※この作品はR-18です。

『The Judas Hound -贖罪の牙-』   作:LCL Stuio R

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【SCENE 009:憧れの人と】

[記録日時:1月9日 15:00 / 対象:Puppys全個体]

トレーニング開始から数日が経過し、少女たちの身体は悲鳴を上げていたが、同時に不思議な回復力も見せていた。

 

それは、パンサーによる徹底したメディカルケアと、3人が管理する完璧な栄養食のおかげだった。特に食事に関しては栄養価が高いだけでなく味も絶品ばかりで、食べ盛りの少女達の身体も、心も満たし続けていた。

勿論日々のトレーニングは過酷を極めていたが、辛い境遇を背負ってきた少女達にとって何かに打ち込む時間は、それぞれの苦しい境遇を振り切り、一心不乱に打ち込む事ができる、そんな時間になりつつあった。

 

この日はロードワークの予定だったが、悪天候の為室内練習に変更となった。

 

タイガーの教育方針としては、本来なら今の時期は練習といってもリングには上げず、マットで受け身練習や筋トレ、ロードワーク等の基礎能力向上メニューしか絶対にやらせない。

しかし今回ばかりはデビュー日が直近かつ具体的に設定されており、やるべき事もある一方で戦えないレスラーをリングに上げるわけにもいかず、少女達は突貫工事で「レスラー」として最低限の形を目指し、鍛えられていく。

 

道場では、{かすみ}が熱心にタイガーへ質問をぶつけていた。

 

「先生! さっきの関節の取り方なんですけど、腕じゃなくて、自分の体重を落とす力で極めるんですよね? もう一回、足の入り方を見せてもらえませんか!」

 

目を輝かせる{かすみ}の健気さとセンスに、タイガーも

 

「……アンタ、いい目してるね」

 

と、かつての自分の後輩を見るような少しだけ柔らかい表情で指導に応じている。

その和やかな空気を、重く低い轟音が引き裂いた。

 

ゴロゴロゴロ……ズドォォン!!

 

外は激しい冬の嵐なのだろう。分厚い施設のコンクリート壁や排気口のダクトを伝って、落雷の音がダイレクトに響いてきたのだ。恐らくこの施設の避雷針に落ちたものと思われる。

 

「ひゃああっ!!?」

 

その瞬間、さっきまで格闘技の技術を熱く語っていた{かすみ}が、頭を抱えてマットの上にうずくまった。

 

「か、かすみちゃん!?」

 

駆け寄る{ひなた}の腕の中で、{かすみ}は両耳を塞ぎ、子供のようにガタガタと震えている。

 

「む、無理無理無理! 雷、ほんっとにダメなの……! 物理で殴れないやつは無理ぃぃ……!!」

 

格闘技経験者としてのプライドも余裕も吹き飛び、完全なパニック状態。

その直後、少し恥ずかしそうにモジモジしている{かすみ}を見て、見学していたチーターが駆け寄り、耳打ちをした。

 

「…お願いします///」

 

エメラルド色の「何か」が手渡されたかとおもうと、{かすみ}は道場の隅にあるお手洗いに駆け込んだ。

 

タイガーは呆れたようにため息をついたが、その日の午後の練習は、少しだけ軽めのメニューに変更された。

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