※この作品はR-18です。

『The Judas Hound -贖罪の牙-』   作:LCL Stuio R

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【SCENE 003:偽りの名前】

[記録日時:1月4日 15:00 / 対象:Puppys全個体]

男達が去ると、さっきの気品ある少女がへなへなと尻餅をついた。余程怖かったのだろう。すかさずパンサーが駆け寄り、壁際のベンチに座らせる。

 

「具合悪かったら、横になってもいいのよ。」

「ありがとうございます。でもこのままで大丈夫。」

 

様子をみていたチーターが提案する。

 

「アタシとタイちゃんは2階で準備始めるから、パンちゃんはみんなの体調見てあげて。」

「いえ、先程の話もすると思うので人払いがしたいです。終わりましたら報告に伺います。」

 

背の高い少女が切り返す。少し考えながらパンサーが

 

「わかったわ。それじゃあ、…終わったら全員であの階段から2階においで。誰か具合が悪くなった時も良いに来てね。あと、君達だけで外に出るとさっきの奴らが来ちゃうから、それだけ気を付けてね。」

「分かりました、ありがとうございます。」

 

そういうと、3人は奥の階段から2階に消えていった。部屋には今日ここに連れて来られた少女達6人だけになった。ベンチに座る少女を起点に、地べたに車座になる。背の高い少女が話しはじめる。

 

「さっきは急に口塞いじゃってごめんね。{ひなた}ちゃん…だっけ。」

「いえ、こちらこそ。頭が全然回ってなくて、なんでもペラペラ話しちゃう所だったので助かりました。」

「それじゃさっそく、お互いを呼び合う為に名前を決めよう。とは言っても、情報を出しても大丈夫になるまでの間の、あだ名みたいなもんだから、気楽にね。」

 

ベンチに座っていた少女が地べたに座り、輪に入って

 

「それでは私から。私は青い色が好きなので、私の名前は「{るり}」と申します。22歳大学4年生です。こんな感じで良いですか?」

「あぁ、年齢まで言わなくても良いかと思ったけど、あいつらもいない事だし、そこまでは話そうか。」

「はわわ、ごめんなさい。隠し事をするって、難しいですね。」

「別に良いよ。じゃあ、次私ね。私は「{れいな}」。憧れてる先輩の名前なんだけどね。24歳アパレルで働いてるフリーターでした。{るり}の年齢が分かったから、多分そうじゃないかと思うんだけど、最年長っぽいね。次誰行く?」

 

先程タイガーに話しかけた、小柄な少女が発言する。

 

「私は「{かすみ}」、21歳大学3年生です。格闘技やってます!名前はいつか倒したい目標の人です。じゃあ、ハイ次は君!」

 

そういって指名したのは、まだ一言も発言していない2人の少女のうちの1人。どことなく体は鍛えられている感じだが、その表情は暗い。

 

「私は「{つばさ}」です。大学1年です。…騙されて、嵌められてここに来たので、皆さんの事もまだ信用していません。」

 

それを聞くと、{れいな}が発言する。

 

「そうだよね。私も面倒くさい事に巻き込まれたクチなんでわかるよ。ひょっとしたら、敵になるかもしれないしね。実際今、例えば{かすみ}ちゃんと戦えって言われても無理だし…。」

 

空気を察して{るり}が続く。

 

「それでも、名前言ってくれてありがとうございます。できればゆっくり、皆さんとお話できるようになりたいですね。えーっと、次は…」

「私は「{ひなた}」です。20歳大学2年です。あの、部活とかやってないですけど、精一杯頑張りますので宜しくお願いします。」

 

{るり}が{ひなた}に問いかける。

 

「「{ひなた}」ちゃん、というのは本名じゃないの?どんな事に使われるかもしれないから、何か変えた方が良いんじゃ…?」

「いえ、本名なんですけど、ある意味本名じゃないんです。それに、バレた名前を変えると全員嘘だとバレる。でも、私の名前がそのままなら、向こうから見てみんな本名の可能性が残ります。」

「何か考えがあっての事なのね。今はあなたを信じるわ。そうすると、最後だけど…」

 

発言していない最後の少女。背も一番低いし、一人だけセーラー服を着ている。ただ、身体の発育は良く、制服を着ていなかったら年齢の判断は難しかった、そんな容姿だ。

 

「…名前、思いつかなくて。ごめんなさい…。18歳、高校生です。」

「謝らなくて良いのよ。こちらこそ、いきなり決めさせたりしてごめんね。今晩ゆっくり決めるか…それともみんなで考えてあげるのはどうかしら?」

 

少女は静かにこくりと頷く。怯えたようすに{ひなた}が手を差し伸べると、腕にしがみついた。その場にいた全員が「かわいい…。」と心を揺さぶられる、そんな光景だった。

 

「「{こはく}」って名前、どうですか?ほら、…そのブレスレット。」

 

意外にも切り出したのは{つばさ}だった。少女が腕に付けていた、小さなチェーンのブレスレット。それは「Amber.」という、若者向けの、安価でオシャレが売りのブランドの物だった。彼女はそれを見て咄嗟に考えたのだ。

 

「{つばさ}ちゃんナイス!君はそれでいい?」

 

「{こはく}」と名付けられた少女が無言でこくりと頷くと、{つばさ}は心配そうに

 

「大丈夫?嫌だったら変えて良いよ?」

 

と言ったが、恥ずかしそうに首を横に振ると

 

「大丈夫。この名前好き。」

 

と、少しはにかみながら笑顔を見せた。それにしてもかわいい。その時、{こはく}は初対面の{ひなた}に自分がしがみついている事に気付き、

 

「ハッ、…ごめんなさい。」

 

と手を離した。{ひなた}は内心「ずっとそのままでよかったのに。」と思った。

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