TS転生橘ありす 作:湯けむり桶
「……おはようございまーす」
私はいつになく周囲をキョロキョロと見回しながら、極力足音を立てないようにこっそりと事務所の扉を開け中へ入る。
「あ、おはようございます、ありすちゃん」
「ひゃいっ!? ……あ、お、おはようございます、ちひろさん!」
後ろから千川ちひろさんがいつもの完璧な笑顔で声をかけてきて、私は心臓が跳ね上がるほどドキリとしてしまった。怪しまれないよう、必死に引きつりそうな頬を動かして営業用の笑顔を返す。
「今日も朝から熱心ですね、頑張ってくださいね、ありすちゃん!」
「は、はい。ありがとうございます」
パタパタと廊下の奥へ歩いていくちひろさんの後ろ姿を見送りながら、私はふぅーっと長く溜め息をついた。
(……なんだか、本当に夢のような体験だったけど。現実、なんだよね……)
自分の股間にそっと意識を向ける。私の男性の証は、今は大人しく眠っている。でも、あの薄暗い仮眠室で、最推しだった鷺沢文香さんの初めてを、このモノでめちゃくちゃに貫いて、内側にドロドロの種をこれでもかとぶちまけた感触は、今でも私の腰の奥に生々しく残っていた。
(チート能力で『当然のレッスン』ってことにしてあるとはいえ……この後、文香さんにどんな顔をして会えばいいのか分かりません……!)
元男としての羞恥心と、橘ありすとしての純情が入り混じり、廊下の隅で頭を抱えて考えにふけってしまう。
「お、橘さん。おはよう。早いな」
そこへ、書類の束を抱えたプロデューサーが、足早にこちらに向かって歩いてきた。
「あ、プロデューサーさん。おはようございます」
「ちょうど良かった。今日のスケジュールの、橘さんの宣材写真の撮影。準備の方は大丈夫そうかい?」
(宣材写真……!)
アイドルの名刺とも言える、オーディションやプロフィールに使われる重要な写真だ。いよいよ本格的なアイドル活動が始まるのだと、私の胸がキュッと引き締まる。文香さんへの後ろめたさでモヤモヤしていた脳内が、一気にプロの仕事モードへと切り替わった。
「はい、問題ありません。いつでもいけます、プロデューサーさん!」
「よし、いい返事だ。衣装に着替えたら、カメラマンさんが待つスタジオに入ってくれ。期待してるよ」
「はい、よろしくお願いします!」
私は大きく頷くと、更衣室へと向かった。
お気に入りの、だけど少し大人びたシックなアイドル衣装に身を包む。着替える際、もちろん私の特異な身体のパーツが衣装のラインを崩すようなことはなかった。私のパッシブスキル【常識改変・認識阻害】が完璧に働いているおかげで、衣装の生地はごく自然に私の身体にフィットし、鏡に映る姿はどこからどう見ても可憐な「橘ありす」そのものだ。
「……よし。行きましょう」
スタジオに入ると、眩しいストロボの照明が出迎えてくれた。
「それじゃあ橘さん、まずは正面から、少し硬めの表情でいこうか」
「はい」
カメラマンの指示に従って、レンズの向こうを見つめる。
最初は少し緊張していたものの、前世で何千枚、何万枚と見てきたアイドルたちのスクショや公式イラストの最高の角度が知識として頭に叩き込まれている。どう首を傾げれば、どう視線を外せば、橘ありすとしての魅力が一番引き立つのか、私には全部分かっていた。
カシャ、カシャ、カシャと、小気味よいシャッター音がスタジオに響き渡る。
「おっ、いいね! 新人とは思えないくらいカメラ慣れしてる。次は少し柔らかい表情をもらえるかな?」
「こう、ですか……?」
「そう! それ最高! 素晴らしいよ!」
プロデューサーもちひろさんも、スタジオの端で「おぉ……」と感心したように見守っている。
撮影は驚くほどスムーズに、そしてつつがなく進んでいった。レンズの光を浴びながら、私は自分の内側に眠る「アイドル・橘ありす」としての輝きが、確かに形になっていく手応えを強く感じていた。
宣材写真の撮影を皮切りに、私のアイドル活動は驚くほど順調に滑り出した。
私のパフォーマンスの高さはもちろん、あのチート能力が裏で都合よく働いているおかげか、トラブルらしいトラブルもなく、現場での評価は鰻登りだ。
そしてある日。今日の現場は、年少アイドルたちで構成されたユニット「L.M.B.G(リトル・マーチング・バンド・ガールズ)」でのステージ仕事だった。
佐々木千枝、横山千佳、龍崎薫、福山舞、古賀小春。
個性の塊のような子供たちに囲まれ、賑やかな(悪く言えばおもちゃ箱をひっくり返したような)ステージを無事にこなした。
「ふぅー……」
衣装から流れる汗を拭い、私は控え室のパイプ椅子に腰掛けて一息ついた。
周囲を見渡すと、ステージを終えたばかりだというのに、他のメンバーたちは疲れを見せるどころか
「今のステップ、薫ちゃん凄かったよ!」
「千佳の魔法だよー!」
と、さらにテンションを上げて賑やかに着替えを進めている。
(さすがに、みんな元気ですね……)
その弾けるような若さと純粋なエネルギーを眺めながら、私は自分の内面にある「子供らしからぬ冷めた視点」に、ふっと苦笑いを浮かべた。
それもそのはずだ。私の頭の中には前世の大人のオタク男子としての記憶が詰まっている。さらに言えば……。
(……ふふふ。あの文香さんと、今やあんなドロドロの関係になっているんですからね)
スポーツドリンクのペットボトルを傾け、喉を鳴らしながら私は一人、暗い愉悦と感慨に耽っていた。
あの仮眠室での初めての夜から、私は私のチート能力──「先輩として後輩にセックスで指導するのは当然のレッスン」という狂った常識──をフル活用していた。文香さんはあの後も、私が呼び出すたびに、とろけた恍惚の表情で「では、ありすちゃん……今日のレッスンを、始めましょう……」と、その気高き肢体を自ら進んで私に捧げ、私のドロドロとした種を何度も何度も、その聖なる膣内に注ぎ込まれているのだ。
前世ではただ画面の向こうで崇めることしかできなかったあの鷺沢文香を、12歳の橘ありすの肉体が毎度めちゃくちゃに貪り、悦ばせている。この圧倒的な優越感と多幸感は、一度味わったらもう抗えない。
(本当に……この世界に転生して正解でした。さて、次はどのお姉さんと『レッスン』しましょうか……)
そんな真っ黒な思考を巡らせながら、ふと視線をL.M.B.Gのメンバーへと戻した時。私の目は、一人の少女の姿に吸い寄せられた。
──佐々木千枝ちゃん。
彼女は今、ステージ衣装のブラウスを脱ぎ、キャミソール姿になって背中の汗を拭いていた。11歳。私よりも一つ年下の、れっきとしたローティーンの少女だ。
(……それにしても。千枝ちゃんは、間近で見ると……なんというか、妙な色気がありますね……)
前世の記憶が、ネットの海でよく見かけた彼女のファンアートやミームを呼び起こす。
「千枝、わかりません」と健気につぶやきながらも、中身はすべてを理解した上で大人を狂わせるような、いわゆる「わからせ」「実はわかってる」シチュエーションで人気(?)を誇っていた彼女。
画面越しに見ていた時は「オタクの歪んだ妄想だな」と笑っていたが、今、本物の彼女を至近距離で観察していると、その考えは一変した。
屈託のない他の子たちとは一線を画す、どこか控えめで、だけどこちらの視線を惹きつけて離さないような、天性の「底知れなさ」。キャミソールから覗く、まだ発育途中の華奢な肩や鎖骨のラインには、本人すら自覚していないであろう、ひどく扇情的で、理性をじりじりと刺激するような魔的な魅力が確かに宿っていた。
(……なるほど。前世のPたちが狂っていたわけではありませんでした。この子は……本物は、ヤバいです)
ゴクリ、と喉が鳴る。
スポーツドリンクで潤したはずの喉が、急に激しい渇きを覚え始めた。
同時に、下着の下で大人しく眠っていた私の「男性の証」が、年下の少女の持つ無自覚なフェロモンに反応して、ピクリと不穏な熱を帯びて硬くなり始める。
文香さんのような大人の女性と『レッスン』するのも最高だが、この、まだ何も知らない、けれど底知れない色気を秘めた年下の千枝ちゃんを、私のあの能力で『常識』を書き換えて、私のモノでめちゃくちゃに教育して、本当に「わからせて」しまったら──。
「ありすちゃん? どうかしましたか? 私の顔に何かついてます……?」
視線に気づいた千枝ちゃんが、小首を傾げて小動物のように純粋な瞳で私を見つめてくる。
「……いえ、なんでもありません。千枝ちゃん、今日のステージ、とっても素敵でしたよ」
「えへへ、ありがとうございます! ありすちゃんに褒められると嬉しいです!」
嬉しそうに微笑む千枝ちゃんを見つめながら、私の頭の中では、すでに彼女を仮眠室へと連れ込むための、ドロドロとした新しい『レッスン計画』の歯車が、音を立てて回り始めていた。
「あの、ありすちゃん……。ありすちゃんの下着、すごく可愛いですね……!」
「えっ……?」
千枝ちゃんをどう『レッスン』してやろうかと脳内で不埒な妄想を膨らませていた私は、唐突にかけられた言葉にハッとして現実に引き戻された。
見ると、千枝ちゃんが私の腰元、着替えの途中で衣装の隙間から少しだけ覗いていた下着のゴムの部分をじっと見つめていた。私の下着は、橘ありすの趣味がこれでもかと反映された、可愛いレース仕立てのものだ。
不埒なことを考えていた後ろめたさを隠すように、私はフンスと胸を張り、すかさずドヤ顔をキメた。
「ふふん、分かりますか? この、さりげなくあしらわれた『イチゴ』の刺繍が全体のポイントなんです。私のこだわりなんですよ」
「わぁ、本当ですね! イチゴ、ありすちゃんにぴったりでとってもお似合いです」
千枝ちゃんは純粋に感心したように目を輝かせた。……が、次の瞬間、彼女は信じられないような行動に出た。
「千枝は、今日はこんな感じの下着なんですけど……どうでしょうか?」
「へ……っ?」
千枝ちゃんは、自分の穿いている淡いピンク色のショーツのゴムを、細い指先でピッと少し上に引っ張り上げたのだ。
着替えの途中、キャミソールとショーツだけになった彼女のその仕草によって、ショーツの薄い布地がグッと上へと引き伸ばされる。
結果として、彼女のまだ幼くも、うっすらと発育の兆しを見せる股間のスリット──中心に走る繊細なスジのラインが、布地越しにパツパツに強調され、私の目の前にこれ以上ないほどはっきりと浮き彫りになって晒された。
「ありすちゃんは……こういうの、好き、ですか……?」
小首を傾げ、上目遣いで私の顔を覗き込んでくる千枝ちゃん。
その瞳はどこまでも無垢で、悪気など一切ないように見える。しかし、見せつけられているモノはあまりにも暴力的で、あまりにもダイレクトな『誘惑』そのものだった。
(な、ななな……ッ!?!?)
不意打ちどころではないクリティカルヒットに、私の脳内は一瞬で爆発四散した。
滝のような冷や汗が全身から噴き出し、心臓がドラムの連打のように暴れ出す。目が泳ぎ、視線をどこにやっていいのか完全にパニックだ。今すぐその薄い布地を破り捨てて、中に指を滑り込ませたいという衝動が、下着の下で「男性の証」をかつてないほどガチガチに硬く膨らみ上がらせていく。
「かっ……、可愛い下着だと、思います……っ! 千枝ちゃんに、とっても、似合って、お、オシャレです……っ!」
裏返りそうになる声を必死に抑え込み、引きつった笑顔でなんとかそれだけを答えた。
「えへへ、そうですか? ありすちゃんにそう言ってもらえると、千枝、すっごく嬉しいです……♡」
千枝ちゃんは満足したようにショーツから手を離すと、本当に嬉しそうに、ふわりと花が咲くような笑みを浮かべた。
その無防備で、だけど完璧にこちらの理性をハメ殺しにきた一連の流れを見て、私は背筋がゾクゾクと震えるほどの戦慄を覚えていた。
(さ、佐々木千枝……恐ろしい子……っ!)
前世のPたちが「千枝はすべてをわかっている」と畏怖していた理由を、私は今、魂の底から理解した。
本物の彼女が放つ、この無自覚な底知れぬ色気は、大人の女性である文香さんとはまた違うベクトルで、男の理性を木っ端微塵に破壊する魔力に満ちている。
ガチガチに怒張して下着を押し上げる股間の熱さを必死に太ももで挟んで隠しながら、私は冷や汗を拭い、この小さな怪物をいかにしてベッドの上で『わからせて』やるか、より深い欲望の深淵へと足を踏み入れていくのだった。