ショートパンツが引き下ろされると、水色のショーツがあらわになった。
股間の布地がぐっしょりと湿っているのが薄暗い中でも見てとれる。
「本当に、すごい濡れてるな。エロい」
雄一の意識はその湿ったショーツの奥、潤いの源に引き付けられた。
「パンツも脱がせるね。お尻上げて」
「うん……」
詩乃は羞恥に目を伏せながら弟の求めに応じた。
ベッドに手をつき、腰を少し浮かせる。
それは女性としての最後の尊厳を自分から献上する仕草だった。
雄一はショーツの両端に指をかけ、ゆっくりと剥がし取るようにして下へと引き下げた。
ショーツが足先から抜け落ちる。
詩乃はついに一糸まとわぬ全裸となった。
雄一は、ベッドの上にぺたんと座り込んだ姉の裸体を見つめ下ろした。
とにかく小さくて華奢な体だ。
肩、鎖骨、二の腕、手首。
どれも雄一が強く握ったら簡単に折れてしまいそうなほど細い。
胸の乳房は、絶対的な質量こそさほどでもないが、こうして体格と比べてみると巨乳の部類に入るかもしれない。
繊細な陶磁器を思わせるボディラインだった。
雄一がもっとも興奮を煽られたのは彼女の肌だった。
白く滑らかな肌がこれまでの情事の刺激によって紅潮し、汗ばんでいる。
髪の毛が首元の肌に汗で張り付いている。
裸婦画やグラビア写真のような単なる裸ではなく、セックスする相手にしか決して見せない姿だ。
雄一は詩乃の股間に視線を落とした。
すらりと伸びた太ももの付け根で陰毛が愛液に濡れ、肌に張り付いている。
しかし詩乃が脚をぴったりと閉じているため、その最奥はまだ隠れていた。
雄一はさらなる一歩を求める。
「姉ちゃん。下ももっと見せて」
「……そんなによく見なくても、できない?」
「ごめん、俺童貞だから。……お願い」
「うう、もうっ……」
詩乃は耳まで真っ赤になり、震えながら、ゆっくりと脚を開く。
ついに彼女の秘部があらわになった。
腰の底面、男であれば何もない場所に開いた亀裂から陰核や小陰唇がほんの少しだけ覗いている。
粘性のある液でぐっしょりと濡れた淫猥な姿。
「……変じゃない? 私のここ」
「すげえ綺麗だよ……」
雄一は興奮を通り越して感激していた。
長年恋焦がれていた女性の陰部が愛液にまみれているさまは、きわめて刺激的な光景だった。
視線を逸らせないまま尋ねる。
「姉ちゃん。どこを触るのが気持ちいいとか、ある?」
「えっ……普通のところだと思うけど」
「指差してくれないかな。俺童貞だからわからなくて」
「……う」
詩乃は相当に躊躇した後、おずおずと自分の陰核を指差した。
「この、ちょっと出っ張ったところ」
「……クリトリスってやつかな。触るね」
「優しくしてね……」
「……」
雄一は、詩乃の弱々しい求めにどきりと胸が高鳴るのを感じながら、手を伸ばした。
指先がクリトリスに触れる。
「んっ……!」
詩乃の身体がぴくりと痙攣した。
雄一は様子を見つつ、愛撫を続ける。
男性の骨ばった手、太い指が敏感な部分をこすり上げる感触に、詩乃は震えた。
「……ちょっと、姿勢変えようか」
不意に、雄一は愛撫をや中断した。
愛液にまみれた手をティッシュで拭って立ち上がり、ベッドのすぐ横に立てかけられていた姿見を動かした。
「こっち向いて、俺によりかかって」
雄一は詩乃の後ろに密着して座ると、抱きかかえて体の角度を変えた。
詩乃はハッとした。
姿見に、脚を開いた自分の裸体がはっきりと映ってしまっている。
「ちょっと、ユウくん……! これ嫌だ、恥ずかしいよ」
「ごめん。姉ちゃんの顔とか下の方とか見ながらじゃないと無理だと思う」
「なら、さっきみたいに向かい合ってすれば」
「姉ちゃんのことギュッとしてたいんだ。このほうがうまくできる気がする。……ダメかな?」
「ううーっ」
詩乃は葛藤した。
きっと、本気で拒めば止めてくれるだろう。
しかし、互いに気持ちよくなるためだけの露骨で背徳的な要求を耳元で囁かれると、反抗する気力がとろけてしまう。
詩乃は羞恥に震え、ぎゅっと目をつぶりながら辛うじて応えた。
「好きにして……」
「ありがとう、姉ちゃん。大好き」
雄一は背後から詩乃をすっぽりと抱きしめるように腕を前に回した。
再び、詩乃の股間を愛撫し始める。
「ああっ! あうっ……!?」
詩乃はさっきまでよりもなお強い快感を覚えた。
クリトリスをこすられ、つままれるたび、神経を陵辱されるような強烈な電気信号が全身を駆け巡る。
これまで自慰で得ていたものとは比べものにならない強さの刺激だ。
快感が増したのには明確な理由があった。
体位を変えたことで、雄一側は詩乃の体をホールドしてより的確に刺激できるようになったため。
詩乃側は雄一にもたれかかることになり、体の力がほどよく抜けたためだ。
しかし今の詩乃はそれを理解できていなかった。
快感と羞恥で思考力がすっかり奪われていたからだ。
姉はただ困惑し、混乱しながら、弟の指先がもたらす快楽に揺さぶられ続けた。
卑猥な水音が部屋に響く。
「すげえ。感じてる姉ちゃん、すげえエロいよ」
背後から雄一がささやく。
普段の快活な話しぶりとはずいぶん違う、低い声。
すっかり篭絡しきった愛人に対して向けるような、男の欲望が濃く滲む口調。
「俺、最低なんだ。昔からずっと、姉ちゃんにこういうことする妄想してシコってた」
「ま、待って……休憩……」
「ごめん、もうちょっとだけ」
「なんでっ」
「たぶん姉ちゃん、もうちょっとでイけるでしょ」
雄一はすっかり慣れた手つきで詩乃のクリトリスを容赦なく捉え、弾き、執拗にこすり上げた。
詩乃は怯えた。
下腹部の奥底で熱い塊が急速に膨張するような感覚があった。
自慰で得るものとはまるで異質な、おそろしいまでの快楽が迫ってきて、自分の体を平常から叩き落そうとする予感。
「っ……!」
詩乃は反射的に体をよじり、逃げ出そうとする。
雄一はそれを抱きかかえ、抑え込んだ。
「イってよ。イけ」
そしてクリトリスを強くつまみ、ぐりっと擦った。
その瞬間、詩乃の下腹の奥で何かが弾けた。
「あっ、ああ、あぐっ!」
雄一の腕の中で、詩乃の身体がビクンと大きく跳ねた。
全身の筋肉が限界まで硬直する。
強烈な絶頂の波が背筋を下から上へと駆け抜けたのがはっきりと感じられた。
「ううっ、ふうーっ、ふうーっ……!」
数秒の絶頂の後、詩乃はようやく呼吸することを思い出した。
全身が重い。
汗が噴き出す。
視界がチカチカして定まらない、深いエクスタシーの余韻。
同じクリトリスを触る行為なのに、他人に触られるほうが自慰よりもずっと気持ちいい。
何故これほど違うのか。
雄一が相手だからなのか。
これまでのキスやハグで自分の体が性的に高まったためか。
益体のない思考が頭の中でぐるぐると空転する。
「すげえ……。今の姉ちゃん、めっちゃエロくてかわいいよ」
「はあーっ、はあーっ、はあーっ……」
「ほら、見て」
雄一は詩乃の顎に手を当て、視線を鏡のほうへ向かせた。
やけに視界がぼやける。
「眼鏡ずれてる」
雄一が詩乃の顔に手を触れると、そのぼやけは解消された。
鏡には、発情した雌犬のようなひどくみだらで惨めな女が映っていた。
頬を紅潮させ、目を潤ませ、口を開けて荒く息をしている。
シーツの上にだらりと投げ出された白い脚の付け根では、とろけた性器が丸出しだ。
「……ごめん、強くしすぎた。休憩だったよな」
雄一がまた背後から抱きしめ、優しくささやく。
◆
ワンルームの部屋には、しばしの静寂が戻っていた。
「はい、姉ちゃん。水」
「……ん。ありがと」
ベッドの上に乱れたシーツを引き直して座り込んだ詩乃は、雄一から差し出されたミネラルウォーターのペットボトルを受け取った。
まだ少し震える手でキャップをひねり、冷たい水を喉に流し込む。
火照りきった身体の芯に冷たい水分が染み渡り、どこか遠くへ飛びかけていた意識が少しずつ現実世界へと引き戻されてくる。
エアコンの微かな冷風が、汗ばんだ肌をひんやりと撫でていく。
身体の奥底ではまだ性感が燻っている感覚があるが、もう少し休めば落ち着くはずだ。
詩乃はペットボトルをサイドテーブルに置くと、雄一に冷たい視線を向けた。
「ユウくん……いくらなんでも、さっきのはやり方が乱暴すぎるよ」
「え……」
「あんなふうに後ろから捕まえて、逃げられないようにして触るなんて」
詩乃は自分自身を落ち着かせようとするように、強いて毅然とした口調を作った。
「たしかに『強気になってもいい』とは言ったけど、限度ってものがあるよ」
「……ごめん、姉ちゃん。嫌だったよな」
雄一は素直に謝罪した。
先ほどまでのサドぶりからは別人のようだ。
肩を落とし表情を曇らせる様子を見て、詩乃の胸にちくりと罪悪感が刺す。
「私っていうか、ほら……彼女さんとかにやったら、嫌われちゃうよ」
「姉ちゃんは? 気持ちよくなかったか?」
「私……? 私を気持ちよくする方法がわかったって、意味なくない……?」
「あるよ。言っただろ。俺、姉ちゃんを気持ちよくさせたいんだ」
雄一は手を重ね、握った。
体温が伝わると、それだけで詩乃は自分の心拍数が上がるのを感じた。
体の奥で甘い熱が身じろぎする。
形だけでも姉らしいふるまいが、まったく維持できない。
詩乃は目を伏せ、蚊の鳴くような声で白状した。
「気持ちよかった……です……」
「マジか! よかった!」
とたんに、雄一はぱっと表情を明るくした。
「やっぱあの時、イッてたんだよな」
「はい……」
「クリトリス、弱いんだな」
「弱いです……」
「俺、姉ちゃんをイかせられるんだな。……なんか、男として自信ついた気がする」
「もう死にたいぃ……」
詩乃は顔を手で覆った。
自分の性感を申告してしまった羞恥に、顔から火が出そうだった。
「姉ちゃん」
「もう。なに……」
「キスしよ」
雄一がずいと迫ってきて抱き寄せられる。
手をやさしく押しのけて、あらわになった唇を奪われた。
「んっ……」
詩乃は舌を入れられることを覚悟したが、今度はそれはなかった。
触れ合うだけの優しいキスだ。
角度を変えながら何度も、雄一は詩乃の唇を啄む。
「ユウ、くん……んんっ……」
すべての言葉は喉元で消えてしまった。
詩乃の身体から急速に力が抜けていく。
平常に戻りかけていた体調が、また、セックスするためのものに引き戻される。
ひとしきりキスを終えると、雄一の手は詩乃の胸へと伸びた。
詩乃の柔らかなバストが、分厚くざらついた男の手のひらにすっぽりと包み込まれる。
野球のバットを振り続けてマメの出来た無骨な手がなめらかな肌に触れる。
「姉ちゃんの胸、すごい柔らかいな……吸いつくぞ」
雄一は乳房を優しく揉みしだき始めた。
下からすくい上げるように重みを感じとり、柔らかさを確かめるようにして撫でまわす。
性的興奮で硬く尖った桜色の乳首を、そっとつまみ上げる。
「あんっ……」
切ない刺激が走り、詩乃は思わず甘い声を漏らした。
少しだけ力を入れてコリコリと転がされ、指の腹で弾かれるように刺激されると、刺激がはじけた。
背筋がゾクゾクする。
下腹の奥が、またうずき始める。
「なあ。今度は姉ちゃんの
雄一が見下ろす。
彼のほうもまた興奮しはじめており、薄暗闇の中、その瞳には肉食獣のような光が宿っている。
「姉ちゃんのこと、もう1回くらい俺の手でイかせたい」