彼女は躰の清浄をなんとか保ち、碧眼の少年と合流する事が出来た……。
傭兵と女神官
甘い香りが少年を囲む……。
女神の加護のような情緒を纏いながら、碧眼の少年はその使命を開始した。
『厄災の魔窟』の奥にある『逢魔の扉』。
『碧眼』を持つ勇者のみが、魔物を産みだすと言われているそれを閉じることができるのだと言う。
しかし被害を広げる怪異に対処する為、神聖教会によってさまざまな依頼(クエスト)が民間へと下されていた……。
岩陰に潜む二つの姿……。
一人は簡易的な装甲を身に着けた壮年の男。
もう一人はこの場に似つかわしくない、白き聖衣を纏ったうら若き女性だった……。
無精髭だらけの顔が、舌なめずりをして唸った。
「こいつは……とんだ穴場だな!」
「五、六、七……ゴブリンが八匹ですね……」
聖衣の女性は暗がりにペンを滑らせる。
指に持つペンが発光し、記録盤の上を明るく照らしていた。
衣服越しに浮かぶ、彼女の豊かな胸。
そこには、翼を羽ばたかせる鳥の紋章が描かれていた……。
「おっ、ホブゴブリンもいるじゃねえか!」
男は笑いの混ざった声を出した。
彼らの潜む位置からすぐの場所。
そこに集まる緑の小鬼と、ひと際大きい禍々しい姿。
それらは壁に掛けられた今にも消えそうなランタンの灯りに、薄っすらと照らされていた……。
「なあ……確か、ホブゴブリンはゴブリン五匹分だよな?」
男はそう言って女の胸元へと目線を落とす。
彼女はわずかに眉を動かし、頷いた……。
「神官さまよぉ」
男は女をそう呼んだ。
そして、その耳元で囁く。
「今日は俺、ツキまくってるかなぁ?」
男は女を舐めるように眺めると、自分の腰裏に手をやる。
そして彼は両手を前に素早く振った。
二本の飛刀が弧を描き、標的を急襲する。
遠く、目線の先で倒れる一匹の小鬼。
「よっしゃ、当たった!」
男は即座に若い女の手を握った。
「あっ……!」
彼女は目を見開いて、走りだす男に身を引かれた……。
獲物たちが辺りを見渡し始める。
間髪入れず、次の手を打つ男。
小鬼が次々と倒れていく。
「俺の代わりに犠牲になってくれた奴らのお陰で、あいつらの動きは手に取るように分かるんだよな!」
呟く壮年の男。
魔物たちが一斉に、神官の白い聖衣の方へと鋭い目を向けた。
「姉ちゃん、見つかっちまったようだぜ……」
男が女神官にそう言うと、彼女は腰裏の戦棍(メイス)を握った。
残るは二体……。
片方は恵まれた体格に鎧を着込み、大きな剣を携えていた。
女神官は目を細め、その大柄を避けるように位置取った……。
「えひゃひゃひゃひゃ!」
長い舌を出して、女体へと襲いかかる小鬼。
戦棍が振り下ろされる。
球体の棘が魔物の顔にめり込み、その醜顔が白目を剥いた。
女神官は壮年の男の方に顔を向けると、彼は二本の短刀で大剣を受け止めていた。
彼女はそれを静観するかのように戦棍を下げる。
そして両手を胸の前で組んだ。
男は横を向いて呻いた。
「嬉しいねえ…… 俺の勝利を祈ってくれるのかい?」
敵の凶器に押される体。
金属同士の擦れる音が鳴る……。
男はいやらしい微笑を浮かべ
「ここがガラ空きだ、ぜ!」と、鬼の股間に膝を素早く入れた。
怯む魔物。
その隙に男の双刀が太い首を襲う。
飛び散る赤い飛沫。
女神官の眉間に筋が浮かんだ……。
魔物の耳を地面へと並べ、男はねっとりとした声で言った。
「四百九十六……で、ホブゴブリンのを合わせて五百一だ」
女神官は目を伏せ、豊満な曲線を描く体躯を抱きしめる。
男の顔がその躰へと、獲物を見る野卑な目つきを当てていた……。
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