TS転生橘ありす 作:湯けむり桶
「……うーん。色々チェックしてみましたが、まあ薄い本なんて置いておくわけないですか……。ちひろさんの目に入ったら恐ろしい事になりそうですし」
事務所の給湯室や資料棚の隙間など、櫻井桃華さんの話を元にそれとなくガサ入れをしてみたものの薄い本があるはずも無く、私は諦めて事務所のソファーに深く腰掛け一休みすることにした。
少し頭が冷えてくると、客観的な思考が戻ってくる。
(……そもそも、冷静になって考えてみると、突然私が『比奈さんと奈緒さんが薄い本を~』なんて話を切り出すこと自体、意味が分からなすぎますよね。そんな話題を振って、もし二人に『え? ありすちゃん、どうしてその単語を知ってるの?』なんて下手に突っ込まれでもしたら、それこそ墓穴を掘るだけです……。無理に関わらない方が懸命ですね)
何となく、昨夜の非日常的な空間と強烈な快感に舞い上がってしまっていた自分に気づき、私は小さくため息をついて、いつもの橘ありすとしての落ち着きを取り戻した。
「おはようございます! ありすちゃん! キャハッ☆」
そこへメイド衣装に身を包み、元気な声と共に安部菜々さんがやってきた。相変わらずエネルギーの塊のような人だ。
「あ、おはようございます、菜々さん」
私は少し居住まいを正して挨拶を返す。
「ソロデビューおめでとうございます!ナナもプロデューサーさんから聞きましたよ!ステージ、大盛況の大成功だったみたいですね!流石はありすちゃん!」
「ありがとうございます。でも、私だけの力じゃありません。他の皆さんもいたから私も負けじと頑張れたんです。まだまだ、これからですよ」
謙遜しつつも、これからの活動への決意を込めて返すと、菜々さんは「うう、なんてしっかりした子かしら……」と目頭を押さえるジェスチャーをして微笑んだ。
その後、私たちは最近の事務所の様子や、レッスンのことなどについて軽く雑談を交わした。昨夜のドタバタが嘘のような、いつも通りの穏やかな事務所の空気。
「そういえばありすちゃん、さっき給湯室の裏とか棚のあたりを何か見てたみたいでしたけど……探し物ですか?」
ふと思い出したように、菜々さんが尋ねてきた。
「……ああ、いえ!大丈夫です、何でもありません。ちょっと、私物の片付けがてら気になっただけですから……」
まさか「ふたなり同人誌」を探していたとは口が裂けても言えず、私は少し声を上ずらせながら言葉を濁した。
「そうですか? なら良いんですけど……。もし何か困ったことや悩みがあったら一人で抱え込まないで、いつでもナナを頼ってくださいね。これでも一応、人生の先輩ですから☆」
菜々さんはドンと軽く自分の胸を叩き、お姉さん──というよりは、どこか大人の余裕を感じさせるウサミンポーズを決めてみせた。
(ふふ。時々年齢のことでいじられていますけど、こういう時の菜々さんは、やっぱりなんだかすごく安心しちゃいますね……)
前世の記憶や設定はともかく、今目の前にいる「安部菜々」というアイドルの包容力に、私の張り詰めていた心はすっかり解きほぐされていくのだった。
そんな事を思っていると会議室のドアが開く音がする。
「あ、比奈ちゃん、原稿終わったんですか?」
菜々さんがそちらを振り返り、優しく声をかける。誰かと思ってみれば目の下に濃いクマを作った荒木比奈さんと、その後ろでどこかホッとした表情を浮かべている神谷奈緒さんだった。
「イヤー、菜々さんご心配おかけしちゃって本当に申し訳ないっス……。いやもう、今回はマジで修羅場だったんスけど、奈緒ちゃんにもベタ塗りとか手伝ってもらって、お陰様で無事脱稿したっス……」
比奈さんは魂が口から抜け出しかけたような疲れた顔をしながらも、どこか達成感に満ちたオタク特有の早口で応えた。
「もー、アタシは大したことしてないってば。消しゴムかけて、指定された場所をちょっと塗っただけだしさ。でも、とにかく間に合って本当に良かったよ。比奈が途中で倒れるんじゃないかってヒヤヒヤしたんだからな?」
奈緒さんが呆れつつも嬉しそうに比奈さんの肩をぽんぽんと叩く。
その二人のやり取り──そして「原稿」「脱稿」というワードを聞いた瞬間、私の脳裏に昨夜の桃華さんのドヤ顔と、お口の中に放出したあの熱い感触がフラッシュバックした。
(……そういえばそんな時期ですか。会議室で原稿をやっていたとは、随分と追い込まれていたみたいですね……)
関わらない方が賢明、墓穴を掘るだけ。ソファーでそう決意したはずなのに、当事者たちを目の前にすると、橘ありすとしての理性がチクリと疼く。私は引き攣りそうになる表情を必死にポーカーフェイスで抑え込みながら、二人に声をかけた。
「あっ。……えーと、おはようございます。比奈さん、奈緒さん。……お疲れ様、です?」
労いの言葉の中に、無意識のうちにほんの少しだけ疑惑のニュアンスを含ませてしまう私。
「あ、ありすちゃん、おはようっス!」
「おはよう、ありす!」
そんな私の複雑な心中など知る由もない二人は、それぞれいつも通りの気さくな笑顔で挨拶を返してくるのだった。
「えっと……その、原稿というのは、お仕事の原稿なのですか?」
(桃華さんに読ませたあの不純な薄い本の原稿ですか!?)
ここで完全にスルーするのも逆に不自然かもしれないと思い、脳内で叫びつつも意を決して探るようにその単語について尋ねてみた。
すると、比奈さんはメガネの奥の目をキラーンと光らせ、疲れを吹き飛ばすような熱量で語りだした。
「イヤー、仕事じゃなくて個人的な趣味の同人誌を描いてるんでスよ。アイドルも全力でやる、趣味の創作も全力でやる、両方やるのは正直きつい時もあるっスけど……でも、趣味だからといって妥協したり落としたりするわけにはいかないっスからね。それがワタシの生き様っス!」
「うっ……!」
そのあまりにも真っ直ぐで力強い言葉に、私は思わず気圧されてしまった。
(趣味だからこそ、絶対に落とせない……。なんという強固なプロ意識、いえ、オタクとしての確固たる信念……! 不純な薄い本の中身はともかく、モノづくりに懸けるこの姿勢は、なんだか少し神々しく見えてしまいます……!)
本物が持つ独特の凄みとパッションを間近で感じ、私は桃華さんの件を一時的に忘れて、純粋に一人の人間として比奈さんをちょっと尊敬の眼差しで見つめていた。
「……えーと、その、詳しい世界はよくわかりませんが、改めて本当にお疲れ様です、比奈さん。奈緒さんも、お手伝いお疲れ様でした」
私がペコリと頭を下げて改めて労うと、比奈さんは照れくさそうに頭を掻いた。
「それよりありすちゃんこそ、本当にお疲れ様でしたっス! ちひろさんから聞いたっスよ。昨日のソロデビュー、大成功だったみたいでスね。本当におめでとうでス!」
「そうそう! ありすちゃん、ずっとレッスン一生懸命頑張ってたもんな! 努力が実を結んでアタシも嬉しいよ。本当にお疲れ様!」
奈緒さんも自分のことのように顔をほころばせ、私の頭を優しく撫でてくれた。
「あっ、いえ……そんな。ありがとうございます、比奈さん、奈緒さん……」
さっきまで「どうしてくれようか」などと黒い計画を練っていた自分が恥ずかしくなるほど、二人の祝福は温かかった。私は自分の心の狭さを反省しつつ、嬉しさと気恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、素直に二人の言葉を受け取るのだった。
「ところでありすちゃん、ジャージなんか着てどうしたんス? これからレッスンっスか?」
比奈さんに尋ねられ、私は自分の格好を見て思い出した。
そうだった、事務所内をガサ入れする前、昨日のソロデビューの興奮が冷めやらず体の中に残った熱を少しでも発散させようと、自主的にダンスのステップを軽くおさらいしたり、ストレッチで体を動かしたりしていたのだ。桃華さんの衝撃的な朝の予告や、薄い本の件で頭がいっぱいになっていて、自分がジャージ姿のままだったことを完全に忘れていた。
「あぁ~、ありすちゃん、さっきまで一人で自主練してたらしいんですよぉ。昨日の今日で、もう次のステージに向けて自主練なんて……はぁ、若いって本当に素晴らしいですねぇ~……」
菜々さんがしみじみと遠い目をしながら呟く。その視線がなんだか妙にリアルな重みを孕んでいて、私はそれ以上深く突っ込まれる前に、この場を切り上げることにした。
「そ、そうでした。あの、私帰る前にちょっと事務所のシャワー室をお借りして、汗を流していくので……これで失礼します」
これ以上ここにいると、またいつ何時昨夜の櫻井家での記憶が呼び覚まされて顔に出てしまうか分からない。
私は比奈さん、奈緒さん、そして菜々さんにペコリと一礼すると、着替えの入ったバッグを抱えて、逃げるように廊下の奥のシャワー室へと向かった。温かいシャワーで、頭の中の雑念も、下半身に残る微かな火照りも、すべて綺麗に洗い流してしまおうと思いながら──。
「ふぅ……。まったく、あそこまでの情熱とプロ意識を前にされてしまったら、流石に私からは何も言えなくなってしまいます……」
シャワー室の脱衣所でジャージを脱ぎながら、私はぽつりと呟いた。
中身がどれほど破廉恥な薄い本であろうと、比奈さんにとっては自らの魂を削って生み出した血と汗の結晶なのだ。それを外野である私が「桃華さんに変な知識を吹き込まないでください!」などと説教するのは、表現の自由への侵害、ひいては彼女の生き様への冒涜になってしまうかもしれない。
(下手に関わらず、私は私でアイドルとしての本分を全うするだけです……)
そう自分に言い聞かせ、一糸まとわぬ姿になった私は、シャワー室へと足を踏み入れてシャワーの栓をひねった。
温かいお湯が、自主練で少し火照った身体を優しく包み込んでいく。昨日のステージの大成功を思い出し、私は心地よさから、無意識のうちに自分のソロ曲を小さく鼻歌で口ずさみながら、ボディソープを熱心に泡立て始めた。
────ガチャッ。
「おっと……っ!」
不意にシャワー室のドアが開く音がして、私は慌てて鼻歌を飲み込んだ。
(危ない、誰かに聞かれるところでした……。ふふ、クールな橘ありすとしたことが、やっぱりまだ昨日の余韻で少し舞い上がっているのかもしれませんね……)
そんな風に、少し恥ずかしさを覚えながらクールに振る舞おうと背筋を伸ばしたその時、入ってきた人物から、ひどく緊張感のない声がかけられた。
「あ、ありすちゃん? イヤー、ワタシも原稿作業の汗を流したくて、ちょっとシャワー浴びさせてもらうっスよー。お邪魔するっス」
「ひぇっ!? あ、ひ、比奈さんっ!?」
入ってきた人物の声を聞いて、私は泡だらけのまま硬直した。
誰かと思えば、先ほどまで私の頭を悩ませていた張本人、荒木比奈さんその人だった。しかも、彼女もまた完全に一糸まとわぬ、無防備極まりない姿である。
「あ、いえっ……! どうぞ、お構いなくっ! お、お疲れ様です……っ!」
突然の薄い本の作者との、仕切り一枚を隔て一糸まとわぬ姿での遭遇。
昨夜、桃華さんにあれこれされた記憶が脳裏をよぎり、私は一気に心拍数が跳ね上がるのを感じながら、必死に泡で下半身の「男の証」を隠すようにして焦った声を返すしかなかった。
「イヤー、やっぱり原稿を上げた後のシャワーは格別っスね。菜々さんじゃないけど、全身の細胞が生き返るようっスわ~」
「そ、そうですね! 一仕事終えた後のシャワーは格別だと思います!」
比奈さんのリラックスした声に、私は極力落ち着きを装った声を返した。しかし、心臓はバックバクだ。仕切りの向こうにいるのは、桃華さんに変な知識を植え付けた張本人。ここで私の下半身の「男の証」が万が一にも見つかり、それが「ふたなり」だの「クリちんぽ」だのといった彼女の同人誌的脳内で処理されたら、一体どんな大惨事になるか分かったものではない。
(手早く、とにかく手早く済ませてここを脱出します……!)
私は猛烈な勢いで全身の泡をシャワーで洗い流すと、「お先に失礼します!」と言い残し、そそくさと脱衣所へ飛び出した。バスタオルで濡れた身体を大急ぎで拭き、一刻も早くショーツを穿こうとした、その時だった。
「あれ、ありすちゃん、もう出るんス……って、え?」
カーテンの隙間からチラリと私を見た比奈さんが、漫画のように見事な二度見をした。彼女の目が、これ以上ないほどカッと見開かれる。
「あ、ありすちゃん!? ちょ、ちょっと待ってくださいっス!!」
「ひぃっ!? な、なんですか比奈さん、服を着てからにしてくださ──」
一糸纏わぬまま、身体からポタポタと雫を滴らせて脱衣所に突進してきた比奈さんに、ガシッと両腕を掴まれた。あまりの勢いに、私は完全にショーツを穿くタイミングを失い、天を衝くほど元気な「男の証」を完全に剥き出しにした状態で、彼女と正面から向き合う形になってしまった。
比奈さんの視線は、私の顔ではなく、完全に股間へと釘付けになっている。その瞳には徹夜明けの疲労など微塵も感じさせない、オタク特有の、そして表現者としての狂気的なまでのギラギラとした光が宿っていた。
「あ、ありすちゃんのそれ……っ! ちょ、ちょっと、よく見せて、いや、触らせてもらって良いっスか!?」
「な、何言ってるんですか比奈さんーーーっ! 離してくださいっ!」
私の必死の叫び声が、狭い脱衣所に響き渡る。その私の拒絶のトーンに、興奮状態だった比奈さんの肩がビクッと跳ね、その瞳に僅かばかりの理性が戻ってきた。
「はっ!? す、すまないっス……! 突然こんな風に詰め寄ったら、そりゃ怖がるに決まってるっスよね……! で、でも、目の前にこんなに……こんなに素晴らしい本物の素材をぶら下げられたら、絵描きとして、表現者として、仕方ないっス!」
比奈さんはハァハァと荒い息を吐きながら、なおも私の「男の証」をじっと見つめ、熱弁を振るう。
「ふたなりの設定は散々描いてきたっスけど……まさか、現実に、それもこんなに近くにこれ程美しくて猛々しい本物が実在するなんて……っ! この機会を逃したら、ワタシは一生後悔するっス! お願いっス、ありすちゃん! マジでお願いっス!!」
(うぅ……私の『常識改変チート能力』、これもう機能してないんじゃ……? いや、機能はしているんでしょうけど、『女の子にあるはずのないモノがある』という事実に対して、比奈さんのオタク&表現者としての執念が、能力の壁を軽々しくブチ破っちゃってるじゃないですか……!)
これほど凄まじい熱量で懇願されては、こちらも逃げ切れる気がしない。というか、ここで無理に拒絶して、比奈さんに限ってそれはないと信じたいですが、変に事務所で言いふらされたり拗れたりする方が厄介だ。
私は深いため息を吐き、がっくりと肩を落とした。
「はぁ……。わかりました。そこまで言われるなら……比奈さんの表現者としての熱意に、負けました。……本当に、少しだけですからね? あと、掴まれている腕が、ちょっと痛いです……」
「あっ、ごめんなさいっス! 痛かったっスか!? 悪気はなかったんでス!」
比奈さんは慌てて私の腕から手を離し、平謝りした。
しかし、その直後。私の許しを得たことを理解した彼女の表情は、一瞬で最高峰の資料を得た求道者のそれに変わる。
「……感謝するっス、ありすちゃん! いや、ありす先生と呼ばせてほしいっス!」
比奈さんは一糸纏わぬ姿のまま、脱衣所の床にスライディングするかのような勢いで、私の股間のすぐ目の前へとしゃがみ込んだ。その瞳は、未知の宝物を見つけた子供のように、爛々と美しく輝いていた。
「……むぅ、はぁ……。なるほど、本物の質感、この熱さ、そしてこの裏筋のライン……漫画の資料と実物は何もかもが違いすぎるっス……!」
目の前で完全に「職人」の顔になった比奈さんが、私の猛り狂う証を両手で包み込み、形を確かめるように丹念に指先でなぞっていく。
白く柔らかい、だけどペンだこが少しある独特の指先が、過敏になっている亀頭や竿のラインをじっくりと愛撫……いや、観察していく。
(っ♡ お、落ち着くのです橘ありす……! こ、これは表現者が未知のものを真摯に観察しているだけです! 決して如何わしいことをしている訳では……はぅっ♡)
必死に自分に言い聞かせる私だったが、比奈さんの指先がカリの裏側の最も敏感な部分をキュッと押し上げた瞬間、強烈な快感が背筋を駆け抜け、思わず甘い悲鳴が漏れてしまう。
「成程、興奮すると熱を帯びて、血管がこうやって浮き出るんスねぇ……。皮の具合といい、まさに機能美の極みっス!」
比奈さんは完全に目の色を変え、ぶつぶつと独り言を呟きながら、夢中で私のモノを上下左右に弄り、角度を変えて観察を続ける。
「ちょ、ちょっと比奈さ……んふぅっ♡ も、もう少し優しく……ぁっ、腰が、抜けちゃいっ……♡」
容赦のない手つきに、私は脱衣所の壁に背中を預け、ずるずると腰を引かせることしかできない。限界まで昂った私のペニスは、比奈さんの手のひらの中でさらに大きく、凶暴に脈打ち鈴口から透明な蜜をぽたぽたと滴らせていた。
すると突然、比奈さんがピタリと手の動きを止めた。その顔をゆっくりと上に向けると、その瞳には、徹夜明けの脳が生み出した狂気と、表現者としての凄まじい執念が渦巻いていた。
「はーっ、ふぅーむっ、んん……。ありすちゃん、やっぱり見て触るだけじゃ、全然足りないっスわ……」
「え……?」
「これ……ワタシの中に、挿れても良いっスか?」
「へあっ!? いや、流石にそれは話が飛躍しすぎじゃないですか!?」
私は快感でとろけかけていた脳を一瞬で叩き起こされ、全力でツッコミを入れた。しかし、比奈さんの眼差しはどこまでも本気だった。
「勿論、タダでなんて言わないっス! 代わりにワタシの『処女』をありす先生に捧げるっス! 創作を極めるためには、リアルの痛みを、快感を、ありす先生のモノを自分の身体で直接味わってみないと……本当の意味での『本質』には辿り着けないっス!!」
一糸纏わぬ姿で、自らの純潔を差し出すと真剣に宣言する20歳の同人作家。その狂気的なまでの熱意と、目の前に跪く比奈さんの姿に、私の「男の証」はさらに凶悪なまでに熱く反り上がってしまうのだった。
「ひ、比奈さんっ!?う、うわっ……!」
驚愕する私の目の前で、比奈さんは脱衣所の床に勢いよくコロンと寝転がった。そして、恥じらう素振りすら見せず、躊躇いなく自身のしなやかな脚を大きく左右に割り開いて見せたのだ。
「ふぅ……。見ての通りワタシのは正真正銘、真っ新な『処女』っス。でも、ありす先生のモノを観察して、指で弄っているうちに……ほら、こんなになっちゃったっスよ……」
比奈さんは自身の濡れた秘部に自ら指を這わせ、その純潔の証を私へと誇示するように、とろけた瞳で突きつけてくる。そして、じっと私の天を衝く「男の証」と、私の顔を交互に見つめ、ニヤリと不敵に笑った。
「……それにお見受けするに、ありす先生。あなた、かなりの『経験者』っスよね?」
「けおっ!? な、何を根拠にそんな──」
「伊達にこれまで何百冊も薄い本を読んでないっス。その、自分のモノが剥き出しになっても、恥ずかしがりつつどこか据わった肝を見せる落ち着きぶり……一人や二人の経験人数ではないと見たっス。その立派なクリちんぽで、数多くの女の子をベッドに沈めてきた『スゴ味』を感じるっスよ……!」
(鋭すぎる! さすがプロの同人作家、観察眼と洞察力が高すぎます……! 昨日桃華さんにあれこれされたばかりなのも、全部見抜かれているような気がして心臓に悪すぎます!)
「い、いや何言ってるんですか! わ、私がそんな経験豊富なはずがないじゃないですか! 漫画家さんは、想像力が逞しすぎて本当に困りますね……っ!」
私は顔を真っ赤に染めながら、しどろもどろになって全力で否定した。
「ふふふ、もちろん責めてるわけじゃないっスよ? むしろ、初心者同士で手探りするより、経験豊富なありす先生に導いてもらえる方が、ワタシとしても安心っス」
比奈さんは自身の秘部をさらに愛撫し、くちゅっぬちゅ、と濡れた音を脱衣所に響かせながら、どこまでも真剣で、そして淫らな眼差しを私に向けた。
「ただ、少しだけ……アタシに本物を体験させて、この脳髄に『リアル』を焼き付けさせてほしいっス。どうっスか、ありす先生……?」
床に横たわり、自身を晒しながら熱い吐息を漏らす比奈さん。その圧倒的な熱量と、目の前に広がる処女の秘部の神々しさに、私の「男の証」は限界を超えて脈打ち、もはや一刻の猶予もないほどに猛り狂っていた。
「……うぅ……。わかりました」
私は大きく深呼吸をし、腹を括って一歩前へと踏み出した。
「比奈さんが、そこまで表現者としてのプライドを賭けて望むのでしたら……この橘ありす、その挑戦を受けましょう。比奈さんの初めて、私が責任を持って頂きます」
ゴクリ、と脱衣所の静寂の中に比奈さんの唾を飲み込む音が大きく響いた。
私はゆっくりと腰を落とし、限界まで硬く、熱くそそり立つ「男の証」を、比奈さんの濡れた秘部の入り口へと押し当てた。
じわりと絡み合い、互いの境界が融けていくような錯覚を覚える。しかし、すぐには挿入せず、先端を入り口に押し付けたままじりじりと焦らすように円を描いた。
「もう……止まりませんからね。覚悟してください、比奈さん」
比奈さんの潤んだ瞳を真っ直ぐに見つめ、私は低く、少し強引な声で告げる。比奈さんは小さく息を呑みながらも、覚悟を決めたように私の顔を見返し力強く頷いた。
「……勿論っスよ。出し惜しみは無しっス……一気にお願いするっス、ありす先生……!」
その言葉が終わるのを待たず、私は一気に腰を突き入れた。
「っぉ゛ぉ゛っっ!?!? んぐ、ぅぅうっっ……!!」
処女の狭い膣内を、私の凶暴なモノが容赦なく蹂躙し、押し広げていく。
一気に奥まで貫かれた衝撃に、比奈さんは声を上げることすらできず、私の肩にかけた手に力を込め強張らせた。
狭く、熱く、締め付けるような肉壁が、私のモノをギリギリと締め上げる。
「っふぅぅ……。動きますよ、比奈さん」
私はまだ痛みに震える比奈さんの腰を掴みゆっくりと動かし始めた。初めての異物を受け入れ、激しく収縮する彼女の膣内を確かめる様にじっくりと動いていく。
「っ、くぅっ……! きっ、きつきつですね……っ」
あまりの締め付けを必死に堪えながら、私は比奈さんの耳元で熱い息を吐き出した。
「でも、手加減はしません。……折角ですから比奈さんに、しっかりと、その身体に『リアルの本質』を味わって貰いますからっ♡」
「んっっ、ぅあっ、ぁっぐぅっ……! ふぁ、あぁっ……♡ お、奥が、裂けそう、に熱いっス……っ! でも、これ、これが……ッ♡」
痛みに涙を浮かべながらも、比奈さんはその身体に刻まれる鮮烈な感覚を脳に焼き付けるかのように、必死の表情で私を受け入れ続けていた。
「ふっ! ぁぐぅっ! な、何か解ってきたようなっ♡ 気がするっス……♡ ぁあ゛っ♡」
比奈さんは押し寄せる未知の痛みに歯を食いしばりながらも、その奥から滲み出る肉の悦びを逃すまいと、必死に私を受け止めている。その瞳には、なおも表現者としての執念が宿っていた。
「ふっ♡ んっふぅっ♡ ふーっ♡」
容赦なく処女の膣内を突き崩すように、私は一定のリズムで腰を打ち付け、比奈さんを容赦なく責め立てていく。狭い肉壁が私の質量をギリギリと締め付け、脱衣所には二人の体液が混ざり合う激しい音が響き渡る。
「っふぅっ♡ そうは言っても、あまり痛がられてばかりでも何ですから……私のチート能力で、その痛みを和らげてあげますっ♡」
さすがにこれ以上の無理な負荷は可哀想だと思い、私は自身の「常識改変」に付随する力を発動させた。比奈さんの肉体の痛みを快感へと強制的に書き換える。
「お゛お゛ぉぉっ?!♡♡ い、痛みがっ♡ 引いてきてっ♡ ぃひぃっ♡ す、すごっ♡」
効果は劇的だった。比奈さんの表情から苦悶が消え失せ、一瞬でドロドロの快楽に染まりきった。
「アタシのおまんこっ♡ ありす先生のクリちんぽでっ♡ 何かわからないけどっ♡ 堕ちちゃうっス♡」
痛みが消えたことで、比奈さんは本能のままに私の腰へと自身のしなやかな脚を絡め、ガッチリとホールドしてきた。逃がさないとばかりに引き寄せられ、結合部はさらに深く、密接に噛み合う。
「っっぉっ♡ほぉっ♡ 比奈さんっ……♡」
呼応するように、比奈さんの内部がうごめき、私のモノを強烈に搾り取りにかかる。そのあまりの心地よさに腰が砕けそうになりながらも、私は彼女の胸元へと手を伸ばし、ツンと硬く勃起した乳首を指先できゅうっと摘み上げた。
「ぉあ゛っ♡ そ、そこはダメっス♡ あ゛っはぁ♡」
ピンポイントでの刺激に、比奈さんは背中を大きく反らせ、内部の締め付けがさらに一段とキツくなる。
「やっぱり、ここが弱点……っ、ですねっ♡」
私はその敏感な乳首を弄りながら、限界まで昂った自身の腰をさらに加速させた。
「い゛っ、いきますよっ♡ 比奈さんっ……!」
ギュウギュウと全方位から締め付ける肉の波に抗うように、全身の力を振り絞って奥へと猛烈に打ちつける。脳内が真っ白に染まり、溜め込んだ熱いエネルギーが限界を迎えて爆発した。
どぷぅっっっ♡ びゅぶーーーーっ♡ びゅぶゅっ♡ ぶびゅーーーーーーーーっ♡
比奈さんの子宮口目掛け、私の特濃の白濁が一気に激しく放出されていく。凄まじい勢いで注ぎ込まれる熱い質量に、比奈さんは大きく身体を震わせ、私のすべてをその身に焼き付けるように強く抱きついてくるのだった。
「あ゛はぁぁっ♡ ぁぁーーーっ♡ っーーー〜っ♡ あ゛っ♡ っはぁーっ♡」
最奥へと容赦なく注ぎ込まれる熱い奔流を受け止めながら、比奈さんは白目を剥くほどの凄まじい絶頂に達し、全身を激しく震わせた。処女の狭いひだの隅々までが私の白濁で満たされ、彼女の身体は快感のキャパシティを超えて完全に果てていく。
「ふぅーっ♡ ふぁーっ♡」
私も全てを出し尽くし、心地よい疲労感の中でやり遂げた充実感に包まれながら、比奈さんの汗ばんだ胸元へと力なく倒れ込んだ。脱衣所の床の上、重なり合う二人の肌から、熱い蒸気のような熱気が立ち上る。
「ふぅー……♡」
(……って、駄目です! このままここで寝ているわけにはいきません……!)
しばらくして呼吸が落ち着くと同時に、橘ありすとしての理性が急速に呼び覚まされた。
(いくら自主練の後とはいえ、シャワーが長すぎては菜々さんや奈緒さんに怪しまれてしまいます。一刻も早くここを出ないと……!)
我に返った私は、まだ比奈さんの体内に収まったままの自分のモノを、ぬちゅり、と濡れた音を立てて引き抜いた。結合部からは収まりきらず溢れる特濃の白濁が、紅白に染まり彼女の太ももを伝って床へと贅沢に溢れ出していく。
「ぐっ……、お、重い……。比奈さん、伸びてないで起きてください……」
完全に脱力して床で行き倒れている比奈さんの身体を起こそうとするが、徹夜明けの疲労と初めての強烈な絶頂が重なり、彼女は完全に伸びきってしまっていた。
「ぅ……ううん……すご、凄かったっス、ありす先生……。二次元を超えた……リアルが、ここに……っス……」
「もう、しっかりしてください!」
完全に目が据わったまま、うわ言のようにそんなことを呟く比奈さんを、私は叱咤しながら、半ば引きずるようにして再び浴室へと連れ戻した。
シャワーの温水を二人の身体に浴びせ、お互いの肌にこびりついた白濁を大急ぎで泡で洗い流していく。
比奈さんの身体を優しく、しかし迅速に拭き上げジャージをなんとか彼女に着せ、私も大急ぎで着替えを済ませる。
「ほら、行きますよ。足元に気をつけてくださいね」
力が入らずにふらつく比奈さんの肩をガッチリと支え、抱え込むようにしながら、私は何食わぬ顔を装って、そそくさと湯気の立つシャワー室を後にするのだった。
「……イヤー、かたじけないっス。徹夜明けの身体にさっきの疲れ、それにシャワーの温みがスーッと効いて……ちょっと本格的に眠くなっちゃったっス……」
比奈さんは私の肩に完全に身体を預け、ふにゃふにゃと締まりのない笑みを浮かべながら呟いた。
「……全く、原稿のためとはいえ無理は禁物ですよ? これからはちゃんと計画的に進めてください」
しっかりと彼女の腰を支え、廊下をゆっくりと歩きながら、私は呆れながらも少し過保護気味に言葉を返す。
「でも! お陰様でめちゃくちゃ勉強になったっス! この鮮烈な実体験リアルがあれば、読者から『先生、ちんこの向きが逆さまです』なんて悲しい感想を突きつけられることは、もう二度とないっス!!」
私の肩に掴まったまま、比奈さんは拳を握りしめてやる気に漲っていた。眼鏡の奥の瞳には、プロの同人作家としての熱い魂が完全に復活している。
「はぁ……それは良かったです。でも、リアリティを追求するからといって、実在のアイドルをモデルにした『ナマモノ』のジャンルにだけは、絶対に手を出さないでくださいね? 絶対に、ですよ?」
私はジト目を向けながら、橘ありすとして、そして一人の被害者として強烈に釘を刺した。
「勿論っス! これはありす先生とワタシだけの、絶対に墓場まで持っていく秘密っス! ありす先生に迷惑をかけるようなことは、万が一にもしないっス!」
「……わかりましたから、その『先生』というのはやめてください」
そんな風に小声で言い合いをしながら、私たちは菜々さんと奈緒さんが待つ事務所のソファスペースへと戻っていった。
「おい比奈!? お前、シャワー浴びに行ってなんでそんなボロボロになって戻ってきてんだよ!?」
比奈さんのあまりの衰弱ぶりを見て、奈緒さんが慌てて駆け寄ってきた。
「イヤー、奈緒ちゃん心配いらないっス……。ちょっと脱稿の安心感から一気に疲れが出ちゃったみたいでス。事務所の仮眠室で少し寝てから帰るっスよ……」
「もー、本当に人騒がせな奴だな。ほら、肩貸すから行くぞ」
呆れ果てた奈緒さんに比奈さんを引き継ぎ、私は一歩後ろに下がって菜々さんに視線を向けた。
「では……私はこれで、お先に失礼します。皆さん、お疲れ様でした」
「はい、ありすちゃんもお疲れ様でした! ゆっくり休んでくださいね☆」
「おう、ありすもお疲れ!気をつけて帰れよ!」
「ありすちゃん本当に世話になったっス!お疲れ様っス!」
三人ににこやかに見送られ、私は今度こそ静かに事務所を後にした。
事務所を出て、最寄り駅へと向かう帰り道。私は夕暮れに染まり始めた街並みを歩きながら、ふと自分の手のひらを見つめた。
(……事務所のガサ入れだなんて、荒木さんたちにお仕置きをしようと考えていた自分が、少し恥ずかしいですね。彼女たちはただ、自分の表現に、生き様に、どこまでも真っ直ぐで熱かっただけなのに……)
アプローチの方法が色々と狂ってはいたが、比奈さんのあのクリエイターとしての凄まじい熱量は、ソロデビューを果たしたばかりの今の私にとって、大きな刺激になったのも事実だった。
(私も、ソロデビューを達成したからといって、ここで脚を止めているわけにはいきません。もっと上を目指して、橘ありすの表現を突き詰めていかなければ……!)
胸の奥に新たな闘志の火を灯し、私は前を向いて力強く歩みを進めた。
……しかし、そんな私の殊勝な決意とリスペクトは、そのわずか数日後に木っ端微塵に打ち砕かれることになる。
「……なんですか、これは」
「ありす先生!あの時のパッションのまま、突発的に描き上げちゃったっス!」
後日、比奈さんからドヤ顔で手渡された一冊の同人誌。
そこには、某お嬢様アイドルによく似たキャラクターが、見覚えがあるクールな主人公の「クリちんぽ」に奉仕をする姿と、某オタクアイドルがベッドの上で「リアルすぎてもう戻れないっス♡」と白目を剥いて激しく貫かれている姿が、これ以上ないほどの圧倒的な画力とリアリティで生々しく描写されていた。
「……比奈さん。ナマモノはやめてくださいと、私はあれほど言いましたよね?」
その、あまりにも「答え合わせ」が容易すぎる神がかった突発本の出来栄えに、事務所でただただ深い引き笑いを浮かべながらドン引きする私。
「比奈さん?ちょっとこちらでお話があります」
音もなく現れそう言い放ち、悪魔の様な気を放つちひろさんに引き摺られていく比奈さんの姿を、私はただ眺めることしかできなかったのだった。