盛大な花火があがる。
国王即位20周年記念式典は晴れやかに始まった。
王都には出店がならび、道化師、曲芸師がそこかしこで芸を見せている。
閲兵式にはきらびやかな貴族所領軍、王政府集権軍がその威容を行進でもって示すべく、待機場所に指定された被服廠、造兵廠の中央広場にひしめいている。
空には邪龍を払ったことで国民にも名高い「アルヒューナ」が遊弋している。
王政府宮殿広場では厳かな即位記念式典とりおこなわれていた。
王政府、教会、貴族の重鎮、綺羅星のごとき将星が列席している。
「カブヒンド殿が欠席?」
宮殿広間に併設された待機天幕で係があわてる。
「カラッカラにひからびて療養所に運ばれただって?」
国王の隣に座るアラシェリーケは苦笑いしながらスルマリケに尋ねる。
「あの二人、カブヒンドをやりおったようだ。目玉の真犯人が私と知れればここにも来ようか。」
「今朝、それぞれの個室に朝食を運んだらすでに不在だったとのことです。見張りは何も見ていないと。」
「ふん、あの者らならば見張りも魔術障壁もなんとでもなるのだろう。手負いのアゼミと怒りのアーチェラ。侮れぬな。」
ウラバロ「目下、警視と軍で二人を追っております。なあに、いかなあの二人と言えども、この厳戒態勢を破って摂政殿に危害をくわえることはできません。」
「その言葉、信ずるぞ。」
スルマリケ「あの二名の戦力諸元は見積もっております。その見積もりの3倍を基準として警戒をしいておりますれば。」
アラシェリーケは
-見張りをやすやすとすりぬけられておきながら、ぬけぬけとまあ-
とは思ったが、見張りを抜けられたことで警戒を厳にしたと言うことだろうと、承知し、何も言わなかった。
「たとえあのふたりであっても、近づくことはかないますまいな。」
財務卿オスタイヤが愉快そうに腹を叩いた。
「ちょっと無理っぽいね。」
「さすがにこの警戒では摂政に近づけぬな。」
「アゼちんも無理できないしね。」
「私なら大丈夫だといいたいところだが、いつものようには体が動かぬ。」
二人は王政府宮外構の小尖塔にいた。
「花火みてっか。」
「やむをえまい。名案が浮かぶまでながめておこう。」
尖塔のでっぱりに二人腰かけて花火を見る。
「超特等席ー!」
異変は花火が最終段階にうつるころに起きる。
浮浪者がふらふら王政府宮にむけて歩いていたのを、警邏の兵卒が呼び止めた。
「おい、あんた。そっちはまだ1刻ほど入場できないぞ。」
肩に手をかけるが、浮浪者が無視して進むため、兵卒は「おいおい」と回り込む。
「聞いてるのか。こっちにはまだ行けな」
言い終わる前に兵卒はくるりと宙を回転して地面に倒れる。
浮浪者は何もなかったかのように歩む。
王政府宮南門。いつもは5名の門卒がいるが、今日は12名に増強されていた。
一人の門卒が前方で警邏の兵卒が転倒するのを見た。そばにいる浮浪者がやったのか?
浮浪者がやってくる。
門卒が浮浪者を止めようとするが、この門卒も宙を舞って地面にたたきつけられる。
それを見た他の門卒がかけつける。
かくして門卒は全て地面にノビることになる。
「南門でやけに腕っぷしの強い野郎が大暴れしているらしいぞ。」
第一報はそれだった。
南門警備隊本部は応援の警卒を派遣するが・・・
「だめだ。抑えきれん。不審者1名が門を強行突破し、中央広場に向かって進んでいる。」
と追報が入る。
これには南門警備隊本部も警戒の度をあげ、今度は警杖で武装した部隊を派遣する。
が、これも撃退される。
「さすがにこれは異常事態だ。式典警備隊本部に殺傷武器使用を報告しろ。」
かくして南門警備隊本部は戦袍に胸甲、兜を着用し、刀槍の重武装隊を派遣し、本部長も前進する。
が、これも撃退された。
本部長以下全員が地面にノビている。
このへんで異変を察知した民衆が警備が消滅した南門から宮内に入り、野次馬を形成した。
「なんだあいつ。」「兵隊が全員手も足も出ねえって。」
式典警備隊本部は警戒態勢をとり、大盾で方陣を組んだ部隊を投入するとともに、要人の避難を要請。並行して弩隊、長炮隊の応援を要請する。
ウラバロのもとに伝令が飛んでくる。
「南門から侵入せる不審者1名。警備隊を撃破し、なおも進行中。不審者の目標はここ、国王陛下席と見積もられます!」
アラシェリーケら一同もその報告を聞いた。
「たった一人?一人で?それなりの規模の敵性部隊ではないのか。」
「一人です!間違いありません。一人です!」
「馬鹿な。偵察を出せ。弩で射殺せんのか。とにかく偵察をだせ!一人であるわけがない。」
アラシェリーケがすっくと立ち上がる。
「来たぞ諸君、マガッヒだ。」
座が静まり返る。
「摂政殿。まさかまさか。あれは伝説ですぞ。」
「現実的に考えるならば、その不審者とやらはこの式典を狙った周辺敵性国の部隊。考えたくないことですが、警備隊に裏切りがあったのやもしれません。」
アラシェリーケの眼は燃えている。
スルマリケは摂政の覚悟を見た。
「ウラバロ。待機中の閲兵部隊に実包を配り、入場させよ。」
ウラバロ「よろしいのですか。式典は中止になりますぞ。」
「かまわん。皆の者聞け。」
アラシェリーケが大臣、将星に達する。
「これは国家存亡の危機である。敵はマガッヒ。諸官らはおのおのの所掌においてこの国難に対処せよ。対処要領については内乱対処3号要領準拠とせよ。国王陛下を宮殿隔壁壕にお連れせよ。兵杖総監及び警視卿の位置、式典警備隊本部天幕。他卿及び大臣等は適宜の位置とせよ。摂政はこの位置にあり。」
言い終えるとアラシェリーケは摂政座に深々と座った。
「なんだか真ん中へん、大騒ぎになってるね。」
「この騒乱に乗じて摂政に近づけぬか。」
「向こうの広場から兵隊が動いてきてて、鬼増えてるからムズくない?」
「アーチェラ、いや、ベイリー。行くぞ。あの兵隊はおそらくあの騒ぎの中央で暴れているナニカを討伐するため動いている。我らのことは眼中にない。今が好機だ。」
アゼミがベイリーの手を取る。「ちょ、ちょ、ちょ。そんなもんなの?」
「そういうものだ。軍隊は。」
二人はまるで仲良しの学生のように手をつないで駆けて行った。
「うーん、なかなか良い肛門だ。」
不気味で下品な音を立ててダスランが女性牢番の肛門を犯していた。
「う・・・やめ、やめなさい!うっ・・・」
「気丈だねえ。まだ赤くならない。」
地下留置牢場にはすでに3人の死体が転がっている。
「君たち、純密の武器に頼りきってて、基本的な魔術を全然知らないから驚いたよ。」
王政宮で起きた浮浪者騒動で牢場内に動きがあった。
内乱対処3号が発令され、囚人らの移動が決まったのだが、その際ダスランは魔術に疎い若い牢番たちを、その隙をつき、ごく基礎的な魔術でもって襲ったのだ。
短炮を発射するいとまなく、たちまちのうちに牢番3名が殺される。
一人、生き残った若い女性牢番はダスランに捕まり、暴行の後、くみふされて肛門を犯されていた。
「すぐに応援が来る。あなたは逃げ切れない。やめるなら・・・うっ、いっ、今!よ!」
ダスランのペニスは牢番の括約筋と直腸を摩擦し、苦痛を与えていた。
「それが来ないんだよ、肛門!内乱3号移囚処置だろう、これ。上でなにか大きな騒動が起きてるんだ。移囚処置は基本的にその牢場の牢番だけで対処となっている。応援要請がなければしばらくは誰も来ない。その余裕もないのさ、肛門」
牢番は言葉に詰まる。
顔は左半分が腫れあがり、鼻血、折れた歯、切れた唇。血が流れている。
その頬に涙が伝う。血と混ざる。
不気味で下品な音が牢場の狭い部屋に響く。
「おやあ、赤みが増してきたね。図星だったかな、応援が来ないっていうのは。ははははは!いいぞ、赤い、赤い。死にたくないんだねえ。わかるよ。」
「たすけて・・・助けてください。命だけは・・・命だけは」
3分後
ダスランは没収されていた衣服を牢場倉庫から取返し、姿見の前で着こなした。
模範的な貴族の装いだ。襟を両手でただし、衣服のしわを引っ張り、シャツのしわををズボンに綺麗にまとめておさめる。
「よし、と。」
踵を返し、牢出口に向かうが
「おっと。」
引き返す。
露出した下半身から血を垂らして、床にうつぶせの女性牢番がいる。
脳天にナイフが深々刺さっているが、まだかろうじて生きている。
ぶ、ぶ・・・と血の泡を吐き、ひくひく動いている。
ダスランはナイフの柄を握ってひねった。それきり牢番は動かなくなった。
「なかなかの赤だったね。」
ダスランは地上を目指す。