『The Judas Hound -贖罪の牙-』 作:LCL Stuio R
[記録日時:1月4日 15:00 / 対象:Puppys全個体]
男達が去ると、さっきの気品ある少女がへなへなと尻餅をついた。余程怖かったのだろう。すかさずパンサーが駆け寄り、壁際のベンチに座らせる。
「具合悪かったら、横になってもいいのよ。」
「ありがとうございます。でもこのままで大丈夫。」
様子をみていたチーターが提案する。
「アタシとタイちゃんは2階で準備始めるから、パンちゃんはみんなの体調見てあげて。」
「いえ、先程の話もすると思うので人払いがしたいです。終わりましたら報告に伺います。」
背の高い少女が切り返す。少し考えながらパンサーが
「わかったわ。それじゃあ、…終わったら全員であの階段から2階においで。誰か具合が悪くなった時も良いに来てね。あと、君達だけで外に出るとさっきの奴らが来ちゃうから、それだけ気を付けてね。」
「分かりました、ありがとうございます。」
そういうと、3人は奥の階段から2階に消えていった。部屋には今日ここに連れて来られた少女達6人だけになった。ベンチに座る少女を起点に、地べたに車座になる。背の高い少女が話しはじめる。
「さっきは急に口塞いじゃってごめんね。{ひなた}ちゃん…だっけ。」
「いえ、こちらこそ。頭が全然回ってなくて、なんでもペラペラ話しちゃう所だったので助かりました。」
「それじゃさっそく、お互いを呼び合う為に名前を決めよう。とは言っても、情報を出しても大丈夫になるまでの間の、あだ名みたいなもんだから、気楽にね。」
ベンチに座っていた少女が地べたに座り、輪に入って
「それでは私から。私は青い色が好きなので、私の名前は「{るり}」と申します。22歳大学4年生です。こんな感じで良いですか?」
「あぁ、年齢まで言わなくても良いかと思ったけど、あいつらもいない事だし、そこまでは話そうか。」
「はわわ、ごめんなさい。隠し事をするって、難しいですね。」
「別に良いよ。じゃあ、次私ね。私は「{れいな}」。憧れてる先輩の名前なんだけどね。24歳アパレルで働いてるフリーターでした。{るり}の年齢が分かったから、多分そうじゃないかと思うんだけど、最年長っぽいね。次誰行く?」
先程タイガーに話しかけた、小柄な少女が発言する。
「私は「{かすみ}」、21歳大学3年生です。格闘技やってます!名前はいつか倒したい目標の人です。じゃあ、ハイ次は君!」
そういって指名したのは、まだ一言も発言していない2人の少女のうちの1人。どことなく体は鍛えられている感じだが、その表情は暗い。
「私は「{つばさ}」です。大学1年です。…騙されて、嵌められてここに来たので、皆さんの事もまだ信用していません。」
それを聞くと、{れいな}が発言する。
「そうだよね。私も面倒くさい事に巻き込まれたクチなんでわかるよ。ひょっとしたら、敵になるかもしれないしね。実際今、例えば{かすみ}ちゃんと戦えって言われても無理だし…。」
空気を察して{るり}が続く。
「それでも、名前言ってくれてありがとうございます。できればゆっくり、皆さんとお話できるようになりたいですね。えーっと、次は…」
「私は「{ひなた}」です。20歳大学2年です。あの、部活とかやってないですけど、精一杯頑張りますので宜しくお願いします。」
{るり}が{ひなた}に問いかける。
「「{ひなた}」ちゃん、というのは本名じゃないの?どんな事に使われるかもしれないから、何か変えた方が良いんじゃ…?」
「いえ、本名なんですけど、ある意味本名じゃないんです。それに、バレた名前を変えると全員嘘だとバレる。でも、私の名前がそのままなら、向こうから見てみんな本名の可能性が残ります。」
「何か考えがあっての事なのね。今はあなたを信じるわ。そうすると、最後だけど…」
発言していない最後の少女。背も一番低いし、一人だけセーラー服を着ている。ただ、身体の発育は良く、制服を着ていなかったら年齢の判断は難しかった、そんな容姿だ。
「…名前、思いつかなくて。ごめんなさい…。18歳、高校生です。」
「謝らなくて良いのよ。こちらこそ、いきなり決めさせたりしてごめんね。今晩ゆっくり決めるか…それともみんなで考えてあげるのはどうかしら?」
少女は静かにこくりと頷く。怯えたようすに{ひなた}が手を差し伸べると、腕にしがみついた。その場にいた全員が「かわいい…。」と心を揺さぶられる、そんな光景だった。
「「{こはく}」って名前、どうですか?ほら、…そのブレスレット。」
意外にも切り出したのは{つばさ}だった。少女が腕に付けていた、小さなチェーンのブレスレット。それは「Amber.」という、若者向けの、安価でオシャレが売りのブランドの物だった。彼女はそれを見て咄嗟に考えたのだ。
「{つばさ}ちゃんナイス!君はそれでいい?」
「{こはく}」と名付けられた少女が無言でこくりと頷くと、{つばさ}は心配そうに
「大丈夫?嫌だったら変えて良いよ?」
と言ったが、恥ずかしそうに首を横に振ると
「大丈夫。この名前好き。」
と、少しはにかみながら笑顔を見せた。それにしてもかわいい。その時、{こはく}は初対面の{ひなた}に自分がしがみついている事に気付き、
「ハッ、…ごめんなさい。」
と手を離した。{ひなた}は内心「ずっとそのままでよかったのに。」と思った。