※この作品はR-18です。

3分後   作:すりーみにっつ

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この世界の人間は、みなある程度の魔術が使える。手をほんのり温めたり、ちょっとした火花を散らしたり。その程度だが。

しかしこれを極めていくと人の精神を操ったり、破壊力をもったエネルギーを生成して飛ばしたりといったことができるのであるが、それはほんの一握りの達人だけである。

そうではあるが、わずかな魔術でもそれが日常に組み込まれており、それがために、魔術で何とかなることが、魔術がない世界よりも多いため、自然の法則を利用した技術の発展は緩やかであった。

マチハバはかねてより、魔術を排し、密科のことわりのみで組み立てる技術を研究してきた。工程から魔術を極力排した、純度の高い密科による産物を純密と言った。
純密により作られた道具は、使用者の魔術的な能力はおろか、単純な練度も、従来のものよりも必要とされなかった。

素人が扱っても、達人が扱ってもそれほど違いがない。
ゆえにマチハバではここ近年魔術の使用が下火になっていた。


3分後のアマトール

アマトールは車長席にふんぞり返って、巻燻をくゆらせていた。

そばには中年の色っぽい女性が乗っている。

「愛器に情婦(イロ)を乗せるのが、俺の夢だったんだ。」

 

アマトールが乗っているのは、無限転帯で進む、黄油式動力の建兵器材である。

排土板がついており、道路工事などに使うべく設計された器材で、これは試製器である。

純密器を目指したが、どうしても起動そのほかで魔術を必要としているため、多少ながら魔術に心得のあるものが乗車しなければならない。

 

ヒューリ「アタシがいなきゃ走らないんだから、感謝してほしいもんだね。」

アマトール「なあに言ってやがる、この売女ァ!てめぇの力なんざ借りなくたっていざとなりゃエドュゴーのケツひっぱたいて起動させられるんだよ。」

 

エドュゴーと呼ばれたのは操兵で、二人の会話をひやひやしながら聞いている。もっとも動力の音がうるさくてあまり聞こえないのだが。

 

「へえ、随分なお偉いさんが来あがるな。」

アマトールが豪勢な馬車を前方に見る。

「エドュゴー、寄せろ。動力てーいし。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

建兵器材を道のはじによせ、アマトールは天蓋から上半身を出す。ヒューリも顔を出し、アマトールの腰にしなだれかかる。

「随分なお偉いさんだ。我慢しろい。」

「なにさ、ケチだね。」しなだれかかるのをやめたヒューリだったが、好奇心から顔は出したままだ。

 

馬車が横切る際、アマトールは右手を掲げる敬礼をする。

馬車の中の貴族らしき男が紳士の敬礼を返す。

アマトールは、後部座席に乗る小娘と目が合った。何か感ずるところがあり、目を追う。

馬車は去って行った。

 

「随分立派な馬車だったね。」「警視卿馬車だ。」

「あんたずっと眺めてたけど、やっぱ珍しいのかい。」

「後ろに乗ってた小娘な。ヤな臭いとイイ匂いがしたんだ。」

「臭いってアンタ。」

「カタキの臭いと恩人の匂いだ。」

アマトールは小娘の顔を思い出す。どこかで見たような、見たことのないような。

 

 

「試製18式無限転帯式建兵器だな。マチハバが純密方式でつく」

「アゼっち、それ以上説明いらないよ。」

アゼミはぶすっとしてアーチェラを横目でにらんだ。

 

「それよりね。」「どうした。」

「さっき目が合ったおっちゃん。ずっとわたし見てた。」

「おまえは・・・美人だからな。」「ありがと」アーチェラのレスポンスがはやい。

「さしずめ女好きなのだろう。」「そうかなあ。」

 

「アマトール建兵大監だね。」

スルマリケが二人に言った。

「誰それ。」

「人物像は無頼で、とても指揮官の器じゃないと思うのだが、あれよあれよという間に大監におさまった。大監よりも彼はむしろ前線の分隊指揮官が似合う。そういう人だよ。」

 

「けっきょくどーゆーひと?」

「ぶっきらぼうであばれんぼう。いくさならば前線で敵と斬りむすぶのが似合う男だが、なぜか軍のえらい人になっている。」

 

「ありがとーアゼちーん。」アーチェラがアゼミにがしっと抱き着く。

アーチェラがアゼミに抱き着いた拍子、アーチェラの椅子に矢が刺さった。

スルマリケの肩にも深々と矢が。

 

「敵襲!!」

馬車の外から叫び声が聞こえてきた。

「馬鹿な、郊外とはいえここは王都の行政区内だぞ。」

スルマリケが肩をかばいながら背を低くする。

「なになに!?」

「襲われているな。」

 

アゼミが耳を澄ます。

「・・・3人。十分押し返せると言いたいところだが、こちら10人の手勢にわざわざそれっぽっちで寄せてきたからには、なにか策があるのやもしれぬ。」

「どうする!アゼちん。」

 

スルマリケ「どうもしなくていい。君たちは馬車の下に隠れるんだ。本当になにもしなくていい。とにかく身を守るんだ。」

遠くにまばらな民家が見える。草原と畑が混在している。

馬車の外の護衛はすでに4人が倒れ伏し、残りの護衛は馬車を囲んで防御陣を組んだ。

 

しかし、賊の一人が進み出て地面に手を付けると、近辺の樹木や石がみるみるうちに集まり、人型になる。

「ゴーレムだ!」

ゴーレムと3人の男が馬車を囲む。

 

アゼミ「ゴーレムが出てきては分が悪い。」

スルマリケ「応援があと半刻ほどでやってくる。大丈夫だ。」

アゼミ「半刻もつかな。」

ん?とアゼミが耳をたてた。

 

轟音が近づいてくる。

「新手か!」護衛が叫ぶ。叫ぶ頭に賊の矢が刺さり倒れこむ。

 

轟音は先ほどの建兵器材だった。

天蓋から上半身をだし、腕組みしたアマトールが大声で叫ぶ。

「助けに来てやったぞ、感謝しな。」

 

高さ3間の巨体は、到着するやゴーレムと力比べを始め、それを身を乗り出したヒューリが魔法で援護する。

 

二人は身をかがめ、「よせ、君たちが隠れろ。」と繰り返すスルマリケをかばっている。

 

アゼミ「アーチェラ、おまえ、静かだな。」

「今ね、怒ってんの。このおじさんすごく痛そうだし。」

「私なら大丈夫だ。」スルマリケがアーチェラに顔をむける・・・と、そこには豊満な美女がいた。

 

ペンネーム「ベイリー」

「わたし、ちょっとあの人たちイかせてくる。」

青筋を立てたベイリーが馬車から飛び出す。

「やむをえんな。」

アゼミがそれを追う。

 

3分後

 

からっからに干からびた男二人が地面に転がり、悲鳴を上げる男の上でベイリーが楽し気に上半身でダンスしながら精を搾っていた。

「あおおおおお!!」

悲鳴を上げていた男は7升ほどの射精をして一気に干からびた。

 

ゴーレムを道端になぎ倒した建兵器材からアマトールとヒューリそして操兵のエドュゴーが降りてきた。

 

「ははは、お前ら大丈夫か。」

アマトールは巻燻に火をつけ、紫煙をふうーっと吐いた。

 

スルマリケ「護衛が5人ほどやられ、2人ほど死んでしまいました。」

 

「アゼちん、ありがと!アゼちんが動きとめてくれたから、ラクショーだったよ。」

ベイリーが腰を振りながら戻ってくる。

「おい、そこの派手なねーちゃん。アンタつええな。」

アマトールがベイリーに話しかける。

 

「アハハ!ありがと。でも・・・何人も人が死んじゃった。」

「気にするなベイリー。お前が出たおかげで被害は抑えられたのだ。」

アゼミがベイリーの肩をつかむ。

ベイリーが肩に乗ったアゼミの手を握る。

 

アマトール「それはそうと・・・どこかで見た顔だな。」

スルマリケがほこりを払い、アマトールに一礼し名乗った。

「警視卿アマトールだ。礼を言う。」

適当な敬礼をしてアマトールが返す。

「アンタじゃねえ。そっちのネエちゃんだ。」

 

ヒューリが腕組みして侮蔑の目をアマトールに向ける。

「派手な若い娘にさっそく色目使うのかい。」

「そうじゃねえ。ヤな臭いとイイ匂い、このネエちゃんからするんだよ。」

「ふん!」ヒューリがそっぽを向いた。

 

「はじめましてー、どーもベイリーです。」

おどけながら礼をする。

「私はアシハラのアゼミだ。」

アゼミがアシハラ式の礼をする。

 

アマトールはしばし二人を眺めたが「わっかんねえなあ。」とあきらめた。

「それはそうと、こいつらなんなんだろうな。」

 

スルマリケ「おそらく、摂政殿に反感を持つグループだろう。」

アマトール「恨まれてっからなあ、あの女」

スルマリケがキッ!とアマトールをにらむ。

 

ふん「礼はいらねえぜ。」アマトールがにやりと笑う。

アマトールはふてくされるヒューリと、ひやひやしっぱなしのエドュゴーを連れてもとの街道に戻っていった。

 

「変な人たち。」「助けられたがな。」

「彼らは助けてくれましたが、摂政殿には良い感情を抱いていないようでしたね。」

 

「私よくわからないけど、あのおばさんって嫌われてるの?」

「ベイリー。偉い人っていうのは、なにをやっても嫌われがちなのだ。特にまじめな人はな。」アゼミが解説する。

スルマリケは我が意を得たり、深く、深くうなづく。

 

「本当に嫌な奴の可能性もあるがな。」

「嫌な人ではない!」

スルマリケの声が街道に響いた。




「ときにベイリー」
「なに、アゼちん。」
「無精転生は使わぬのか。」
「せっかくなんだけどぉ。やっぱ、その。女の子の最初はさ、大事な人に捧げたいじゃん。」

スルマリケ「なんだね、その無精転生とは。」
「えっとぉ・・・女の子のね・・・その妊娠しなくて大丈夫だから、いくらでもね、できる魔術」ベイリーがくねくねしながら説明した。
スルマリケ「そんなはしたないことをやってはいけません!!」

スルマリケの怒声が街道に響いた。
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