しかし、その常軌を逸した行為の果て、少女は気を失ってしまった……。
女たちの下腹の中。
残された熱い感覚が、子を宿す宮で争って蠢いていた……。
鎧姿の女の腕の中で、髪を横に垂れる少女。
「うぅん……」
彼女は目を開けると、はだけられた胸を素早く起こし、声を上げた。
「わぁっ!?気を失って……!」
少女は地面に敷いた黒衣を掴み、『バサッ』と身に着けながら立ち上がる。
「さて、時間を戻してあげるわ……」
彼女は静かにそう言うと、地面に突き刺された杖を『サッ』と引き抜いた。
そして杖の頭に意識を込めるよう、目を閉じ首を下げた……。
抑揚のない詠唱が紡がれ始める……。
『ゴクリ』と喉を鳴らす鎧の女。
やがて魔物たちは去り、その幼い声が止まった。
少女は言った……。
「時間が……戻らない……」
――えっ、失敗したの!?
白銀の鎧の女の背筋に、冷たい感覚が走る。
少女は声を震わせた。
「魔法で戻せる時間は限られているの!」
女たちの躰の中では、大量に受けた魔物の種が、着く床を争って蠢いていた……。
「オークは成長期間が長い分、メスを孕ませる確率がとても高いの!」
少女は長い髪を振り乱し始める。
「おっ、落ち着きなさい……」
鎧の女は少女を諭すように言った。
女たちより漂う酸っぱい臭い。
「嫌ぁっ! 魔物の種で孕むだなんて、やぁぁぁっ!」
鎧の女は少女に身を寄せると、小さな躰を包み込んだ。
肌から肌へと伝わる温もり。
少女は少し、落ち着きを取り戻す。
しかしその時暗い回廊の向こうから、跳ねるような足音が聞こえてきた。
――まさか、この音……。
鎧姿の女は、脳裏に碧い瞳の少年の姿を浮かべた……。
「ねっ、もう一度やってみなさい」
声を震わせてそう言う彼女。
少女は息を飲むと、もう一度魔法の言葉を紡ぎ始める。
近づく足音。
鎧の女がその人影を目にした時、彼女の意識は遠のいていった……。
乙女は目を開ける。
そして、直ちに剣を翻した。
背後に迫る豚顔の頭部が『ドスッ』と地に音を立てる。
少女を組み敷く魔物の股が、そのつぼみに触れようとしていた。
乙女は地面を蹴って、剣を一閃させる。
生気を失った大きな体が、少女の躰へと覆い被さった……。
少女は涙を拭う。
「ありがとう……」
「安易に快楽を求めることの危なさが分かったでしょ!?」
乙女は剣を納め一喝。
少女は黒い衣を引き寄せて平らな胸を隠し、その場にへたり込んだ……。
黒衣の襟元を直す少女。
乙女は盛られた土へと静かに祈りを捧げる……。
すると通路の向こうから足音が聞こえてきた。
ランタンの灯りに映し出される少年の姿。
「えっ!?……皇女さま!」
少年は碧い瞳を潤ませる。
鎧の乙女は彼と距離を取ったまま、その姿を眺めた。
少年は腰に剣を帯び、胸に太陽の紋章の入った前掛けを纏っていた。
乙女は呟く。
「使命が始まったのね……」
少年は二人に近づくと、そのエメラルドの様な瞳で少女を見た。
彼女は顔を赤く染め、声を出す。
「わっ、わたっ……」
乙女は少女を覆うようにして少年との間に立ち
「霪影の魔法少女さんよ!」
と素早く答えた。
「まっ、魔窟を進むには……わっ、私の魔法が役に立つと思うわ……」
同行を申し出る黒衣の少女。
少年が少女へと手を差し出すと、彼女はその目線を背けた。
乙女は屈んで荷物を背に拾い上げると、斜め下から眩しそうに少年を見上げて言った。
「さて、勇者さまの『お供』をするとしましょうか……」
真っ赤な顔を見せる少年。
繰り返された輪廻の果てに、旅立ちの時がようやく訪れたのである……。
よろしければ評価をお願いします。