◇
「……マジで?」
姉の言葉に耳を疑って、俺はそのまま信じられないことを示すように返していく。
それに対して「したくないの?」と言葉が返ってくれば、それにすぐさま返答することができない。
したくない、というわけじゃない。なんなら互いに愛撫をする行為については慣れてきてしまって、変化がないからこそつまらない、という部分はある。
俺たちが最初にやってしまった愛撫ほどの未知に対する興奮であったり、なにかいけないことをしている、という感覚にあった後ろめたさとかも、その時には感じなくなっている。
だから、新しい変化があるのだとすれば、したい気持ちは正直にある。
ただ、この場合の問題点としては──。
「俺たち、姉弟だよ?」
そう、端的な禁忌について。
流石に最初にやっていた頃とは異なっていて、性知識についても、その倫理についてもおおよそを把握していた。俺たちがしている行為全ては姉弟でやるようなものではなく、恋人とされる人間にこそすること。……まあ、例外は相応にあるらしいけれど、ともかくとして姉弟で、血のつながっている家族同士でそういったことをする禁忌については、もう既に知っていた。
「……今更?」
「……」
確かに今更過ぎる話だ。
ただ、言う機会についてはいつもなかった。その頃には愛撫をする習慣はついていたし、その後ろめたい禁忌を知ってから、それを口にすることが今までできていなかった。それに呆れるように姉は返す。
「というか、あんたはしたいの? したくないの? 私はしたいけど」
「……したいの?」
「したいってば」
それは、きっと恋愛的な要素は何一つとして含まれていない。
ただ、姉は未知を知りたい好奇心に突き動かされているだけ。ただ経験をするという未知を体験したいだけ。
だから、勘違い、勘違いはしないけれど──。
「でも、でもさ」
「なに? したくないなら別にいいけど──」
「──いや、そういうわけじゃなくてさ」
「なによ、あんただってしたいんじゃんか」
「そ、そうだけど、それでもさ──」
何かを言い返さなければいけない。そんな気持ちで言葉を尽くそうとはしてみるけれど、何一つとしてはっきりとした言葉には繋がらない。
だって、それは俺たちが最後まで守ってきた一線でしかない。
その最後の行為だけはしちゃいけないって、なんとなく俺たちは守ってきたはずだ。それは倫理を知ったからこそ、より強くなって、愛撫を済ませる、セックスの手前で済ませていたはずなのだ。
だから、今更とか、したいとか、したくないとか、そういう話じゃ──。
「あーもううっさいっ! 私がするって言ったらすんのっ!」
うんざりしたように姉はそう言葉を吐いて──。
それから、俺をベッドへと押し倒した。
◇
それは少し乱暴に感じた。
最初に愛撫を知った時でも、姉貴はまだ優しかったような気がする。俺のそれに触れるたびに「大丈夫?」「痛くない?」と声をかけていたはずなのに、今となっては慣れているが故にガサツに、そして乱暴に俺は押し倒されていく。
「ま、マジでやるの? ──」
「──だからやるってば!」
あんたうざい、もう黙ってて。
姉はそう付け足しながら、押し倒した俺の上に覆いかぶさって、制服の上から性器をなぞるように触っていく。
「は? もうでかくしてんじゃん。口では文句ばっかり言ってさぁ」
そう言いながらチャックを開けて、そこからまさぐるように俺のソレを露出させる。
そして確かに露出した俺のあそこは確かに硬さを帯びようとしている。ただ、この後に待ち受けている行為にワクワクしている気持ちもあるし、それよりも一線を越えてしまうことへの後ろめたさなども混ざり始める。
「あんたも本当はやりたいんでしょ。別にそれでいいじゃん」
生半可にしか硬くなっていないそれを、姉貴は上下に扱きながら呟く。
「だ、だから、やりたいとかそういう話じゃなくて──」
「そういう話でしょうが、馬鹿」
ぺしっ、とそれを平手で軽くぶってくる。それに、うっ、と痛みで喘げば、姉はそれに楽しそうに笑う。
「ほら見なよ。めっちゃかたくなってる。ほら、ほら、ほら──」
ぺし、ぺし、ぺしっ。
手を広げて指先で叩くように、その動きは繰り返される。痛くはないくらいに加減はされているけれど、それでもあまりされたことのない乱暴に、俺はいちいち声を出してしまった。
「でも、でも姉弟で──」
「あー、もうマジでそういうのいいから。本当に今更でしかないし」
ぶっちゃけ子どもできなければそれでよくない?
そう姉は付け足して、それから俺の性器へと注目するように体勢をずらして、顔を近づけていく。
「なんならいつもよりでかいし。素直にやりたいって言いなよ」
「……──」
「──ていっ」
「──うっ」
何度も何度も、ぺしぺしとそれを叩かれる。痛くはないのに声が出る。別にそれが気持ちいいわけじゃないのに。
「……鞭だけじゃだめかぁ?」
「……?」
姉の言っていることがよくわからなくて、俺は下半身のそれを通しながら姉の顔を見る。
目が合う。
「──れろぉ……」
「────」
大きく口を開けて、ねばついている唾液が俺のそれにかかる。
一瞬温かい、それでも一瞬で冷える感覚。
「れろぉ、れろぉ」
そう言いながらも、姉は俺のあそこの前で舌を動かすだけ、俺のそれには一切触れてこない。
「……」
ああ、あの舌で包まれたら気持ちよさそうだ、と思ってしまう。
いつものようにやってしまえば、それでいいじゃないか、とも思ってしまう。
けれど、この誘惑に従ってしまえば、それは関係が終わるというか、なんというか。
いや、終わるのか? 倫理的には終わるのかもしれないけれど。
「れろぉ、れろぉ、……」
「……うぅ」
この欲望に負けてしまいたくなる衝動。
姉の唾液は空気によって冷えていく。その感覚は気持ちがいいようで、そろそろしんどい。
あの生温かい舌に包まれたい。でも、フェラの次にはセックスが待ち受けている。
姉はきっと止まってはくれない。だから、最後の線は俺が引かなければいけない。
でも、でも、でも──。
「や、やりたい、……です」
「ん? なに? 私はエアフェラで遊んでるだけだけど」
「や、やりたいっ! 姉ちゃんとセックスしたいですっ!!」
「……ふーん? そーなんだー」
「だから、だからお願いします、舐めて、舐めてくださいっ」
「えー、面倒くさいなぁ」
「お願い、お願いします。なんでも、なんでもするから──」
「──ふふっ」
言質をとった、と言わんばかりに姉は俺の言葉にほくそ笑む。
「はあ、しょうがないなぁ。可愛い弟のために、人肌脱いじゃお、っかなっ!──」
「──うぎゅっ」
──そうして包まれる、姉貴の口内。
その慣れ親しんだ温かさに包まれた瞬間、なんかすべてがどうでもよくなってしまった。
次回は本番。今度こそ本番。
いろいろな意味で本番。デュエルスタンバイ。