雄一は詩乃を抱き締め、彼女が呼吸を整えるのを待つ。
背中を撫でると、汗ばんだ滑らかな肌の下に肋骨や背骨の凹凸が微かに感じられた。
賢く優しい姉の、薄っぺらで貧弱な身体。
自分は今夜限りその体を蹂躙できるという事実。
それを認識すると、コンドームに覆われたままのペニスがいっそう固くなり上向いた。
先ほど背面座位での交合で詩乃をイかせたが、雄一自身はまだイけていない。
「……姉ちゃん。そろそろ続きしてもいいかな」
「まだするの……?」
「ごめん。俺、まだイけてなくて……姉ちゃんがキツいなら、やめにするけど」
雄一は精一杯の理性を振り絞り、どうにか気遣いの言葉を吐いた。
本当は姉をもっと抱きたい。
全然満足できていない。
「……そうだね。今夜だけだもん、いっぱいしたいよね」
幸い、詩乃は彼の欲求を受け入れた。
震える手でティッシュを取り、眼鏡についた汗を拭う。
「……どうやって、する? また私が仰向けになるやつ?」
「ありがとう。ベッドに手ついて、四つん這いになってくれるかな」
「えっと……」
詩乃はもぞもぞと身じろぎして、弟の要求に従った。
後背位でのセックスに適した姿勢。
尻が雄一の方へ突き出される。
「……こうかな」
「おお……」
雄一は思わず声を漏らした。
汗で髪の張り付いた、綺麗な背中。
形のいい尻。
その下に覗く性器と、愛液で濡れた陰毛。
ひどく無防備でエロティックな姿と、それを他でもない自分だけに対して晒しているという事実が、雄一にはほとんど感動に近い喜びとして感じられた。
「……お尻、触るね」
「うん……」
雄一は詩乃の尻の肉を優しく掴み、左右に広げる。
柔らかい肉が押し広げられて、詩乃の肛門があらわになった。
周囲に毛の剃り跡があるのが目につく。
肛門の数センチ横に、小さな黒子がある。
「ここに黒子あるね」
「……うん」
「知ってるんだ?」
「いや、だから……剃るときに……」
「そうか。その時は見えるよね」
「て、ていうかユウくん。そこは汚いから。……さすがに」
「ごめん」
雄一は詩乃の後ろに膝立ちになり、自分のペニスを彼女の秘所へ押し当てた。
亀頭を押しつけられて、小陰唇がやわらかく形を変える。
姉の体温と水気のある感触が伝わってくる。
雄一は細い詩乃のウェストを優しく掴み、腰を前へと進めた。
亀頭が再び詩乃の内側にねじ込まれる。
「あっ……ああ」
詩乃の口からうめくような声が漏れる。
ひだのある膣内をかき分けながら雄一のペニスが侵入してくるのが、さっきよりも明確に感じ取れていた。
すでに、痺れるような快感さえある。
イかされたことで敏感になったのか。
女性の体に備わったその類のスイッチを入れられてしまったような感覚。
きっとそれは、実の弟を相手に委ねるべきスイッチではなかった。
雄一が「動くね」と一言断って、緩慢な速度でピストンを始める。
大きな亀頭が膣内を執拗に引っかきながら往復するたび、詩乃は電流のような快感が走るのを感じ、我知らず甘い声を漏らした。
雄一は詩乃の背中を見下ろす。
「すげえ。俺、姉ちゃんのこと犯してる」
「あっ、あんっ。そ、そんな言い方っ……」
「でも、そうでしょ。……姉ちゃんは犯されてる。そうでしょ」
「あっ、ああ」
カリにGスポットをえぐられると、詩乃の頭の中でぱちぱちと光が弾けた。
雄に体を支配され、弱点を攻撃され、存分に気持ちよくさせられる。
昨日までは想像だにしなかった快楽の世界が才女を引きずり込んでいく。
尊厳が溶けていく。
「犯されてる……犯されてますっ。ユウくんに犯されてる……」
「そうだね。ああ、姉ちゃんマジで可愛い」
雄一は、ごつく大きな手で詩乃の後頭部を撫でた。
「忘れちゃダメだからね。俺に犯される感覚」
「はいっ……」
「ちょっと、早くするね。痛かったら言って」
雄一はピストンのペースを上げた。
ベッドが微かにきしむ。
腰と腰がぶつかる音と、愛液がねばつく水音が重なって響く。
詩乃は混乱していた。
このピストンは明らかに男性が快楽を得ることを優先した、やや乱暴なものだ。
それなのに、気持ちいい。
理性を保って何か考えようとしても、下腹から快楽がこみ上げてきて頭の中で弾けると、何もかも吹き飛んでしまう。
声が漏れるのを我慢できない。
自分の性器がめちゃくちゃな信号を送って脳を破壊しようとしているような錯覚。
(((なんでこんなに気持ちいいの。変だよ。ぜったい変)))
――2人とも初体験のセックスは、気持ちよくなれない。
その一般論を教えてくれたのは誰だったか?
今の詩乃には思い出せなかった。
ペニスが自分の内側を手酷くいじめながら出ていく。
すぐに戻ってきて、追い打ちをしかけてくる。
その事実を処理するだけで、詩乃の脳はオーバーフローしていた。
(((ユウくんのおちんちんすごいっ。おかしくなるっ。頭の中こわされるっ……!)))
詩乃は身震いした。
体の中で、最後の何かがこみあげてくるのを感じていた。
きっとそれは特大の絶頂であり、詩乃を壊して、永遠に元に戻らなくしてしまうものだ。
「うぐっ……!」
しかしその到来より早く、雄一が絶頂した。
一瞬かくかくと速い腰つきをしたあと、めいっぱい深く突き入れたところで動きを止める。
ペニスがびくびくと痙攣するのを詩乃は感じた。
刺激が止まる。
詩乃の体内で、あの特大の絶頂の気配が少しずつ鎮まっていく。
(((よかった……「あれ」が来る前にイってくれて)))
詩乃は安堵していた。
本当に、危ないところだった。
あれ以上追い込まれたら、自分は何かとんでもないことを口走っていたかもしれない。
そんな直感があった。
きっと、セックスはこれで終わりだろう。
詩乃はそんな期待を抱いて、雄一の方を振り返った。
雄一のペニスは、コンドームの先端にたっぷりと精液を貯めながらも、その重みに逆らって勃起し続けていた。
「すげえ……。出したのに萎えない」
「ひぃ」
詩乃は小さく悲鳴を上げた。
◆
詩乃は汚れたペニスをまた口で掃除することになった。
カウパーなのか精液なのか、竿の方まで垂れた粘液を舌で舐めとる。
さっき自分の内側をめちゃくちゃに攻撃してきた亀頭を、口に含む。
雄一のペニスはサイズも相当なものだが、カリ部分の突起の大きさも曲者だ。
それを詩乃はこれまでのセックスの過程で理解させられていた。
深いストロークで抽送されると膣の広い範囲がなぶられて、それだけで詩乃は息が止まりそうになる。
自分の体と相性がいいのか。
それとも、女性なら皆これにやられてしまうのか。
……雄一が他の女性を抱く可能性を考えると、詩乃の胸中にはまた不満が沸き上がった。
雄一の人格への愛情だけでなく、屈強な身体やペニスへの執着までも生まれ始めていた。
詩乃の胸の内に欲求が堆積していく。
「ふうっ……う……」
新たなコンドームをかぶせられたペニスが、真下から膣内へ侵入してくる。
腹の中が押し上げられる圧迫感に、詩乃は吐息を漏らした。
目の前には雄一の分厚い胸板がある。
2人は向き合って座り、対面座位の姿勢だった。
「この姿勢も密着できて良いな。顔見ながらできるし」
雄一は自分の胸の中で小さくなっている姉を見下ろし、髪を撫でた。
後頭部から、背中の方の毛先へ。
「姉ちゃん、本当に髪綺麗だな。今は汗であれだけど」
「だめだからね……」
詩乃が潤んだ目で見返す。
自分の中に堆積しているものに無意識に抗い、真面目なことを言おうとして、結局独占欲がにじむ。
「私だから触らせてあげてるだけで、本当に、女の人の髪を気安く触っちゃダメなんだから……」
「ありがとう。でも大丈夫。――俺、姉ちゃんの髪だから触りたいんだ」
それから、ゆっくりとピストンが始まった。
雄一は詩乃の尻を掴み、彼女の体全体を上下させて自分のペニスを慰めるのに使った。
詩乃の秘所は愛液を溢れさせ、ぐちゅぐちゅと水音を鳴らし、真下のシーツをみっともなく汚した。
しかし詩乃にとって幸いだったのは、快楽の強さがさほどでもなかったことだった。
どうやら詩乃の膣の構造だと、向き合って挿入する姿勢では弱点に当たらないらしい。
このまま雄一が絶頂するまで耐えれば、自分は冷静でいられる――そう考えた。
「姉ちゃん。もう1回、さっきの弱いとこに当たるようにしようか」
雄一が動きを止め、そう提案した。
詩乃はびくりと肩を震わせた。
「えっ……なんで」
「姉ちゃんにも気持ちよくなってほしいから」
「でも、もう十分気持ちよくて……」
「……ごめん。ちょっと誤魔化すようなこと言った」
雄一は顔を寄せ、姉の顔を覗き込んだ。
目が合う。
「姉ちゃんのこともっとイかせたい。姉ちゃんの乱れるところ、もっと見せてほしい」
「……」
詩乃は目を伏せ、逡巡した。
最後の分岐点を目の前にしている気がした。
きっと今夜が終われば雄一は約束を守り、二度と体の関係を求めてくることはないのだろう。
この男とセックスするのは今夜が最初で最後だ。
自分が次の朝までまともでさえあれば。
まともでいられるかの分岐が、目の前にある。
迷う要素などないはずなのに、下腹部がうずく。
自分の膣が、咥え込んだペニスをぎゅっと締め付けるのを感じる。
このペニスでもっと気持ちよくなりたいという詩乃自身の下卑た衝動が、彼女を愚かな選択へ追い込んだ。
「……じゃあ、イかせて、ください……」
詩乃は顔を上げることができないまま、蚊の鳴くような声で求める。
「お腹側の、深いところが……そこが一番弱いです……」
「ありがとう。お腹側か」
雄一はペニスをいったん引き抜き、自分の座り方を調整した。
垂直方向の角度を少し変えて、再び挿入。
(((あっ、駄目だ)))
亀頭が入り込んだ瞬間、詩乃にはそれがわかった。
後背位で挿入された時と同じコースで、膣内をかきわけて肉棒が侵入してくる。
(((これ駄目、駄目……!)))
詩乃は未練たらしく身じろぎして、ペニスが当たる方向を変えようとした。
雄一は片手で姉の背中を抱き寄せ、それを封じた。
ペニスは予定通りに、詩乃の最大の性感帯を押しつぶし、擦った。
「あっ」
詩乃はイった。
雄一の背中のほうへ伸ばした足の指が、ぎゅっと握りしめられる。
もはや対応について思考する暇もなく、詩乃は頭の中で弾ける絶頂の余韻をこらえることしかできない。
「あっ、あ……あうっ」
「……そっか。ここが弱いんだ。エロいね」
雄一はその反応を見て目を細めると、ピストンを始めた。
カリが弱点をえぐって出ていく。
戻ってきて、同じ弱点をぐりぐりと押しつぶして擦る。
「あっ、あっ! やだっ、やだあっ!」
詩乃はそれだけで激しくかき乱された。
快楽の波が天地逆の雷のように脳へ叩きつけられてくる。
頭が揺さぶられて、まったく思考ができない。
さっきの特大の絶頂が体の中でおどろくほど急速に立ち上ってくる。
恐怖さえ感じる。
「これやだっ、そこ嫌なのっ! そこだけはっ……!」
「姉ちゃんが教えてくれたとこだろ。もう俺覚えたから」
雄一がサディスティックに微笑み、囁く。
「今夜中に、あと10回はイかせるから」
「――っ」
詩乃の頭が真っ白になった。
おそらくは、さすがの雄一でもその宣言の実行は体力的に厳しかっただろう。
しかし今の詩乃にはそうした冷静な思考はできなかった。
ただ、雄一にこれまで散々イかされた敗北経験だけが染みついていた。
迫りくる未知の規模の絶頂への恐怖。
「し……してあげるから」
詩乃は、その言葉を口にした。
きっとずっと言いたくて、ずっと我慢していた懇願を。
「また、セックスしてあげるから、今日はもう許して……」
「……」
雄一は思わずピストンを止め、眼を瞬いた。
「マジ? セックスしてくれんの?」
「するから、もう、やめて……」
詩乃は繰り返して言った。
何か大変なことを言ってしまった気がする。
しかし快楽を恐怖する気持ちと快楽を渇望する気持ちで思考がぐちゃぐちゃになり、まとまらない。
姉らしくあることや世間体について考える余裕がまったくない。
「……ありがとう。すげえ嬉しい。絶対そうする」
雄一の声は震えていた。
自分の腕の中で震える姉に、優しくキスをする。
「……でも、ごめん。あと1回はしないと俺の方が収まりつかない」
「え……?」
「動くね」
答えを待たずに、雄一はピストン運動を再開した。
詩乃の弱点を、凶悪な亀頭がぐりぐりと押した。
「なんで! やだっ! やめて、ユウくん!」
詩乃は悲鳴を上げた。
他の場所ならどれだけ触られてもいい――
そう強く思うほど、よりによって弱い箇所だけを刺激され続ける。
ボルテージが高まった状態から戻ってこられない。
あの極大の絶頂が、こみあげてくる。
「お願いしたのに、なんでまだするのぉ……!」
「やった、やった。姉ちゃんを堕としたぞ……!」
雄一はほとんど我を忘れていた。
小柄で華奢な姉を性玩具のようにぞんざいに扱い、体内の弱点を責め立ててかき乱し、自分も膣内の感触をむさぼることに夢中になっていた。
さっきまで抱いていた自制や不満の感情はどこかに吹き飛んでしまっている。
「イけ、姉ちゃん! 俺のチンコでイけっ!」
雄一は射精の直前、また腰の動きを速めた。
それが詩乃にとってはトドメとなった。
極大の絶頂がついに、うなじをびりびりと痺れさせながら、脳にまで到達した。
「ああっ、ああーーっ!」
詩乃は叫んだ。
その瞬間、詩乃の世界は何もかもが吹き飛んでしまった。
視界が真っ白になる。
世界との繋がりを求めるように、雄一の体に強くしがみついた。
「うおっ……!」
雄一もまた、詩乃を抱き締めていた。
姉の膣内がぎゅっと収縮するのを感じながら射精する。
夫から精子を受け取って子孫を作るために体に備わったその仕組みを、弟である自分がただただ性的快楽をむさぼるためだけに濫用している。
その事実に、脳がとろけるような征服感を感じる。
間違いなく彼の半生でもっとも気持ちいい射精だった。
「あっ、あっ……はあ、はあっ」
詩乃はしばらく快楽に浸り続けていたが、やがて落ち着き、荒く息をし始めた。
吹き出た汗が顎から滴り落ちる。
気づけばカーテンの向こうから薄く日の光が差し込み始めていた。
鳥の鳴き声も聞こえる。
2人は結局、一晩中体を重ねていたのだ。
「……姉ちゃん。気持ちよかった?」
「……すごい……気持ちよかったですっ……」
弟の問いに、姉は従順な答えを返した。
実の弟に一晩で調教され、屈服したことを示す答えだった。
◆
……半年後。
◆
詩乃は1人、キッチンに立っていた。
大学生の住まいとしては大型で豪華なシステムキッチンだ。
周囲はこぎれいなダイニングで、その奥には寝室が2つある。
この2DKの部屋に、詩乃は弟と一緒に住んでいた。
「ただいまーっ!」
玄関の方から快活な男の声がした。
詩乃はぱっと表情を明るくして、手を洗い流してからそちらへ向かう。
スリッパ履きの足音が鳴る
「おかえり、ユウくん。上着もらうよ」
「ありがとう。いやあ、急に寒くなってたまんないね」
雄一はジャケットを姉に渡し、靴を脱ぐ。
詩乃はその顔を覗き込んだ。
「聞いちゃっていいかな。期末の方は?」
「んーっ」
雄一はもったいつけて唸った後、笑顔で答える。
「ヤマが当たったので大丈夫でしょう!」
「ヤマ張ってたんだ」
詩乃は苦笑した。
2人は他愛のない話をしながらダイニングへ向かう。
詩乃がキッチンに戻り、もやしの根を取る作業に戻ろうとした時、太い腕が彼女の体を抱いた。
雄一が後ろから抱きしめてきている。
「なあ、姉ちゃん。――今日、いいかな」
「……えっと」
詩乃は少し逡巡した。
自分の生理周期と、明日の予定を検討。
少しおどけて答える。
「……じゃあ、しちゃいますか」
「よっしゃ」
雄一がにやりと笑い、詩乃の手を握る。
ごつく節くれだった男の手が、華奢な女の手を覆い尽くした。
【おわり】
最後までお読みいただきありがとうございました。
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