『The Judas Hound -贖罪の牙-』 作:LCL Stuio R
[記録日時:1月4日 15:30 / 対象:Puppys全個体]
話が終わったので、少女達は2階にいるパンサー達に報告しに行くことにした。立ち上がり、2階に上がる階段の麓で、6人はとある事に気が付いた。どこか懐かしい、こんがり、甘い香りだ。
少女達が2階に上がると、そこはダイニング、というよりは食堂という雰囲気の場所だった。パンサーが口を開く。
「終わったようね。お名前の報告も聞くけど、まぁお先に席についてね。」
すると、オーブンから取り出した、熱々で巨大な「それ」を、両手で持ったチーターがテーブルの中央に割って入りながら
「熱いからちょっと通らせてねー。はーい、ちーちゃん特性アップルパイ♡」
一目で焼き立てと分かるそれは、表面が小麦色に色づき、リンゴとシナモンの甘い香りが、あっと言う間に広い部屋いっぱいに広がった。
「みんな総じて痩せ過ぎなので、食べる事も練習のうちよ。栄養管理も私達3人の仕事だから、しっかり食べてね。」
パンサーの言葉を聞いて、{れいな}の、張りつめていた糸が切れ、泣き出してしまった。年長者としてのちっぽけな見栄だった。たまらず他の5人が{れいな}の席に駆け寄る。
「うわーん、{れいな}さんごめんなさい!わたし、…私嫌な事言って…!」
膝元に縋りついたのは{つばさ}だった。自らの卑屈な発言を悔いていた。{れいな}はその手を強く、でも優しく握り返した。{れいな}の椅子の周りに集まる少女達を、後ろから包む大きな腕があった。チーターだった。
「怖かったよねー、ごめんね。このパイはほんのお詫びの印なの。アタシ達の事、すぐには難しいと思うけど、家族だと思ってくれて良いからね♡さ、折角だから冷めないうちに食べよ♪」
黙っていたタイガーが、優しい笑顔を見せながら言った。
「明後日には本格的な練習が始まる。今のひよっこみたいなカラダじゃ、すぐ骨になっちゃうからね。さぁ食え、太る気で食え、食べ盛りども!!ダイエットなんて、口が裂けても言えなくしてやる。ともあれ、…ようこそ、「THE PIT」(狂気の底)へ 。」
みんなでアップルパイに舌鼓を打ったあと、少女達は自分達の事を少しずつ話した。各々の境遇、此処に連れて来られた経緯。中には経緯がよくわかっていない者もいた。やってきた部活や趣味の事。晩御飯も食べて、みんなでシャワールームに入った。みんな年長者二人の身体に目を奪われたが、ギャップもあって一番注目を集めた{こはく}は、終始恥ずかしそうにしていた。その後、6人は3階にある各個人の部屋を与えられて床に就いた。明日からの事は全て不安。だけど、不安を少しずつ共有しあえる仲間がいる。そう考えたら、明日は今日より少し良くなる気がした。