部分が、確かに口へと合致した。
「──っぁあ!」
艶のある声が大きくなった。
「なにこれ、なにこれっ、なんか、すごい、すごいっ」
意気を高くして、わくわくとしているようにその感覚に姉は酔いしれる。一瞬手が止まってくれて、刺激も落ち着く。
それでも忘れてやらないと言わんばかりに、手はまた上下に、亀頭だけを刺激する。刺激しては止まって、止まっては刺激をして、そんなことを繰り返している。
吸い上げるたびに動きは止まってくれる。そんな偶然を発見する。一瞬だけ止まってくれるから、叫びたい頭も冷静になる。
冷静になって、息をする。息を吹きかけても、少しの反応しかこない。吸えばそれだけ動きが止まる。だから。
──じゅるるるるっ。
「──それぇ、それぇすごっ、もっと、もっと」
手が止まる。俺をしごき続けていた手は止まってくれる。
やっぱりそうだった。この口の先にある肉豆を吸えば、姉の手は止まってくれる。それがわかった、わかったから──。
──じゅりゅ、じゅるるるるる、じゅるるるるっ。
「──すご、すごい、すごいの、くる、くるっ、ごめ、ごめんね、なんか、くる、か、らっ……──」
「────」
「────っく、るっ……」
──瞬間、弾ける水音。
ぷじゅ、ぷじゅ、と目の前から温かい何かが零れるのを感じた。
(──お、おしっこ……?)
それは口元に、顎へと垂れて爆ぜていく。
びくん、びくんと、姉の体重が顔へと移る。
姉の背が起き上がる。完全に俺の下半身から手を離して、大きくその身をよがらせるようにする。
容赦なく体重がかかって、水気しかないそれに顔をあてがわれる。ただ、もう呼吸とか以前の問題で。
──ごきゅ。
呼吸の拠り所を求めて、喉を動かせば、したくもないのに姉の体液が喉元を過ぎていく。
おうぇ、と吐き出したくなる衝動。何かはわからないけれど、尿だとしか思えないそれを口に含んで、それから一部気管に入りそうになって、大きく咳き込んでいく。
……それでも。
「────」
はっ、はっ、と断続的な息を漏らしながら、姉はまだ俺の上で震え続けている。
何がどうしてこうなっているのか、俺はわからないまま、秘部の近くで息苦しいだけの呼吸を繰り返した。
◆
それが秘匿とされる関係の始まりだった。
◇
精液が出ない理由は歴然だった。その時の俺たちには額がなかったから、精通という概念を知らなかった。姉貴であれば学んでいてもおかしくはなかったのだが、精液というものに夢中になっていたのだろう、幼い俺の身体に対しても、いつまでもそれを求め続けようとした。
両親は毎晩外へと出かけていく。大半帰ってくる時間は遅いのだから、それを利用して姉が部屋にやってくる。
少し臭くなってしまったベッドのシーツ。それを洗おうと思っても、小学生で洗濯機の使い方はわからないし、何かいけないことをした、という罪悪感は消えないために、母にもそれを洗濯するようお願いすることはできなかった。
そうでなくとも勘繰られることが怖かった。なにをしたのか、どうしてそんなことをしたのか。
俺が率先してやったわけではないのに、それでも聞かれるかもしれない。そして聞かれたら何を話せばいいのかもわからない。
だから、いつまでもその関係のことを話すことはなく、そしてある一定の年齢までは知ることもなく、姉の好奇心で消費されていく。
「ほら、精液、精液出すの」
そんな毎日の繰り返し。ただ、その繰り返しの中で、俺と姉貴は互いに快楽を覚えてしまう。
精通はしていないが、それでも快楽は感じていた。だから、姉貴の言葉に強く否定することはできずに、また少し臭くなったベッドの上で横になる。再三、しつこくしごくようにすることはしない、と姉と約束をして、それから姉の手に身を委ねていく。
それに加えて──。
「──そう、吸って、吸ってね」
──姉の性処理をすることも、日常と化していった。
◇
その行為の意味合いを、そしてその行為を本来誰とするべきものなのかを理解しても、その時には日常的な行為、習慣としてしかなかったから、いつまでも止まることはなかった。
ただ、行為はしていたものの、それ以上の行為にまでは発展しない。互いに性器を愛撫するだけを繰り返して、満足したらそれで終わり。
互いに中学生へと入学した頃合いで、更に両親は出かける時間が多くなっていき、それぞれが快楽に明け暮れる。
「──そろそろいく、かも」
「──いいよ、
「──わかった」
互いに性器を愛撫して、そして満足する。
きっと、それだけならよかった、よかったと思う。
ただ、それだけで終わらなかったのが姉の話。
姉が中学三年の夏、持って帰ってきたコンドームによって、その関係性は更に発展することになってしまった。
顔面騎乗、すき。