マチハバ軍はポーサダーバにおけるケーネット隊全滅の経緯を綿密に調査したが、その報告書に「謎の浮浪者」の関与が記されていたことで、軍上層部に凄まじい衝撃が走った。
「……あの、権力者を狙う陵辱魔の浮浪者ではないか」
マチハバ側は戦慄した。もし報告が真実であるならば、その男の実力は単体で一つの軍隊に匹敵する。一介の犯罪者ではなく、国家の安全保障を脅かす最大級の脅威であった。これまでは「異常に腕っぷしの強い浮浪者」という認識だったが、今後は軍を動かしてでも国を挙げて追わねばならない。小部隊の精鋭ということであれば、あのオールス最強と謳われたケーネット隊を容易く壊滅させる怪物なのだ。マチハバ全土に最高レベルの警戒体制が敷かれたが、男の行方は依然として杳として知れなかった。
ところ変わって、王都医療院の一室。
魔導医師ヨルケは、若く美しく、そして極めて腕の立つ高名な医師であった。
しかし彼女は、悪名も高かった。彼女は「妊婦に対して異常なほど冷酷につらく当たる」のだ。
今日も彼女の診察室からは、身重の身体で激しく泣き腫らした妊婦が一人、逃げるようにして出ていった。
ヨルケは常に苛立っていた。スタッフへの理不尽な暴言や叱責は日常茶飯事である。
そこへ、彼女が普段から最も見下している格下の医師、タミクが恐る恐る部屋へと入ってきた。
「ヨルケ殿……医療会議の……時間……です……」
タミクは壮年で堂々たる体格の医師であったが、平民の出身だった。貴族の血筋であり、確かな魔導医療の実力を持つヨルケから、日々ヒステリックな暴言を浴びせられているため、彼女の前では完全に萎縮していた。
「あら、そんな時間。教えてくれてありがとうね」
案外、普通に返されたため、タミクはホッと胸を撫で下ろした。しかし、すれ違いざまヨルケの細い拳がタミクの分厚い腹へと容赦なく突き刺さった。どす、と鈍い音が響く。
「むさいね。」
ヨルケは息を詰まらせるタミクを冷酷に言い放ち、そのまま足早に会議場へと向かった。タミクは痛む腹を押さえ、しゅんとした様子でその後を追った。
会議室では、魔術を使った最先端医療と手技の応用についての報告会が行われていた。
だが、ヨルケが入室した瞬間から、室内の空気はピリッと張り詰めた。緊張感に包まれる。
壇上に座る老医師も、周囲の若い医師たちも、一斉にヨルケの顔色を窺い、忖度の目を向ける。彼女はここでも終始、不機嫌さを隠そうとしなかった。
会議が進み、ある若い医師が妊婦の医療ケアの重要性について言及したその時、ヨルケのイライラはついに限界に達した。机を激しく叩き、冷徹な声を響かせる。
「あなた方の議論は低レベルすぎるわ! 妊婦なんて我慢が足りないのよ、ただそれだけ!
現状の技術的限界は周知のとおり!ここに議論の余地はない。あとは妊婦への教育しかないとわかった上の堂々巡りの議論はこれで終わり!」
座長を務めていた老医師がたまらず反論した。
「ご存知とは思うが、妊婦の身体は非常に繊細で弱い。ヨルケ殿の意見が正論である部分を承知しても、それでも医療者として手立てを考えるのがーー」
「黙って!!」
ヨルケの一喝が会議室に轟いた。その場にいた全員が、彼女の凄まじい威圧感に恐怖し、一瞬で静まり返った。医師たちは互いに顔を見合わせ、声を潜めてヒソヒソと噂話を始める。
「またヨルケ殿のアレが始まったよ……」「妊婦の話になると、いつも見境がなくなるな」「あれじゃあ一生、嫁入りなんてできやしないさ」
周囲の視線に気づいたヨルケは、さらに不愉快さを増し、一番見下していたタミクをわざわざ名指しした。
「タミク。あんたの意見はどうなの? 妊婦医療について語ってみなさいよ」
タミクは老医師と同様に、平民の立場から妊婦への労わりと優しさの必要性を真っ直ぐに論じた。しかし、魔導の権威をベースに知識で理論武装したヨルケの、容赦のない理詰めの前に、タミクはたちまち言葉を詰まらせ、黙り込んでしまう。
その場にいる全員がーーいや、タミクを除く全員が、彼女のその傲慢と冷酷さを心の底から忌み嫌っていた。
「本当に、話にならないわね!」
ヨルケが怒鳴り散らした、まさにその瞬間だった。会議室の重厚な扉が静かに開き浮浪者が入室してきた。
突然の不審者に、老医師が怪訝そうに問いかける。「誰じゃ、そなたは。ここは関係者以外ーー」
しかし、浮浪者は一切答えず、そのまま会議室の床にふらりとしゃがみ込んだ。
医師たちが口々に「会議中だ、出ていけ!」「警備兵を呼べ!」と騒ぎ立てるが、浮浪者は微動だにしない。その態度に完全に頭に血が上ったヨルケが、自身の右手に濃密な魔力を集中させ始めた。
「目障りね。私の麻酔魔術で昏倒させて外に放り出しましょう。こんな健康体の人間に使うのは初めてだけどね。」
フフン、と鼻を鳴らして冷笑するヨルケ。周囲の医師たちは、いくら不審者とはいえ一般人に医療魔術をぶつけるのはやり過ぎではないかと非難の目を向けた。
その時、タミクだけが席を蹴って立ち上がり、彼女の前に立ちはだかった。
「ヨルケ殿、それはやめてください! 医療魔術を、人を傷つける武器にしてはなりませぬ!」
その言葉に、ヨルケの怒りは沸点へと達した。
「はっ! そんな甘っちょろい綺麗事を言っているから、いつまで経ってもうだつが上がらないのよ、あんたは! 見ていなさい!」
ヨルケは王国でも指折りの天才魔導士。彼女の手から麻酔魔術が、目にも留まらぬ速さで浮浪者へと放たれた。
「3分に調節したわ。3分寝ていてもらうかしらね!」
3分後
「あ、は、あぁぁぁっ……!」
ヨルケは白衣を引き裂かれ、豊満な釣り鐘型の胸をはだけた半裸の状態で、乳房を激しく揺らしながら、浮浪者の身体に馬乗りになっていた。彼女は自身の意志とは裏腹に、腰を激しく前後に動かし、身体を上下させていた。
先ほど彼女が放った渾身の麻酔魔術は、浮浪者が左手を軽く一振りしただけで、まるで埃でも払うかのように、あっけなく霧散させられていたのだ。そして、四方に飛び散ったその麻酔魔術の余波が会議室の全員に降りかかり、出席していたすべての医師たちは、自らの身体が完全に麻痺して一歩も動けなくなっていた。
しかも浮浪者は跳ねのける際にその魔術を逆に強化したらしく、麻痺は3分で済みそうにもなかった。
ヨルケだけは咄嗟に魔力防御を展開したため、完全な運動麻痺からは免れていたが、それが彼女のさらなる悲劇の始まりだった。
浮浪者は、抵抗する力の弱まったヨルケの身体を、徹底的におもちゃのように弄び始めた。
分厚い唇で彼女の口を激しく吸い、首筋、肩、腹、腰、太もも、そして足の先に至るまで、全身に執拗なキスを刻み込んでいく。愛撫の手はだんだんと、彼女が誰にも触れさせたことのないデリケートな部分へと及んでいく。菊すら舐めあげられた。
おぞましい震えが全身に走る。
さらに浮浪者が右手に淡い魔力を溜め、彼女の肌に触れる。すると不思議なことに、麻酔の残滓による微かな痺れが完全に解けると同時に、全身の神経が過敏になり、過剰な快楽が溢れ出してきた。
自慢の医療魔術が、散った一部とはいえ、目の前の男によってあまりにも軽々と解除されたばかりか、さらに上位の快楽魔術で上書きされたという事実は天才ヨルケのプライドを根底から打ち砕いた。
浮浪者は彼女の身体を隅々まで、愛撫によってせめ立てた。
あまりの快感にヨルケが完全にイきそうになり、身悶えするその瞬間、男の手はピタリと止まる。
高ぶった身体がようやく少し落ち着きを取り戻すと、再び脳髄が焼き切れるほどの愛撫が始まり、そしてまた絶頂の直前で容赦なく生殺しにされる。何度も、何度もそれを繰り返されるうちに、ヨルケの肉体と精神は狂おしいほどの飢餓感に支配されていった。
「い、いい加減になさい……っ!」
ついに耐えかねたヨルケが、浮浪者の両肩を強くつかみ、涙目で訴えた。
その瞬間、浮浪者がフードの奥から彼女を鋭くねめつける。
ヨルケは、我ながら何という恐ろしいことを言ってしまったのかと即座に後悔した。その言葉は、まるで「早く私の中に挿入して頂戴。はやく絶頂を頂戴!」と、自ら男にせがんでいるようなものではないか。
浮浪者はかすかな笑みをたたえ、這いつくばる彼女を正常位で激しく犯し始めた。
たっぷりと焦らされ、快感の飢餓状態にあったヨルケの肉体は、男の巨根の一突きごとに快楽大爆発を起こした。
「んはぉぉぉっ! あ、あああぁぁっ!」
正常位から、力任せに抱き上げられる座位へと移る。そこで、冒頭の馬乗りの状態へと戻るわけである。
彼女は、自分が見下す格下の医師たちに性交を見られていることすら、全く気にならなくなるほど、浮浪者とのセックスに深く没頭してしまっていた。
恐怖と快楽のない交ぜは彼女の精神を異様に昂らせた。
ヨルケはこれまでの人生で、自分を凌駕する実力を持つ存在に出会ったことがなかった。
彼女は陵辱されている【屈辱】と、自らを軽々とねじ伏せる者への【尊敬】が、ドロドロと入り混じり、融合し、その感情は結果として女の蜜を股から垂らさせた。
気づけばヨルケはすっかり浮浪者に身も心も委ね、従順な愛人となり奉仕に必死となっている。
浮浪者は執拗なピストンを続け、射精を迎えるたび、その陰茎を一度膣から抜き出していた。
何度目かの激しい絶頂ののち、用済みとばかりに冷たい床へと転がされたヨルケは、体液まみれになり、息も絶え絶えの状態で浮浪者を見上げて言った。
「私は……私は生まれつき子宮が機能していないの。だから、中出ししても……平気なのよ……?」
「中に出して」と懇願しているように見えたが、それは実際そうではあった。
麻酔で身動きが取れず、五感だけが冴え渡る会議室の出席者たちは、その言葉を聞いていた。
その時のヨルケの口調は、いつものキンキンとしたヒステリックなものではなく、どこか寂しげで、年相応の、どこか幼な気な響きを帯びていた。
床で麻痺していたタミクの脳裏に、ある確信が閃いた。
(浮浪者……高慢な女性を狙い、徹底的に陵辱して去るという、国家を揺るがすあの悪魔……! こいつが、こいつがきっとそうだ……!)
凌辱を一通り終えた浮浪者は、おもむろに懐からあの光沢を放つ数珠状のビーズを取り出し、麻痺して転がる医師たちを値踏みするように見回した。
タミクは以前「浮浪者に関する報告書」に目を通したことがある。
この悪魔は、最後に数珠を女性の肛門に入れさせるのだが、自らの手では行わず、必ず現場にいる第三者にそれを命じるのだ、と。
(誰が指名されるかはわからんが、内科医で肛門を扱う私ならばヨルケ殿を守ることができる。)
タミクは決死の覚悟を固め、未だ痺れる身体に凄まじい精神力でムチ打ち、震える右手を高く挙げた。
「俺だ……! 俺がやるッ!!」
タミクが叫んだ瞬間、浮浪者は何も言わず、ただパチンと指を鳴らした。すると、タミクの身体を縛っていた麻痺が、たちどころ綺麗さっぱり解けた。ヨルケはそれを見て、この男と自身の実力の差を改めて思い知らされた。
タミクは床へ歩み寄り、すっかり観念して臀部を突き出すヨルケの窄みへと数珠を入れていった。タミクは今、ヨルケが無性にいとおしかった。
ヨルケを苦しませてはならない。慎重に瀕死の患者に対するように数珠を入れていく。
大粒の球体が侵入するたび、ヨルケの口からは
「あッ……、う、ぅん……っ」という、抑えようのない淫らな声が漏れ出してしまう。括約筋が異物を無理やり押し広げられ漏れる声は、彼女の意志では到底抑え込めないものだった。
「ヨルケ殿、苦しくはないですか。」
ヨルケはタミクに悩ましい表情で「いいえ、大丈夫」と弱弱しく答えた。
ヨルケは、恥ずかしさと情けなさで泣きそうになり、顔を伏せたままタミクに縋るように言った。
「タミク……私は、実は……酷いイボ痔なの。だから……お願い、優しくして……っ」
そこまで言うと、ヨルケは両手で自らの顔を覆い、子供のように大粒の涙を流して嗚咽を漏らした。普段の傲慢な姿からは想像もつかない、一人の傷ついた女性の姿がそこにあった。
タミクは、その涙をじっと見つめ、静かだが力強い声で応じた。
「私は医療者です。ヨルケ殿……安心してください、力になります」
だが、二人の間に通ったささやかな信頼の空気なぞ男には興味の外だった。
浮浪者は無言のまま二人の間に割り込むと、連なった数珠ビーズの紐を掴み、そこへ何やら不気味な魔力を一瞬にして込めた。
バチバチッ! と激しい紫色の電撃のような魔力がビーズを伝ってヨルケの体内へと走った。
「ひゃあぁぁぁーーーっ!?」
内側から神経を直接焼き切られるような凄まじい刺激に、ヨルケの肉体は意図せぬ猛烈な絶頂を強制され、あまりの衝撃にその場で情けなく大量の失禁をしてしまった。
会議室に尿の香りが漂う。
そのあまりにも非道な仕打ちにタミクは激しい怒りが爆発し、立ち上がった。
会議室に転がる医師たちは、麻痺の中で、タミクに対し「男を刺激しないでくれ。」と、全員が心中で叫んでいた。
しかし、タミクは死の恐怖に全身をガタガタと震わせながらも、男を真っ向から睨みつけ、怒声を上げた。
「武器を持たない、無力な女に……一体何をするんだッ!!」
浮浪者は、一瞥をくれて無視し、無言のまま顎で『とっとと引き抜け』と命じた。
タミクは悔しさに歯を食いしばりながらも、ヨルケのデリケートな粘膜がこれ以上傷つかないよう、全神経を集中させて、細心の注意を払いながら優しく、優しく数珠をその窄みから引き抜いた。
「ん、あぅ……っ」
ヨルケの口から、安堵の喘ぎが漏れる。ヨルケはタミクにすべてをゆだねていた。その存在のすべてを。
引き抜きが終えるのを見届けた浮浪者は、フードの奥でわずかに口角を上げると一度も振り返ることなく会議室を去っていった。その去り際、男が再びパチンと指を鳴らすと、会議室の医師たちの麻痺は一瞬にしてすべて完全に解け去った。
身体が動くようになった医師たちが騒然とする中、横たわるヨルケは、消え入りそうな声でぽつりと独りごちた。いや、タミクにも聞いてほしかったに違いない。
「私も……まだまだ、医者としても魔導士としても、未熟ですね……」
タミクはヨルケを思わず抱きしめた。ヨルケもまたタミクを抱きしめ返した。
数日後、医療院の設備で精密検診を受けたヨルケは、驚天動地の事実に直面することとなった。
生まれつき完全に機能しておらず、生涯子供を産めないと診断されていた彼女の子宮が、どういうわけか完璧に正常な機能を取り戻していたのだ。そればかりか、彼女を長年苦しめていた酷いイボ痔までもが、跡形もなく完全に完治していた。
あの時、謎の浮浪者が数珠に込めた凄まじい魔力ーーあれは凌辱のための拷問などではなく、彼女の肉体の欠陥を根底から作り変え、治療するための、人類の領域を遥かに超越した「神業の魔導医療」の光。
魔導医療会は激震し、現場に残されたその不思議な数珠ビーズの解析に全力を挙げることとなった。
そして後日。
すべての傲慢さを削ぎ落とされ、自らの弱さと向き合う強さを得たヨルケは、あの極限の恐怖の中で自分を命がけで庇い、優しく救ってくれたタミクの誠実さに心を開き、二人は多くの祝福の中で静かに結婚した。
国家をも揺るがす謎の浮浪者。彼の行方は誰も知らない。