『The Judas Hound -贖罪の牙-』 作:LCL Stuio R
[記録日時:1月5日 11:00 / 対象:Puppys全個体]
ブルマ姿で顔を真っ赤にしながら道場に整列した6人を待っていたのは、腕を組んだタイガーだった。彼女はその格好に特に触れることもなく、淡々と体力測定を開始した。
筋力、持久力、俊敏性、柔軟性。次々とメニューをこなしていく中で、明確な「身体能力の差」が浮き彫りになっていく。
トップ争いをしたのは、{つばさ}と{かすみ}だった。しかし、反復横跳びやダッシュなどの基礎項目で、{つばさ}が{かすみ}を僅差で上回っていく。
「くそっ……!」
{かすみ}が悔しそうに床を叩く。格闘技経験者としてのプライドが許さなかったのだろう。 そして、全員を驚かせたのは{こはく}だった。最も小柄で幼い彼女が、重いメディシンボール投げや懸垂で、しなやかな身のこなしを見せ、堂々の3位につけたのだ。
「{こはく}ちゃん、すごい……! なにかスポーツやってたの?」
{ひなた}が驚いて尋ねると、{こはく}は恥ずかしそうに下を向いた。
「……中学まで、柔道を。でも、胸が大きくなってきちゃって……男子の視線が気持ち悪くて、高校では辞めちゃったんです」
その告白に、{かすみ}や{ひなた}が少しだけ見る目を変える。続いて、{れいな}、{ひなた}、{るり}という順位で測定は進んでいった。{るり}は完全にバテており、{ひなた}が背中をさすっている。
その時だった。道場の高い位置にある擦りガラスの窓の向こうに、いくつかの人影がうごめいているのに{かすみ}が気づいた。
「……誰か、見てる?」
その声に、タイガーが猛禽類のような鋭い視線を窓へ向ける。
「おい!! どこのゴミクズだ!!」
タイガーが手元のバインダーを壁に向かって思い切り叩きつけると、窓の向こうの人影は蜘蛛の子を散らすように慌てて消えていった。
「ごめんね、気持ち悪い思いさせて。アレは『CLAWS(クロウズ)』……この施設の掃除や雑用をしてる、ただのフリーターのゴミ共さ」
タイガーは忌々しそうに吐き捨てる。
「昨日入り口にいた黒服たちは『PRIDE(プライド)』っていうプロの警備部隊だから、あんな真似は絶対にしない。いいかい、アンタたちは何億って金が動く大事な『商品』だ。あんな最底辺のゴミ共には指一本触れさせないから、安心していいよ」
その言葉は頼もしかったが、同時に「自分達は高価な商品である」という事実を、冷酷に突きつけるものでもあった。
昼食の時間になると、重苦しい空気は一変した。 ダイニングのテーブルの中央に鎮座していたのは、タイガー特製の巨大な「ちゃんこ鍋」だった。肉団子、たっぷりの野菜、魚介の出汁が効いたその味は、高級料亭も顔負けの絶品だった。
「おいしい……! なにこれ、本当においしい!」
{るり}が目を輝かせ、他の5人も無言で何度もおかわりをした。状況の異常さと、提供される食事や環境の完璧さのギャップに、少女たちの感覚は少しずつ麻痺し始めていた。