※この作品はR-18です。

3分後   作:すりーみにっつ

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3分後の王都

日は落ち、家々の灯りがともる。

あかりが止まる夜八の刻まで王都に夜はこない。

街灯にネジロが飛んできてとまった。夜静かに鳴く鳥だ。街灯、街路樹に。

コー、コー、コー

夜の王都でネジロの合唱がはじまった。

 

呼応するかのように、飲食店の残飯をあさる野良のスイコやマレが鳴きだす。

「オン!オン!」「ナー、ナー」

 

人通りもまばら。

通りに面した商店の店主が扉を閉める。

「明日は稼げるなあ。」

店主が店の中に入っていった。

 

3分後

 

 

大好きなトリューヘ

今度はいつ帰ってきますか?

あなたが遠方勤務になって2年がたちます。

 

春夏に一度ずつ七日帰ってくるのが待ち遠しいです。冬も帰ってこれるようにはならないでしょうか。

お仕事はなれましたか。危険なことはやってないでしょうか。

 

私はいまだにあの日のことを思い出してしまいます。後悔で心が押しつぶされそうになる夜が続きます。

 

なぜあんなひどいことをやっていたのか、今となっては自分でもよくわからない。

せむしのおばあさんや、目が見えない女の子を鞭でぶつように命じたり、盗賊とはいえ、簡単に首をはねてあやめたり。

 

許されることではないでしょうが、謝りたい一心です。

目の見えない女の子などは今頃どこで何をしているのかしら。

今も私を恨んでいるかもしれないと思うと、スープも喉を通らない。

 

もしあなたが会うことがあったら、私ことナゼリハは後悔しています。謝りたいと、伝えていただける?そして、居所を教えてもらって。

直接謝りにいきます。

 

トリュー、はやく帰ってきて。

一人だと、嫌なことばかりが頭をグルグルまわってしまってだめです。

 

そして早く家を買いましょう。

庭でサリュフとツァミカを育てて、毎日サラダを作るのが夢です。

あの目の見えない女の子にも振る舞ってあげたい。

 

あともし、あの男に会うことがあったら、私の復讐なんてしないでね。絶対にかないっこないのだから。

なるべく争わず、怪我をせず、帰ってきてちょうだい。

 

では。あなたの好きなサリュフの乾物を同封します。

お元気で。

 

あなたのナゼリハ

 

 

 

トリューは宿舎のベッドに寝っ転がって妻からの手紙を読んだ。

サリュフの乾物は3つ入っていたが、残念ながら一つはカビていた。

乾物を噛みながらつぶやく。

「はー。カミさん、そろそろ心が限界かな。この記念式典が終わったらいよいよ、異動願いを押し込むしかねーかな。」

 

王都勤務は手当が高く、貯金にうってつけだったが、トリューはすでになかなかの財産を築いていた。

田舎に中古の一軒家を買い求めることができるくらいには。

 

家はどこに買おうか。

いまさらツーリカルでもないか。まあ、あそこは安そうだ。街は遠いが、それなりに暮らしやすいだろう。

 

ナゼリハの実家は没落して今は平民同様になっていると聞いた。

ニージャ家が持っていたツーリカル大森林だが、今は国家が管理している。

ニージャ家の森林官制は軍に統合され久しい。

ツーリカル方面森林隊、なんて名前で治安を保っている。

 

いやな思い出ばかり。やはりツーリカルはよそう。

明日はいよいよ記念式典当日だ。

早めに寝よう。

トリューは体を横に倒して布団をかぶった。

 

3分後

 

 

トムルスは部下たちと106蟻滑空砲の手入れをしていた。

蟻が106匹並んだくらいの大きさの口径。

砲命は60発とされている。まだ27発しか撃っていないので、残り33発を撃つことができる。

 

この砲はだいたい40発くらいから狙いが狂ってくる。射撃の熱と衝撃に耐えられないのだ。

実際は100発は余裕で撃てるらしいが、安全係数というやつを計算に掛け合わせて出た回数が60発だという。

 

まあ33発撃てるならたいがいのことは大丈夫だろう。

 

この大砲の正式名称は「サウラーカ18年式106蟻無旋条砲」

サウラーカという男が開発に携わっていたようだ。

俺達は「10(ヒトマル)滑空」と呼んでいる。

 

サウラーカとは誰だろうな。

きっと貴族で天才で。美人で太い実家の嫁さんもらっている金持ちだろう。

 

明日は記念式典当日だ。

民衆は飛行船をみるだけで満足する。

砲を放つことはきっとない。

遊覧飛行で給料がもらえるのならそれに越したことはない。

 

10滑空の射撃なぞ、誰も観ることがない方がいいのだ。

 

整備が終わったら、部下たちと酒でも飲んで寝よう。この仕事が終わったら俺も嫁さん探してみるか。

トムルスは「整備やめ」の指示をだした。

 

3分後

 

 

「エーレカ。今日はもう寝よう。」

「明日何時に起きる?」

「母さんは早起きしなくても大丈夫だよ。」

「私がご飯作るから。」

サウラーカの家庭団欒だ。

妻のエーレカは病気がちだ。若いころの大怪我で感染症にかかり、未だにぶりかえす。

 

一方息子は17歳、次女は15歳。

 

エーレカは夫と子供2人にかこまれ、ベッドに横たわり、ふと自らの半生を顧みた。

武芸の鍛錬にあけくれ、貴族として王政に忠誠を誓い、無茶をしていた若い頃。

あの憎き男にめちゃくちゃにされ、自暴自棄だった頃。

図書館に勤め、心の平安を得つつあった頃。

サウラーカと出会い、自分の命よりも大切なものがあると知った頃。

体を悪くして生死の境をさまよった頃…

 

死ななくて済んだ。

二人の子供を育てられた。

 

エーレカは満足に包まれる。

 

いや…違う。

どす黒い復讐心は胸の底に蠢いていた。

 

「俺は無視か?お前を辱めた俺は無罪というわけだ。なるほど、俺がいなけりゃ巡り巡ってサウラーカとは会えなかったからな。当然子供二人とも会えていない。むしろ感謝すべきか?お前を犯し、もてあそんだ。楽しかったぞお前が苦しみ恥じらう様は。よいではないか。顔は削れ、指は落ちた。よいではないか。サウラーカと愛する子供2人と会えたのだから。ハハハ。ハハハハハハ!!」

 

エーレカは布団をはねのけて起き上がる。

サウラーカと子どもたちはエーレカをみまもっている。

エーレカの目から涙が滴り落ちる。

サウラーカがエーレカの肩に手を回す。

 

つらいね…エーレカ。

 

子どもたちもエーレカの手を取る。

子どもたちは何も言わない。

はらはらと泣く。

 

サウラーカは辛かった。

かの暗殺者は刑場の露に消えた。

しかしエーレカを辱めた男(マガッヒというらしい)は行方不明のままだ。

 

今はどこにいるのだろうか。 

居所がわかったところで非力な自分に仇をうてるわけがない。

 

軍が採用したサウラーカ砲があの男マガッヒを仕留めたら妻は、エーレカは笑顔で暮らせるだろうか。

 

明日は家族で式典のお祭りに行く。妻も気晴らしになるだろう。あまり悪人のことをあれこれ考えるのはよくない。

過去のことだ。

前を向いて生きていかねばならない。

「さあ、もう寝るとしよう。」

サウラーカが妻に言った。

 

3分後

 

ヒューリが狂ったようにアマトールの口を吸う。

アマトールも吸い返す。

やや湿度の高い宿舎のベッドの上で、2人が汗だくになって絡み合っている。

ヒューリもアマトールも互いの背中を無造作に撫で回す。アマトールの陰茎はヒューリの秘部を豪快に出入りし、ヒューリを刺激する。

「アンタ、喧嘩弱いんだから、あん」

「身の程知って、うん!…あ。」

「けなすか感じるかどっちかにしろい。」

 

しばらくヒューリは無言。荒い吐息が続いた後、アマトールの背中をぎゅっと抱きしめ、深いため息をつく。

アマトールもその後、腰を激しく振り、ヒューリの背中を強く抱きしめた。

 

「弱いんだから、誰彼かまわず喧嘩ふっかけちゃダメだっていってんだよ。」

「余計なお世話だ。」

 

二人してベッドに大の字で寝転がる。

アマトールが巻燻に火をつけ、煙をはく。

「明日は会場の端っこで機械閲兵の順番待ち。機械閲兵で無限転帯走らせたら仕事はおわり。喧嘩したくとも明日は相手がいねえよ。」

「いないところに無理やり相手みつけてぶん殴るのがアンタだろ。」

アマトールは苦笑いしながら煙をはく。

煙の輪っかがひとつ、ふたつ。

「そうだな。明日は誰に喧嘩売るかな。」

 

3分後

 

王都の灯りが消え、夜がきた。

 

 

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