※この作品はR-18です。

厄災の魔窟 ―魔界の皇太子誕生―   作:裏の影

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激情の高まりから、教会支給の保護具を外してまった男。

正常に使用されなかった聖具は暴走し、半球体の魔物と化した……。


勇者の初陣

水色の溜まりが『ヌルリ』と地を這う……。

 

洞穴に張られた帳。

内より当てられた桃色の光が、蠢く姿を不気味に照らした。

 

壮年の男とうら若き女。

包みを解かれたその草花が、魔物を眺めて立ち尽くしていた……。

 

女の手首を掴む壮年の男は、呻くように声を吐き捨てる。

「くそっ!荷物はあの中だ……」

 

うら若き女はその腕を引いた。

 

開かれる躰で震える双房……。

 

「姉ちゃん……俺から離れるなよ!」

男は腕で女を包み込む。

 

水色の妖しい膨らみは刻一刻と、二つの躰へと迫っていた……。

 

「キャァァァッ!!」

 

周囲に鳴り響く女の悲鳴。

 

男は鼻息を荒く構えた。

 

その時。

 

岩の回廊の向こうより、跳ねる音が聞こえて来た。

 

暗がりに現れたその人影。

 

手に持つ灯りが二人を照らす。

 

目を細めるうら若き女は呟いた。

「栗色の、髪……」

 

栗色の髪の少年は、腰の剣を『ギュッ』と握る。

 

そして刀身を抜くと走り出した……。

 

「助けて!」

男に抱かれた女が叫ぶ。

 

少年は顔を赤くして言った。

「こいつは訓練所で散々相手させられた奴だ……」

 

彼は舌を『ペロッ』と出す。

 

そして二人の横を通り過ぎ

「はぁっ!」

と息を吐きながら、軟体へと剣を挿し入れた……。

 

「あそこね……」

白銀の鎧の乙女は、通路の先に明かりを見つける。

 

後ろでは黒衣を纏う少女が、立てた杖へともたれ掛かって、「はぁ、はぁ」と息を切らしていた。

 

彼女は少女を置き去りにして、もう一駆けする為に地面を蹴った……。

 

騒ぎの場所へと駆けつけた乙女。

 

肌を晒す男女の躰が、彼女の目の中へと飛び込んできた。

 

「えっ⁉」

乙女は顔を赤くする。

 

そしてその痴態の向こうでは、水色の軟体が半球を震わせながら、剣を立てる少年を囲んでいた。

 

「皇女さま!こいつら『スライム』です!」

 

少年は乙女へと大声を上げると、その粘体に剣を突き入れた。

「はぁぁぁっ!」

 

『ヌブッ』

玩具で弄ばれるように挿される剣。

 

乙女は帯びた剣へと手を添える。

 

すると、それを静止するように彼女の肩へと手が乗った。

 

「あいつは斬ると分裂するわ……」

黒衣の少女はそう言うと、魔法の詠唱を始める。

 

少女の周りで次々に『ボゥッ』と火の玉が浮かび上がった。

 

少女は呟く。

「焼き尽くせ……」

すると燃える弾が一斉に飛び去った。

 

それは水色の物体へと降り注ぎ、その全てを焼き尽くした……。

 

幕を割って出てきた壮年の男。

衣服を身に纏い直した彼は、頭を掻いて言った。

「あっ、ありがとよ……」

 

少年は言った。

「あれは初級レベルの、経験のない奴が相手するモノだぜ!」

 

「未経験の、ねぇ……」

男はそう呟き、目線を下げる……。

 

そして男は乙女の躰を舐めるように眺め

「おっ、姉ちゃん……あんたその鎧を脱いだら相当な大金を稼げるぜ」

と言って目を細めた。

 

乙女は目を吊り上げて

「この鎧は先祖より代々伝わる物……金目当てで質に出すような代物ではない!」

と返す。

 

黒衣の少女が「プッ」と噴き出した……。

 

頭を下げる聖衣のうら若き女。

「私はこの方に同行している記録官です……」

 

黒衣の少女は彼女に顔を向け

「記録官ねぇ……」

と呟く。

 

壮年の男は得意げに言った。

「鍵開け、罠外し。俺を連れて行けば役に立つぜ!」

 

乙女は男を睨みつけて放つ。

「あなたみたいな奴を、こんな綺麗な子と二人きりにはしておけないわね」

 

「おいおい、ご挨拶だな……」

肩をすくめる壮年の男。

 

こうして女神官と壮年の男は、勇者一行の仲間となったのである……。




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