薄暗闇の密室で、姉弟の淫行は続く。
しかし、詩乃がおそるおそる雄一のペニスを愛撫しようとした時、誤算が明らかになった。
十分にペニスをしごいてやるには潤滑が足りなかったのだ。
(((そうか、あれってこういう時に)))
詩乃は通販サイトで見かけたローションの存在を想起し、胸の内で後悔した。
あれも買っておくべきだった。
「姉ちゃん……」
「ご……ごめんね。滑りが悪いから、手では」
「ツバ……」
「え?」
詩乃は見上げた。
雄一は自分の衝動をなんとか制御しようとしているかのような苦しげな表情。
あの熱い目で姉を見下ろして、求める。
「姉ちゃんのツバ、手につけて……それで、してくれないか」
「……」
詩乃はその直截な要求にたじろいだ。
自分の唾液を潤滑油代わりにする。
あまりにも生々しく、みだらに思える行為だ。
「……汚くない? 嫌じゃない?」
「俺は全然」
「……わかった。ちょっと待ってね」
しかし、詩乃はまた彼の要求を呑んだ。
顎の下側、唾液腺があるとされる位置を自分の指で押すと、ぬるい唾液が口内にじわりと分泌される。
自分の手のひらに吐き出す。
透明な液体が、詩乃の白い手のひらでぬらぬらと光る。
それを見ただけで、雄一の喉仏がゴクリと大きく上下した。
詩乃は、唾液で濡れた手のひらを、再び雄一のペニスへと這わせる。
しごくように手を滑らせると、ぬちゅ、と湿った音が鳴った。
「うっ……っ!」
雄一がうめいた。
「だ、大丈夫……?」
「大丈夫……続けて……」
「うん……」
詩乃は上目遣いに彼の表情を伺いつつ、愛撫を続ける。
その手が肉竿の表面で滑り、亀頭をかすめるたび、雄一は熱い吐息を漏らす。
そのうち、明らかにぬめりが増してきた。
雄一がだらだらとカウパー腺液を漏らしているからだ。
「あ、すごい……いいよ、姉ちゃん。すげえ気持ちいい」
雄一は恍惚として、半ばうわごとのように言う。
「ね、姉ちゃん。亀頭……俺のチンコの先っぽ、触ってくれないか」
「こう……?」
「あっ! すげえ……それで、もう片方の手で、さっきのシコるやつを……」
「こうかな」
「うおっ……! すげえ、それすげえ良い……!」
すっかりべとべとになったペニスを両手でいじめられると、雄一は強い快感に身を震わせた。
「これが良いんだ? これが気持ちいいんだ……」
詩乃は手元から目を落とさないまま、低く囁く。
彼女自身も、手のひらから伝わってくる感触や温度にくらくらするような陶酔感を覚え始めていた。
わずかに残った理性さえ麻痺していくような感覚。
粘液と皮膚が擦れ合う水音が、静かな部屋にいやらしく響き渡る。
「……ユウくん、お姉ちゃんにこんなことさせて気持ちよくなっちゃうんだ」
「ううっ……!」
詩乃の囁きは、雄一に対して極上の言葉責めとなった。
彼の全身の筋肉が強張り始める。
「姉ちゃん、ヤバい……俺、もう……っ」
雄一は向かい合って座る詩乃の肩を掴み、引き寄せた。
大柄な彼からすれば相当に自制しているのであろう、ごく弱い力で。
「俺のチンコ、咥えて……っ!」
「えっ……」
詩乃は一瞬躊躇した。
しかし自分が何に躊躇したのか、何を考えるべきなのか思い出せなかった。
雄一の苦しげな表情に急き立てられるようにして、詩乃は雄一の股間に顔を寄せた。
横髪をかきあげて耳にかけ、ペニスの先端をぱくりと咥え込む。
「あっ、姉ちゃんっ……!」
温かい口腔内の粘膜と、舌の柔らかい感触。
それが最後の引き金となった。
雄一の腰が跳ね上がり、びくっと痙攣した。
「んぐっ……!」
直後、詩乃の口内に大量の精液がどくどくと注ぎ込まれた。
予想を遥かに超える量と勢いに、思わずむせ返りそうになる。
生臭く、独特のえぐみを持った男の精液が、容赦なく詩乃の舌の上を満たし、喉の奥へと流れ込んでくる。
射精を受け止めてやりながら、詩乃は自分がさっき何に躊躇したのか思い至った。
「咥えろ」という要求は断ってもよいのだと、ユエシンに忠告されていたのだ。
(((……なんで?)))
なぜ断るという発想になるのか、詩乃は不思議に思った。
弟の性器や精液を汚いと感じる感性は彼女には無かった。
しかし、咥えないのが普通なのであれば、咥えてもらえるのが当然と思ってしまうのも雄一の今後の性生活に悪影響だろうか。
雄一の顔を見上げる。
「あっ、すげえ……姉ちゃんが俺のチンコ咥えて……すげえ……」
長い射精。
雄一はみっともなく口を半開きにしながらその快感に浸っていた。
(((……この口で咥えるやつ、そんなに気持ちいいんだ)))
詩乃は口内に注意を戻した。
口の中にたっぷりと精液が溜まっているのを感じながら、舌を押し当てて、口内を狭め、先端を吸ってやる。
雄一がうめき、体を強張らせる。
落ちてきた射精のペースが一瞬だけ回復し、より多くの精子が搾り取られる。
(((いいよね、別に。受験頑張ったご褒美なんだし、今晩だけなんだし。少しくらいサービスしてあげても)))
やがて、詩乃は体を起こした。
口の中に雄一の精液をたくわえたまま。
「あっ……姉ちゃん、それ……」
雄一はそう言って、近くにあったティッシュを1枚引き抜く。
詩乃はぎゅっと目を閉じた。
そして、苦くてどろどろした精液を強いて飲み下した。
一つの塊が食道でねばつきながらゆっくりと胃へと落ちていく感覚。
「……ん。ありがと」
詩乃はティッシュを受け取り、口元を拭った。
雄一は目を白黒させた。
「……吐き出してくれてよかったのに。ペッ、て」
「なんで? もったいないよ」
詩乃は雄一の手を握った。
合理的必要性は何もない、近くにいたから触っただけのボディタッチだった。
幼い頃は日常茶飯事だった、それでも年齢が上がるごとに減っていた行為。
「ね、ユウくん。気持ちよかった?」
「……最高だった。人生で一番……」
「よかった。……でも、こうやって口でするのは他の女の人だと嫌がるかもしれないから」
詩乃はつないだ手の指をからめた。
昼間にデートしていた時と同じように。
姉弟の域から一歩踏み外した、親密すぎるスキンシップだ。
「彼女さんができても、やらさせちゃダメだからね?」
そう言って微笑む詩乃の姿は、雄一の胸の奥を締め付けた。
未熟な自分の身勝手な欲望を少しも嫌悪せず、ただ深い愛情と献身をもって受け止めてくれた女性。
「姉ちゃん……っ!」
雄一はたまらなくなり、詩乃を両腕で強く抱きしめた。
体格差で、詩乃の髪に顔をうずめる形になる。
ヘアオイルの芳香とともに、彼女自身の体の匂いをも感じる。
狂おしいまでに愛しい匂い。
「好き……姉ちゃん、大好き……っ。本当に、世界で一番好きだ……」
「……えへへ。私も大好きだよ」
詩乃もまた、彼を抱き返した。
ふと、頭に冷静な考えがよぎる。
――「彼女ができても、咥えさせてのプレイをさせてはいけない」というのは、言い過ぎではなかったか。
合意のうえであればいいのではないか。
自分の中の妙な独占欲が発露したのか?
「姉ちゃん、もう1回キスしよ」
「んっ」
雄一が体を引き離したかと思うと、詩乃の顎に手を当てて上向け、またキスを始めた。
自分のペニスを咥えさせた直後でも躊躇はなかった。
当然のように舌を入れ、姉の舌に絡める。
その刺激は麻薬のように詩乃の思考力を犯した。
さっきまで何か考えていた気がするが、もう思い出せない。
「……ここ押すとツバ出んの?」
一度目のキスの後、雄一は自分の顎の下側を指で押し始めた。
「ん……うん。何かでそう読んで……」
「たしかにそんな感じする。……姉ちゃん、飲んで」
「えっ、う……!」
二度目のキスが始まった。
雄一は舌で詩乃の唇を割ると、口の中に溜めていた自分の唾液を流し込んだ。
詩乃は戸惑ったが、やがて対応した。
ごくん、ごくんと、何度かに分けて雄一の唾液を飲みこむ。
背筋にまた、甘い痺れが走る。
また、下腹がうずいてくる。
詩乃がすべてを飲み干しても、雄一はキスをやめなかった。
さらに、太い手指が詩乃の顎に手を触れ、その下側をぐいと押す。
詩乃は予想外の刺激に震えたが、雄一は離さなかった。
むしろ舌での交わりを強める。
やがて詩乃の体は内外からの刺激に屈し、唾液を分泌する。
雄一は吸い始めた。
舌で詩乃の唇をこじ開けたまま、彼女の唾液を花の蜜のように吸い始めたのだ。
犯されている。
好き放題に体液を飲まされ、勝手に飲まれ、自分の体をコントロールする権利を奪われ始めている。
詩乃自身のその認識が性的興奮をさらに高めた。
むずがゆいような感覚に身をよじると、内ももに冷たい水気を感じる。
愛液だと、すぐに理解した。
詩乃は困惑した。
彼女自身ときどき自慰はするが、手で直接触れずに"濡れた"のは初めてだ。
「姉ちゃん、ティッシュ」
「ん……」
またも長引いたキスの後、雄一はまたティッシュを取って渡した。
詩乃は少しあやうい手つきで、唾液まみれになった口もとを拭う。
口の中のいやらしい異物感がまだ消えない。
「姉ちゃんとキスするの、すげえ良い。ずっとキスしてられる」
「……あの、ユウくん」
「何? 姉ちゃん」
「……笑わないでね」
詩乃は目を伏せながら、ぼそぼそと言う。
「お姉ちゃん、もうけっこうその気っていうか……もう、濡れてるかも」
「え? ……下が、ってこと?」
「……うん。だから、その……本番みたいなこと、してもいいよ」
「……」
雄一の表情がすっと消えて、目が細まる。
性欲がむらむらと高まったのが、その目つきでわかった。
「姉ちゃん、エロいね」
「……そうかな」
詩乃は照れて曖昧な返事をした。
なぜ、濡れていることをわざわざ伝えたのか。
"早く交尾したいから雄を煽った"というもの以外理由は特になかった。
「……でも、姉ちゃんも初めてなんだろ」
雄一は深呼吸してから言う。
「もうちょっと、ちゃんと段階踏んだ方がいいよ」
「……そうかな」
「そうだよ。……姉ちゃんの体、もっと触っていいか。下の方も」
「え?」
「俺も姉ちゃんのこと、気持ちよくしたい」
「……でも、こういうことするのは、今回の一晩だけって約束でしょ」
詩乃は予想外の申し出に面食らった。
性欲でゆだった頭が、少し冷える。
「今日はユウくんのための時間なんだから、ユウくんが気持ちよくなることを優先していいんだよ?」
「……ありがとう。でも、俺も甘えっぱなしじゃ情けねえよ」
雄一は苦笑して、今度は自分から詩乃の手を握った。
「俺も姉ちゃんのこと気持ちよくしてあげたいんだ。ダメかな?」
「……んん」
詩乃は目を伏せた。
小学生や中学生の頃の雄一の姿が頭をよぎる。
あの少年に、性的に気持ちよくしてもらうのか。
エクスタシーに達するときの情けない顔を見られるのか。
自分がいよいよみっともない最低な存在に落ちるような抵抗感がある。
しかし今や、彼は男性として一人前だ。
この魅力的な青年に恥部を触れてもらうことはどれほどの快感をもたらすだろう。
本番の性交に向けて互いのテンションをさらに高めることともなるか。
……ついでにいえば、恋人とするような、互いに奉仕する正常なセックスの予行練習ともなるだろう。
詩乃は唾を飲みこんだ後、頭を下げた。
「……それじゃ、お手柔らかに、お願いします」
「! ありがとう!」
雄一はぱっと表情を明るくした。
そしてまた詩乃を抱きしめ、軽くキスをする。
それだけで、詩乃の体には快感が走った。
下腹がぎゅうっと押しつぶされるような、真空になるようなうずきが襲う。
頭を使って会話したことで少し冷却された性的興奮が、一瞬で最高潮まで引き戻されたのを感じる。
雄一には明らかにそこまでの意図はないにも関わらず。
(((私の体、おかしくない……? なんでユウくんに触られるとこんなバカになっちゃうの?)))
詩乃は雄一の太い腕に抱かれながら、独り混乱していた。
この後、雄一に性器を触られるのか。
これほどバカになった体をさらに変調させ、狂わせる狙いをもって責め立てられるのか。
(((私、大丈夫かな。普通でいられるかな……)))
今の詩乃は半裸で、纏っている衣服は下半身のショートパンツとショーツを残すのみだ。
雄一が手を伸ばし、ショートパンツのウェスト部分に手をかける。
その様子を、詩乃は無垢な不安と下卑た期待の入り混じった目で見ていた。