TS転生橘ありす 作:湯けむり桶
成田国際空港から長時間のフライトを経て、私たちが降り立ったのは、12月だというのに眩しい太陽と突き抜けるような青空が広がる──南半球の国、オーストラリアだった。
今回の目的は冬の日本を離れ、夏のオーストラリアでのクリスマスイベントへの出演。日本での寒波が嘘のような熱気に包まれた空港ロビーを見渡し、私は圧倒されていた。
(クリスマスイベントのために、これだけの大人数のアイドルとスタッフを海外へ一気に派遣するなんて……これが大手の力ですか……)
スケールの大きさに思わず身震いしていると、隣からくいくいと服の袖を引かれた。振り返ると、福山舞ちゃんが少しモジモジとしながら私を見つめていた。
「……ありすちゃん、もしかしておトイレですか?……実は私もなんです、何だか急に緊張しちゃったみたいで。もし良かったら、一緒におトイレ付き合ってくれませんか?」
舞ちゃんの可愛らしいお誘いに、私ははっと我に返る。そういえば機内で出されたトロピカルジュースが美味しくて、ついおかわりしてしまったことを思い出した。
「……そうですね。私もちょっと、機内でジュースを飲み過ぎてしまったかもしれません。迷子になるといけませんし、一緒におトイレに行きましょう」
まずは全員でスムーズに入国手続きを済ませ、私たちは空港内のトイレ休憩を挟むことになった。
「ふぅ……ありすちゃん、待っててくれてありがとうございます!」
スッキリした表情で戻ってきた舞ちゃんに微笑みかけながら、私はハンカチで手を拭いた。海外のトイレということで少し警戒していたが、そこは大手の用意したルートだけあって非常に清潔で安心した。
トイレを出ると、ロビーのベンチでは今回の同行メンバーたちがそれぞれのスタイルで寛いでいた。
「あー……もーダメ、杏はオーストラリアの重力に負けた……。イベント本番までここで寝る……」
長旅ですでにエネルギー切れを起こし、ベンチにしがみついている双葉杏さん。
「ふん、だらしないわね。そこの荷物持ち。私に冷たい飲み物でも買ってきなさい」
異国の地でも相変わらずの絶対女王の風格を崩さない財前時子さん。
「へえ、ここがオーストラリアか! 風が気持ちいいじゃねえか。なあ千枝、美羽、あっちの土産屋面白そうだぜ?」
愛用のギターケースを担ぎ、早くも現地のカルチャーに目を輝かせている木村夏樹さん。
「あ、夏樹さん、あまり遠くに行くとプロデューサーさんに怒られちゃいますよっ!?」
荷物を抱えながら慌てて夏樹さんの後ろを追いかける佐々木千枝ちゃん。
「おー! 見て見て千枝ちゃん! あそこの看板のコアラのイラスト、すっごいファンキーだよ!」
荷物をひっくり返しそうになりながら元気いっぱいに指をさす矢口美羽さん。
個性豊かすぎるメンバーの姿に、私は小さくため息をつきつつも、これから始まる真夏のクリスマスイベントに向けて、日本の冬とは違う熱い高揚感が胸に湧き上がってくるのを感じていた。
「みんな無事来たな、長旅ご苦労様!早速だが打ち合わせに入るぞ!」
先に現地入りしていたプロデューサーさんと無事に合流した私たちは、休む間もなくイベントの最終準備へと取りかかった。プロデューサーさんや現地スタッフの方々の不眠不休の尽力、そして何よりメンバー全員の息の合ったパフォーマンスのおかげで、真夏のクリスマスイベントは大盛況のうちに幕を閉じたのだった。
そして訪れた、待ちに待った自由時間。
私たちは観光客の少ない、プライベート感漂う美しいビーチへと案内され、短いバカンスを満喫していた。
「プロデューサーさんの話によれば、このビーチは桃華さんのご実家が関係しているらしいですね……。もうスケールが違いすぎて、何が何やらです……」
私は砂浜に立てられたパラソルの下、ビーチチェアに腰掛けてトロピカルドリンクを飲みながら、あまりの規格外ぶりに遠い目をしていた。流石は櫻井財閥と言うべきか、まさかオーストラリアの美しい海岸線の一部にまでその影響力が及んでいるとは思いもしなかった。
「日焼け止めを塗る手が止まっているわよ。もっと隅々まで丁寧に、私の肌が傷つかないよう細心の注意を払いなさい。」
「は、はいっ! すみません時子様!」
少し離れた特等席では、財前時子さんが慣れた様子でビーチチェアに君臨し、水着姿のプロデューサーさんを完全に顎でこき使っていた。プロデューサーさんは大汗をかきながら必死に日焼け止めを塗っている。あちらの主従関係は南半球に来ても微塵も揺らがないようだ。
さらに遠くの岩陰では、夏樹さんが自分用のパラソルを立てて腰を下ろし、波の音に合わせるようにアコースティックギターを爪弾くその姿はどこを切り取っても絵になる。
「千枝ちゃん、美羽さん、見て見て! 綺麗な貝殻見つけたよ!」
「わぁ、本当ですね舞ちゃん! あ、美羽さん、そんなに勢いよく走ると危ないですよ!?」
「大丈夫大丈夫ー! ひゃっほう、夏最高ーー!!」
波打ち際では、舞ちゃんと千枝ちゃん、そして美羽さんが元気に水を掛け合って遊んでいる。その賑やかな声から少し離れた日陰では──。
「ふにゃー……オーストラリアの砂浜、あったかくて最高……。杏はここで砂の城の一部になるの……」
双葉杏さんが寝転びながらゲームの画面をタップしていたかと思えば、いつの間にか携帯機を胸の上に載せたまま、すやすやと本格的に寝入っていた。
そんな個性的すぎる面々の様子を見渡していると、サクサクと砂を蹴る足音がこちらへ近づいてきた。
「ありすちゃん! 向こうで一緒に遊びませんか?」
白い砂浜を舞ちゃんが元気に息を切らせながら来て声をかけてくれた。水滴のついた肌が太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。
「舞ちゃん。折角のお誘いですが、私はもう少しこのドリンクを味わってからそっちへ行きますから、先に楽しんできてください」
私は手元のグラスを見せながら、少し大人びたトーンで微笑んだ。激しいステージの後ということもあり、少し火照った身体をこの南国の冷たい果汁で落ち着かせたかったのだ。
「そうですか? じゃあ、先に千枝ちゃんたちと遊んでますから、後から絶対に来てくださいね!」
「ええ、すぐに行きます」
元気にそう言いつつも、舞ちゃんはなぜかその場から動こうとせず、水着の裾を指先で弄りながらもじもじとし始めた。上目遣いで私をチラチラと見ては、顔を赤らめている。
私はその様子を不思議に思い、小首を傾げた。
「? どうしたんですか、舞ちゃん?」
「あ、あの……ありすちゃん。この水着……どうですか? 似合ってます、か……?」
舞ちゃんは両手を胸の前でぎゅっと握りしめ、頬をリンゴのように染めながら聞いてきた。フリルがあしらわれた、彼女のピュアさを引き立てる淡いピンク色の水着。それが彼女の華奢な身体に完璧にフィットしている。
(くっ……! 何ですか、この暴力的なまでに可愛い生き物は……!!)
私の心臓がドキンと跳ね上がった。普段のレッスン着や衣装も可愛いが、真夏の太陽の下で恥ずかしそうに身をすくめる彼女の破壊力は凄まじい。危うく持っていたドリンクのグラスを取り落とすところだった。私の股間の男の証までが、彼女の可憐さに反応して小さくピクリと頭をもたげるのを感じ、慌てて足を組み替える。
「……ええ、とても似合っていますよ。舞ちゃんらしくて、すごく可愛いです」
私は高鳴る鼓動を隠し、努めて冷静さを装いながらも、嘘偽りのない率直な感想を言葉にして伝えた。
「えへへ♡ ありがとうございます、ありすちゃん♡」
私の言葉にパッと表情を輝かせた舞ちゃんは、嬉しそうに照れ笑いを浮かべると、今度こそ弾んだ足取りで千枝ちゃんたちの待つ波打ち際へと走っていった。
その小さくなっていく後ろ姿を見送りながら、私は深く息を吐き出して冷たいドリンクを一気に煽った。
(危ないところでした……。あまりの眩しさに、理性が南半球の彼方へ吹き飛ぶかと思いました……)
パラソルの陰に入っているとはいえ、南半球の照りつける太陽と、波打ち際で無邪気に跳ねる舞ちゃんたちの眩しさは、私の目をチカチカさせるのに十分だった。
(うう、それにしてもオーストラリアの日差しは本当に強いですね……)
冷たいトロピカルジュースをちびちびと口に含みながら、私は遠くの水平線をぼんやりと眺める。
(そういえば……海外のビーチにはヌーディストビーチなるものが存在するのですよね。ふふ……もしも日本のアイドルたちが、この開放的な異国の空気に当てられて、とんでもないハメを外してしまったら……なんて……)
旅の疲れと南国の心地よい潮風が手伝って、私の思考は急速に脈絡を失い、夢と現実の境界線を彷徨い始めていた。
──そしてその瞬間、私自身も無意識のうちに、あの傲慢なまでの「常識改変」のチート能力が、この真夏のプライベートビーチ全体へと音もなく波及してしまったことに……私はまだ、気づいていなかった。
「もう! ありすちゃん、待ちくたびれちゃいましたよ!」
「ひゃいっ?」
不意に、すぐ近くから弾んだ声が聞こえて私はハッと意識を引き戻された。
「うふふ、ありすちゃん、ちょっと眠くなっちゃいました?」
続いて千枝ちゃんのくすくすと小気味よく笑う声が耳に届く。どうやら二人は波打ち際での水遊びを一段落させて、私のところまで迎えに来てくれたようだ。
「……はっ、す、すいません! ちょっと、南国の風が心地よくて寝ちゃいそうになっていました……」
私は少しバツの悪さを感じながら、二人を迎えるために視線を上げた。
「けおっ!?!?!?」
その瞬間、私の喉から裏返った声が飛び出した。心臓が跳ね上がるどころか、一瞬で凍りついたかと思うほどの衝撃が全身を駆け抜ける。
「……? ありすちゃん、どうかしましたか?」
「お顔が真っ赤ですよ? やっぱり、少し熱中症気味でしょうか……?」
心配そうに私の顔を覗き込んでくる舞ちゃんと千枝ちゃん。
しかし、私の度肝を抜いたのはその表情ではない。彼女たちの首から下──いや、全身である。
二人は、先ほどまで着ていたはずの可愛らしいフリル付きの水着をどこへ置き忘れてきたのか、文字通り一糸纏わぬ完全な素肌の姿で、堂々と私の目の前に立っていたのだ。
太陽の光を浴びて健康的に輝く舞ちゃんのふっくらとした未成熟な身体と、少し恥ずかしそうにしながらも隠す素振りすら見せない千枝ちゃんの滑らかな白い肢体。二人の瑞々しい女の子の身体が、南半球の青空の下で完全に曝け出されている。
(な、ななな、何ですかこれはーーーっ!?!?)
私の視界に飛び込んできたあまりにも過激で暴力的な情報量に、私の脳内の常識の歯車がガラガラと音を立てて崩壊していくのだった。
(お、落ち着きなさい橘ありす……! これはきっと、南半球の強い日差しのせいで私が見ている白昼夢か何かです……!)
心臓が破裂しそうなほど脈打つ中、私は必死に大人の余裕を装い、震える手でドリンクのグラスを握りしめた。視線を二人の目の毒すぎる素肌から逸らすように、努めて自然な動作で周囲を見回す。
「そ、そういえば、美羽さんはどうしたんですか……?」
声を震わせないようにするのが精一杯だった。しかし、視線の先に映った光景は、私のささやかな現実逃避を無慈悲に打ち砕いた。
少し離れたもう一つのパラソルの下では、美羽さんが当然のような顔をして一糸纏わぬ姿で豪快にビーチチェアに寝そべり、「プハー! やっぱり海の後のジュースは最高だね!」とトロピカルドリンクを煽っていた。
(み、美羽さんまで……!? いいえ、でも待ってください。あの厳格な時子さんなら、いくら海外とはいえこんな破廉恥な……)
藁にもすがる思いで女王様の鎮座する特等席へ目を向ける。
確かに時子さんは、先ほどと変わらずシックな黒い水着を身に纏い、優雅に足を組んでいた。私は一瞬だけホッとしたが、そのすぐ傍らで甲斐甲斐しくお世話をしているプロデューサーさんの姿を見て、今度こそ完全にフリーズした。
プロデューサーさんは真っ裸だった。一糸纏わぬ姿で大汗をかきながら、時子さんに冷たいミストを吹きかけている。時子さんもそれを当然の奴隷の姿とばかりに一瞥もせず受け入れている。どうやら私の能力は、このビーチの水着を着るか着ないかの常識を、とんでもない方向へ歪めてしまったらしい。
「ありすちゃんも、早く脱がないんですか?」
舞ちゃんが首を傾げながら、まるで「靴を脱がないんですか?」とでも言うようなごく自然なトーンで問いかけてきた。
「……あぁ、えっと、そう! その……いくら開放的なビーチとはいえ、そんな格好だと直射日光で日焼けしちゃいますし! せ、折角ですが私は遠慮しておこうかなぁ……なんて……!」
顔から火が出そうなのを隠しながら、私は必死に正論を捲し立てた。しかし、千枝ちゃんがくすくすとお姉さんぶった笑みを浮かべる。
「大丈夫ですよ、ありすちゃん。ほら、ちゃんと日焼け止めがありますから!」
舞ちゃんが手元にあったボトルの日焼け止めを掲げて見せた。
「さっき水着を脱いだから、これからちゃんと二人で塗り合いっこをしようと思ってたんです」
千枝ちゃんがそう言いながら、一糸纏わぬ滑らかな太ももを私のビーチチェアの端にのせ、当然のようにすぐ横へと腰掛けた。密着した彼女の素肌から、海の匂いと女の子特有の甘い体温がダイレクトに伝わってきて、私の股間の男の証がさらに存在感を主張し始める。股間の膨らみを隠すように、私は必死に身をすくませた。
「折角ですから、ありすちゃんも一緒に塗りましょう!」
舞ちゃんは満面の笑みで、その日焼け止めのボトルを私の手元へと差し出してきた。
「はい……えっ!?わ、私がですか……?」
受け取らざるを得ない状況になり、私の指先は日焼け止めのプラスチックの冷たさと、目の前の熱気のギャップにわなわなと震える。
「じゃあ、ありすちゃん。まだ塗っていないところを、塗ってもらっても良いですか……?」
千枝ちゃんはそう言うと、私の目の前で綺麗に整った背中と、ふっくらとしたお尻のラインを惜しげもなく晒しながら、隣のビーチチェアの上へと綺麗にうつ伏せに横たわった。
白く滑らかな背筋が、太陽の光を受けて眩しく輝いている。手渡された日焼け止めを握りしめたまま、私は完全に退路を断たれ、そのあまりにも無防備な少女の素肌を前にして、ごくりと息を呑むことしかできなかった。
(……大丈夫です。落ち着きなさい、橘ありす。これはただの海外のビーチにおける、女の子同士の健全なスキンシップの一環に過ぎません……!)
私は心の中でそう何度も唱え、自分を極限まで律しながらビーチチェアから降り立った。手に出したひんやりとする白いクリームを、千枝ちゃんの滑らかな背中へと恐る恐る乗せる。
「失礼します……」
手のひらで伸ばしていくと、千枝ちゃんの素肌は驚くほど柔らかく、吸い付くようだった。
「ひゃぅ……冷たいです……」
私が指先を動かすたびに、彼女は小さく身体を震わせる。私は雑念を振り払うように必死で手を動かし、背中から腰のくびれ、そしてまあるく膨らんだ柔らかな臀部へと日焼け止めを塗り広げていった。
ようやくそこまでを塗り終え、大きく息を吐き出そうとしたその時──。
「それじゃあありすちゃん、前側もお願いしますね」
千枝ちゃんは何の躊躇もなく、くるりと身体を反転させて仰向けになった。
目の前に現れたのは、まだ膨らみ始めたばかりの可憐な双丘と、その頂点にある淡いピンク色の突起。そして、脚の付け根のぴったりと閉じた割れ目だった。南半球の太陽の下で完全に露わになったその聖域を前に、私の頭の血管が沸騰する。
「……はい、橘ありす、千枝ちゃんの前側も……しっかり日焼け止めを塗りますね……」
最早どこを見ればいいのか分からず、私は完全に目が据わった遠い目をしながら、千枝ちゃんの胸元へと手を伸ばした。
「んぅっ……あんっ♡」
手のひらで包み込むようにしてクリームを馴染ませると、千枝ちゃんは南国の潮風に混じってなんとも甘い吐息を漏らす。その声が耳に届くたび、私の股間の男の証が今にも水着の布地を突き破らんばかりに猛烈に硬くなっていく。
(私は一体何をしているのでしょう……日焼け止めを塗っているはずなのに、これではまるで……っ)
最早スキンシップなのか背徳的な愛撫なのか自分でも境界線が見えなくなりながらも、全身から冷や汗を流してなんとか前側も塗り切った。
「はぁ……♡ はぁっ……♡」
千枝ちゃんは微熱を帯びたような潤んだ瞳で息を荒くしている。私は自身の猛り狂う股間を彼女に悟られないよう、不自然に腰を後ろに引かせながら声を絞り出した。
「……ふぅー、終わりましたよ、千枝ちゃん」
「……はっ♡ はい♡ ありがとう、ございます、ありすちゃん……♡」
千枝ちゃんは頬をこれ以上ないほど真っ赤に染め、どこかよろよろとした足取りでビーチチェアから降りた。その様子は、日焼け止めを塗られただけとは思えないほど艶っぽく張り詰めていた。
「じゃあ、今度は私の番ですね!」
入れ替わるようにして、今度は舞ちゃんが嬉しそうにビーチチェアへと飛び乗り、コロンとうつ伏せに寝そべった。そして首だけをこちらへ向けて、期待に満ち溢れたキラキラとした瞳で私を見上げてくる。
千枝ちゃんとの行為で、私の理性のタガはすでに半分外れかかっていた。水着の奥でギリギリと自己主張する熱い質量を抑え込みながら、私は完全に据わった目で日焼け止めのボトルをきつく握りしめた。
「っ……勿論です。舞ちゃんにも、しっかりと塗り残しがないように……完璧に、隅々までやってあげますよ、私は……!」
もはや逃げ場などない。私は覚悟を決め、次なる可憐な素肌へと、その欲望を孕んだ両手を伸ばすのだった。
「ふふっ、あははっ♡ ありすちゃん、ちょっとくすぐったいっ……♡」
舞ちゃんが細い身体を可愛らしく身悶えさせながら、くすぐったそうな声をあげる。しかし、先ほどの千枝ちゃんで完全に一線を越えかけた私の精神状態は、もはやベテランのマッサージ師のごとき手際良さを生み出していた。ここで動じたら負けです。私は無心で、彼女の滑らかな背中から、キュッと引き締まった腰、そして健康的な太ももの裏へと日焼け止めを迷いなく塗り広げていく。
「……舞ちゃん、背中側は終わりました」
私は脳の血管が何本か切れそうなのを必死に堪え、喉の奥から振り絞るようにしてそう声をかけた。
「えへへ♡ じゃあ、前もお願いしますね、ありすちゃん♡」
待ってましたとばかりに、舞ちゃんは太陽のような笑顔のまま、コロンと身体を仰向けに反転させた。
「……っ、では、不肖橘ありす、塗らせていただきます……!」
目の前に広がった、南半球の光を浴びて眩しく輝く全てを曝け出した舞ちゃんに視線を釘付けにされながらも、私は再び白いクリームを手に取り彼女の瑞々しい肌へと這わせた。
(……って、だから前側はもう、殆どまともに塗れるところが残ってないじゃないですか! 海外にまで来て、真昼間のプライベートビーチでこんな破廉恥なことをしているなんて……私の求めていた『程々なアイドル生活』とは一体何だったのですか……!?)
心の中で激しいセルフツッコミを入れつつも、私の手は止まらない。まだ少し平坦ながらも愛らしい弾力を持つ胸元をやさしく円を描くように塗り、そこからおへその周り、そして水着の布地すら存在しない、完全に無防備な太ももの付け根の合わせ目へと指先を滑らせていく。
「っはぁ♡ ありすちゃんの日焼け止めを塗る手……すごく、気持ちいいですっ……♡」
私の葛藤や困惑など露知らず、舞ちゃんはビーチチェアの上で完全に身を委ね、頬を上気させてトロンとした瞳で甘い吐息を漏らす。そのピュアゆえの破壊力抜群の声が響くたび、私の水着の奥に隠された男の証は限界を超えて脈打ち、熱い熱を帯びてはち切れんばかりに勃起していた。
「あ、あの……舞ちゃん、すごく気持ちよさそう……」
すぐ側では、先ほど私に隅々まで塗られてまだ身体を火照らせている千枝ちゃんが、水着も着ていない完全に真っ裸の状態で、胸元を両手で少し隠しながらドキドキした様子で私たちの熱いスキンシップを見守っている。その視線すらも、今の私には猛烈な刺激だった。
──そして、そのすぐ横では。
「すぴー……ふにゃあ……杏、オーストラリアの風になる……」
双葉杏さんだけが、周囲のこの異常なまでの淫靡さと熱気から完全に孤立した世界で、相変わらず気持ちよさそうにスースーと寝息を立てて爆睡していたのだった。
(Be cooL! Be cooL! 冷静に、素早く! 日焼け止めをかける! 日焼け止めを塗る! ただ無心で日焼け止めを塗るマシーンになるのです、橘ありす……!)
私は心の中でそう猛烈に呪文を唱えながら、まるで工場の精密機械のように正確な手つきで舞ちゃんの白い太ももにクリームを伸ばしていく。変な雑念を挟めば、私の水着の下で猛り狂っている男の証が、文字通り大惨事を引き起こしてしまう。
「ぁふぁっ♡ あり、すちゃん♡ そこっ♡ んはぁっ……♡」
しかし、私の努力も虚しく、舞ちゃんの口からは南国の青空を淫らに染め上げるような甘い声が次々と漏れ出す。私の指先が内腿の柔らかい部分に触れるたび、彼女の小さな身体がビクッと可愛らしく跳ね上がる。
(……何も聞こえません! 私の耳には今、頑丈な粘土が詰まっていて何も聞こえないのですっ!!)
限界まで腰を後ろに引いた奇妙なへっぴり腰のまま、私は必死に、ただ必死に手を動かし続けた。
「……ふぅーっ……! 舞ちゃん、終わりました」
そしてついに、私はすべての工程を完了した。額の汗を手の甲で拭いながら、私はまるで巨大なプロジェクトを完遂した職人のような、実にやり遂げた顔で深く息を吐き出す。
「はぁーっ♡ はーっ♡ あ、ありがとうございます、ありすちゃん……♡」
舞ちゃんはまだ微熱を帯びた吐息を漏らし、完全に脱力して肌をピンク色に染めながらも、嬉しそうにビーチチェアの上で起き上がった。
「……では、私はここでゆっくり休んでいますので、お二人とも引き続きあちらの波打ち際で遊んできてください……」
これ以上の刺激は私の心臓と股間が持ちそうにない。私は疲弊した精神を癒やすべく、半分ぬるくなったジュースのグラスへ手を伸ばそうとした──。
「じゃあ、今度はありすちゃんの番だね!」
「……へぁっ!?」
舞ちゃんが満面の笑みでそう言ったかと思うと、私の腕が小柄な彼女の力でグイと引っ張られた。驚く間もなく、私は舞ちゃんと入れ替わるようにして、ビーチチェアの上へとうつ伏せに押し倒されてしまった。
「今度は、私達二人でありすちゃんに日焼け止めを塗ってあげますね♡」
いつの間にか私の背後に回り込んでいた千枝ちゃんが、一糸纏わぬ素肌のまま、にこやかに微笑みながらボトルのキャップを開ける音が響く。
「い、いやっ! 私は本当に大丈夫ですからっ! ここで大人しくジュースを飲んでますのでっ……ひゃぅ!?」
必死に身をよじって抵抗しようとした私だったが、舞ちゃんと千枝ちゃんの息の合った連携プレイにより、私のセパレート水着のパンツがするりと滑るように引き下ろされ、続いてトップスの紐も鮮やかに解かれてしまった。
南半球の開放的な太陽の光が、今度は私の真っ裸の背中とお尻、そして──何より男の証のすぐ近くをダイレクトに照らし出す。
「折角オーストラリアに来たんですから、ありすちゃんも開放的にならないともったいないですよ♡」
舞ちゃんが私の背中にひんやりとしたクリームを垂らし、小さな手のひらで優しく広げ始める。
「そうですよ、何事も経験です♡ ありすちゃん、とっても綺麗な肌をしてますね……」
同じく千枝ちゃんも私の腰のあたりに手を添え、愛おしむように日焼け止めを塗り始めた。
「んっ……ふぁっ……!?」
二人の柔らかい手のひらが、私の敏感な背中や腰を同時に愛撫するように滑る。そのあまりの心地よさと、自分がビーチで今完全に真っ裸にされているという異様なまでの羞恥心に、私の口からも情けない声が漏れ出す。
そして何より最悪なのは、うつ伏せになっているせいで、私のカチカチに勃起した熱いペニスが、ビーチチェアのメッシュ生地を容赦なく圧迫していることだった。動くたびに摩擦が加わり、私は必死に声を押し殺して耐えるしか選択肢がなくなっていたのだった。
「ふー、ふぅーっ……♡」
ビーチチェアに顔を埋め、私は握りしめた拳に爪が食い込むほど必死に耐えていた。二人の小さくも柔らかい手のひらが、私の背中や腰のラインを同時に愛撫するように滑るたびに、背筋をゾクゾクとする快感が駆け抜ける。
「えへへ♡ お尻もとっても可愛いです、ありすちゃん♡」
舞ちゃんが慈しむような手つきで、私の割れ目の輪郭をなぞるように丁寧にクリームを塗り込んでいく。
「はわぁ……ありすちゃんのお尻、すごく柔らかくて、すっごく……」
千枝ちゃんまで熱心に指先を動かし、私の臀部の肉を揉みほぐすようにマッサージし始めた。
「ーーっ! 二人して、そんなにお尻ばっかり……っ、ふぁっ!? ちょ、ちょっと、指をそんなところまでっ♡ ……ぅうっ!」
ただの塗布にしては明らかに過剰で淫靡なタッチに、私はついに声を漏らしてしまった。お尻の割れ目の中心、すぐそこにある敏感な部分にまで二人の指先がうっかり触れそうになるたび、ビーチチェアのメッシュ生地に押し付けられている私の男の証が、ドクドクと自重を忘れて熱く膨らんでいく。
「はいっ! じゃあ背中側は終わりです! 次は前の方を塗りますね、ありすちゃん♡」
舞ちゃんが満足そうに手を離すと、二人は私の身体を仰向けにひっくり返そうと、それぞれ私の肩や腰に手をかけた。
「っ! ほ、本当に前側は良いですから! お二人にそんなお手数をかけるわけにはいきませんっ……!」
私は必死にビーチチェアにしがみつき、最後の砦を守ろうと抵抗した。もし今仰向けになれば、この限界まで猛り狂っているペニスが、遮るものなく二人の目の前に露出してしまう。
「もう、ありすちゃんってば、そんなに遠慮しなくても良いんですよ?」
「そうですよ、お互い様ですから♡ ……うーん、せーのっ!」
「あ……っ!」
二人がかりの息の合った力で、私の華奢な身体はあっけなくコロンと反転させられ、青空の下で完全に仰向けにされてしまった。
──ぶるんっ。
その瞬間、一糸纏わぬ私の股間から、すでに限界まで怒張し、カチカチに硬くなって天を衝くように反り上がったクリちんぽが、勢いよく弾んで二人の目の前に飛び出した。
私はあまりの羞恥心に、両手で顔を覆って現実逃避するしかなかった。
「わあ……! ありすちゃんの、もうこんなに元気いっぱいです!」
舞ちゃんは驚きつつも、そのピュアな瞳をごくりと潤ませ、頬をリンゴのように赤らめて私の猛りをじっと見つめている。
「あっ♡ 千枝、わかりました♡ ありすちゃんの、やっぱりすごく……大きいです……♡」
千枝ちゃんもまた、期待と興奮に満ちた熱い視線を私の中心へと注ぎ、息を荒くしていた。常識改変の力によって、二人の目にはそれが「ちょっと元気すぎる、特別な女の子の身体の一部」として、この上なく魅力的に映っているのだ。
「……くぅぅ。もう、どうにでもしてください……」
顔を覆ったまま、私は完全にまな板の上の鯉の心境になり、小さな敗北の吐息を漏らした。
「じゃあ、塗りますね♡」
二人の可愛らしい声が重なった直後、ひんやりとした日焼け止めが、私の身体にとろりと垂らされた。そして二人の細い指先がじっくりと、そして容赦なく日焼け止めを塗り広げ始めるのだった。
「んぁっ♡ ぅうっ……ふぅっ♡」
二人がかりの執拗なタッチに、私の口からはもう、言い訳のしようもない淫らな声が次々と漏れ出していた。
上側からは舞ちゃんが、私の腕や鎖骨のあたりに白いクリームを広げ、そのまま膨らみ始めたばかりの胸へと両手を這わせる。
「ありすちゃんのここ、すっごく柔らかくて気持ちいいです……♡」
そう言って、乳輪を描くように丁寧に、しかし確実に尖った先端を刺激するように指先を動かしてくる。
下側からは千枝ちゃんが、私の太ももから腰回りをじっくりとマッサージするように、手のひら全体で肉を揉みほぐしながら塗り進めていく。二人の滑らかな手つきが私の肌を交互に愛撫するたび、全身の神経が限界まで跳ね上がり、脳が快感でとろけてしまいそうになる。
──そして、二人の視線が同時に、私の股間で猛り狂って聳え立つ一本の『証』へと定められた。
「えへへ♡ ここもちゃんと塗らないと、日焼けしちゃったら痛いですもんね♡」
舞ちゃんが顔を上気させながら、私のカチカチに硬くなった竿の部分を小さな両手で包み込んだ。そして、上へ下へと滑らせるように、時に強く、時に荒くクリームを擦り込んでいく。
「あっ……! 舞ちゃん、そこっ、そんなに……くぅぅっ!」
「ありすちゃんの、とっても特別な女の子のところ……千枝も、しっかりと塗りますね♡」
今度は千枝ちゃんが、私のペニスの根元から、そして一番敏感な女の子の部分へと、とろりとした日焼け止めを滑り込ませるようにして指先を絡ませていく。常識改変の影響とはいえ、二人のあまりにも純粋で、かつ容赦のない手つきは、完全に私を絶頂へと導くための熟練した愛撫そのものだった。
「んぉっ♡ そ、そこはっ……そんなに何度も塗らなくてっ、軽くでいいですから……ひゃんっ♡」
されるがままの私はビーチチェアの上で悶え、二人の幼いアイドルの手の中で信じられないほど熱くドクドクと脈打つ質量をこれでもかと主張させてしまうのだった。
「お゛ぉっ♡ だ、駄目ですっ♡ もうっ♡ でまひゅっ……!」
天を衝くように猛り狂う私のペニスを舞ちゃんが小さな両手で激しく擦り上げ、同時にその根元にある閉じた割れ目へと千枝ちゃんが指先を滑り込ませてクチュクチュと愛撫するように塗り込んでいく。男の性感帯と女の性感帯を同時に、それも大好きな二人のアイドルから同時に執拗に攻め立てられ、私の理性の堤防は完全に決壊していた。
腰が勝手にガクガクと震え、つま先がピンと跳ね上がる。限界を超えた快感が脳髄を真っ白に染め上げていく中、私は完全に降参の声をあげるしかなかった。
「えへへ、ありすちゃん、日焼け止めを塗ってるだけなのに出ちゃうんですか? まだまだたくさん塗ってあげますからね♡」
舞ちゃんは頬を紅潮させ、トロンとした瞳で私の顔を見つめながら、その手をさらにスピードアップさせて竿を激しく上下させる。手のひらの中で膨張を続ける私のペニスからは我慢汁がとめどなく溢れ出していた。
「ありすちゃん、男の子のところも女の子のところも、いっぱい塗られてもう限界なんですね♡ 全部受け止めてあげます……♡」
千枝ちゃんが耳元で熱い吐息とともに怪しく囁き、秘丘の奥へと指をさらに深く滑り込ませる。二人の容赦のない波状攻撃に、私の身体は大きく弓なりに弾けた。
「あ゛あ゛ぁ゛っ♡ でりゅっ♡ い゛ぐっっ……!!」
限界を迎えた私は、狂ったように腰を突き出し、絶頂の瞬間を迎えた。
──その瞬間だった。
「あむっ♡」
舞ちゃんがタイミングを合わせるようにして、私のカチカチに怒張した亀頭をその小さな口で、吸い付くようにしてすっぽりと咥え込んだのだ。
ぶびゅっ♡ びゅぅーーーっ♡ びゅびゅぅーーーっ♡
「んぐっ……んぅっ♡」
限界まで溜まっていた熱い精液が、舞ちゃんの柔らかな口内へと勢いよくブチ撒けられた。喉を鳴らして暴れる質量を必死に飲み込んでいく舞ちゃんの顔が、私の視界の中でいやらしく歪んで見えた。
「ふぅ、ふぅー……はぁ……っ」
幾度となく熱いものを噴出し尽くし、私の身体は完全にビーチチェアの上で力無くのびていた。頭の中は真っ白で、指一本動かす気力すら残っていない。
「ぷはっ……♡」
私のペニスからようやく口を離した舞ちゃんは、溢れんばかりの精液を口に含んだまま、頬をぷっくりと膨らませてトロンとした目をしている。
「あ、舞ちゃんズルいです……千枝にも分けてください……♡」
すかさず千枝ちゃんが舞ちゃんの顔を両手で挟み込み、そのまま互いの唇を重ね合わせた。二人の小さなアイドルの間で、私の放出した白濁液が直接口移しで分け合われていく。互いの舌が絡み合い、ちゅぅ、くちゅ、と淫らな音が南国の静かなプライベートビーチに響き渡る。
(うわぁ……何だか、本当にとんでもないことになってしまいました……)
私はすっかり小さくなった股間のモノの余韻を感じながら、荒れた呼吸を整えつつ、目の前で繰り広げられるあまりにも背徳的で美しい光景をぼんやりと眺めるしかなかった。常識改変の力とはいえ、彼女たちのピュアな積極性は私の理性を木端微塵にするには十分すぎた。
そしてその横では、相変わらず杏さんが「すぴー……」と、別のベクトルで完璧なマイペースを維持して眠り続けている。
そんな夢のような時間が過ぎていくうちに、楽しかったオーストラリアの一時のバカンスも終わりを告げようとしていた。向こうのパラソルの下で、女王様然とした財前時子さんの相手をしていたプロデューサーが、ようやく解放された様子でこちらへと歩いてくる。
「みんなー、そろそろ帰る時間だぞ。飛行機の時間もあるから、水着を着て帰る支度を始めてくれ」
「プロデューサーさん! もうそんな時間なんですね。じゃあ、急いで支度しないと!」
舞ちゃんは口元の汚れを手の甲で手早く拭うと、先ほどとは打って変わった元気なアイドルの笑顔に戻り、砂の上に落ちていた私のセパレート水着を拾い上げた。
「ありすちゃん、私たちが水着を着せてあげますね!」
「あ、千枝も手伝いますね。……まずは、ここをタオルで綺麗に拭いてから……」
千枝ちゃんはバスタオルでまだ精液や日焼け止めでベタついている私の太ももや、すっかり大人しくなった男の証を、宝物を扱うように優しく丁寧に拭き取り始めた。
「……えっと、あの、ありがとうございます……。でも、はい、後は自分でやりますから……っ」
幾ら常識が変わっているとはいえ、これ以上プロデューサーに見られでもしたら流石に社会的に終わる気がすると思いつつ、私は顔を真っ赤にしながら二人の手によってされるがままに水着を着せられていくのだった。
長時間のフライトを経て、私たちが寒さに身震いしつつ日本の空港の到着ロビーへと降り立つと、そこにはいつもの見慣れた、しかしどこかホッとする光景が広がっていた。
「イベントも大成功だったし、ビーチでリフレッシュも出来て本当にいい旅だったな! みんな、お疲れ様!」
プロデューサーが大きな荷物を抱えながら、満足そうな笑顔で全員に向かって声をかける。
「……フンッ、まあ豚にしては良い仕事をしたわね。少しは飼い主を愉しませる術を覚えたのかしら?」
時子さんは相変わらずの女王様然とした態度でフッと鼻で笑うが、その表情にはどこか充実感が漂っている。オーストラリアでのプロデューサーのおもてなしは、彼女にとっても悪くないものだったらしい。
「今回のクリスマスイベントも最高でしたけど、あのビーチで何だか凄く母なる海と一体になったような気分になりました! 海と美羽(みう)だけにっ!」
「ハハハッ、ビーチでの美羽のエネルギッシュな姿はなかなかロックだったよ。文字通り、何も包み隠さない潔さがあったしな!」
いつもの調子でドヤ顔を決める美羽ちゃんと、それを豪快に笑い飛ばす夏樹さん。
……そう、プロデューサーや時子さん、そして夏樹さんたちの中では、私のチート能力によって、あのビーチでの出来事は「普通に水着を着て楽しく遊んでいた」という記憶に綺麗に書き換えられている。美羽ちゃんの言葉も、今や単なる「エネルギッシュに泳いでいた」という意味にしか聞こえないはずだ。
「杏はもう飛行機で座りっぱなしで疲れた……早く家に帰って寝たい……」
杏さんに至っては、現地でも日本に戻ってきてからも、驚くほど通常運転のままだった。
(……ふぅ。とりあえず、あの破廉恥なヌーディストビーチの件は表向きは丸く収まりましたね……)
私が胸をなでおろし、ようやく一息つこうとした、その時だった。
「楽しかったですね、ありすちゃん! ……日本に夏が来たら、また日焼け止めをたーっぷり塗ってあげますからね♡」
舞ちゃんが私に近寄ってくると、周囲に聞こえないような小さな声で、いたずらっぽく耳打ちしてきた。
「……はい♡ その時は千枝も一緒に塗ってあげますから、遠慮なくイってくださいね♡」
続いて千枝ちゃんまでが、あのプライベートビーチで見せたような熱く妖しい瞳を潤ませながらくすくすと意味深に微笑む。
「……っぅう!?」
私は思わず顔を真っ赤に染め、小さく悲鳴をあげて口元を押さえた。
どうやら、あの場で直接私の男の証から放たれた熱いモノを濃密に分かち合った二人には、私のチート能力による記憶の書き換えがあまり効いていない……というか、むしろあの背徳的な快感が魂に深く刻み込まれてしまっているようだった。
(……これからは、極力この能力を暴発させないように、精神統一を欠かさないと誓います……!)
南半球の甘く狂った熱気からようやく解放されたものの、これからのアイドル生活に新たな爆弾を抱えてしまったことを痛感する。迫り来る二人の可憐な視線から逃れるように一歩後ずさりしながら、私は心の中で、この荒んだ理性を癒やしてくれるであろう唯一のオアシスを思い浮かべていた。
(あぁ……早く文香さんに会ってあの静かで知的なお顔を見て、思いっきり現実逃避がしたいです……っ!)
こうして、橘ありすの波乱に満ちたオーストラリアのクリスマスイベントは、一抹の不安と強烈な余韻を残したまま、幕を閉じるのだった。