さすがにたった一人とは誰も考えなかった。
そういう予測のもとに対策が練られることとなる。
隣国オールスの暗躍も昨今認められる。浸透作戦が始まったのではないかと噂された。オールスもまた、マチハバがオールスの侵略を疑っているらしいという情報を得る。
むろん、濡れ衣なのだが、オールスとしてはマチハバがオールス侵攻の口実を作ろうとしているのではないかと疑った。互いの疑心暗鬼が始まった。
税務大臣の三姉妹の末妹、リミリエラには深い心の闇があった。
二人の姉は美人ではないが、愛くるしい容貌と愛嬌をもっていた。なにより誰もが羨むような豊満な肢体を持ち、若くして良家に嫁ぎ、次々と子を産み育て、幸せな家庭を築いている。二人とも父の誉の娘だった。
一方リミリエラは完璧に近い美貌を持って生まれた。
金に近い栗毛を伸ばし、真っ白い肌はまるで透き通る宝石のごとく。
均整に整った顔は男性ならばすれ違うたび振り向くものである。
身のこなしは優雅。星のきらめきが彼女の歩いた軌跡に見えるとまで言われる。
しかし、その体つきはあまりにも貧相で、十代半ばを過ぎてもなお幼子のように平坦なままだった。厚手の服を着てごまかしてはいるのだが、それでもなお隠しようもない幼い体形。そう、身長も大柄な男性と並ぶとその半分に見える。
こうも体が華奢では子も産めまいと、抜群の美貌がありながら嫁入りの話は来なかった。
男たちからは一向に異性として相手にされない。茶飲み話となると群がる男性達だったが、その後の進展は一度もない。美貌につられて皆会いたがるが、面と向かって彼女を見ると、その幼い体つきにどんな男も一線を引くのだ。
嫁の行き手がない彼女は、いつしか父親の徴税業務を手伝うようになっていた。
「どうして私だけが……」
年月とともに膨れ上がった肉体へのコンプレックスは、やがて両親からの冷遇という被害妄想へ繋がり、彼女の心を酷く歪ませていった。
ある日、リミリエラは父の代官として、数人の騎士を引き連れ郊外の農村へと向かった。
その年は深刻な凶作であった。国としてもすでに一定の減額措置は取っていたがなお、滞納を続ける村に対し、彼女は容赦のない督促を行うべく手勢を動かしたのだ。
苛烈な任務である。連れ添う騎士たちは戦袍に胸甲をつけ、帯剣している。
リミリエラもまた同様の格好をしているのだが、幼女が背伸びをして戯れに着飾っているようにしか見えなかった。
村に足を踏み入れると、そこには餓死した者たちの凄惨な死体が転がり、埋葬を待つ遺体が放置されていた。リミリエラは布で鼻を覆い顔をそむけた。
一行は騎乗のまま、ときおり餓死者の死体を踏みながら村に入る。貴族にとっては生きている庶民でさえ身分の違いから同じ人間扱いはまずしない。死体はなおさらである。
青ざめた村長たちは一行を会所に案内すると、最初から最後まで、涙ながらに税の免除と延期を懇願し続けた。
慈悲深い税務大臣の父であれば、その話に乗るのだろうが、リミリエラは父に反発している。父とは違う、私は結果を出す。
死体がなんだというのか。現にこの会所に集う連中はなんのかんのと動けているではないか。
われら貴族が国を守る。それが使命だからだ。
農民は税として金銭と農作物をおさめる、それが使命ではないのか。
蔵の在庫を隅々まで調べてやる。隠し蔵があるに違いないのだ。
死体を踏んできた。それがなんであろうか。
確かに悲惨であろう。しかしこの村は死体をこれ見よがしに配置したのではないか。
我らにみせつけ、哀願の種とするために。
リミリエラは村民の話には一切耳を貸さなかった。
彼女はいらだっていた。
村の女たちの体躯が気に食わなかった。
飢饉のせいで一様に痩せ細ってはいるものの、彼女たちの骨格そのものは、リミリエラとは比べものにならないほど豊かで肉感的なのだ。痩せてなお豊満な体はリミリエラの癇に障った。
もし男が裸のリミリエラとこの娘たちのいずれかを抱くか選べぶならば、やせさらばえてなお村娘を選ぶのではなかろうか。リミリエラは妬みの極みにあった。
(食事さえ満足にとっていれば、あの豊満な体で男たちを楽しませるのだろう。それに引き換え、私は……!)
理不尽な嫉妬と怒りが、彼女の胸の内で黒く渦巻いていく。
むろん、感情と任務は切り分けねばならない。
感情は無視したとしてもリミリエラとしてはその任務から税の免除や延期は受け付けられない。
「ならぬ。税の免除も、延期も一切認めない」
「そこをどうか、いまはお助けください! 来年、再来年、きっと今年の分に利子をつけて納めてみせますから!」
村長は床に額をこすりつけ、必死に許しを請うた。その隣では、村長の娘も一緒に頭を下げていた。その娘は、あどけない可愛らしい顔立ちに反して、衣服の上からでも分かるほど豊かな胸の膨らみを持っていた。
平服する娘の服から乳首がのぞいた。涙する娘の顔は美貌こそもっていないものの、きっと男はこういう娘が好きなのだろうと、リミリエラは感想を持った。憎々しい。
先ほど乳首が見えたが、これは男性徴税吏への媚びではないか。
自分には絶対できない媚態。平たい板につく黒豆のごとき自身の胸では。
リミリエラの怒りは増していった。
自身の美貌が恨めしかった。もてはやされるのは結構だが、それがなんだというのだ。
思いを寄せていた貴族の男子には手ひどく振られた。寝室で上着を脱ぎ、下着姿になったリミリエラに「すまないどうしても無理だ。」と言った貴族の男子は翌日から彼女の前から消えた。
言い寄ってきた武官がいたが、彼も二、三度茶をともにしたのちに音信不通となった。
風の噂にではあるが「リミリエラ殿は幼稚学校の児童かと見まがう。あれを抱けば幼児好きの変わり種として代々笑いものになろう。」と陰口をたたかれていると知った。
過去の忌まわしい記憶が脳裏を駆け巡り、リミリエラの理性が弾けた。彼女は衝動的に腰の剣を激しく引き抜いた。剣長にともなわぬ体躯ゆえ、バランスを崩し、転びかけたのをそばの騎士が助けた。
ようよう引き抜いた剣をいったん天にかざした。
「ひっ……!」
リミリエラは、冷たい剣の切っ先を村長の娘の首筋に突きつける。
「それは無体な! いかに徴税代官殿とはいえ、そのような真似を……!」
村長が狼狽するが、同行していた騎士たちは止めるどころか、楽しそうにニヤニヤと笑いながらその光景を眺めていた。
騎士たちはリミリエラが腹を立てる理由を知っているのだ。
上官としては当然敬意は保つ。軍人としてその命令には服するが、リミリエラの体躯とそのコンプレックスは彼らにとって下世話な娯楽であった。
-まあ、やりすぎない程度には-
騎士たちはまた笑い話の種ができたな、くらいに思っている。
そしてそう見られていることをリミリエラも知っていた。知っていてなお、いや、知っていればこそ怒りはおさめられなかった。
恐怖にガタガタと震える村長の娘。その姿を見下ろすうちに、リミリエラの心はどす黒い嗜虐心に満たされていった。
この豊かな体をもつ娘が、貧相な自分に恐れをなしている。
リミリエラは紅潮する。
切っ先にじわりと力を込めると、娘の柔らかな肌がチクリと切れ、一筋の赤い血が伝う。娘は悲鳴をあげることすらできず、ただ涙を流して硬直していた。
騎士の一人が、さすがにこれ以上は、とリミリエラを抑えるべく椅子から立ち上がろうとしたまさにその時、会所の扉が音もなく開き、一人の浮浪者が室内へと入ってきた。
異様な気配に気づいた村長が声を上げる。
「な、何者だ……!?」
騎士の一人が即座に鞘に手をかけ、リミリエラも鋭い視線を向けた。
「何奴か!」
「去らぬと斬るぞ、薄汚い男め」
村長も男に退去を促そうとした。しかし浮浪者は、一切の警告を無視してまっすぐに歩みを進めてくる。
その淀みのない歩調、すべてを威圧する圧倒的な存在感ーー。
リミリエラの脳裏に「あの怪物」の噂がよぎった。
騎士たちも幾人かは同じことを想起したようだ。
全身に冷たい戦慄が走る。
「……浮浪者」
3分後
リミリエラは、服を剥ぎ取られ、浮浪者の太い肉体に蹂躙されていた。
会所の床には、意識を失った騎士たちが無残に転がっていた。浮浪者に一斉に切りかかった彼らは、瞬く間に返り討ちにあったのだ。
リミリエラ。
栄養は満ちているため肉づきは申し分ないが、膨らみの認められない胸、おなじくくびれのない腰、一見して女性と判断するに苦労する体形があらわとなっている。
しかし浮浪者は委細、気にかける様子はない。
彼女がずっと呪い続けてきた、その貧相な胸が容赦なく揉みしだかれ、乳首は転がされ、細いくびれを強い力で掴まれる。長じてなお毛も薄く、決して名器とは呼べない未熟な秘密の場所は、浮浪者の圧倒的な巨根を無理やり迎え入れさせられていた。
あばら家に無理やり押し入る巨人のようであった。あばら家はきしみながらも巨人を迎え入れた。
容赦のない愛撫は全身に及ぶ。いったい自分の体のどこに欲情できるのか、リミリエラ本人が理解に苦しんだ。しかし浮浪者はリミリエラの体をうれしそうにむさぼる。浮浪者に表情はないが、体からじかに伝わってくる。
自分の女の中を激しく出入りする浮浪者の鉄塊のような陰茎は脈打ち、リミリエラがあえぐ声を出すたびに反応して怒張するのを体内で感じた。
犯される衝撃も屈辱だが、貧しい体を部下や村人に見られるのがもっとも屈辱だった。泣いた。リミリエラは耐えていたが、自分の体が見られていることに泣いた。
村人たちは、あまりの恐怖に手を出すこともできず、ただ遠巻きにその光景をなすすべなく眺めていた。
娘たちは抱き合ってすすり泣いていた。
首から血を流した村長の娘は勇気を振り絞り浮浪者に「やめてやれんかね・・・」と尋ねるように言うが、一瞥されて首をひっこめた。
「あ、あぁぁぁーーーっ!」
正常位で真正面から突かれ、たくましい野蛮な体躯に抱きしめられる中、リミリエラは激しい絶頂を迎えた。彼女にとってはこれが生まれて初めての経験であり、処女の証たる鮮血が床に赤く流れ落ちていく。
いつか意中の殿方に聴かせたかった嬌声は村の会所に響いた。
浮浪者は容赦なく彼女の体を反転させると、今度は後背位で深く、慈悲なく突き入れた。この体位は幼い体躯のリミリエラの女の穴が通路を開き、鉄塊はとりわけ深く入っていった。再び声を枯らして絶頂へと達する。
浮浪者は、世間から見向きもされなかった彼女の痩せた肉体を、隅々まで味わい尽くしていった。
みじめな満足感をリミリエラが襲った。認めたくなかった。
しかし彼女の膣は湯気を立て、ひくひくといやらしく痙攣している。「女」が哭いていた。
やがて浮浪者は動きを止めると、あっさりと陰茎を抜いた。
リミリエラは安堵するとともにかすかに残念な気持ちがわくのを、頭を横に強く振ってふりはらった。
浮浪者は遠巻きに見ていた村人の一人を指差した。そして、懐から取り出した数珠状のビーズを渡し、リミリエラの肛門へ挿入して引き抜くよう無言で促した。
リミリエラも、この浮浪者がなにをどう振舞うのか知っていた。自分にふりかかる運命も予想していた。あきらめていた。
指名された村人はおそるおそる浮浪者から渡された数珠をもってリミリエラに近づく。「代官さま、お許しください。お許しください。」無慈悲な徴税代官ではあったが、これだけの凌辱劇を目の当たりにした村人は彼女に哀れみの情を抱いていた。
いたしかたないいきさつとはいえ、代官に狼藉を働くことに村人は恐れを持っていた。
リミリエラは恥を押し殺し、村人に尻を突き出し、自ら菊を広げた。
どうせそうしなければならないのだ。強制的に開かれるなら自らやるのみである。
声を押し殺して泣いた。
村人は一粒ごとにゆっくりと球を入れていくのだが、生理現象で肛門は球を勢いよく飲み込む。そのたびリミリエラの口からは腹からでているような野太い吐息が漏れる。
「ヴゥっ!」「アヒッ」いくら声を殺そうとしても出るのだ。リミリエラは今更ながらに赤面する。
球がすべて入り込んだ。
ビーズの紐を掴むと、村人はそっと優しくゆっくりとひもを引き抜いた。
「ん、あ、うふぅっ……!」
引き抜かれる衝撃は排泄の快感を呼ぶとともに性的な悦びが広がる。失禁。
ガス交じりに汚液が村人に飛んだ。みじめでいやらしい音がする。
耐え難い苦痛だった。しかし同時に、徹底的に肉体を開発された彼女の脳髄には、生まれて初めて経験する悍ましいほどの快感が電流のように駆け抜けていた。
一通りの凌辱を終えると、浮浪者は何事もなかったかのように立ち上がり、フードを深く被り直した。立ち去ろうとした浮浪者にリミリエラは、なりふり構わず這い寄り足元に必死に組み付いた。
浮浪者がねめつける。
涙と汗にまみれた顔で浮浪者を見上げ、途切れ途切れの声で問いかける。
「ひとつだけ……! ひとつだけ、教えてください……っ」
「満足……したか、しましたか……? いえ、満足できましたか……私の、体で……っ」
浮浪者は無言のまま口角をあげることで回答した。
リミリエラの胸に奇妙な充足感が広がる。浮浪者はそのまま振り返ることなく、静かに去った。
汚液を浴びた村人がいまさらながら腰を抜かして尻もちをついた。
リミリエラは村で介抱され、しばらく逗留することになった。
甲斐甲斐しく世話をされ、そのうち村娘たちと仲良くなり、宮中でいうところの房中術をさまざまに教えてもらい、妙な自信をつけ、心身ともに回復して帰都した。
村の納税は延期されることとなった。
部下たちは何があったか、リミリエラの受難については詳細をぼかして報告し、村人たちもリミリエラに起きたことについては黙して語らなかった。
警視コールマ卿は政友である税務大臣のたっての願いで、報告をとりなす。
リミリエラは翌年嫁ぐこととなり、子を6人ももうけることとなる。