『The Judas Hound -贖罪の牙-』 作:LCL Stuio R
「はやく、バスタオルを!!」
{つばさ}がリングサポートのCLAWS達を急かす。そのうちの1人が持ち出したタオルを奪い取ると、それを持って{こはく}のもとへ駆け寄った。
「大丈夫、こはくちゃん?」
恥ずかしさと緊張からの緩和もあってか、泣きそうな気持ちよりも疲れの方がやや勝り、ほとんど気絶するように{つばさ}の腕の中で{こはく}は眠りについた。
この様子を見ていた観客は、拍手する者もちらほらいるものの、概ねブーイングをした。
「こんな酷いこと…許せない!!」
居ても立っても居られず、リングに上がり込もうとする{れいな}を制するように、次の試合がコールされる。
「続いては本日最終戦、第3試合を開始します!!」
「おいクーガー! 私にやらせろ!!」
ここまで戦った二人は多少の格闘技経験があったが、残された4人はこの1週間程の訓練しか受けていない。自らを盾に仲間を守りたい一心の{れいな}の叫びだった。淡々と興業進行のコールを続けているクーガーは一瞬マイクを止め、観客にわかるように彼女を覗き込みながらニヤリと笑って見せ、告げた。
「青コーナーPuppys、るり選手、前へ!!」
自分の名前が呼ばれた事でハッと我に返り、一瞬動揺する{るり}。
「ふざけんな!!私達の事、おもちゃにしやがって…」
CLAWS達によって引きずり降ろされる{れいな}。リング外まで引っ張り出された所で、正気を取り戻した{るり}が待っていた。
「私の為に怒ってくれてありがとう、れいなさん。私、頑張るね。」
そう言うと{るり}は{れいな}の肩を優しく抱きしめ、導かれるようにリングに上がっていった。{るり}の懐の深さと、自分の無力さで{れいな}は思わずその場に崩れ落ちる。{つばさ}と{ひなた}が駆け寄った。
「悔しいですけど、私達にできる事をやりましょう。」
{ひなた}はそういうと、タイガーから教わったように、仲間を応援するよう{れいな}を促した。
「対する赤コーナーDogs、GREYHOUND(グレイハウンド) 選手の入場です。」
入場ゲートから現れたその男は、最初の男よりも少し上背はあったが、3人の中では一番瘦せ型だった。ただ、{るり}より十二分に大きいのは変わらない。男は{るり}を見るなり「違う」という顔をして、視線を控えの少女達に切った。そして{つばさ}の方を見て、トップとセカンドのロープの間から身を乗り出した。
「な、何よ?!」
男の趣向なのか、理由不明のピンポイント「指名」に近いアピールを受けたので{つばさ}は少したじろいだが、レフェリーがコーナーまで引き戻す。屈強なベテラン風のレフェリーに、PRIDEの警備スタッフ2名までついてきつく注意をされており、これは少女達には意外に映った。激しく叱責されていたが、会話の内容は野次の喧騒に搔き消された。
両選手ボディチェックもそこそこに…とここまでの流れならなっていたが、そうではなかった。相手の男のチェックは早々に切り上げたが、{るり}に対しては念入りにチェックを始めたのである。サポーターの隙間、わきの下、コスチュームの際…。このベテランレフェリーは桃色のブーイングが混じる客席にちらりと目をやると、満面の笑みで、光速で{るり}の後ろに回り込んだ。そして
ぶるるんっっ!!
音が目に見えるような揺れと共に{るり}の胸が群衆の前に晒された。隠そうにも、下げられたコスチュームと、レフェリーの男の絡め手で両腕は完封されている。
「あっ、あっ…?そんな…/////」
これまでの人生においても、絶叫などした事のない{るり}は、あまりに咄嗟のことに声も出せず身を捩っていたが、その揺れによる副産物は、猿山の群れに餌をばら撒くだけの結果となった。
「野郎、さすがにダメだろ!!」
自軍青コーナー前での出来事に、さすがに{れいな}と{つばさ}が嚙みついた。CLAWS達も予測して動いていたが、さすがに間に合わず二人はレフェリーに組み付いた。レフェリーが数発の拳骨を喰らい、{るり}がコスチュームを整えた後、試合開始のゴングが鳴った。