はるか東の騎馬民族フバトの軍勢5万
守るはタルーニャ王国の4万
フバトは10年ほど前に勃興した新興国であったが、その勢いはすさまじく、次々に周辺国を併呑していった。
その戦い方は残虐きわまり、抵抗する城や町があれば文字通りの皆殺し。
生き残った女子供はすべて、そう、文字通りのすべて奴隷として売り払う。
フバトが通った後には廃墟が点々と残った。
フバトは女系の騎馬帝国であり、いまタルーニャのヂンダラ要塞を囲んでいるのはフバト皇帝ツェルデネである。
フバトの伝承に曰く、蒼き獅子と紅き羊の子孫がフバト皇帝だという。
ツェルデネは先帝バトレデネが二か月前の戦闘中に急死したため即位した若い皇帝である。
光沢ある黒髪、羽ばたく鷹を思わせる強い眉。東国人特有の薄いベージュの肌にほのかに朱のはいった頬。体格は中肉中背。東国人は全般的に背が低くツェルデネもまたそれほど長身ではないが、東国人女性にしてはなかなかの長身である。豊穣の化身のような豊かな胸、大きな尻。それらが絶妙なバランスをとり、皇帝でなければその色香で国を傾けたであろう。
弓をとればハルバーラ随一。剣を舞うようにふるい、悪敵そのことごとくを屠る。
武芸にも秀で、軍を操れば常勝
バトレデネが死んだから運よく皇帝になった女ではない。なるべくしてなった、と衆目その意見は一致している。
普段は皇帝がまとう蒼色の騎戦袍で隠れているが、背中には人の姿で顕現した蒼き獅子と紅き羊が絡み合う刺青が施されている。
入浴の際にお供する侍女たちは、ツェルデネの美しさと、女そのものの見事な体とその刺青を見てはため息を漏らすのだ。
まさにフバト民族が理想とする美女と言えた。
しかし性格は代々のフバトの族長たちと同じか、それ以上に苛烈で残忍であった。
ヂンダラに来るまでに焼いた村や町は数知れず。
フバトの幕僚がさすがに諫める蛮行をツェルデネは命じ続けてきた。
百戦錬磨の幕僚たちが鼻白む残忍さが人望を損なうかと言えばそうでもない。連戦連勝を続けるツェルデネは、戦の神に愛されているとささやかれ、民心は常に彼女の側にあった。
いや、彼女自身が神なのかもしれないとさえフバト人のみならず、敵陣の兵士たちも噂した。
ツェルデネが騎馬民族特有の優雅な所作で軍をすすめる。
馬上の一挙手一投足が芸術だ。腹心たちは油断するとツェルデネに目を奪われる。
へまをすれば命を奪われる。ツェルデネの傍に仕えるのは命がけである。
ツェルデネは本人も美しいが、とにかくすべてが美しかった。軍の布陣、進撃、すべての差配が芸術性を帯びている。
左翼、右翼、中央が整然と動き出す。左翼からさらに先に配置された騎馬隊が敵陣を回り込む。先だって行われた矢戦で双方の前衛は消耗していた。
フバトの太鼓が歩調を整える。
タルーニャ軍は要塞から討って出たはよいが、勝算は少なかった。
籠城するに足る水や食料が足りないため、背に腹かえられぬといったところである。
ここヂンダラを抜かれれば王都までは5日の距離。途中にもう一つ城砦はあるが、もはやフバトを止める軍勢はない。
タルーニャの将軍マレドールは国運をかけた会戦に討って出た。
ただ一つ、強いてつけいる部分があるとすれば、フバト右翼に多数混じるサベラゼ人傭兵部隊が弱体である点くらいであるがそんなことはツェルデネの名を出すまでもなくどんな凡将でもわかっている。
マレドール将軍としてはマチハバ連合市国の増援が王都に到着するまで時間を稼がねばならない。惨敗せぬよう、最低3日の時間を稼がねばならない。
会戦でフバトに出血させ、主力をその後に籠城させれば、計算では5~6日は持つだろう。
もっともそれはとらぬ狸のなんとやらであったが・・・
戦闘の推移はフバトに優勢であった。
ありえぬほどにツェルデネの指揮は確かであった。
幕僚や配下の将軍を、神経の通った自らの手足のごとく使い、マレドールの軍勢を追い詰める。
見事な剣舞のごとくフバトの軍勢は巧みに動いた。
マレドールのもとに早馬が敗報のみを伝えてくる。
1刻すぎたころにはタルーニャ軍の敗北は必至となる。マレドールは要塞に撤退するか戦い続けるかの選択を迫られる。今のまま籠城しても勢いがついたフバトを抑えることができるかどうか。
しばし悩んだ末マレドールは籠城を決断した。
しかしその機をのがすツェルデネではない。後方に控えていた予備隊をくわえて突破に出てきた。ヂンダラの運命は決まったかにみえた。
フバト軍後方に位置するツェルデネのもとに奇妙な報告が上がる。
伝令曰く「タルーニャ軍陣営後方からタルーニャの兵士たちがつぎつぎになぎ倒されていくのが確認された。しだいにそれはわが軍に近づき、今度はわが軍の兵士たちがなぎ倒され、あるいは燃え上がり、炭となっていった。」
ツェルデネは一笑に付した。
「それでその不思議な敵はいかほどの勢力だ。」
伝令はくちごもる。「どうした、言え、わからんのか。」
「一人!たった一人とのことです。」
ツェルデネと将軍たちは大笑いした。
「話にならん。押し込んで屠ってしまえ。」
しかし全く同じ報が次いでやってきた。ツェルデネと将軍たちはさすがにおかしいと気づき始めた。
彼女らは人二人分の高さの移動式戦台の上で指揮を執っているが、戦闘が不思議と低調なのだ、報告のとおりか、中央で混乱が見える。
ツェルデネはいらだった。美しい戦闘隊形が乱れている。
「中央のバルトネは何をしている。」
「伝令によればバルトネ将軍も押さえきれぬとのことです。」
ツェルデネはらちが明かぬと、手練れの護衛兵を10人ほど連れ自ら督戦に出た。
将軍たちは強く止めたが聞き入れるツェルデネではない。
押しているはずの中央が止まっている。皇帝たる余が叱咤せねば。
謎の敵兵?そんなものはない。タルーニャの精鋭部隊が暴れているのだろう。
局所的な番狂わせなど戦の常だ。
余が赴けばほどなくこの混乱はしずまり、ヂンダラは落ちる。
マレドールの首を肴に今晩は宴会とするか。
兵士たちには3日の略奪を許可しよう。
ヂンダラの美女を集めて一人一人生きたまま腹を裂き、ユーシ(度数の強い酒)を注ぐ。暴れる暴れる。そしてこれがまた笑える。そうだ、女どもに互いにユーシを注がせあってもいい。
ヂンダラから好みの男を選び、奉仕させよう。
奉仕させ、わが身は安堵と安心した男を翌朝車裂きにするのがまた楽しい。
腕自慢に棒を渡し、気まぐれに剣の錆にしてもよい。
ふふ
残忍な妄想。
3分だな。3分で中央を立て直す。
3分後
ツェルデネは浮浪者とまぐわっていた。
怒りながら浮浪者の陰茎を吸う。浮浪者はツェルデネの股ぐらの甘い蕾を吸っていた。
ふいに浮浪者の陰茎が火山の噴火のような射精をした。ツェルデネの喉奥に熱い、熱い白濁液が流れ込んだ。ツェルデネはむせかけたが皇帝の意地にかけてむせるのを我慢した。
周囲には両軍の兵士の死体が散らばっていた。兵士たちは遠巻きにツェルデネと浮浪者を眺めている。どうしようもないのだ。
なんど浮浪者を突き殺そうとしても槍はささるがまったく意に介さず逆に兵士は投げ飛ばされる。弓も効かない。刺さっても刺さってもほいほいと抜いてしまう。歩みは止まらない。
攻城器材で突いても器材の先端が折れてしまう。
大勢で押し込めば、その大勢は燃え上がり、炭となる。
油も火矢も、火薬も効かない。燃え上がる炎の中から爆炎の中から、まとうボロすら無傷でその浮浪者はのんびり歩いてくるのだ。
しびれを切らしたフバトの高名な将軍が部下と騎馬で突撃したが、全員雷に打たれ、黒焦げになってしまった。雷にうたれたとて黒焦げになるはずはないのだが。
皆が止めるのもきかずツェルデネは男に挑んだ。
剣で切り刻み、浮浪者が歩みを止めた。とどめ(本来さきほど切り刻んだ時に死んでいなければおかしいのだが)に斬撃をくわえようとした際に腕をつかまれ(これも不思議な話で、捕まれる間合いではなかったとみていた兵たちは言う。)組みふされた。こうなってはもう助けようもない。
護衛兵たちは幾度突っ込んでもなぎ倒される。なす術がない。最後の一人が半ば自棄になり斬りかかるや、浮浪者の吐く息を吸って死んだという。
戦闘は完全に止まってしまった。
マレドール将軍もあの浮浪者が敵か味方か判じかねていた。
遠めにも凄惨な凌辱が確認できる。あの皇帝ツェルデネがひとりの女となって男に犯されているのだ。それも戦場の、戦闘の真っただ中で。
ツェルデネの張り出した美しい胸は浮浪者がいたく気に入ったのか、執拗に愛撫された。そのかたわら男の片手はツェルデネの蕾をいじり続ける。
男の手には電流でも流れているのか、ツェルデネは今まで奉仕させた男どもの愛撫とは全く違う悦楽が与えられ、心は閉ざしながら体は天にあった。
ついにツェルデネは達した。過去にない深さだ。かつて南方はパルバラから連れてきた性豪の男の奉仕が気に入ったことがあったが、その比ではない。体の奥深くから湧き上がり、口から抜けていく快楽。声が出た。はしたない、皇帝が臣下に決して聞かせてはならない声だ。
いかに戦闘が静まったとはいえ、平原である。声の通りようもない。
だが、その場の将兵の耳には確かにツェルデネの甘く情けないよがり声が聞こえた。
そう、浮浪者が魔法でこの数里内のすべての生物にツェルデネの音を伝えていたのだ。
駆けつけたフバトの腹将ブルゲルは地に膝をつき、皇帝の媚態をただただ涙して受け入れていた。代々の族長や皇帝に仕え、40年になるこの老将も、こんな事態は初めてである。どうしてよいかわからない。引くも進むもできない。
アウ、アッ!うううう!
耳元には皇帝陛下の女の声が聞こえ続ける。
声どころか淫らな肉と肉がぶつかり合い、汁と汁がはじけあう音すら聞こえてくる。
騎戦袍(ヤパオ)を中途半端にまとったツェルデネは後ろから突かれていた。下衣は太ももにひっかかったままつかれるたびに揺れた。そして揺れるたびに飛沫で濡れた。
ぬらぬらと黒く光る硬い鉄の肉棒はツェルデネのやわらかな肉壺を割らんばかりに突きまくった。
ツェルデネは絶叫し、二度果てた。
いまひとつ面白くないとでも思ったのだろうか。浮浪者は指を鳴らす。
するとどうだろう。
大空にツェルデネと浮浪者の姿がありありと浮かび上がる。
全軍の将兵がそれを見上げ、歓声を上げた。
ツェルデネは青ざめる。
「やめろ、やめろ!なにをするか!」パアン!
ツェルデネの尻がたたかれた。それが合図にツェルデネは再び達し、無様に失禁した。
大空にはそれが映し出される。
我にふりかかるのでは、と多くの将兵が手で体を覆った。
浮浪者は無表情に機械的にツェルデネを犯す。淡々と感情なく。
しかしツェルデネは対照的に生き物として犯されていた。
体位を変え、突き方を変え、男はツェルデネを何度も絶頂させた。
皇帝であるとか民族の幹であるとかの矜持はとっくに溶け落ちてしまっている。
「許せ、許してくれ、頼む、解放してくれ。」
将兵に聞こえているとは知らず、ツェルデネは懇願する。
男は聞こえているのかどうかもわからない。
ツェルデネの女から黒肉茎をぬく。音こそしないが、ぬぽんと聞こえた気がするそれはいやらしい糸を引いた。
仁王立ちになった浮浪者。今度はツェルデネに肉棒をくわえるよう促す。
大空にツェルデネの口淫が映し出される。口と手で男の陰茎をしごき上げる。過去に奉仕させてきた男どもとのまぐわいで得た神技である。
求めに応じられぬヤワな男をこれで勃たせられなかったことはない。
なにをやっても達人となれるツェルデネであったが、この時ばかりは裏目に出た。
-皇帝にあるまじき技術-
と、誰もが、両軍の将兵が眺めながら思った。
浮浪者の陰茎が細かに震え、直後ツェルデネの口内に熱い、やけどをしそうな精液があふれる。口の端からどころかツェルデネの鼻からも垂れた。
飲まなければ殺される。ツェルデネはむせる喉を必死に抑え、一滴残らず飲み干し、陰茎に残った白濁液もきれいに舐めとった。その動きがまたいやらしかった。
じゅるじゅるという音が全将兵の耳を犯した。
座位で乱暴に体を上下させられる。自らも腰を振らねばならない。
背中の見事な刺青が大空に映される。
浮浪者が達した。ツェルデネの股から白い液体があふれ出る。
いったいこの男からは何升の精液が出るのだ。
両軍の将兵はもう感心の域にいた。
ひとりの兵士が「見ろ!」と指さした。
つぎつぎに将兵が大空に浮かぶツェルデネの背中をみた。
なんと、蒼き獅子と紅き羊、雄と雌の神が背中でまぐわい始めたのだ。大空のグランドビューとでもいおうか。男のいたずらだろうか。
ツェルデネは背中がもぞもぞすることに感づいていたが、なにが起きたのかはわからなかった。
ただただ、男の求めに応じいやらしい声をあげつづけている。
突然男が飽きたのかツェルデネの女から陰茎を抜いた。
抜いた瞬間、ツェルデネの肉壺は大量の白濁液を吐き出した。
肩で息をするツェルデネはこれで解放されたと思ったのか安堵し、草原に身を横たえた。
顔を横に倒し、ごふっと大量の精液を吐いた。
舌で唇をいちどなめ、唾を吐いた。
男はそばにたたずんでいる将軍と思しき男を顎で指名した。
老将ブルゲルだ。
ブルゲルはよたよたと近づく。何をしろというのか。
浮浪者はふところから数珠状のビーズを取り出し、投げてよこす。
ブルゲルは意図をはかりかねた。
ツェルデネはブルゲルが来てくれたことで助かったと思い、これまで必死に我慢していた涙があふれそうになる。
「ブルゲル、余を、余を見捨てないでくれ。」
ツェルデネは醜い媚態を晒したことをよくわかっている。
ブルゲルは数珠をもって近寄り跪いた。
「陛下、ブルゲルはここに。」
男は無慈悲にもツェルデネの体をうつぶせにし、尻を固定した。
男に殺意がないのは知っている。ブルゲルはどうせ止められぬため、男を制止しなかった。
しかしブルゲルは男がツェルデネの菊を広げ、指さしたことで制止しなかったことを後悔した。
止めようもなかったのだが、止めようとしなかったことは腹将として落ち度であろう。
「不覚」
天を仰ぎ、涙を目に貯めた。
ツェルデネもまた察した。
もしかして、もしかしてこの男は。
ブルゲルは覚悟した。
事ここに至っては拒否しようもない。
我が断れば、きっと我は黒焦げになり、次に誰が選ばれるかもわからぬ。
もし陛下に近寄るに値しない下賤が選ばれれば、そのものが陛下を凌辱することになる。
我がするよりほかにない。汚名はこのブルゲルがかぶる。
ブルゲルは数珠を右手に持ち直す。
「やめろ、ブルゲル!やめてくれ、死罪だ!お前の一族郎党を屠るぞ!」
ツェルデネは暴れたが、頬に男から平手打ちをくらい、男が指を鳴らしたことで絶頂し失禁したことで静かになった。
ブルゲルは一言も発さず、ツェルデネの菊の窄みに球を入れ始めた。
ブルゲルはいま、勃起していた。なんともおいたわしい。しかしなんとなまめかしい。
秘所は濡れそぼり、菊はひくひくと球を待ち望んでいるかに見えた。
一つ入る。二つ入る。
ツェルデネの菊はどんどん球を飲み込んでいく。
そのたび抑えきれない湿った甘い声が漏れる。細かに震える。
ブルゲルの男は率直にツェルデネの体を欲した。
いまのツェルデネはただの哀れな女だった。それもとびきり極上の上玉。
ブルゲルの耳に静かな嗚咽が聞こえる。
両軍将兵は全員勃起していた。
かなりの数の将兵が、停止しているとはいえ戦闘中にもかかわらず自慰をしていた。
球がすべて入りきった。
将兵「へえ、全部飲み込むんだ。」
ツェルデネにその声が届いた。もちろん浮浪者のいたずらである。
将兵「ああなっちゃ皇帝つっても女だな。」「売女だ。」「俺にも抱けそうだ。」「俺は皇帝を抱いた初めての男になるぜ!」
フバト語だ。わが軍の将兵の言葉か。
ツェルデネは真っ赤になって怒り暴れた。
「皆殺しだ!一族もろとも、あう!ああああ!!」
再び男の指慣らしで絶頂させられ、潮を吹き、ツェルデネは静かになった。
ブルゲルは昨年たいらげた中原の故事を思い出す。
ある敗将は四方を敵に囲まれた際、敵陣から故国の歌が聞こえてきたことで完敗を認めたという。
男が顎でブルゲルに紐を引けと命じる。ゆっくりではない、勢いをつけて引けと目が言っていた。
いきさつはかなり特殊ではありますが・・・
我らは敗軍の将。受け入れましょうぞ。
「やめ、やめろ、ブルゲル、たのむ。この通りだ。おねがい。おねがいします!そうだ、ブルゲル、今夜しとねで、お前を慰めてやる。たのむ、なんでもする。そうだ、皇位を譲るぞ。ひくな。ブルゲル、ひくな。ひもを放せ、お願いだ。お願いよ、お願い!」
無様になきじゃくり、命乞いをする。いや、菊乞いとでも言うべきか。
「ブルゲル、金銀財宝すべておまえのものだ。
私の体も侍女もなにもかもおまえに---ーーー・・・・・・・・・!!!!!」
ブルゲルは一気に数珠を引き抜いた。
天に皇帝の絶叫が響いた。
両軍将兵は全員耳をふさいだが、脳に直接響いたため、耳をふさいでもその絶叫は余すところなく聞こえた。
背骨が二つ折りに折れんばかりにエビぞりとなり、大失禁。いくども失禁してなおこの尿量。男のなせる業であろう。括約筋は仕事をせず、ツェルデネの菊からは匂う固形物がガスとともにまき散らされた。
すべて大空に映し出されていた。
ブルゲルがこれでよいのか、と後ろを向くとそこには誰もいなかった。
ただ一陣のつむじ風がブルゲルの髭をたなびかせた。
ブルゲル「陛下、おわりました。草原へ帰りましょう。」
体中の穴という穴から、あらゆる体液が漏れ出ていた。
秘所と菊はいやらしい痙攣をやめ、ツェルデネはひとこと「帰るぞブルゲル。」とだけ。
その後、フバトは全軍を引き返し、占領地をすべて放棄して撤退した。
草原から生まれ、あらゆる文明を破壊し、支配したフバトはこれより40年後に滅亡した。
図書館で歴史書を読んでいたエーレカは「一説に曰く」と但し書きがなされた挿話を見た。
500年前に大陸を席捲したフバト帝国がヂンダラの戦いで敗れ、その後滅亡の道をたどったことは、ある程度教育を受けたものであればだれもが知る歴史の知識である。
しかしなぜ敗れたか、となると諸説紛々、説の定まらぬところである。
しかしながら、一人の男がフバト皇帝を退けた、という怪説が昔から根強く残っている。
その説自体はエーレカも知っていたが、この歴史書には、その男がいかにフバト皇帝を下したかが、赤裸々につづられていた。なるほど信ずるものはいないだろう。
しかしエーレカは、その説こそが正しいのだろうと、思い出したくない記憶とともに本を閉じた。
右目はない。左手もない。指は3本がない。鼻もそげ、左耳もない。
感染症でひと月生死の境をさまよい、聴力も失った。
女として大事なものの大半は失った。
嘆息する。
エーレカを背中から抱きすくめる手があった。
サウラーカがエーレカの耳に口をおしつけて語りかけた。
「さあ、帰ろうエーレカ。おなかの子と。」
エーレカは新たに得た幸せとともに帰路についた。