※この作品はR-18です。

『The Judas Hound -贖罪の牙-』   作:LCL Stuio R

18 / 19
【SCENE 018:見えてきたもの】

[記録日時:1月10日 21:15 / 対象:Puppys全個体]

「今日の試合で、分かったことを整理したいんだけど、いい?」

 

遅い夕食を片付けた後、{れいな}が切り出した。6人は起こった出来事やアナウンス、提示された情報などを踏まえ、今後の為の作戦会議を始める。

 

主催者達は少女達の戦いを集客にして金を得ている。観客はこの島にクルーズで来たVIP達だが、スマホ等の電子機器は高性能の探知システムで持ち込みが規制されているらしい。これはアリーナの館内アナウンスが楽屋まで聞こえていたので知っていた。

 

「ドローンがいっぱい飛んでたのが気持ち悪くて…」

{こはく}が呟く。映像の取り扱いが気になる所だが、

 

「ダークウェブといって、裏のネットで閲覧できるらしいですよ。確証はありませんが。」

口を開いたのは{ひなた}だ。他のメンバーは知らない情報だった。

 

「どこでそんな話を知ったの?」

{るり}が尋ねると、{ひなた}は密かに客席に聞き耳を立てていたのだ、と言う。

 

「あとはコレ、試合のスケジュールよ。さっきタイちゃんから預かったの♪」

 

台所にいたチーターが、1月のカレンダーに「THE PIT」の大会日程が書き込まれた小さめのチラシのような用紙をポケットから出した。受け取った{れいな}がテーブルに置いてみんなで見る。

 

「毎週土曜日は今日と同じ『IGNITE(イグナイト)』、水曜日は『CLASH(クラッシュ)』という大会があるんだね。この最後の土曜日のは…」

 

「恐らく『PLE』だと思いますよ。」

口を挟んだのは{かすみ}。彼女は格闘家であり、プロレス経験こそないものの団体の興行や仕組みについては詳しい。

 

「プロレスはレギュラー興行以外に大体ツキイチぐらいでビッグマッチを組みます。タイトル戦や因縁の対決をぶつけて、大会のマンネリを打開したりメリハリを付ける決着戦。それがPLE(プレミアム・ライブ・イベント)。」

 

「なるほど、嫌な予感しかしないね…」

疑り深い{つばさ}は、常に最悪を想定している。

 

「意外とそうでもないかも。大きい大会は、収益も大きい。勿論、ファイトマネーだって上がる可能性はあるよ。」

と{かすみ}が返す。話はファイトマネーの話題に移る。

 

「そういえば、会場では私達の負債の話とかは一切出なかったね。」

 

{るり}がそう言うと、洗い物を済ませたパンサーが会話に加わった。

 

「先日のメディカルチェックの時、提出するプロフィール用紙があったのよね。みんなとも出会ったばかりだったし、備考欄とかは全部空欄で、数字だけ埋めて提出したのよ。ただ、その中には『負債額』を記入する欄もあったと記憶してるわ。」

 

勝敗に応じてファイトマネーが支払われるのか、残債の確認方法は…。この辺りはまだ結論も出そうにない。

 

「あと、気になるのは相手の男達だね。」

 

{れいな}の投げ掛けに反応したのは{かすみ}だった。

 

「私や、るりさんが戦った相手は多分素人です。動きや間合いで分かります。でも…。」

 

「私が戦った人は、武道って感じじゃなかったですけど…何というか”戦い方”を知っている、という感じでした。あと多分、外国人さんでした。」

 

{こはく}が{かすみ}に続く。更に{つばさ}も気になる質問をする。

 

「最後にるりさんと戦ったアイツ…グレイハウンドとか言ってたけど、最初のアレ、どう思います?」

 

「最初、アイツの好みの問題だと思ったのよ。でもその後は結局ノリノリでるりと試合してた。」

 

{れいな}が見解を述べる。{ひなた}が続く。

 

「あと、つばさちゃんに喰い付いた時かなり厳しく注意されてました。目的が私達を『虐めたい』だけなら、あのまま行かせるはずですよね。」

 

「そこらへんは最初にクーガーの野郎が言ってた『商品として』ってとこなのかな。よく分かんないや。」

 

{かすみ}は考えるのは苦手なようだ。もう一人の当事者{るり}は、

 

「私を一度見て『この人は違う』って感じでつばささんに向かって行ったような気がしました。ひょっとして多少、私達の事を知っているかもしれませんね。」

 

確かに、プロフィール等は向こうの手に渡っており、写真等から品定めをされているのかもしれない。

 

「ただ、逆にアイツらも希望通りの相手とは戦えていないとも言えます。あと気になるのは、敵の数が不明です。もっとヤバい奴らもいるかもしれません。」

 

{ひなた}はプロレスはおろかスポーツ経験も乏しいが、謎解きや考察においては頭がキレるタイプなのかもしれない。

 

「みんな、情報共有ありがとう。今後も定期的に話し合いの時間を作ろうね。今日は遅いから、解散!」

{れいな}が場を仕切る。{るり}は書いていた議事録ノートを閉じた。

 

「パンサー先生、新しいノートありがとうございました。ワガママ言ってすいません。」

「いいのよ。こんな事ぐらいしかできないから。」

 

6人は入寮時に2冊ずつ大学ノートを貰っていた。通信手段等が絶たれた環境だが、学んだ事を書き留めたりするのは自由だ。他のメンバーはあまり活用している様子はないが、彼女は既に日記とプロレス研究でノートを分けて使っていた。

この知識の蓄積が、今後の戦いの追い風になる日が来るのを信じて…。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。